女性は赤ちゃんを妊娠・出産後、髪の毛が抜ける人もいます。出産後脱毛症や分娩後脱毛症とも呼ばれていますが、予備知識もなく産後の抜け毛が発生すれば、不安になる方もいるでしょう。このコラムでは、抜け毛が発生する時期・原因・対策などを紹介します。
この記事のまとめ
産後の抜け毛は、妊娠中に増えた女性ホルモンが出産後に急に減ることで髪が一気に休止期へ入る「分娩後脱毛症(休止期脱毛)」で、多くは一時的にとどまり1年前後で自然に回復します。産後2〜3か月頃から抜け始め、4〜6か月頃にピークを迎え、その後は少しずつ落ち着いていきます。原因は女性ホルモンの減少・睡眠不足・ストレス・栄養不足・育児の負担が重なることです。栄養や睡眠、頭皮ケア、ヘアスタイルの工夫で負担をやわらげられます。この記事では、時期・原因・対策と、皮膚科を受診する目安までをまとめました。
この記事でわかること
- 産後の抜け毛(分娩後脱毛症・休止期脱毛)が起こる仕組み
- 抜け始め・ピーク・回復までの時期の目安
- 抜け毛が起こる5つの原因と、栄養・睡眠・頭皮ケア・ヘアスタイルの対策
- 自然に治るものと、皮膚科の受診を考えたほうがよいケースの見分け方
産後の抜け毛とは?分娩後脱毛症の仕組み
産後の抜け毛とは、妊娠で増えたエストロゲンが出産後に急減し、成長期にとどまっていた髪がまとめて休止期へ移る「分娩後脱毛症(休止期脱毛)」のことです。病気ではなく、体の自然な変化のひとつです。
髪には、伸びる「成長期」、抜ける準備をする「退行期」、抜け落ちて休む「休止期」という周期があります。この周期を、ヘアサイクルと呼びます。ふだんは1日に50〜100本ほどが自然に抜けています。
妊娠中はエストロゲンが増え、本来なら抜けるはずの髪も成長期のまま引き止められます。おかげで妊娠中は髪が抜けにくく、むしろ増えたと感じる方もいます。ところが出産を終えると、ホルモンは一気にもとの水準へ戻ります。引き止められていた髪がそろって休止期に入り、数か月後にまとめて抜けはじめます。これが分娩後脱毛症の正体です。
だからこそ、産後の抜け毛は「髪が弱った」のではなく、妊娠中にため込んでいた分の帳尻が合っていくプロセスと考えられます。私は妊婦さんやママの話をうかがっていて、この仕組みを先に知っているかどうかで、不安の大きさがまるで違うと感じます。仕組みを知らずに急な抜け毛に直面すると、必要以上に落ち込んでしまいがちです。
なお、産後に抜けた髪は、そのまま生えてこないわけではありません。休止期を終えた毛穴からは、やがて新しい髪が生えてきます。時間はかかりますが、多くの方はもとの毛量へ戻っていきます。だから、一時的に地肌が目立っても、必要以上に悲観しないでください。今抜けている髪は、回復までの通過点にすぎません。
厚生労働省も、妊娠・出産期は体の状態が大きく変わる時期として、無理のない生活を呼びかけています。産後の体の変化と付き合うヒントは冷え対策・温活の記事もあわせてご覧ください。
産後の抜け毛が起こる時期の目安
産後の抜け毛は産後2〜3か月頃から始まり、4〜6か月頃にピークを迎え、多くは1年前後で自然に回復します。量や期間には個人差がありますが、大まかな流れを知っておくと落ち着いて向き合えます。
下の表は、時期ごとの抜け毛の状態と過ごし方の目安です。あくまで平均的な目安で、前後する方もいます。
| 時期 | 抜け毛の状態 | 過ごし方の目安 |
|---|---|---|
| 産後2〜3か月頃 | 抜け始める。手ぐしやシャンプーで抜け毛が増える | 仕組みを知り、栄養と睡眠を意識しはじめる |
| 産後4〜6か月頃 | ピーク。排水口や枕の髪が目立ちやすい | 頭皮ケアとヘアスタイルの工夫でしのぐ |
| 産後半年〜1年頃 | 徐々に落ち着き、短い新しい髪が生えてくる | 生えぎわのアホ毛は回復のサイン。無理に抜かない |
| 産後1年前後 | 多くは自然に回復し、もとのヘアサイクルへ | 1年過ぎても続く・地肌が目立つ場合は受診を検討 |
私自身、周囲のママたちに話を聞くと、抜け毛に気づくきっかけはほとんどが「シャンプー中に手につく髪の量」でした。実際、Xでも@jen1koさんが、美容師さんから産後3〜6か月頃に抜けると聞いていた通り、髪を洗うと手に抜け毛がつくようになったと書いていました。事前に時期の目安を聞いていたおかげで、慌てずに受け止められたそうです。知識は、こういう場面でお守りになります。

産後の抜け毛が起こる原因5選
産後の抜け毛のいちばんの原因はエストロゲンの減少で、そこに睡眠不足・ストレス・栄養不足・育児による負担が重なって抜け毛が強まります。ひとつずつ見ていきましょう。
1. 女性ホルモン(エストロゲン)の減少
最大の要因は、女性ホルモンであるエストロゲンの急な減少です。妊娠中に成長期のまま引き止められていた髪が、出産後にそろって休止期へ移り、まとめて抜けていきます。これはホルモンが正常に戻る過程で起こる自然な現象です。時間の経過とともに、ヘアサイクルは元のリズムを取り戻します。
2. 睡眠不足
髪は睡眠中に成長します。ところが夜間の授乳や夜泣きで、産後はまとまった睡眠がとりにくくなります。細切れの睡眠が続くと、髪を育てる力が落ちやすくなります。睡眠不足は、抜け毛だけでなく肌や気分にもひびきます。
3. ストレス
慣れない育児、体の回復途中の疲れ、生活リズムの激変。産後はストレスが積み重なりやすい時期です。強いストレスは血流や自律神経に影響し、頭皮に栄養が届きにくくなります。頑張りすぎず、頼れる人や制度に頼ることも立派な対策です。

4. 栄養不足
髪の主な材料は、たんぱく質です。つわりや偏食、産後の忙しさで食事が偏ると、髪をつくる材料が不足します。授乳中は栄養が母乳へも回るため、なおさら不足しやすい時期。極端な産後ダイエットは、抜け毛を悪化させかねません。まずは食べることを大切にしてください。
5. 育児による負担
付きっきりの育児で、自分のケアは後回しになりがちです。ゆっくり髪を洗う時間すらとりにくく、頭皮環境も乱れやすくなります。心身の負担が積み重なると、回復のペースもゆるやかになります。産前からの体づくりという視点では妊活中の食べ物・栄養の記事も参考になります。母子保健の基本情報はこども家庭庁 母子保健もご覧ください。
産後の抜け毛の対策
産後の抜け毛対策の柱は、栄養・睡眠・頭皮ケア・ヘアスタイルの工夫の4つで、どれも今日から無理なく始められます。抜け毛を止めるというより、回復を支え、見た目の負担を軽くする発想で取り組みましょう。
栄養:たんぱく質・鉄・亜鉛を意識する
髪の土台はたんぱく質です。肉・魚・卵・大豆製品を毎食に少しずつ取り入れてください。あわせて意識したいのが、鉄と亜鉛。産後は貧血になりやすく、鉄が不足すると髪にも影響します。亜鉛は髪の合成を助ける栄養素です。バランスのよい食事の基本は厚生労働省 栄養・食生活の情報が参考になります。
忙しくて食事が整わない日は、無理をしないでください。手軽なたんぱく源やサプリメントで補う日があってもかまいません。体重管理と栄養を両立させたい方は妊娠中の体重管理と献立の記事もヒントになります。
睡眠:細切れでも質を高める
まとまった睡眠が難しくても、質を上げる工夫はできます。赤ちゃんが寝たら一緒に横になる、寝る直前のスマホを控える、部屋を暗くする。短い時間でも深く眠れると、体の回復が進みます。周りに頼れる時間があれば、遠慮なく休んでください。
頭皮ケア:やさしく清潔に保つ
産後は肌質が変わり、それまでのシャンプーが合わなくなることがあります。洗浄力が強すぎると、頭皮が乾いて刺激になります。逆に洗えない日が続くと、皮脂や汚れで毛穴がつまります。刺激の少ないシャンプーで、やさしく清潔に保つのがコツです。
私は、頭皮ケアは「やりすぎない」ことが大切だと感じます。実際、Xでも@ai25101943さんが、ミノンの薬用シャンプーや頭皮ローションに切り替え、亜鉛や鉄剤、たんぱく質を意識したところ抜け毛が減ってきたと書いていました。頭皮への刺激をやわらげつつ、内側から栄養を補う。この合わせ技を実感していたのが印象的でした。ただし効き方には個人差があり、これはあくまで個人の感想です。特定の商品で必ず改善するとは限りません。

ヘアスタイル:分け目を変え、締めつけを避ける
見た目の負担は、髪型でずいぶん軽くできます。分け目をときどき変えると、地肌が目立ちにくくなります。生えぎわの短い髪は、前髪やパーマでなじませると気になりません。きつく結ぶと生えぎわに負担がかかるため、締めつけないまとめ方を選んでください。回復期の今だけの工夫と割り切ると、気持ちも軽くなります。
皮膚科の受診を考える目安
産後の抜け毛の多くは自然に回復しますが、1年以上続く・地肌が広く目立つ・円形に抜ける場合は、自己判断せず皮膚科へ相談してください。受診は特別なことではなく、安心のための選択肢のひとつです。
次のようなサインがあるときは、一度専門家に見てもらうと安心です。過度に不安になる必要はありませんが、放置せず相談する姿勢が大切です。
- 産後1年を過ぎても抜け毛が減らないとき
- 地肌が広く透けて見える、生えてくる気配が乏しいとき
- コインのように円形・部分的に抜けるとき(円形脱毛症が疑われます)
- 強いかゆみ・痛み・赤みなど、頭皮のトラブルを伴うとき
とくに円形に抜ける場合は、産後の抜け毛とは仕組みが異なることがあります。抜け毛の症状や治療については日本皮膚科学会の情報が参考になります。気になる症状が続くときは、我慢せず皮膚科を受診してください。
なお、産後の不安全般に関連して、妊娠中の心の負担を減らす選択肢としてNIPT(新型出生前診断)が話題にのぼることがあります。NIPTは13・18・21トリソミーなど対象の染色体を調べる非確定的検査で、結果を確定するには羊水検査などが必要です。ヒロクリニックNIPTでは、医師による遺伝カウンセリングを通じて、検査の性質を理解したうえで受けられます。気になることは、気軽にご相談ください。
よくある質問
産後の抜け毛について、よく寄せられる疑問をまとめました。参考にしてください。
Q. 産後の抜け毛はいつから始まりますか?
多くの方は産後2〜3か月頃から抜け始めます。4〜6か月頃にピークを迎え、その後は少しずつ落ち着いていきます。シャンプー中に手につく髪の量で気づく方が多いです。時期には個人差があります。
Q. 産後の抜け毛はいつまで続きますか?
多くは1年前後で自然に回復し、もとのヘアサイクルへ戻っていきます。生えぎわに短い髪が出てきたら回復のサインです。1年を過ぎても減らない場合は、皮膚科への相談を検討してください。
Q. 産後の抜け毛は予防できますか?
ホルモン変化による抜け毛そのものを止めるのは難しいです。ただ、たんぱく質・鉄・亜鉛を意識した食事、質のよい睡眠、やさしい頭皮ケアで負担をやわらげられます。回復を支える発想で取り組んでください。
Q. 授乳中でも抜け毛対策はできますか?
食事や睡眠、頭皮ケアといった生活面の対策は、授乳中でも取り入れられます。栄養は母乳にも回るため、しっかり食べることが大切です。育毛剤やサプリメントを使う場合は、授乳中でも使えるか事前に確認してください。
Q. 円形に髪が抜けるときはどうすればよいですか?
コインのように円形・部分的に抜ける場合は、産後の抜け毛とは仕組みが異なることがあります。円形脱毛症が疑われるため、自己判断せず皮膚科を受診してください。強いかゆみや痛みを伴うときも、早めの相談が安心です。
著者・監修
岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。
Q&A
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Q産後の抜け毛が起こらない人もいますか?産後の抜け毛は、妊娠・出産を経たほとんどの女性が経験する症状です。しかし、抜け毛の量や期間には個人差があるため、脱毛が発生していても気にならない方もいるでしょう。抜け毛の大きな原因として考えられるホルモンバランスの変化が少ないと、ヘアサイクルの乱れが小さく、抜け毛の症状も目立たなくなると考えられます。
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Q頭皮ケアの方法を知りたいです頭皮ケアを行う際は、頭皮に潤いを与えてくれるローションを使用して行いましょう。まず、手のひらを使って頭皮全体をほぐします。その後、指3本で下から上へ地肌を引き上げるようにします。最後に指先で頭の中央を押しましょう。頭皮の乾燥を防ぎ、血行を促進することで、抜け毛を軽減する効果が期待できます。
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Q抜け毛を目立たないようにする方法はありますか?抜け毛を目立たなくするためには、思い切ってヘアチェンジするのも一つの手段です。生え際や分け目の薄さが気になる方には、ショートヘアがおすすめ。分け目が目立ちにくいのはもちろん、髪を乾かす時間が短く済みます。
女性は赤ちゃんを妊娠・出産後、髪の毛が抜ける人もいます。出産後脱毛症や分娩後脱毛症とも呼ばれていますが、予備知識もなく産後の抜け毛が発生すれば、不安になる方もいるでしょう。このコラムでは、抜け毛が発生する時期・原因・対策などを紹介します。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

