つわりが起きる原因と期間・対処法を詳しく解説【医師監修】

悪阻

妊娠初期に多くの女性を悩ませるつわり。一般に安定期を迎えるあたりで落ち着くといわれていますが、いつ終わるのか、どうすれば楽になるのか気になるものです。この記事では、つわりが起きる原因や対処方法を詳しく解説します。

胎児の性別は
10週目でわかります

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つわりとは

つわりとは、妊娠初期に起こる吐き気や嘔吐、食欲不振などのことです。妊娠5週目頃から始まり、安定期である妊娠16週を迎える頃には症状が落ち着いてきます。多くの妊婦さんが経験するもので、つわりをきっかけに妊娠に気づく方も少なくありません。

代表的なつわりの症状

つわりといえば、吐き気や嘔吐の症状が代表的です。しかし、つわりは個人差が多く、そのほかにもさまざまな症状が知られています。

  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 倦怠感
  • よだれ過多
  • のどのつっかえ感
  • 強い眠気
  • においに敏感になる

つわりが起きる原因は解明されていない

多くの妊婦さんを悩ませる「つわり」。医学的には悪阻(おそ)といい、妊娠初期に起こる吐き気や嘔吐などの症状です。つわりは約50〜80%の妊婦さんに起こるといわれますが、その症状や、つわりの期間には個人差があります。

一般的に妊娠5週目ころから吐き気や嘔吐症状があらわれ、妊娠10週目あたりにもっとも辛い時期を迎えるとされています。その後、妊娠13週目までには、つわりの症状が落ち着き、ほとんどの妊婦さんが妊娠16週目には治まります。

妊娠により、つわりを引き起こす仕組みは解明されていません。しかし以下の理由が、つわりの原因とされています。

  • 妊娠により黄体ホルモン(プロゲステロン)が増え、体内にガスが溜まりやすくなるため、それが不快感や吐き気を引き起こす
  • 妊娠によって産生・増加するhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が脳にある嘔吐中枢を刺激するため
  • 妊娠中により体内のビタミンや栄養素が不足することで、代謝や血糖値などに影響を与えるため

とくにビタミン不足はつわりの症状が重くなるとの報告があり、米国ではビタミンB6を妊娠中に適切に摂取することを推奨されています。ビタミンB6には吐き気を抑える効果があるといわれ、妊娠中はとくに意識して摂取すると良いでしょう。

つわりの原因はホルモンや体内の栄養不足以外にも、妊娠による生活環境やメンタルの変化からくるストレスなどで自律神経が乱れてしまうことが挙げられます。

重篤なつわり妊娠悪阻とは

妊娠悪阻(にんしんおそ)とは、脱水症状をともなう重篤なつわりのことです。めまいや1日中の嘔吐などにより早産を引き起こすことも少なくありません。重いつわりとの境界が難しいとされていますが、血液検査や尿検査で異常があった際は、早期に点滴で水分と電解質、ビタミンB1、B6などの補給をおこないます。

妊娠悪阻は症状によっては腎臓や肝臓へダメージを与え、また肺塞栓症やウェルニッケ脳症といった合併症を引き起こす危険があります。激しいめまいや著しい体重減少、または水分もとれないような嘔吐が続く場合は、早めに担当医の診察を受けることが大切です。

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よくある症状別・つわりの対策法

つわりの種類は人それぞれですが、とくによく見られるのが次の3つです。

  • 食べづわり
  • においつわり
  • 吐きづわり

どれか一つだけ症状が出る方もいれば、いくつか組み合わさって出る方もいます。

食べづわり

食べづわりとは

食べづわりとは、空腹になると吐き気がするつわりのことです。

食べづわりの症状

食事をしてから時間が経ってきたころや、寝起きすぐのお腹が空いた状態のときに吐き気を催します。お腹が空いてくるにつれて吐き気が増すため、食べ物をちょこちょこ口に運んで対処する方が多いでしょう。

食べづわりの対策法

食べづわりの症状はお腹が空いてくると症状が悪化するため、空腹な状態をできるだけ作らないようにすることが大切です。ご飯をまとめて食べるのではなく、少量を何回かにわけて食べたり、飴やガムを食べたりすると和らぐでしょう。

食べたくないときはどうすれば良い?

お腹が空くと気持ち悪くなるけど、食べたら食べたで吐き気がするという方もいるかと思います。食べたくないのに気持ち悪くなるときは、飴やラムネ、チョコなどを少しずつ口に入れてみてください。ほんの少し口にするだけでも吐き気が和らぐことがあります。

おなかがすくときはどうすれば良い?

食べづわりの方はおなかがすくと吐き気が増してしまうため、つわりがあるうちはカロリーのことはあまり気にせず食べて問題ありません。吐き気を少しでも和らげ、体調を楽にすることを優先しましょう。

つわりを和らげる食べ物

飴やガム、グミやクラッカー、チョコレートなど、食べやすいものを少しずつ口に入れておくと食べづわりを和らげることができます。また、生姜もつわりを和らげられる食べ物として有名です。オーストラリアで行われた研究によると、生姜を摂取することで吐き気や嘔吐の症状が軽減されることがわかっています。

食べづわりの胎児への影響

つわりで食べられない日が続いていても、胎児の発育に影響はほとんどありません。なぜなら、妊娠16週(妊娠5か月)頃までは、卵黄嚢(らんおうのう)から栄養を補っているためです。

卵黄嚢とは妊娠4週頃にできるもので、赤ちゃんに栄養を送る働きをする働きをしています。胎盤ができるまではこの卵黄嚢から栄養を補給しているので、食べづわりによる胎児の影響は心配ありません。

胃もたれ、ムカムカがストレスになってしまう?

つわりによって胃もたれやムカムカが続き、それをストレスに感じてしまう方もいるでしょう。毎日ころころと食べられるものが変わり、自分の体なのに自分のものでないような状況に不安を抱える方も多いはずです。

つわりの原因ははっきりとわかっていない部分もありますが、ストレスによる影響もあるといわれています。好きな曲を聴いたり、少し遠くの景色を眺めたりしてストレスを溜め込まないようにしてみてください。

食べ過ぎて太ってしまう場合

空腹になると気持ち悪くなってしまうため、摂取カロリーが増えて太る方もいます。妊娠初期の体重増加は3kg程度までに収められるとよいとされているので、この範囲内なら気にしすぎる必要はありません。

とはいえ、過度な体重増加は巨大児になるリスクがあります。体重が気になる方は、ガムを噛んだりカロリーオフのゼリーを食べたりして摂取カロリーが増えすぎないようにするとよいでしょう。

胃の痛みがひどい場合は医者に相談を

なかには、胃の痛みが強くて食事を思うように摂れなくなる方もいます。食事はよく噛んで食べ、よく煮込んだ野菜やおかゆなど胃に優しい食べ物を摂るようにしてみてください。どうしてもつらいときは、産婦人科で相談しましょう。妊娠中でも服用できる胃薬を処方してもらえます。

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においつわりとは

においつわりとは、特定のにおいをかぐことで気持ち悪くなってしまうつわりのことです。

においつわりの症状

ご飯が炊けるにおいやスーパーの鮮魚コーナーのにおい、柔軟剤のにおいなどをかぐことで吐き気を催します。気持ち悪くなるだけで吐かない方もいれば、においをかいだことで吐いてしまう方もいるでしょう。

妊娠中はにおいに敏感になってしまうため、妊娠前にはまったく気にならなかったにおいでも気持ち悪くなってしまうのです。

においつわりの対策法

一番の対策方法は、においが発生する場所を避けることです。難しい場合はハンカチで鼻をおおったりマスクをつけたりすると少し楽になるでしょう。

においつわりの胎児への影響

においつわりに関しても、胎児に大きな影響を与える心配はありません。食べられるものを食べていれば大丈夫です。

吐きづわりとは

吐きづわりとは、食べると気持ち悪くなり吐いてしまうつわりのことです。

吐きづわりの症状

食事を摂ると吐いてしまうのが代表的な症状です。食事を摂ったときに限らず、常に吐き気があり吐いてしまう場合もあります。

吐きづわりの対策法

吐き気があるときにむりして食事を摂る必要はありません。炭酸水や野菜スープ、イオン飲料などで最低限の水分補給を心がけます。産婦人科で吐き気止めを処方してもらえることもあるので、相談してみるのもいいでしょう。

楽になる姿勢をとろう

横になると楽になる方もいれば、座っているほうが楽だという方もいます。姿勢を変えることで吐き気が和らぐことがあるので、楽な姿勢を見つけてみてください。

吐き気はあるのに吐けないときは

吐き気はあるのに吐けないのもつらいものです。水を多めに飲んだり、うどんやゼリー、果物など吐きやすいものを食べるように工夫してみてください。

吐きづわりの胎児への影響

吐きづわりでほとんど食事が摂れていないと、赤ちゃんに栄養が届いているか心配になってしまうでしょう。しかし胎盤ができる頃まで赤ちゃんは卵黄嚢から栄養をもらっているため、食べられなくても大きな影響は出ないといわれています。

吐いてしまって痩せる場合

吐いて痩せている場合、まず気をつけたいのが脱水症状です。水分も摂れないくらい吐き気がひどい場合は、産婦人科で点滴をしてもらうのも検討しましょう。口が乾いたり皮膚が乾燥したりしている場合は脱水を起こしているかもしれません。

吐いていないのに痩せる場合

吐き気があるだけで吐いていない場合でも、食事を摂るのが難しく痩せてしまうことがあります。体重が増えず痩せたからといって胎児に影響が出るわけではありません。まずは水分の摂取を心がけ、脱水症状を起こしたり著しく体力が低下したりしている場合は産婦人科を受診しましょう。

下痢がある場合

下痢が続くと、脱水症状を起こす可能性があります。水分が摂れず口の渇きや皮膚の乾燥が見られる場合は、産婦人科を受診して相談してみてください。

つらい、苦しいつわりに、時間帯は関係する?

人によっては、時間帯によってつわりの波が来る場合があります。つわりは英語で「Morning sickness」ということから、朝に症状がつらくなる方が多いようです。ただし、波が来る時間帯は人によって違います。お昼につらくなる方もいれば、夕方から夜にかけて波のピークが来る方もいることが特徴です。

つわりの期間はいつから始まる?ピークは?

妊娠中の方にとって、つらいつわりがいつピークを迎えるのかはとても気になるところでしょう。

つわりが始まるのは妊娠5週目あたりから

一般につわりが始まるのは妊娠5週目頃からといわれています。ちょうど月経が遅れていることに気づき始めるくらいの時期です。ただし、つわりは個人差が大きいため妊娠8週目頃から始まる方もいれば、まったくない方もいます。

つわりのピークは妊娠8~10週目あたり

つわりがピークとなるのは、一般に妊娠8~10週目頃です。この時期になると、つわりの原因ともいわれているhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の分泌量がピークになるため、症状が重くなりやすい傾向にあります。

食べづわりのピーク

食べづわりのピークも妊娠8~10週目頃です。ピークを超えると、少しずつ吐き気が和らいでいき、徐々につわりが終わりに向かいます。

においづわりのピーク

においづわりも同様にピークは妊娠8~10週目頃です。しかしなかには、「産むまでにおいがダメだった」「産んだ後もしばらくは苦手なにおいがあった」という方もいます。

吐きづわりのピーク

吐きづわりも妊娠8~10週目あたりでピークを迎えることが特徴です。ピークを迎えると徐々に落ち着き、安定期に入るころにはだいぶ症状が和らいでいる方が多いでしょう。

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つわりがあると検査をしに足を運ぶのが難しいかもしれませんが、不安要素を一つでも取り除きたい方は検討してみるのもよいでしょう。

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旦那さんができること

においが強いものは避け、ご飯を代わりに用意したり洗濯物を干したりなど、できることをしてあげてください。つわりの症状は人によって大きく違うので、何をしてほしいか、何をしてほしくないのかをパートナーに確認することから始めましょう。

食べられそうなものを買ってきたり、お風呂に入れないときは体を拭いてあげたりと、2人で協力してつわりを乗り切ることが大切です。

つわり期間の服装

妊娠中は感覚過敏になることが多くあります。妊娠初期でお腹の膨らみが目立たない場合も、服やベルトの締め付けにより気分が悪くなることも。妊娠中、とくにつわりの辛い時期は肌触りの良い、ゆったりとした服装を心がけましょう。

つわり期間の過ごし方

つわりは個人差があります。吐き気や嘔吐が少なく、つわりの軽い妊婦さんも妊娠期間は体内環境が大きく変化しています。適度に身体を動かしストレスなく過ごすことが大切です。

つわりが重い妊婦さんは無理に食事をする必要はありません。通常のつわりであれば、お腹の赤ちゃんに影響を与えることは少ないので、食べられないことをストレスに感じる必要はありません。つわりの軽い妊婦さんも、重い妊婦さんも、つわりには個人差と終わりがあることを意識しながら、まずは心穏やかに過ごしましょう。

まとめ

つわりが起きるのは、妊娠によって増える黄体ホルモンやhCGの影響だといわれています。しかし、はっきりとした理由はまだわかっていません。一般に妊娠5週目頃から始まることが多く、8~10週目あたりでピークを迎えて徐々に和らいでいきます。

食べづわりの場合は食事を少量にわけたりガムを噛んだりすることで吐き気が落ち着きやすいでしょう。においつわりは、においが気になる場所を避けたり、ハンカチやマスクでにおいを遮断したりしてみてください。吐きづわりは炭酸水やイオン飲料など、最低限の水分は摂るようにしましょう。

食べたいもの、食べられるものを用意してあげるのも大きな助けとなります。

つわりを乗り越えるにはパートナーの協力も不可欠です。終わりが見えないつわりはつらいものですが、うまく対処して乗り切りましょう。

胎児の性別は10週目でわかる

妊娠初期に多くの女性を悩ませるつわり。一般に安定期を迎えるあたりで落ち着くといわれていますが、いつ終わるのか、どうすれば楽になるのか気になるものです。この記事では、つわりが起きる原因や対処方法を詳しく解説します。

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

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記事の監修者


川野 俊昭先生

川野 俊昭先生

ヒロクリニック博多駅前院 院長
日本産科婦人科学会専門医

産婦人科医として25年以上、主に九州で妊婦さんや出産に向き合ってきた。経験を活かしてヒロクリニック博多駅前院の院長としてNIPT(新型出生前診断)をより一般的な検査へと牽引すべく日々啓発に努めている。

略歴

1995年 九州大学 医学部卒業
1995年 九州厚生年金病院 産婦人科
1996年 九州大学医学部付属病院 産婦人科
1996年 佐世保共済病院 産婦人科
1997年 大分市郡医師会立アルメイダ病院 産婦人科
1998年 宮崎県立宮崎病院 産婦人科 副医長
2003年 慈恵病院 産婦人科 医長
2007年 日本赤十字社熊本健康管理センター診療部 副部長
2018年 桜十字福岡病院 婦人科
2020年 ヒロクリニック博多駅前院 院長

資格

日本産科婦人科学会専門医
検診マンモグラフィ読影認定医
日本スポーツ協会公認 スポーツドクター
厚生労働省認定臨床研修指導医
日本抗加齢医学会専門医

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