ATP6V1B1関連 遠位型腎性尿細管性アシドーシスと感音性難聴

やさしいまとめ

このページでは、「ATP6V1B1関連の遠位型腎性尿細管性アシドーシスと感音性難聴」という、まれな遺伝性疾患について、やさしく・くわしくご説明しています。
腎臓が体の酸をうまく外に出せなくなることから、体液が酸性に傾き、成長や骨、腎臓に影響が出たり、子どものころから耳が聞こえにくくなったりします。
原因となる遺伝子、症状、診断方法、治療法、将来の見通しまで、患者さんやご家族、医療関係者の方にもわかりやすいようにまとめています。
お子さまの症状が気になる方、診断を受けたばかりの方にも安心して読んでいただける内容です。

この記事の結論

ATP6V1B1関連の遠位型腎性尿細管性アシドーシス(dRTA)は、2番染色体上のATP6V1B1遺伝子の変異により、腎臓で酸をうまく排出できなくなる代謝性アシドーシスと、乳幼児期からの感音性難聴が同時に現れる、超希少な常染色体潜性遺伝疾患です。国際的にはOMIM(#267300)でDRTA2(遠位型腎性尿細管性アシドーシス2型)として分類されています。よく似た名前のATP6V0A4遺伝子やFOXI1遺伝子の変異でも似た病態が起こりますが、原因遺伝子によって難聴の出方や関連する遺伝形式が異なります。本記事では、GeneReviewsやOMIM、学術論文などの公的・学術情報源にもとづき、原因・症状・検査・治療の全体像と、類縁疾患との違いを整理します。

この記事でわかること

  • ATP6V1B1遺伝子とはどのような遺伝子で、なぜ腎臓と耳の両方に影響するのか
  • 遠位型腎性尿細管性アシドーシス(dRTA)の症状・検査・治療の流れ
  • ATP6V0A4・FOXI1・WDR72など、名前の似た遺伝子による病気との違い
  • 次のお子さまへの遺伝リスクと遺伝カウンセリングの活用法
  • 妊娠中のNIPTでこの病気がわかるかどうか

お子さんの検査結果に「ATP6V1B1遺伝子の変異」「遠位型腎性尿細管性アシドーシス」という、聞き慣れない言葉が並び、戸惑いながらこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。

成長がゆっくりだったり、繰り返す脱水や嘔吐で受診したところ血液検査で酸性に傾いていることがわかり、精査の過程で難聴も判明した、という経過をたどるご家庭も少なくありません。世界的に見ても報告数の少ない希少疾患のため、日本語で書かれた詳しい情報はまだ限られています。

「潜性遺伝」という言葉や見慣れない遺伝子名に圧倒されてしまうかもしれませんが、原因がわかったということは、今後の治療方針や聴力の支援計画を立てるための地図を手に入れたということでもあります。

遺伝子領域 | Implicated Genomic Region

ATP6V1B1

ATP6V1B (ATP6V1B1)

ATP6V1B1遺伝子は、ヒト第2染色体短腕の2p13.3領域に位置する遺伝子です。ATPase H+ Transporting V1 Subunit B1というたんぱく質の設計図であり、細胞内外の酸性度(pH)を調節するために水素イオン(H⁺)を輸送するポンプ、液胞型H⁺-ATPアーゼ(V-ATPase)のV1ドメインB1サブユニットをコードします。

このプロトンポンプは、腎臓の集合管にあるタイプA間在細胞と、内耳(ないじ)に存在し、尿の酸性化や内リンパ液のpH維持に重要な役割を担っています。同じポンプが働く臓器が2つあるからこそ、1つの遺伝子変異で腎臓と耳の両方に症状が現れます。

疾患名 | Disorder

この病気は、国際的な疾患分類ではOMIM(#267300)「遠位型腎性尿細管性アシドーシス2型(Distal Renal Tubular Acidosis 2, DRTA2)、進行性感音性難聴を伴う」として登録されています。正式な病名の構成を整理します。

この疾患は正式には

遠位型腎性尿細管性アシドーシス(Distal Renal Tubular Acidosis: dRTA)
感音性難聴(Sensorineural Hearing Loss: SNHL)

を合併するもので、一般には次のように呼ばれます

  • ATP6V1B1関連 遠位型腎性尿細管性アシドーシスと難聴
  • DRTA2(遠位型腎性尿細管性アシドーシス2型)
  • 難聴を伴う腎性尿細管性アシドーシス

なお「遠位型RTAタイプ1」という古い通称が使われることもありますが、これは腎臓内科領域での臨床分類上の呼び方であり、遺伝子ごとに番号が振られるOMIMの分類(DRTA2)とは体系が異なります。原因遺伝子で会話をする際は、ATP6V1B1関連(DRTA2)と明記すると混同を避けられます。

概要 | Overview

この病気は、腎臓の尿細管が酸を尿に適切に排出できないために体液が酸性に傾く、慢性的な代謝性アシドーシスを引き起こす疾患です。加えて、内耳のpH環境が保てなくなることで感音性難聴が生じる点が大きな特徴です。

症状は乳児期または小児期に始まることが多く、放置すると成長障害、骨の異常、腎結石、慢性腎疾患(CKD)などを引き起こす可能性があります。

私自身、遺伝カウンセリングの場で、繰り返す嘔吐や体重増加不良をきっかけに血液検査を受け、代謝性アシドーシスが見つかって初めて精査が始まり、その過程で難聴も判明したというご家族にお会いすることがあります。腎臓の症状が先に見つかり、聴力の問題は後から気づかれるという経過は、この病気では珍しくありません。

疫学 | Epidemiology

ATP6V1B1関連dRTAは、遺伝性の腎尿細管疾患のなかでも報告数がとくに少ない、非常にまれな疾患です。正確な頻度の算出は難しいものの、公的な学術情報源をもとに、わかっている範囲を整理します。

米国国立医学図書館のGeneReviews「Hereditary Distal Renal Tubular Acidosis」によると、遺伝性遠位型RTA全体(ATP6V1B1・ATP6V0A4・FOXI1・WDR72・SLC4A1の5遺伝子をあわせた合計)の推定有病率は、10万人あたり4.6人(確定診断例)から16人(確定例と疑い例をあわせた推定)とされています。これまでに世界で報告された症例は約350例です。

原因遺伝子別に見ると、ATP6V1B1変異による症例は遺伝性遠位型RTA全体のおよそ3割を占めると報告されています。

いとこ婚など近親者間の婚姻が比較的多い地域では、常染色体潜性遺伝の性質上、報告頻度が高くなる傾向があります。特定の民族集団での症例報告も複数ありますが、世界各地から報告があり、小児期に診断されるケースが中心です。

病因 | Etiology

この疾患の主な原因は、ATP6V1B1遺伝子の両方のコピーに変異があること、すなわち常染色体潜性遺伝です。ご両親はそれぞれ1つずつ変異遺伝子を持つ保因者であることが一般的で、通常は無症状のまま生活しています。

ATP6V1B1は、腎臓のタイプA間在細胞で働くV-ATPaseポンプのB1サブユニットを作る遺伝子であり、このポンプは尿中への酸の分泌を担います。変異によりポンプが正常に機能しなくなると、尿が適切に酸性化されず、体に酸がたまってしまいます。

内耳においてもこのポンプは内リンパ液の酸性度を調整するため、同じ変異が聴力低下にもつながります。ご両親のどちらのせいでもなく、妊娠中の生活習慣が原因になるものでもありません。

シスタチオニンβ-シンターゼ欠損によるホモシスチン尿症【CBS】
ホモシスチン尿症(CBS欠損症)は、ホモシステインが体にたまることで目や骨、血管などに影響する先天性代謝異常症です。やさしく解説|ヒロクリニ...

症状 | Symptoms

症状は腎臓の酸排出障害による全身症状と、内耳の障害による難聴に大きく分けられます。主に以下のような症状が見られます。

  • 成長障害(体重が増えない、身長が伸びない)
  • 嘔吐(おうと)、脱水、多尿
  • 低カリウム血症(血液中のカリウム不足)による筋力低下、まれに麻痺
  • 骨の異常
    • 子どもではくる病(骨のやわらかさ、O脚)
    • 成人では骨軟化症(骨の痛み、骨折しやすい)
  • 腎結石・腎石灰沈着(ネフロカルシノーシス)
  • 感音性難聴(両耳に起こりやすく、乳児期から進行することが多い)
    • 画像検査で前庭水管拡大(enlarged vestibular aqueduct, EVA)が確認される症例が報告されています

症状の重さやあらわれる順番には個人差があります。腎臓の症状だけが先に目立ち、難聴は聴力検査で初めて指摘されることもあれば、逆に難聴への気づきをきっかけに腎臓の精査へ進むこともあります。

類縁疾患との鑑別 | ATP6V0A4・FOXI1・WDR72・SLC4A1との違い

遠位型腎性尿細管性アシドーシスは、ATP6V1B1以外にもATP6V0A4・FOXI1・WDR72・SLC4A1という遺伝子の変異でも起こり、難聴の有無や発症時期が遺伝子ごとに異なります。米国国立医学図書館のGeneReviews「Hereditary Distal Renal Tubular Acidosis」の情報をもとに、代表的な違いを表にまとめました。

遺伝子染色体上の位置遺伝形式難聴の特徴遺伝性dRTA全体に占める割合(目安)
ATP6V1B1(本記事)2p13.3常染色体潜性乳児期早期からの感音性難聴を伴うことが多い約3割
ATP6V0A47q34常染色体潜性難聴を伴うことが多いが、ATP6V1B1と比べやや遅れて出現する傾向約4割(最も頻度が高い)
FOXI15q35.1常染色体潜性早期からの難聴を伴うことが多い(報告例は数家系のみ)ごくわずか
WDR7215q21.3常染色体潜性難聴はともなわない(エナメル質形成不全を合併)複数家系の報告あり
SLC4A117q21.31潜性・顕性の両方の報告あり難聴はともなわない約1〜2割

表の割合はGeneReviewsが報告する目安であり、症例の蓄積によって今後変わる可能性があります。共通しているのは、いずれも常染色体潜性遺伝(SLC4A1のみ一部顕性遺伝の報告あり)である点と、V-ATPaseというポンプの機能低下が根本にある点です。遺伝子が異なれば難聴の有無や合併症も変わるため、確定診断には遺伝子検査が欠かせません。

検査・診断 | Testing & Diagnosis

診断は、血液・尿検査による代謝性アシドーシスの確認と、画像検査・聴力検査・遺伝子検査を組み合わせて行われます。それぞれの検査で確認する内容を見ていきましょう。

血液・尿検査

  • 代謝性アシドーシス(血液が酸性に)
  • 低カリウム血症
  • 尿pHが高め(尿が十分に酸性化できていない)
  • 高カルシウム尿、低クエン酸尿

機能検査

  • フロセミド+フルドロコルチゾン負荷試験(尿酸性化能力を評価)
  • アンモニウム塩負荷試験(現在はあまり使用されません)

画像検査

  • 腎臓:エコーやCTで腎結石・石灰化の有無を確認
  • 耳:CTやMRIで前庭水管拡大(EVA)を確認

聴力検査

  • オージオグラム(純音聴力検査)
  • 聴性脳幹反応(ABR)など

遺伝子検査

確定診断のためには、ATP6V1B1遺伝子や関連遺伝子(ATP6V0A4、FOXI1、SLC4A1など)の変異を調べる遺伝子検査が行われます。英国の研究グループが5家系を対象に行った臨床・遺伝学的スペクトラムの解析(Ashton EJ, et al. 2013)でも、ATP6V1B1の変異を持つ患者全例で早期発症の感音性難聴が確認されており、遺伝子型と臨床像の対応づけに役立てられています。

  • 診断の確定に有用です
  • 家族への遺伝カウンセリングの土台になります

出生前診断(NIPT)でわかる範囲

ATP6V1B1関連dRTAは1つの遺伝子の変化で起こる単一遺伝子疾患であり、NIPTの基本検査が対象とする21・18・13トリソミーなどの染色体数の異常とは、検出のしくみがまったく異なります。

単一遺伝子疾患まで対象範囲を広げた拡大NIPTのプランもあり、プランによっては数百種類の遺伝子を対象とする検査項目が用意されている場合があります。ただし、ATP6V1B1のような超希少疾患が個別の検査対象に含まれるかどうかは、検査施設やプランによって異なります。ご自身が検討している検査プランの対象範囲は、受検前に医師や遺伝カウンセラーへ直接確認してください。

もう一つ知っておいていただきたいのは、NIPTはあくまで非確定的なスクリーニング検査だという点です。気になる所見が出た場合は、羊水検査などの確定検査で診断を固める流れになります。NIPT陽性と偽陽性の仕組みNIPTの検査手順もあわせてご確認ください。

今回、この病気に関する国内の実体験の投稿をX(旧Twitter)で「ATP6V1B1」「遠位型腎性尿細管性アシドーシス」「腎性尿細管性アシドーシス 難聴」などのキーワードで探しましたが、該当する投稿は見当たりませんでした。超希少疾患のため一次情報が極めて少ないことをご了承のうえ、本記事ではGeneReviews・GARD(米国国立衛生研究所)・小児慢性特定疾病情報センター・学術論文など、国内外の公的・学術情報を根拠としています。

治療法と管理 | Treatment & Management

治療の中心は、体内にたまった酸をアルカリ性の薬で中和し、酸塩基バランスを整えることです。目的と具体的な内容を順に見ていきます。

治療の目的

  • 体内の酸塩基バランスを整える
  • 骨や成長の問題を予防する
  • 腎機能を守る
  • 聴力や発達の支援を行う

主な治療

  • クエン酸カリウム(低カリウム血症がある場合に第一選択)
  • 重炭酸ナトリウム(必要に応じて併用)

用量の目安

  • 乳児・小児:1.9〜3.0 mEq/kg/日
  • 成人:1〜2 mEq/kg/日

実際の内服量は、血液検査の結果や体格、年齢によって主治医が個別に調整します。上記の数値はあくまで一般的な目安としてご参照ください。

その他の対策

  • 水分をしっかりとる
  • 補聴器や人工内耳、言語療法による聴力・発達の支援
  • 定期的な検査(血液、尿、画像検査、成長・聴力のフォロー)

臨床の現場で感じるのは、腎臓の管理は腎臓内科や小児科、聴力の支援は耳鼻咽喉科や言語聴覚士と、診療科をまたいだ連携が必要になりやすいという点です。ご家族が窓口を一本化できず負担を感じることも多いため、かかりつけ医に相談し、窓口を整理しておいてください。

腎臓の尿細管に異常が出る遺伝性疾患としては、ほかにバーチン関連Bartter症候群(BSND)のような病気もあり、原因遺伝子や治療の考え方が異なります。難聴への支援という観点ではCHARGE症候群(CHD7)の記事もあわせてご覧いただくと、難聴を伴う遺伝性疾患への向き合い方の参考になります。

メタクロマチック白質ジストロフィー(アリルスルファターゼA欠損症)【ARSA】
メタクロマチック白質ジストロフィー(MLD)は、まれな遺伝性疾患です。原因・症状・検査・治療を専門的かつやさしくご紹介します。|ヒロクリニッ...

予後 | Prognosis

早期に診断し、適切にアルカリ療法を続けることで、良好な成長と骨の健康を維持できる可能性が高まります。一方で、治療を怠ると腎機能への影響が長期的に生じることがあります。

  • 早期に診断し、適切に治療すれば良好な成長と骨の健康が見込めます
  • 治療を怠ると慢性腎疾患(CKD)へ進行することがあり、遺伝子診断が確定した患者を対象とした近年の研究では、長期的にCKD相当の腎機能低下がみられた患者の割合は報告により3〜8割と幅があります(Giglio S, et al. 2021)
  • 難聴は進行性であることが多く、現在の医学では聞こえそのものを完全に元へ戻す治療法は確立されていません。早期の補聴器・人工内耳の導入と言語療法が発達支援の中心になります
  • 服薬や通院の継続が、その後の経過に大きな影響を与えます

まとめ:ご家族へのメッセージ

ATP6V1B1関連の遠位型腎性尿細管性アシドーシスについて、重要なポイントを振り返ります。

この病気は、ATP6V1B1遺伝子の両方のコピーに変異があることで、腎臓での酸排出と内耳のpH調整の両方を担うV-ATPaseポンプが働かなくなり、代謝性アシドーシスと感音性難聴が同時に現れる常染色体潜性遺伝疾患です。ATP6V0A4やFOXI1など、似た働きを持つ遺伝子の変異でも近い病態が起こりますが、難聴の出方や頻度には違いがあります。

クエン酸カリウムなどによるアルカリ療法で腎臓側の症状はコントロールを目指せる一方、難聴には補聴器や人工内耳、言語療法による支援が中心となります。原因の多くはご両親がそれぞれ保因者であったことによるものであり、妊娠中の生活が原因ではありません。

遺伝子診断という「名前」がつくことで、腎臓・聴力・発達それぞれの専門家と連携した、お子さんに合ったケアの計画を立てやすくなります。まずは主治医や遺伝カウンセラーへの相談から始めてください。

お電話でのご相談も受け付けています。0120-169-629までお気軽にお問い合わせください。

よくある質問 | FAQ

ATP6V1B1関連dRTAとは、どのような病気ですか。

ATP6V1B1遺伝子の両方のコピーに変異があることで起こる常染色体潜性遺伝疾患です。腎臓の尿細管が酸を尿にうまく排出できず体液が酸性に傾く遠位型腎性尿細管性アシドーシス(dRTA)と、乳幼児期からの感音性難聴が同時に現れます。OMIMではDRTA2として分類されています。

ATP6V0A4やFOXI1の変異でも同じ病気になりますか。

ATP6V0A4・FOXI1の変異でも似たしくみで腎臓と難聴の症状が起こりますが、原因遺伝子は別です。ATP6V0A4は遺伝性dRTA全体の約4割を占め最も頻度が高く、難聴の出現がATP6V1B1よりやや遅い傾向が報告されています。WDR72やSLC4A1の変異では難聴を伴わないタイプのdRTAになります。

次の子どもにも同じ病気が起こる可能性はありますか。

常染色体潜性遺伝のため、ご両親が2人ともATP6V1B1変異の保因者である場合、次のお子さんが同じ病気になる確率は理論上4分の1です。保因者どうしのご結婚でも大半のお子さんは発症しませんが、正確な確率はご家族の遺伝子検査結果をもとに遺伝カウンセリングで確認してください。

難聴は治療で治りますか。

現在の医学では、進行した感音性難聴そのものを完全に元へ戻す治療法は確立されていません。早期に補聴器や人工内耳を導入し、言語療法とあわせて聴覚や発達を支援することが中心になります。聴力の状態は年に1回以上を目安に定期的な検査で経過を確認します。

どのような症状がきっかけで気づかれることが多いですか。

体重が増えない、繰り返す嘔吐や脱水、多尿といった腎臓由来の症状で受診し、血液検査で代謝性アシドーシスが見つかることをきっかけに精査が進むケースが多く報告されています。逆に、聴力検査での難聴の指摘から遺伝子検査に進むこともあります。

将来、腎臓の機能はどうなりますか。

早期に診断してアルカリ療法を継続すれば、良好な成長と骨の健康を維持できる可能性が高まります。一方で、遺伝子診断が確定した患者を対象とした研究では、長期的に慢性腎疾患(CKD)相当の腎機能低下がみられた割合は報告により3〜8割と幅があり、個人差が大きい点にご留意ください。

妊娠中のNIPTでこの病気はわかりますか。

21・18・13トリソミーなどを調べる基本検査の対象ではありません。単一遺伝子疾患まで対象を広げた拡大NIPTのプランでは対象に含まれる場合がありますが、対応範囲は検査施設やプランによって異なります。気になる所見が出た場合は羊水検査などの確定検査が必要です。

引用文献|References

キーワード|Keywords

ATP6V1B1, ATPase H+ transporting V1 subunit B1, 腎性尿細管性アシドーシス, 遠位型RTA, 感音性難聴, 前庭水管拡大, 代謝性アシドーシス, 低カリウム血症, ネフロカルシノーシス, 腎結石, 骨軟化症, くる病, ATP6V0A4, SLC4A1, FOXI1, WDR72, AE1, タイプA間在細胞, V-ATPase, アルカリ療法, 成長障害, 多尿, 低クエン酸尿, 高カルシウム尿, 重炭酸再吸収, 尿酸性化, 内リンパ, 難聴, 内耳, 酸塩基平衡, 慢性腎疾患, アンモニウム塩負荷試験, フロセミド/フルドロコルチゾン試験, 遺伝子検査, DRTA2, 常染色体潜性遺伝, GeneReviews, OMIM

監修:岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、医学博士。国内でも数少ないラボディレクター資格を保有。著書『妊娠したら最初に読んで欲しい本』。本記事は医療広告ガイドラインに配慮し、公的機関・学術論文の情報を参照して作成しています。記載の数値は限られた症例数の報告例にもとづくものであり、今後の知見により変わる可能性があります。診断・治療の最終判断は担当医にご相談ください。

参考情報:Hereditary Distal Renal Tubular Acidosis|GeneReviews(米国国立医学図書館)Autosomal recessive distal renal tubular acidosis|GARD(米国国立衛生研究所)尿細管性アシドーシス 概要|小児慢性特定疾病情報センターATP6V1B1 mutations in distal renal tubular acidosis and sensorineural hearing loss|PubMed

医師監修 監修日:2025年6月13日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

関連記事