超音波検査で赤ちゃんの手足のかたちを指摘され、裂手裂足という言葉を聞かれたかもしれません。
結論からお伝えします。裂手裂足奇形1型(SHFM1)は、7番染色体長腕21.3(7q21.3)にあるDLX5・DLX6という遺伝子のはたらきが乱れることで、手や足の中央側の指(趾)がつくられにくくなる先天性の疾患です。知的発達は保たれる方が多く、一方で難聴を伴うことがある点が見落とされやすいところです。
この記事では、手足の所見だけで判断しないために知っておきたいこと、原因、遺伝の伝わり方、そして出生前診断との関係を整理します。
💡 この記事でわかること
- 裂手裂足奇形がどのような状態なのか
- 1型(SHFM1)と他の型との違い
- 難聴を伴うことがあり、聴力検査が重要なこと
- 「親に症状がなくても受け継がれることがある」仕組み(浸透率)
- 出生前診断・NIPTとの関係
- 確定診断と、治療・支援の考え方
1. 裂手裂足奇形とは
手や足の中央側(中指・薬指のあたり)の指が欠けたり、指と指の間が深く切れ込んだりする先天性の状態です。ロブスターの爪のような形になることから、かつては別の呼び名も使われていました。片手だけのこともあれば、四肢に及ぶこともあります。
裂手裂足奇形の頻度は、全体で出生8,500〜25,000人に1人と報告されています。原因となる領域は複数知られており、番号で分けられています。当院では裂手・裂足症3型(SHFM3)についても解説しています。
2. 1型(SHFM1)の原因
7番染色体長腕21.3(7q21.3)の変化によって起こります。この領域にあるDLX5・DLX6という遺伝子が、手足の形づくりに関わっています。
特徴的なのは、遺伝子そのものが壊れていなくても発症しうることです。DLX5・DLX6の働きは、離れた場所にあるスイッチ(エンハンサー)によって調節されています。そのスイッチの側が欠けたり位置がずれたりするだけでも、遺伝子が正しく働かなくなります。そのため、欠失の範囲がDLX5・DLX6を含んでいなくても、この病気が起こることがあります。
3. 手足以外に気をつけたいこと
もっとも重要なのは聴力です。裂手裂足奇形の患者さんのおよそ35%に感音難聴が認められると報告されています。手足の所見に目が向きがちですが、難聴は早く見つけるほど言葉の発達を支えやすくなります。
- 感音難聴:新生児聴覚スクリーニングを必ず受け、その後も定期的に確認します
- 発達の遅れ・知的障害:欠失の範囲が広い場合に伴うことがあります
- 頭蓋顔面の特徴:報告されています
手足の形だけを見て「それ以外は大丈夫」と考えないことが、この病気では大切です。
4. 遺伝の伝わり方|親に症状がなくても伝わることがある
常染色体顕性(優性)遺伝の形をとります。ただしこの病気では、浸透率が不完全で表現度に幅があることが知られています。
言い換えると、同じ変化を持っていても症状がまったく出ない方がいて、その方から次の世代に伝わることがあります。また、伝わった場合でも手足の症状の重さは家族の中でも一人ひとり違います。
「家族に誰もいないから偶発的なもの」とは限りません。ご両親の検査を行うことで、次のお子さまへの見通しが立てやすくなります。臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングをご検討ください。
5. 出生前診断・NIPTとの関係
手足の形の異常は、妊娠中の超音波検査で気づかれることがあります。これがもっとも一般的な入口です。
一方NIPTでは、標準的な検査の対象に7q21.3は含まれません。また原因が「遺伝子そのものではなくスイッチの位置の変化」である場合、コピー数を測る検査では捉えられないこともあります。超音波で指摘があった場合の精査は、羊水検査による染色体マイクロアレイ検査(CMA)が中心になります。
NIPTの対象範囲は検査プランによって異なります。迷われる場合はプラン診断もご利用ください。
6. 治療と支援
- 手足の治療:形成外科・整形外科が中心です。にぎる・つまむといった機能を優先して、時期を見ながら手術や装具を検討します
- 聴力:難聴があれば補聴器や療育を早期に始めます
- 発達支援:必要に応じて理学療法・作業療法・言語聴覚療法を組み合わせます
7番染色体の他の疾患については、7番染色体長腕欠失症候群や7q21-q32欠失症候群もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 知的障害を伴いますか。
多くの方で知的発達は保たれます。ただし欠失の範囲が広い場合には、発達の遅れを伴うことがあります。
Q. 耳の検査は必要ですか。
必要です。裂手裂足奇形ではおよそ35%に感音難聴が報告されています。新生児聴覚スクリーニングとその後の定期的な確認をお勧めします。
Q. 親に症状がありません。次の子も大丈夫ですか。
そうとは限りません。この病気は浸透率が不完全で、同じ変化を持っていても症状が出ない方がいます。ご両親の検査と遺伝カウンセリングをご検討ください。
Q. NIPTでわかりますか。
標準的なNIPTの対象には7q21.3は含まれません。妊娠中は超音波検査での手足の所見が入口になり、精査は羊水検査による染色体マイクロアレイ検査が中心です。
監修:岡博史(おか ひろし) / 医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、医学博士。国内でも数少ないラボディレクター資格を保有しています。本記事は医療広告ガイドラインに配慮し、OMIMほか公的機関・学会情報および査読済みの学術論文を参照して作成しています。記載の頻度・数値は文献により幅があり、診断・治療の最終判断は担当医にご相談ください。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

