流産は妊婦にとってつらい出来事の一つです。授かった命をなくすことは精神的にも大きなダメージがあるでしょう。流産は起こらないのが一番ですが、万が一発生してしまった時のショックを軽減させるためにも、症状や原因について理解しておくことが大切です。
化学流産とは、妊娠検査薬では陽性が出たものの、超音波で胎嚢が確認される前のごく初期で妊娠が終わることです。医学的には流産の回数に含めないことが多く、珍しいことではありません。
この記事でわかること
妊娠検査薬にうっすらと陽性の線が出て、そのあと月経のような出血が来る。この経験を「化学流産」と呼びます。とてもつらく、心細い出来事です。まず知っていただきたいのは、多くの化学流産は誰のせいでもないという事実です。
この記事では、化学流産の原因・時期・その後の過ごし方を、当事者の気持ちに寄り添いながら整理します。不安をあおるためではなく、正しく知って少し肩の力を抜いていただくための内容です。読み進めるなかで、ご自身を責める気持ちが少しでもやわらげば幸いです。
化学流産とは?
化学流産とは、妊娠検査薬は陽性でも、超音波で胎嚢が確認される前に妊娠が続かず、月経のような出血で終わる、ごく初期の現象です。「化学的妊娠」とも呼ばれます。
妊娠検査薬は、妊娠すると分泌されるhCGというホルモンに反応します。着床が始まるとhCGが出るため、検査薬は陽性を示します。ところが、その後に妊娠が継続しないと、hCGは下がっていきます。
胎嚢は、妊娠5〜6週ごろに超音波でようやく見えてきます。化学流産は、この胎嚢が確認できる前の段階で終わってしまう状態を指します。医学的には「流産」に数えないこともある、超初期のできごとです。
言葉の響きから「重い流産」を想像して、強く落ち込む方もいます。けれど化学流産は、妊娠のごく初期に自然に起こる現象の一つです。予定日どおりに月経が来たと感じるだけで、気づかず過ごす方もたくさんいます。まずは、そう受けとめていただいて大丈夫です。
出血が生理とよく似ているため、妊娠に気づかないまま過ぎることもあります。腹痛や体調の変化がほとんどない方も少なくありません。着床のサインについては、着床のサインを解説した記事もあわせてご覧ください。
流産の種類と概要
流産にはいくつかの種類があり、化学流産はそのなかでも最も早い時期に起こるものです。種類を知っておくと、ご自身の状況を落ち着いて理解しやすくなります。
流産は、妊娠22週より前に妊娠が続かなくなった状態の総称です。妊娠のどの時期か、どのような経過かによって呼び方が分かれます。主な種類を表に整理しました。
| 種類 | おおまかな時期 | 特徴 |
|---|---|---|
| 化学流産 | 妊娠4〜5週ごろ | 胎嚢が確認される前。月経のような出血で終わる |
| 稽留流産 | 妊娠初期 | 胎児の成長が止まるが、出血や腹痛の自覚が少ない状態 |
| 進行流産 | 妊娠初期 | 出血や腹痛があり、流産が進んでいる状態 |
| 切迫流産 | 妊娠初期〜中期 | 出血などがあるが、妊娠継続の可能性が残っている状態 |
化学流産は、この中で最も早い段階にあたります。ほかの流産と比べても、身体への負担や自覚症状が軽いことが多いといえます。流産全体のくわしい分類は、公益社団法人 日本産科婦人科学会の「流産・切迫流産」の解説も参考になります。
化学流産が起こる主な原因
化学流産の多くは、赤ちゃんの染色体の偶然の変化が原因であり、お母さんの日常の行動が招いたものではありません。ここは、何よりも先にお伝えしたい点です。
流産は、全妊娠の約15%前後で起こるとされています。そして妊娠初期の流産の多くは、受精卵の染色体が偶然うまく組み合わさらなかったことによります。これは、精子や卵子ができる過程や受精のときに、偶発的に起こりえる現象です。
お伝えしたいのは、あなたのせいではありませんという一点です。仕事を続けたこと、軽い運動をしたこと、あの日の食事。どれも化学流産の原因にはなりません。ご自身を責める必要は、まったくありません。
染色体の偶然の変化は、両親のどちらかに問題があることを意味しません。健康な人にも自然に起こります。ですから「自分の身体がいけないのでは」と思い詰めないでください。

編集部がご相談を受けるなかで感じるのは、多くの方が「自分が何かしたせいだ」と抱え込んでしまうことです。けれど、その思い込みは事実と違います。ホルモンや子宮の状態が関わることもありますが、それも「気をつけていれば防げた」という種類のものではありません。
不安ななかで前を向こうとしている方もいます。Xでも@yuuuuutamagoさんは、妊娠5〜6週で胎嚢がまだ見えず化学流産の可能性を告げられたものの、医師から異所性妊娠の心配は低いと説明されて少し安心し、まだ希望を持っていると綴っています。同じ不安のなかにいる方に、そっと寄り添うような言葉でした。
化学流産が起こりやすい時期
化学流産は、妊娠のごく初期、おおよそ妊娠4〜5週ごろに起こりやすいとされています。妊娠検査薬が反応してから、胎嚢が見える前までの短い期間です。
妊娠検査薬が正しく反応するのは、一般に生理予定日を1週間過ぎたころ、妊娠5週前後からです。一方、胎嚢が超音波で見えるのは妊娠5〜6週以降になります。この「陽性は出るが、まだ胎嚢は見えない」時期に、化学流産は起こります。
この時期は、身体のサインがわかりにくいのも特徴です。妊娠に気づく前後の体調変化については、妊娠超初期症状の記事もご覧ください。生理予定日前後のそわそわした気持ちの過ごし方は、そわそわ期の過ごし方の記事が参考になります。
妊娠検査薬を予定より早く使うと、化学流産を知って気持ちが揺れることもあります。使う時期に、絶対の正解はありません。早く知りたい方もいれば、胎嚢が見えるまで待ちたい方もいます。ご自身の心が落ち着く方を選んでください。どちらの選び方も、間違いではありません。
化学流産は繰り返しやすい?
一度の化学流産が、次の妊娠に影響することはほとんどありません。多くの方は、その後に妊娠・出産へと進んでいます。

化学流産は珍しいことではなく、妊娠に気づかないうちに経験している方も多いといわれます。ですから、一度あったからといって「体質だ」と決めつけないでください。むしろ、妊娠が成立する力があるあらわれと受けとめる方もいます。
気にかけていただきたいのは、流産を何度か繰り返す場合です。2回以上の流産を反復流産、3回以上を習慣流産と呼びます。この場合は、不育症の可能性を考えて専門的な検査を検討することがあります。
不育症は、原因を調べて対応することで妊娠・出産につながるケースも多く報告されています。気になるときは、一人で悩まず産婦人科に相談してください。女性の健康については、公益社団法人 日本産婦人科医会の情報発信も役立ちます。
「また繰り返すかもしれない」という不安は、次の妊娠を素直に喜べなくさせることがあります。その気持ちは、とても自然なものです。無理に前向きになろうとしなくて構いません。検査や相談は、その不安に一つずつ根拠を与えて、心を軽くするための手段です。焦らず、あなたのペースで進めてください。
次の妊娠を、慎重に大切に過ごしている方もいます。Xでは@sinjunotamagoさんが、一度目の妊娠が化学流産だったため、二度目は胎嚢が確認できるまで身体を気づかいながら静かに過ごしている、と綴っていました。同じ経験をした方にとって、共感できる時間の過ごし方だと感じます。
心と身体のためにできること
いま一番にしていただきたいのは、無理をせず十分に休み、つらい気持ちを一人で抱え込まないことです。「予防」よりも先に、ご自身をいたわってください。
できることを、いくつかの視点で整理しました。どれも「必ずやらねばならない」ものではありません。今の自分にできそうなものから、少しずつで大丈夫です。
まずは十分に休む
身体の回復と同じくらい、心の回復にも時間がかかります。悲しいと感じるのは自然なことです。眠れない、涙が出るといった状態が続くときは、我慢せず受診してください。こども家庭庁の母子保健の情報にも相談先の案内があります。
気持ちを一人で抱えない
パートナーや家族、信頼できる人に話すだけでも、心は少し軽くなります。話しづらいときは、医療機関のカウンセリングという選択肢もあります。私たちが取材のなかで感じたのは、「言葉にできた」ことが回復の第一歩になる方が多いという事実でした。
次の妊娠に向けて生活を整える
気持ちが落ち着いてきたら、睡眠・食事・軽い運動といった土台を整えていきましょう。無理な自己管理は逆効果です。体調のリズムをつかむには、基礎体温の記事も参考になります。ここでの目的は「繰り返さないため」ではなく、あなたが心地よく過ごすためです。
気になる症状は受診する
出血が長引く、強い腹痛がある、発熱がある。こうしたときは、早めに産婦人科を受診してください。自己判断で様子を見すぎないことが、身体を守ることにつながります。
検査内容や費用に迷ったら、まずは無料でご相談ください。
LINEで無料相談する出生前診断(NIPT)という選択肢
NIPTは胎児の染色体の状態を早い時期に知るための非確定的検査であり、流産を防ぐ検査ではありません。ここは、誠実にお伝えしておきたい点です。

NIPTは、妊婦さんの採血で行う検査です。主に13・18・21トリソミーなど、対象となる染色体疾患の可能性を調べます。あくまで可能性を示す非確定的な検査で、確定には別の検査が必要です。
大切なのは、NIPTを受けても化学流産や流産そのものを予防できるわけではない、という点です。不安な時期に過度な期待を寄せてしまわないよう、検査でわかることとわからないことを、正しく理解してください。染色体の変化とNIPTのくわしい関係は、染色体の変化とNIPTの記事で解説しています。
それでも、赤ちゃんの状態を早く知り、心の準備や相談の時間を持ちたいと考える方にとっては、意味のある選択肢です。受けるかどうかは、ご夫婦の価値観で決めていただくものです。迷うときは、専門スタッフに相談してください。
ヒロクリニックNIPTは年齢制限なし・紹介状不要。心拍確認後の早い時期から受けられます。
NIPTのご予約はこちらよくある質問
化学流産について、多くの方が抱く疑問と答えをまとめました。不安を少しでも軽くする手がかりにしてください。
化学流産は流産にカウントされますか?
胎嚢が確認される前に終わるため、医学的には一般的な流産に数えないことが多いです。反復流産や習慣流産の回数にも、通常は含めないと考えられています。ご不安なときは、主治医に確認してください。
化学流産のあと、生理はいつ来ますか?
個人差はありますが、化学流産のあとは、その出血が生理のように扱われ、次の周期に戻っていくことが多いです。数週間しても生理が来ない、出血が長引くといった場合は、受診してください。
自分のせいで化学流産になったのでしょうか?
いいえ、あなたのせいではありません。妊娠初期の多くは、赤ちゃんの染色体の偶然の変化によって起こります。仕事や運動、食事などの日常が原因になることは、ほとんどありません。どうかご自身を責めないでください。
化学流産を繰り返すのはなぜですか?
多くは偶然が重なったものですが、流産を2回以上繰り返す場合は、不育症の可能性を考えて検査を検討することがあります。原因がわかれば対応できるケースもあります。気になるときは産婦人科に相談してください。
NIPTを受ければ流産は防げますか?
NIPTは流産を防ぐ検査ではありません。胎児の染色体の状態を早い時期に知るための非確定的な検査です。防げるものと誤解しないよう、目的を正しく理解したうえでご検討ください。
監修者
岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・ラボディレクター(検査部門の統括責任者)
慶應義塾大学医学部卒業後、日本とアメリカの医師国家試験に合格。臨床研修後2年で医学博士を取得。日本に20人ほどしかいないラボディレクター資格を保有し、て精度の高いNIPTの提供に取り組んでいます。著書『妊娠したら最初に読んで欲しい本』。
出生前診断(NIPT)について相談したい方は、ヒロクリニックNIPTの無料カウンセリングをご利用ください。国内検査・産婦人科医対応で、妊娠10週ごろから受けられます。
関連記事
Q&A
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Q化学流産で妊娠検査薬が陽性反応になるのはなぜ?妊娠検査薬が陽性を示すのは、受精卵の着床によって分泌され始めるhCGホルモンに反応するためです。hCGホルモンの分泌が一定量以上になると、陽性反応が出る仕組みです。化学流産は妊娠初期とはいえ、一度着床は完了しています。そのため、妊娠検査薬の感度や検査の時期によっては陽性反応が出るケースがあります。
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Q化学流産は治療できますか?化学流産は基本的に、治療手術などは行わず経過観察となります。しかし、化学流産を3回以上繰り返してしまった場合は、何かしらの原因があると考えられるため、一度病院を受診し、医師に相談してみるとよいでしょう。
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Q化学流産後は妊娠できますか?化学流産が起こった後も、一般的に生理は訪れます。そのため、化学流産になった後も妊娠は可能です。化学流産が原因で妊娠しにくくなることはありません。妊活中の方はあきらめる必要はなく、これまで通り妊活を進めましょう。
流産は妊婦にとってつらい出来事の一つです。授かった命をなくすことは精神的にも大きなダメージがあるでしょう。流産は起こらないのが一番ですが、万が一発生してしまった時のショックを軽減させるためにも、症状や原因について理解しておくことが大切です。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
- Nybo Andersen AM, Wohlfahrt J, Christens P, Olsen J, Melbye M. Maternal age and fetal loss: population based register linkage study. BMJ. 2000 Jun 24;320(7251):1708-1712.
- 日本産科婦人科学会, 日本産婦人科医会. 産婦人科診療ガイドライン―産科編2020. 東京: 日本産科婦人科学会; 2020.
- 日本産科婦人科学会. 流産・切迫流産 [Internet]. 東京: 日本産科婦人科学会; [cited 2023]. Available from: https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=4

