この記事のまとめ
分裂手足奇形3型(SHFM3)は、手や足の中央にある指や骨がうまく育たない先天的な形態異常で、10番染色体長腕(10q24)の重複がおもな原因と考えられています。手足の中央がV字に裂けたり、指の数が足りなかったりする特徴があり、重さには大きな幅があります。診断は出生前の超音波や、生まれたあとの染色体マイクロアレイ・遺伝子検査で行われます。10q24の重複のような染色体の部分的な変化は、NIPT(新型出生前診断)が主に調べる13・18・21トリソミーには含まれません。確定診断は羊水検査や絨毛検査に染色体マイクロアレイを組み合わせます。気になることがあれば、自己判断せず産婦人科や遺伝カウンセリングで相談してください。
この記事でわかること
- 分裂手足奇形(SHFM・裂手裂足)とは何か、SHFM3はどのタイプか
- 10番染色体長腕(10q24)の重複と、関わる遺伝子のしくみ
- 主な症状・重症度の幅と、診断・治療・管理の流れ
- NIPTで分かること・分からないことと、確定検査との違い
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分裂手足奇形(SHFM・裂手裂足)とは
分裂手足奇形は、手や足の中央部分にある指や骨が欠けたり裂けたりする、まれな先天的な形態異常です。裂手裂足とも呼ばれ、英語ではSHFMと略されます。手足の中心が深く裂けたり、真ん中の指がうまく育たなかったりするのが特徴。まずは、どんな状態を指すのかを整理します。
手足の中央には、指の骨や手のひら・足の甲の骨が並んでいます。SHFMでは、この中央の構造が欠けたり(欠損)、小さいまま育ったり(発育不全)します。中央に深い溝ができて、手足がV字やハサミのような形に見えることもあります。片側だけのこともあれば、両手両足に及ぶこともあります。
症状の重さには、とても大きな幅があります。指のわずかな変形にとどまる軽いものから、中央の指がほとんどない重いものまでさまざま。同じ家族のなかでも、現れ方が違うことがあります。だからこそ、ひとりひとりの状態に合わせた見方が必要になります。

SHFMのタイプとSHFM3の位置づけ
他の病気を伴わない分裂手足奇形は、関わる遺伝子や染色体の場所によっていくつかのタイプに分けられます。番号は原因の違いを表す整理で、重さの順番ではありません。下の表に代表的なタイプをまとめました。
| タイプ | おもに関わる場所 | 遺伝のかたち |
|---|---|---|
| SHFM1 | 7番染色体(DLX5・DLX6) | 常染色体顕性など |
| SHFM3 | 10番染色体長腕(10q24)の重複 | 常染色体顕性 |
| SHFM4 | TP63遺伝子 | 常染色体顕性 |
| SHFM5 | 2番染色体長腕(2q31) | 常染色体顕性など |
この記事の主役は、10q24の重複が関わるSHFM3です。他の病気を伴わない分裂手足奇形のなかでは、比較的よく知られたタイプ。次からは、この10q24という場所のしくみを見ていきます。
SHFM3と10番染色体長腕(10q24)の関係
SHFM3は、10番染色体の長い腕にある10q24という領域が重複(同じ部分が余分に増える)ことで起こると考えられています。染色体の一部が「欠ける」のではなく「重なって増える」タイプの変化です。まずは、この場所がどこを指すのかを押さえておきます。

染色体は、短い腕(p)と長い腕(q)に分かれています。10q24は、10番染色体の長い腕にある区画のひとつ。ここが余分に重複すると、近くにある手足の発達に関わる遺伝子の働き方が乱れてしまいます。場所そのものより、その乱れが手足の形づくりに影響する点が大切です。
原因と遺伝のしくみ
SHFM3の主な原因は10q24領域の重複で、BTRC・LBX1・FGF8といった遺伝子座の調節が乱れることが関わると考えられています。むずかしい名前が並びますが、要点は「手足の形づくりを指揮する遺伝子の働き方が変わる」こと。ここでは、その流れをかみくだいて説明します。

10q24には、手足の発達を左右する調節のしくみが集まっています。FGF8は手足の伸びに、LBX1は筋肉の育ちに関わる遺伝子。これらの働きは、周りの調節領域によって細かく制御されています。ふだんは、必要なところで必要なぶんだけ遺伝子が働くよう、いわば交通整理がされているわけです。

10q24が重複すると、この交通整理が崩れます。すると、本来は静かにしているはずのBTRCやLBX1が、手足の芽の先端で誤って強く働いてしまうことがあります。手足の形づくりの合図が乱れて、中央の指や骨の発達に影響が出る。これがSHFM3の特徴的な形につながると考えられています。

遺伝のかたちは、多くが常染色体顕性です。親のどちらかが変化を持つと、子へ受け継がれることがあります。ただしSHFM3には、変化があっても症状が出ない「不完全浸透」という性質も知られています。同じ変化でも、現れ方は人によって違う。だからこそ、家族での相談や遺伝カウンセリングが役に立ちます。
まだ解明しきれていない部分も残っています。10q24の重複が主な原因である一方、他の遺伝的な要因が関わる可能性も指摘されています。むずかしい話ですが、研究が進むほど整理されてきた分野。難病や希少疾患の情報は、難病情報センターのような公的な情報源もあわせて確認してください。
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主な症状と重症度
SHFMの症状は、手足の中央の指や骨の欠損・発育不全・癒着・深い溝が中心で、軽いものから重いものまで幅広く現れます。手足だけの場合もあれば、ほかの体の特徴を伴う場合もあります。ここでは、代表的なサインを具体的に見ていきます。
手足に現れる主な特徴は、次のようなものです。まず、二つ以上の指が部分的または完全にくっつく癒着。次に、手足の中央に深い溝ができる状態。そして、指や手のひら・足の骨が欠けたり、小さいまま育つ発育不全。これらが組み合わさって現れます。

手足以外の特徴を伴うこともあります。知的発達への影響、皮膚・髪・爪・歯に関わる外胚葉の異常、顔まわりの特徴、口唇裂・口蓋裂などです。ただし、これらがすべての人に現れるわけではありません。SHFM3では、手足以外の症状を伴わないタイプが多いとも報告されています。
重さの幅は、本当に大きいです。軽ければ指のわずかな変形にとどまり、日常への影響が小さいこともあります。重ければ中央の指がほとんどなく、手足の細かな動きが難しくなることも。左右で程度が違うこともあり、ひとりひとり状況が異なります。数字や見た目だけで一律には語れない、という点を心にとめてください。
診断の方法|超音波と染色体マイクロアレイ
SHFMの診断は、出生前の超音波検査で手足の形を確認し、染色体マイクロアレイや遺伝子検査で10q24の重複を調べる流れが基本です。形の異常と、その背景にある染色体の変化を、両面から確かめていきます。ここでは診断の考え方を整理します。
手足の形の変化は、妊娠中の超音波である程度とらえられることがあります。生まれたあとは、指の数や形など見た目の特徴から気づかれることも多いです。ただ、見た目だけでは原因までは分かりません。そこで、染色体マイクロアレイという検査で、10q24のような小さな重複や欠失を細かく調べます。
どこまで調べるか、見つかったあとどうするかで悩む声は少なくありません。私自身、相談の場で「調べて分かっても、できることがあるのか」という迷いによく出会います。Xでも@komamatsunaさんが、NIPTは陰性だったものの胎児ドックを受けるか悩み、「何か見つかってもお腹の中で治療できることはあるのか、ないなら不安な日々が増すだけな気がする」とつづっていました。調べる範囲には限界があり、分かることと対応できることは必ずしも一致しません。だからこそ、検査の前に目的を整理しておくことが支えになります。
確定診断を目的とした検査には、羊水検査や絨毛検査があります。子宮に細い針を刺して、羊水や絨毛の細胞を採り、そこに染色体マイクロアレイを組み合わせます。検査の内容や受ける時期は、羊水検査についての記事や、羊水検査を受ける適切な時期の記事もあわせて読んでみてください。迷ったら、遺伝カウンセリングで整理するのが安心です。
NIPTで分かること・分からないこと
10q24の重複のような染色体の部分的な変化は、NIPTが主に調べる13・18・21トリソミーには含まれず、SHFM3を確定できる検査ではありません。ここは誤解が生まれやすいところなので、分かることと分からないことを整理します。
NIPT(新型出生前診断)は、お母さんの血液に含まれる胎児由来のDNA(細胞外を流れるDNA、cfDNA)を分析する検査です。主な対象は13・18・21トリソミーで、非確定的検査という位置づけ。陽性でも確定ではなく、確定診断には羊水検査や絨毛検査が必要になります。陽性的中率は年齢や有病率によって変わり、偽陽性・偽陰性の可能性もあります。
10q24の重複のように、染色体のごく一部が増えたり欠けたりする変化は、一般的なNIPTの対象トリソミーとは別の話です。微小な欠失・重複を含む検査項目もありますが、それでもNIPTは非確定的検査。確定には染色体マイクロアレイを組み合わせた羊水検査などが要ります。この違いは、下の表で整理してください。
| 項目 | NIPT(新型出生前診断) | 羊水検査・絨毛検査+マイクロアレイ |
|---|---|---|
| 検査の性質 | 非確定的検査(スクリーニング) | 確定診断 |
| 主な対象 | 13・18・21トリソミーなど | 染色体の数と部分的な変化 |
| 10q24の重複 | 一般的な対象には含まれない | マイクロアレイで検出しうる |
| 体への負担 | 採血のみ | 子宮に針を刺す |
| 結果の扱い | 陽性は確定ではない | 診断の確定に用いる |
どこで受けるか、認証された施設かどうかで迷う方も多いです。私も「施設によって結果の信頼性は変わるのか」とよく尋ねられます。Xでも@itsumonemui888さんが、NIPTをどこで受けるか悩み、「費用やスピードだけでなく、認証機関かどうかは結果の精度に関わるのか」と気になるとつづっていました。検査で分かる範囲や施設ごとの体制を、事前に相談で確かめておくと安心です。NIPTで分かる範囲はNIPTで分かることの記事も参考になります。
微小な欠失・重複のリスクの全体像を知りたいときは、微小欠失のリスクの記事もあわせてどうぞ。検査結果の読み方が不安なら、NIPTの検査結果の記事も役立ちます。分からないことは、遠慮なく専門家へ聞いてください。
治療と管理・将来の見通し
SHFMの管理は、外科的な手術・リハビリ・装具や義肢を、ひとりひとりの状態に合わせて組み合わせるのが基本です。症状の重さが幅広いぶん、治療の内容も人によって変わります。ここでは、支えとなる考え方を紹介します。

手足の形や機能に対しては、手術が選ばれることがあります。癒着した指を分ける、足りない骨を補う、深い溝を整えるといった内容です。手の細かな動きや歩行を助けるために、装具や義肢が使われることもあります。目的は、日常の動作をしやすくすること。見た目だけでなく、暮らしの質を大切にした選択が行われます。
知的発達や言葉の面で支援が必要なときは、言語療法・作業療法・専門的な教育プログラムが役立ちます。リハビリテーションの情報は、国立障害者リハビリテーションセンターの発信も参考になります。早くから、体と発達の両面を見ていく姿勢が大切です。

将来の見通しは、症状の重さや受けられる支援によって変わります。適切な治療やリハビリ、家族と医療者の継続的な支えがあれば、自立して日常を送る方も多くいます。妊娠や出産に関わる情報は、日本産科婦人科学会の公的な発信も確認してください。過度に不安を抱え込まず、信頼できる情報と専門家に頼ってほしいと感じます。
SHFM3をはじめとする染色体の部分的な変化は、遺伝カウンセリングでの相談が心の支えになります。遺伝のかたちや、次の妊娠への考え方を、専門家と一緒に整理できるからです。最終的な意思決定は、本人と家族の思いが尊重されます。焦らず、納得できるまで話し合ってください。
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よくある質問
Q. SHFM3(分裂手足奇形3型)とはどんな病気ですか?
手や足の中央にある指や骨がうまく育たない、先天的な形態異常のひとつです。中央が深く裂けたり、真ん中の指が欠けたりします。10番染色体長腕の10q24という領域の重複がおもな原因と考えられています。重さには大きな幅があり、軽い変形から重い欠損までさまざまです。片側だけのことも、両手両足に及ぶこともあります。
Q. NIPTでSHFM3は分かりますか?
10q24の重複のような染色体の部分的な変化は、NIPTが主に調べる13・18・21トリソミーには含まれません。NIPTは非確定的検査で、陽性でも確定ではありません。SHFM3を確定するには、染色体マイクロアレイを組み合わせた羊水検査や絨毛検査が必要です。まずは検査で分かる範囲を、相談で確かめてください。
Q. どのように診断されますか?
出生前の超音波検査で手足の形を確認し、必要に応じて染色体マイクロアレイや遺伝子検査で10q24の重複を調べます。生まれたあとは、指の数や形などの特徴から気づかれることも多いです。見た目だけでは原因が分からないため、染色体や遺伝子の検査を組み合わせて確かめます。迷ったら遺伝カウンセリングが助けになります。
Q. SHFM3は遺伝しますか?
多くは常染色体顕性というかたちで、親から子へ受け継がれることがあります。ただしSHFM3には、変化があっても症状が出ない不完全浸透という性質が知られています。同じ変化でも現れ方は人によって違うため、一律には言えません。家族での見通しは、遺伝カウンセリングで一緒に整理していくのが安心です。
Q. どんな治療や支援がありますか?
手足の形や機能に対しては、癒着した指を分ける、足りない骨を補うといった手術が選ばれることがあります。手の動きや歩行を助ける装具・義肢も使われます。発達の面で支援が必要なときは、言語療法や作業療法などが役立ちます。ひとりひとりの状態に合わせて、体と発達の両面から支えていきます。
Q. 将来はどのような見通しになりますか?
症状の重さや受けられる支援によって、見通しは変わります。適切な治療やリハビリ、家族と医療者の継続的な支えがあれば、自立して日常を送る方も多くいます。過度に不安を抱え込まず、信頼できる情報と専門家に頼ってください。最終的な意思決定は、本人と家族の思いが尊重されます。
著者・監修
岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

