胎児ドック(胎児精密超音波検査)とは超音波による赤ちゃんの精密検査
妊娠はとても喜ばしいことですが、お母さんはお腹の赤ちゃんの健康状態を常に不安に思うことでしょう。
赤ちゃんの健康状態は妊婦健診でもチェックできますが、妊婦健診だけで21トリソミー(ダウン症候群)などの先天性異常を判断するのは、非常に難しいとされています。
赤ちゃんの健康状態は『出生前診断』でさらに詳しく調べることができ、そのうち超音波によるスクリーニング検査を『胎児ドック』と呼びます。
胎児ドックは、ほかに「胎児精密超音波検査」や「胎児超音波マーカー検査」「胎児超音波スクリーニング検査」、また「ベビードック」とも呼ばれています。
「超音波検査なら妊婦健診でもやるのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、胎児ドックの超音波検査は、通常の超音波検査よりも精度が高いのが特長です。
妊婦健診の超音波検査では白黒のぼやけた映像しか見えませんが、胎児ドックではより立体的かつ鮮明に赤ちゃんの形を確認できます。
先天性異常がある赤ちゃんは胎児期に形態異常が表れることも多いので、高い精度での検査が可能です。
胎児ドック(胎児精密超音波検査)でわかることや費用
胎児ドックでは、赤ちゃんが先天性異常を持つ可能性が分かります。
判断できるのはあくまで可能性であり確定診断ではありませんが、詳細な画像で精度の高い検査が可能です。
費用は約3万円~5万円の基本料金とあわせて、数千円~5万円程度の精密検査料がかかります。
胎児ドックに必要な費用は医療施設によって異なるため、事前に問い合わせを行いましょう。
胎児ドックの検査は、赤ちゃんの成長に応じておおよそ
- 初期:妊娠10週~13週
- 中期:妊娠18週~20週
- 後期:妊娠28週~30週
の3つに分かれています。病院によっては妊娠10週以下でも検査が可能です。
各時期の検査項目についてご紹介します。

【妊娠10週以下】妊娠6週~10週にわかること
出生前診断が受けられるのは早くても妊娠10週以降であることがほとんどですが、胎児ドックの場合、病院によっては妊娠10週以下でも検査が可能です。
赤ちゃんの体はまだまだ形になっていませんが、この段階でも形態異常が見つかることがあります。
ただ、妊娠10週以下で胎児ドックを行っている病院は多くはありませんので、早い段階で胎児ドックを受けたい方は、まずお近くの医療機関などで胎児ドックの受け付けや、検査可能な妊娠週数を確認しましょう。
【初期】妊娠10週~13週にわかること
胎児ドックの中でも特に染色体異常の検出率が高いのが、妊娠11週~13週の妊娠初期です。
染色体異常を持つ赤ちゃんは、妊娠初期に首の後ろや体にむくみが生じやすいという特徴があります。
通常の超音波検査では映像が粗く、よく見えないことも多いのですが、胎児ドックならハッキリとむくみを確認することが可能です。
臓器も徐々に作られていく段階ですが、筋肉や皮膚が未熟な初期では血液の流れもよく見ることができます。
へその緒や血管内の血液が逆流していると、染色体異常や心疾患の可能性が高いという判断が可能です。
【中期】妊娠18週~20週にわかること
妊娠18週~21週の中期は、より臓器の形成が進んでいく時期です。
首の後ろや体のむくみは目立たなくなってくるものの、鼻骨の形成や心臓の弁の動きなどから染色体異常の可能性を判断できます。
臓器や体の形がよりハッキリしてくるので、胎児の形態異常などの可能性も判別しやすくなります。
【後期】妊娠28週~30週にわかること
妊娠28週~30週の後期では、脳や顔面、心臓、脊椎、手足などの異常が確認できます。
検査項目は主に妊娠中期と同じですが、後期では中期に発達していなかった脳のしわがハッキリとしてきます。
先天的な脳の異常も確認しやすくなるため、中期には分からなかった検査項目を後期で追加とより安心です。
胎児ドック(胎児精密超音波検査)のメリット・デメリット
詳細な映像で赤ちゃんの健康状態を確認できる胎児ドックですが、デメリットもあるのでしょうか?
胎児ドックを受けるべきか悩んでいる方のために、胎児ドックのメリットとデメリットを分かりやすく解説します。
胎児ドック(胎児精密超音波検査)のメリット
胎児ドックのメリットは、以下の2点です。
- 子宮への侵襲がないので、流産や死産のリスクを高めることがない
- 赤ちゃんの姿を鮮明に確認することができる
出生前診断には、子宮の中にある羊水や絨毛を直接採取する『羊水検査』や『絨毛検査』といった方法があります。
いずれの検査も確定診断に用いられるほど精度は高い一方、子宮への侵襲によって流産や死産のリスクが高まるのがデメリットです。
一方の胎児ドックは、直接子宮を侵襲することがないため、流産や死産のリスクを高めずに検査ができます。
また、通常の超音波検査よりも格段にクリアな映像が見られるので、検査をしながら赤ちゃんのハッキリとした姿が見られるのも嬉しい点です。
胎児ドック(胎児精密超音波検査)のデメリット
胎児ドックのデメリットは、以下の2点です。
- NIPT(新型出生前診断)、羊水検査、絨毛検査に比べて精度が低い
- 確定診断はできない
先述した通り、胎児ドックはあくまで赤ちゃんが先天性異常を持つ可能性が高いかどうかを確認するスクリーニング検査であることから、胎児ドックを確定診断とすることはできません。
検査の精度も、羊水検査や絨毛検査、NIPT(新型出生前診断)の方が高いというデメリットもあります。
精度の高い検査結果を求める方は、羊水検査、絨毛検査、NIPT(新型出生前診断)といった検査方法を検討すると良いでしょう。
ほかの出生前診断との違い
出生前診断には、胎児ドック以外にも以下のような種類があります。
【非確定検査】
【確定検査】
胎児ドックとこれらの検査には、どのような違いがあるのでしょうか?
①母体血清マーカー検査
母体血清マーカー検査とは、トリプルマーカー、クアトロマーカー検査のことであり、お母さんの採血によって赤ちゃんが先天性異常を持つ可能性を判断するスクリーニング検査です。
赤ちゃんが先天性異常を持っていた場合に、お母さんの血中で増減する『α-フェトプロテイン』といった物質を検知します。
胎児ドックのように赤ちゃんの見た目を詳しく見ることはできませんが、採血のみという簡単な方法で検査が可能です。
②NIPT(新型出生前診断)
NIPT(新型出生前診断)とは、母体血清マーカー検査と同様、お母さんの採血だけで赤ちゃんの先天性異常の可能性がわかるスクリーニング検査です。
母体血清マーカー検査と大きく異なるのは、精度の高さと検査ができる時期の早さとされています。
NIPT(新型出生前診断)はダウン症候群の原因である21トリソミーへの感度が96.5~99.9%であるなど、非常に高い精度を誇ります。
また、母体血清マーカー検査は妊娠15週~20週しか検査ができない一方、NIPT(新型出生前診断)は妊娠10週から検査が可能です。
性染色体への感度も非常に高いので、早い段階から疾患の可能性や性別判定ができます。
③羊水検査
胎児は、子宮の中を満たす羊水というプールの中に浮かんでいます。
羊水検査とは、子宮内に針を刺してこの羊水を採取し、赤ちゃんの先天性異常の有無を判断する検査のことです。
羊水検査では先天性異常の確定診断ができるものの、子宮に直接針を刺すというリスクが伴います。
お母さんが21歳未満の場合、1/300~1/500の確率で流産に至るとも言われているので、十分検討が必要です。
④絨毛検査
赤ちゃんは、お腹の中にいる間は胎盤を通してお母さんとつながり、栄養を得ています。
その胎盤の一部が絨毛という組織で、絨毛検査とは子宮内に針を刺して絨毛を採取する検査方法です。
羊水検査と同様に先天性異常の確定診断が可能ですが、子宮内に針を指すため、赤ちゃんへのダメージが懸念されます。
1/100の確率で流産に至るとの報告もある検査です。
NIPT(新型出生前診断)で胎児ドック(胎児精密超音波検査)のデメリットをカバー
胎児ドックとは、妊婦健診などの一般的なエコー検査(超音波検査)と比べて、より詳しく胎児の状態を調べることができる検査のことです。妊婦健診で使用する超音波機器は赤ちゃんの状態を平面静止画像、縦✕横つまり2Dエコーによる検査となります。
一方、胎児ドックで使用される超音波機器は、縦✕横✕奥行の3Dエコーによる静止画像で赤ちゃんの状態を立体的に撮影することができます。また、より詳細な画像を求めるのであれば、縦✕横✕奥行✕時間軸の4Dエコーにより、胎児の様子を動画で確認することも可能とされています。

4Dエコーでも見つけられない病気はNIPT(新型出生前診断)で
胎児ドックによる4Dエコーでは、お腹の中で赤ちゃんが手足を動かす様子までも見ることができます。妊娠24週を過ぎた頃には、赤ちゃんの顔つきまで分かる優れた検査機器であるといえるでしょう。しかし、胎児ドックで先天性疾患のすべてを調べることはできません。形態的でない染色体異常症などは胎児ドックで見つけることは難しいとされています。
NIPT(新型出生前診断)は、お母さんの腕から採血を行うだけの検査となり、胎児ドックでは調べることのできない染色体異常による先天性疾患の陽性リスクの可能性を検出することが可能です。また、NIPT(新型出生前診断)は妊娠10週0日より行うことができるため、早期に赤ちゃんの染色体異常症による先天性疾患のリスクを知ることができる検査といえるでしょう。
NIPT(新型出生前診断)で赤ちゃんのためにできること
一般的に行われるNIPT(新型出生前診断)では、おもに21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー(エドワーズ症候群)・13トリソミー(パトウ症候群)を検出します。しかしヒロクリニックNIPTでは、お母さんとご家族の「知る権利」のため、1〜22番まである染色体の異常をすべてお伝えしております。
またヒロクリニックNIPTは、全染色体数とY染色体を除くすべての全常染色体全領域部分欠失や重複疾患を調べ、ご報告いたします。
、染色体や先天性疾患についてを詳細に調べたい方向けのプラン、そして様々なオプションをご用意しております。プランについてのご相談はヒロクリニックNIPTスタッフまで、ぜひご相談ください。
まとめ
胎児ドック(胎児精密超音波検査/胎児超音波マーカー検査/胎児超音波スクリーニング検査)は、詳細な超音波検査によって、赤ちゃんが先天性異常を持つ可能性がわかるスクリーニング検査です。
特に妊娠初期は染色体異常の特徴が表れやすく、高い精度で検査を行えると言えるでしょう。
一方で確定診断は難しく、同じ非確定診断の中でもNIPT(新型出生前診断)と比較すると精度が低いというのが胎児ドックのデメリットです。
出生前診断には複数の検査方法がありますので、赤ちゃんの健康状態を妊娠週数のいつ頃に、またどこまで知りたいのかなどを医師に相談のうえ、検討することが大切です。
【参考文献】
- 厚生労働省 –NIPT 等の出生前診断に関する専門委員会報告書(素案)
- 日本産科婦人科学会 – 染色体異常
- J-STAGE – 胎児心エコーの基本
Q&A
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Q胎児スクリーニングとはどのような検査ですか?胎児スクリーニングとは、妊娠中に胎児の先天異常や発育状況を早期に確認するための非侵襲的な検査です。主に超音波検査や血液検査を通じて、重大な異常の可能性を評価します。
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Qどの時期に胎児スクリーニングを受けるのが適切ですか?一般的には妊娠11~13週に「初期スクリーニング」、妊娠18~20週頃に「中期スクリーニング」として行われます。これらの時期に胎児の形態や臓器の発育状況を詳しく観察します。
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Q胎児スクリーニングでどのような異常がわかりますか?心臓や脳、脊椎、顔面、四肢などの構造的異常を中心に、胎児の成長遅延や染色体異常の兆候などを発見できる可能性があります。ただし、確定診断ではないため、必要に応じて追加検査が行われます。
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Q胎児スクリーニングは母体や胎児にリスクがありますか?通常の胎児スクリーニング(特に超音波検査)は非侵襲的でリスクはほとんどありません。安心して受けられる検査の一つです。
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Q胎児スクリーニングで異常が見つかった場合の対応は?異常が見つかった場合は、さらに詳しい精密検査やNIPT、確定診断(羊水検査など)を勧められる場合があります。医師とよく相談し、家族で話し合いながら今後の対応を検討します。
記事の監修者
岡 博史先生
【役職】
NIPT専門クリニック医学博士
ヒロクリニック統括院長
【資格】
平成8年 医師免許 取得
平成14年 慶應義塾大学医学博士号 取得
平成15年 皮膚科専門医 取得
平成29年 産業医 取得
【略歴】
平成8年 慶應義塾大学医学部 卒業
平成8年 慶應義塾大学医学部皮膚科学教室 入局
平成11年 川崎市立川崎病院総合心療内科 勤務
平成12年 川崎市立川崎病院皮膚科 勤務
平成14年 慶応義塾大学病院皮膚科 勤務
平成17年 城本クリニック 勤務
平成20年 ヒロクリニック開院・院長就任
平成21年 医療法人社団福美会 設立・理事長就任
【所属】
医療法人社団福美会
【SNS】
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