ダウン症(21トリソミー)のある子どもの療育と生活【医師監修】

ダウン症の療育とは、将来お子さんが自立した生活を営めるように、それぞれのお子さんの障がいや発達の特性に合わせたトレーニングを行うことです。

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ダウン症のある子どもの療育の様子

ダウン症のあるお子さんを育てるご家族から、「療育っていつから、何をすればいいの?」という質問をよくいただきます。言葉は聞いたことがあっても、中身がイメージしにくい。それが正直なところではないでしょうか。

この記事では、ダウン症のある子どもの療育を、0〜6歳の早い時期を中心にまとめます。理学療法・作業療法・言語聴覚療法という3つの柱、どこで受けられるか、そして家庭でできる関わり方まで。就学後の学びについては別記事にゆずり、ここでは就学前の土台づくりに絞ってお伝えします。あせらず、比べず、一歩ずつ進めるための地図としてお使いください。

💡 この記事でわかること

  • 療育とは何か、そしていつから始めるとよいか
  • 理学療法・作業療法・言語聴覚療法という療育の3本柱
  • 児童発達支援など、療育を受けられる場所と利用の流れ
  • 家庭でできる関わり方(低緊張を踏まえた遊びと生活動作)
  • 無理をさせず、比べず、就学へつなげる考え方

療育とは?ダウン症の子はいつから始めるとよいか

結論から言うと、療育は気づいたときが始めどきです。早ければ0歳からでも、施設や発達の様子に応じて始められます。

療育とは、発達に合わせた専門的な関わりを通じて、お子さんが持つ力を伸ばしていく取り組みのことです。訓練で「できないことをできるようにする」というより、その子のペースに合った育ちを支える、という考え方が近いでしょう。ダウン症のあるお子さんは、筋肉の緊張がやわらかい「低緊張」の傾向があり、首すわりや歩き始めがゆっくりになりがちです。早い時期からからだの使い方を支えることで、発達の土台が整いやすくなります。とはいえ、開始が少し遅れても取り返しがつかないわけではありません。焦る必要はまったくないのです。

療育のもうひとつの大きな役割が、保護者の支えになることです。専門職に「これでいいんですよ」と言ってもらえる。同じ立場の家族と出会える。そうしたつながりが、育児の孤独をやわらげます。お子さんのためだけでなく、ご家族自身のためにも、療育の場は開かれています。「療育=特別な訓練」と身構えず、まずは相談の一歩を踏み出してみてください。多くのご家族が、通い始めてから「もっと早く来ればよかった」と口にされます。

療育の3本柱——PT・OT・ST

療育の中心になるのが、理学療法・作業療法・言語聴覚療法という3つの専門領域です。それぞれ役割が異なり、組み合わせて受けるのが一般的です。まずは全体像を、表で押さえておきましょう。

領域担当主に支える力
理学療法(PT)理学療法士寝返り・おすわり・歩行など大きな運動
作業療法(OT)作業療法士手先の動き・着替え・食事など生活動作
言語聴覚療法(ST)言語聴覚士ことばの発達・飲み込み・食べる力
療育の3本柱と、それぞれが支える力

理学療法(PT)——からだの土台をつくる

理学療法士(PT)は、寝返り・おすわり・歩行といった大きな運動の発達を支えます。低緊張のお子さんが、無理なく体幹を使えるようにする関わりが中心です。たとえば、うつ伏せで頭を持ち上げる練習や、バランスを取る遊びを通じて、少しずつ姿勢を安定させていきます。姿勢が安定すると、その先の細かな動きや言葉の発達にも良い影響が広がります。運動の発達は、すべての学びの土台。ここをていねいに支えることが、後の伸びを大きく左右します。

作業療法(OT)——手先と生活動作を育てる

作業療法士(OT)は、手先の細かな動きや、着替え・食事といった生活動作を支えます。スプーンを持つ、ボタンをとめる、積み木を積むといった日常の一つひとつが、練習の対象になります。感覚の受け止め方が独特なお子さんへの関わりも、OTの得意分野です。「できた」という小さな成功体験を積み重ねることで、お子さんは自分でやろうとする気持ちを育てていきます。

言語聴覚療法(ST)——ことばと食べる力を支える

言語聴覚士(ST)は、ことばの発達と、飲み込み・食べる力の両方を支えます。ダウン症のあるお子さんは発語がゆっくりな傾向があり、身ぶりや絵カード、指さしなども使いながら、伝え合う力を育てます。話す前に「伝わる楽しさ」を知ることが、言葉の芽を育てるのです。また、STは離乳食が進みにくいときの相談先にもなります。低緊張で舌の動きがゆっくりなお子さんの食べる力を、専門的に支えてくれます。食事面の工夫はダウン症の乳幼児が気を付けるべき離乳食の食事法もあわせてご覧ください。

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療育の相談ができる場所を示すイメージ

療育はどこで受けられる?利用までの流れ

療育を受ける場所は、大きく分けて「児童発達支援」の事業所と、医療機関に併設された「医療型」の施設です。まずは身近な相談窓口を知ることから始めましょう。

就学前のお子さんが通う中心が児童発達支援です。地域の児童発達支援センターや事業所で、遊びを通じた療育を受けられます。利用には「通所受給者証」が必要で、市区町村の窓口や相談支援事業所が申請を手伝ってくれます。医療的なケアが必要な場合は、リハビリを行う医療機関につながることもあります。事業所ごとに得意分野や雰囲気は異なるため、可能であれば見学や体験に足を運び、お子さんとの相性を確かめてから決めるのがおすすめです。通いやすさも長く続けるうえで大切な要素になります。手続きの全体像はダウン症児の支援制度〜教育・医療〜にまとめました。行政の案内としては、こども家庭庁の障害児支援のページ国立障害者リハビリテーションセンターも参考になります。どこに相談すればいいか分からないときは、まず市区町村の窓口か、出産した産院・小児科に聞いてみてください。

どのくらいの頻度で通う?個別支援計画とは

通う頻度は、お子さんの状態やご家庭の事情に合わせて決められます。「毎日通わなければならない」というものではありません。

週に1〜数回、事業所に通うスタイルが一般的です。事業所では、一人ひとりに合わせた個別支援計画が作られます。これは「今、どんな力を、どんな方法で伸ばしていくか」を専門職と保護者が一緒に決める設計図のようなもの。数か月ごとに見直しながら、お子さんの育ちに合わせて更新していきます。保護者の希望や困りごとを遠慮なく伝えることが、計画をより良いものにします。療育は「専門職に任せきり」ではなく、家庭と二人三脚で進めるもの。この感覚を持っておくと、日々の関わりにも安心感が生まれます。

家庭でできる関わり方

療育は施設だけのものではありません。むしろ、日々の暮らしのなかの関わりこそ、いちばんの療育になります。

ポイントは、低緊張のからだに合わせて「支えながら、少しだけ挑戦させる」こと。抱っこやおすわりの姿勢を安定させてあげると、お子さんは安心して周りを見て、手を伸ばせます。生活動作も、あせらず一つずつ。たとえば、着替えのときに袖に手を通すところだけ自分でやってもらう、食事で最後の一口だけスプーンを持たせてみる。最後の仕上げを本人に任せると、達成感が生まれやすくなります。歌やリズム遊びも、ことばとからだの両方を楽しく育てる身近な療育です。Xでダウン症のあるお子さんの成長を記録している@Masakinotitiさんは、「ドライヤーは冷風で近づけすぎない練習をしていた」「人の動作をよく見て、自分で同じことを試す」と、日々の小さな成長を綴っていました。私も外来でよく感じますが、こうした暮らしのなかの繰り返しこそ、着実に力を育てます。

もうひとつ大切なのが、「わからない・できない」を頭ごなしに捉えないこと。発達支援の講演を紹介していた@okada_masaaさんの投稿では、子どもの「わからない」を理解の糸口として捉える視点が語られていました。できないことを責めるのではなく、どこでつまずいているかを一緒に探す。その姿勢が、お子さんの安心につながります。安心できる大人がそばにいると感じられること。それが、新しいことに挑戦する意欲の源になります。

無理をさせない・比べない——療育で大切な心構え

療育を続けるうえで、いちばん大切なのは「他の子と比べない」ことです。発達の速さは一人ひとり違い、ダウン症のあるお子さんならなおさらです。

成長曲線や発達の目安は参考にはなりますが、それに追い立てられる必要はありません。昨日より今日、ほんの少しできることが増えた。その積み重ねを一緒に喜ぶことが、お子さんの意欲を育てます。療育に「やりすぎ」で無理をさせると、かえって嫌がってしまうこともあります。楽しく続けられる範囲で、というのが長続きの秘訣です。お子さんが笑顔で取り組めているか。それが、療育がうまくいっているかどうかのいちばんの目安になります。うまくいかない日があっても、それは失敗ではありません。発達には波があるもので、停滞したように見える時期のあとに、ぐんと伸びることもよくあります。長い目で、ゆっくり見守っていきましょう。療育で育てた力は、やがて就学という次のステージへとつながっていきます。学齢期の学びの選び方はダウン症のある子どもの就学と教育をご覧ください。妊娠中から生まれた後の見通しを知りたい方は出生前検査で分かるダウン症のリスク・確率・検査もどうぞ。

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よくある質問(FAQ)

療育について、ご家族からよくいただく質問にお答えします。始める前の不安を、少しでも軽くできればと思います。

ダウン症の療育はいつから始めればいいですか?

気づいたときが始めどきです。施設や発達の様子に応じて0歳から始められる場合もあります。開始が少し遅れても取り返しがつかないわけではないので、あせらず相談してください。

療育では具体的に何をしますか?

理学療法で運動の土台を、作業療法で手先と生活動作を、言語聴覚療法でことばと食べる力を支えます。これらを組み合わせ、遊びを通じてお子さんの力を伸ばします。

療育はどこで受けられますか?

就学前は児童発達支援センターや事業所が中心です。利用には通所受給者証が必要で、市区町村の窓口や相談支援事業所が申請を手伝ってくれます。

家庭でも療育のようなことはできますか?

できます。抱っこやおすわりの姿勢を安定させ、生活動作を一つずつ支えることが家庭での療育になります。暮らしのなかの繰り返しが着実に力を育てます。

他の子と発達を比べて落ち込んでしまいます。

発達の速さは一人ひとり違います。目安に追い立てられる必要はありません。昨日より今日できたことを一緒に喜ぶ関わりが、お子さんの意欲を育てます。

療育と就学はどうつながりますか?

療育で育てた運動・生活・ことばの力が、就学後の学びの土台になります。就学が近づいたら教育委員会への就学相談が始まります。詳しくは就学の記事をご覧ください。

まとめ

ダウン症のある子どもの療育は、「気づいたときが始めどき」。理学療法・作業療法・言語聴覚療法という3本柱を組み合わせ、児童発達支援などの場で、遊びを通じて力を伸ばしていきます。そして忘れてはならないのが、施設だけでなく家庭の暮らしそのものが療育になるということ。

他の子と比べず、あせらず、昨日より少しできたことを喜ぶ。その積み重ねが、やがて就学という次の一歩につながります。療育は、お子さんの力を伸ばすだけでなく、ご家族が同じ悩みを持つ仲間や専門職と出会う場でもあります。ひとりで頑張りすぎないこと。それも、長く続けるための大切なコツです。私たちヒロクリニックNIPTは、妊娠中のご相談から、生まれた後の育ちの見通しまで、ご家族に寄り添います。気になることがあれば、どうぞ、いつでもお気軽にご相談ください。


監修:岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、医学博士。国内でも数少ないラボディレクター資格を持ち。著書『妊娠したら最初に読んで欲しい本』。本記事は医療広告ガイドラインに配慮し、公的機関の情報を参照して作成しています。療育の内容・利用条件は施設や自治体により異なります。

ダウン症の療育とは、将来お子さんが自立した生活を営めるように、それぞれのお子さんの障がいや発達の特性に合わせたトレーニングを行うことです。

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医師監修 監修日:2022年2月1日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2022年2月1日
水田 俊 (医師・医学博士/ヒロクリニック岡山駅前院 院長)

日本小児科学会 小児科専門医/日本小児科学会認定 出生前コンサルト小児科医/小児科(NIPT・出生前診断)

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2022年2月1日
新田 啓三 (医師/ヒロクリニック札幌駅前院 院長)

日本小児科学会 小児科専門医/日本アレルギー学会 所属/小児科(NIPT・出生前診断)

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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