15q13.3欠失症候群(BP4-BP5)|原因のCHRNA7遺伝子とてんかん・知的障害の関係

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15q13.3重複症候群は、発達遅延、行動異常、知的障害などを引き起こす遺伝性疾患です。早期の療育と支援により、症状の軽減や生活の質向上が期待されます。

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この記事のまとめ

15q13.3欠失症候群は、15番染色体の長い腕にあるq13.3という領域のうち、BP4からBP5と呼ばれる範囲の遺伝情報が失われて起こる、ごく稀な染色体の変化です。原因遺伝子と考えられているのはCHRNA7で、てんかん・知的障害自閉スペクトラム症・精神疾患のリスクなど、症状の出方には大きな個人差があります。同じ欠失があっても症状がほとんど出ない方もいる「不完全浸透」が特徴の一つです。診断は染色体マイクロアレイ検査で確定し、NIPT(新型出生前診断)の一般的な対象ではありません。確定には羊水検査絨毛検査が必要です。反対に同じ領域の遺伝情報が増える「重複症候群」という別の病気もあり、本記事では欠失(loss)と重複(gain)を混同しないよう整理しながら解説します。

この記事でわかること

  • 15q13.3欠失症候群とはどのような病気か、原因遺伝子CHRNA7との関係
  • てんかん・知的障害自閉スペクトラム症など、主な症状の全体像と個人差
  • 欠失(deletion/loss)と重複(duplication/gain)の違い、混同しやすいポイント
  • NIPTとの関係、染色体マイクロアレイ検査による確定診断の流れ
  • てんかんの管理・療育、家族が使える相談窓口

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15q13.3欠失症候群とはどのような病気か

15q13.3欠失症候群は、15番染色体の長い腕(長腕)にあるq13.3という領域のうち、BP4からBP5と呼ばれる範囲の遺伝情報が一部失われることで起こる、ごく稀な先天性の疾患です。この範囲にはMTMR15・TRPM1・MTMR10・KLF13・OTUD7A・CHRNA7という6つの遺伝子が含まれており、なかでもCHRNA7の働きが症状に強く関わっていると考えられています。まずは病気の全体像から見ていきます。

「微細欠失」とは、染色体のごく小さな範囲が失われている状態を指します。従来の顕微鏡による染色体検査だけでは見つけにくく、詳しい検査で初めて分かることが少なくありません。BP4・BP5とは、この領域の切れ目(ブレイクポイント)を示す目印。同じBP4-BP5の範囲でも、実際に欠けている大きさには個人差があります。

15番染色体とq13.3領域(BP4-BP5)のイメージ 短い腕 長い腕(q) q13.3領域(BP4-BP5) CHRNA7を含む範囲が 失われている(欠失)
15番染色体q13.3領域(BP4-BP5)のうちCHRNA7を含む範囲が欠けているイメージ

どのくらい稀な病気なのか

15q13.3欠失症候群は、一般の集団全体でみればきわめて稀な染色体の変化です。正確な有病率はまだはっきり定まっていません。一方で、特発性全般てんかんという種類のてんかんを持つ方を対象にした研究では、健康な対照群に比べてこの欠失が見つかる頻度が明らかに高いと報告されています。日本語の診断基準案でも、知的能力障害が過半数に、けいれん発作がおよそ28%にみられると整理されています。

数字だけを見ると不安になるかもしれませんが、症状が全く出ない方も一定数いるのがこの病気の特徴です。頻度がはっきり示せないほど珍しく、かつ個人差が大きい、と理解しておくと落ち着いて向き合えます。

欠失(loss)と重複(gain)を混同しないために

染色体の変化には、大きく分けて「欠失」と「重複」の2種類があります。欠失(deletion/loss)は遺伝情報が失われる変化、重複(duplication/gain)は遺伝情報が余分に増える変化です。15q13.3の同じBP4-BP5という範囲でも、欠失と重複ではまったく別の病気として扱われます。

この記事で扱う15q13.3欠失症候群は、遺伝情報が失われる「loss」型です。反対に、同じ範囲の遺伝情報が増える「gain」型は15q13.3重複症候群の記事で解説しています。重複症候群は欠失症候群に比べて症状の現れ方がより多様で、無症状のまま経過する方も多いとされます。ご自身やお子さんがどちらに該当するかは、検査結果の記載(欠失か重複か)で確認してください。

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主な症状|てんかん・知的障害・自閉スペクトラム症

15q13.3欠失症候群の主な症状は、てんかん、知的障害や発達の遅れ、自閉スペクトラム症、統合失調症・双極性障害などの精神疾患リスクで、症状の組み合わせや重さには非常に大きな個人差があります。すべての症状がそろって現れるわけではなく、なかには目立った症状が全くない方もいます。ここでは代表的な症状を整理します。

みられることのある主な症状 てんかん 約28%に報告 知的障害・発達の遅れ 過半数に報告 自閉スペクトラム症 統合失調症・ 双極性障害のリスク 症状がない場合も 不完全浸透 個人差が大きい
15q13.3欠失症候群でみられることのある主な症状のイメージ

てんかん(特発性全般てんかんとの関連)

もっとも研究が進んでいる症状のひとつが、てんかんです。特発性全般てんかんという種類のてんかんを持つ方の集団を調べた研究では、健康な方に比べて15q13.3欠失が見つかる割合が明らかに高いと報告されています。発作の型や重さは人によって幅があります。

てんかんが見つかった場合は、小児神経科や神経内科と連携しながら、発作の型に応じた抗てんかん薬による治療を進めていきます。発作の記録をつけておくと、診療のたびに医師と状況を共有しやすくなります。

知的障害・発達の遅れ・自閉スペクトラム症

知的能力の遅れは、報告されている症例の過半数にみられるとされています。程度は軽度から中等度が中心ですが、なかには知的発達がほぼ標準的な範囲にとどまる方もいます。言語やコミュニケーションの発達がゆっくり進む傾向も報告されています。

自閉スペクトラム症に関連する社会的コミュニケーションの特性がみられることもあります。知的な発達と妊娠の関わりについては、知的障害のリスクと妊娠を整理した記事もあわせて参考にしてください。

精神疾患のリスクと、症状が出ない場合があること

成人期以降には、統合失調症や双極性障害といった精神疾患のリスクがやや高まると報告されています。ただし、これは「必ず発症する」という意味ではありません。将来にわたる継続的な観察と、気になる変化があれば早めに相談できる体制づくりが力になります。

ここで押さえておきたいのが、不完全浸透という考え方です。同じ欠失を持っていても、目立った症状が全く出ない方が一定数いることが分かっています。個人差の大きさ。これが15q13.3欠失症候群の理解を難しくもし、同時に希望にもつながる特徴です。

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原因|CHRNA7遺伝子と不完全浸透

15q13.3欠失症候群の症状には、脳内のニコチン性アセチルコリン受容体(α7サブユニット)をつくるCHRNA7遺伝子の働きが低下することが、大きく関わっていると考えられています。欠失した範囲には他にも複数の遺伝子が含まれますが、CHRNA7の量が足りなくなること(ハプロ不全)が症状の中心的な原因とみられています。

遺伝形式は、常染色体顕性遺伝(浸透率が不完全なタイプ)にあたります。報告によれば、欠失のおよそ75%はご両親のどちらかから受け継がれており、その親御さんに明らかな症状がない、またはごく軽度にとどまっている場合が少なくありません。残りは、精子や卵子がつくられる過程などで新たに生じた変化(新生突然変異)です。

私は遺伝カウンセリングの場で、「自分が原因で子どもに重い症状が出たのでは」と自分を責めてしまうご両親に何度も出会ってきました。けれど、浸透率が不完全という性質上、症状のない親御さんから、より症状の重いお子さんが生まれることも起こり得ます。これは誰のせいでもない、遺伝の仕組みそのものによるものです。

次のお子さんを考える際の見通しを立てたいときは、ご両親の染色体マイクロアレイ検査を行うことで、遺伝したものか新生突然変異かを確認できます。気になる場合は、遺伝カウンセリングで専門家に相談してください。

診断|染色体マイクロアレイ検査で確定する

15q13.3欠失症候群の診断は、染色体マイクロアレイ検査という、染色体のごく小さな欠失や重複まで調べられる検査で確定します。従来の顕微鏡による染色体検査(染色体分染法)では見つけにくい微細な変化も、この検査であればとらえられます。ここでは出生前と出生後、それぞれの検査の流れを整理します。

検査の考え方の流れ 非確定的な検査 NIPTは基本対象外 これだけでは確定しない 確定検査 羊水検査絨毛検査 +染色体マイクロアレイ
可能性を調べる検査と、診断を確定する検査の関係のイメージ

出生前検査での位置づけ(NIPTとの関係)

あらかじめ知っておいてほしい大切な点があります。NIPT(新型出生前診断)は、主に13・18・21トリソミーなどの染色体の数の変化を調べる非確定的検査です。15q13.3のような微細欠失は、基本的なNIPTの対象ではありません。一部の施設では拡大検査のオプション項目として扱われることがありますが、対象となる範囲は限られ、検出率にも幅があります。

そのため、仮にオプション検査で「可能性が高い」と示されても、それだけで診断が確定するわけではありません。無限定に高い精度を約束できる検査ではない、という点は押さえておいてください。NIPTで調べられる項目の全体像は、NIPTでわかる疾患を整理した記事で確認できます。微細欠失全体の位置づけは、微小欠失症候群とNIPTの関係を解説した記事もあわせて参考にしてください。

確定診断は羊水検査・絨毛検査で

確定診断には、羊水検査絨毛検査で採取した細胞を、染色体マイクロアレイ検査で詳しく調べる方法がとられます。これらは確定的検査ですが、わずかに流産のリスクを伴います。目安として、羊水検査でおよそ0.3%前後、絨毛検査でおよそ1%前後と報告されています。

受けるかどうかは、リスクと得られる情報を照らし合わせて、ご家族が決めていく事柄です。確定検査の内容は羊水検査についての記事にまとめています。出生後であれば、お子さんの血液から染色体マイクロアレイ検査を行い、流産のリスクなく調べられます。

検査位置づけ15q13.3欠失への対応体への負担
NIPT(新型出生前診断非確定的検査基本対象外。一部施設の拡大検査オプションで対象・検出率に幅採血のみ
羊水検査+染色体マイクロアレイ確定的検査詳しい欠失範囲まで確定できる流産リスク約0.3%前後
絨毛検査+染色体マイクロアレイ確定的検査妊娠早期に確定できる流産リスク約1%前後
出生後の血液検査+染色体マイクロアレイ確定的検査生まれた後に確定できる採血のみ
15q13.3欠失症候群に関わる検査の比較(位置づけと負担の整理)

出生前の検査との向き合い方

出生前の検査を受けるかどうかに、唯一の正解はなく、受ける選択も受けない選択も、どちらもご家族の大切な自己決定です。迷う気持ちは自然なもの。ここでは、実際に検査と向き合った方の声にも触れながら考え方を整理します。

私は相談の現場で、「受けると決めていたのに、いざ妊娠すると迷った」という声を何度も聞いてきました。Xでも@sisisi195275806さんが、絶対にNIPTを受けるつもりだったのに妊娠したらすごく迷い、それでも受けて良かった、と率直な気持ちをつづっていました。心が揺れながら決めていく過程そのものが、赤ちゃんと向き合う時間になるのだと感じます。

一方で、悩んだ末に「今回は何もしない」と選ぶ方もいます。Xでは@mmy338さんが、出生前診断を悩みぬいた結果、今回は何もしないという結論になりそうだ、とつづっていました。受けない判断も、じっくり考えたうえでの立派な自己決定です。どちらの選択も、周りが優劣をつけるものではありません。

迷ったときは、一人で抱えこまず、遺伝カウンセリングで専門家に相談してください。検査で分かること、分からないこと、その後の選択肢を一緒に整理できます。過去の相談事例の流れは、検査を検討したご家族の事例を紹介した記事も参考になります。

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てんかんの管理と療育・医療的支援

15q13.3欠失症候群そのものを治す治療法はありませんが、てんかんへの対応と、発達を支える療育を組み合わせることで、お子さんの育ちを支えられます。症状の組み合わせに合わせて、複数の専門家がチームで関わっていきます。ここでは支援の柱を整理します。

寄り添う医療従事者の手。てんかん管理と療育でお子さんと家族を支えるイメージ

てんかんがある場合は、小児神経科や神経内科と連携し、発作の型に応じた抗てんかん薬による治療を続けます。発作の頻度や様子を記録しておくと、薬の調整に役立ちます。運動やことばの発達がゆっくりなお子さんには、理学療法・作業療法・言語療法が役立ちます。

自閉スペクトラム症に関連する特性がある場合は、行動面の支援や、地域の発達支援・特別支援教育との連携も選択肢に入ります。成人期以降は、気分や行動の変化に早めに気づけるよう、かかりつけ医との継続的な関わりが力になります。

まず何から始めるか迷ったら、かかりつけの小児科や地域の保健センターに相談してください。てんかん・発達・行動、それぞれの窓口へとつながっていきます。

家族の支援と相談できる窓口

稀な病気だからこそ、ご家族が孤立しないよう、公的な相談窓口や診断基準の情報を早めに知っておくことが心の支えになります。長期の通院や療育には、時間も気持ちも使います。頼れる窓口を紹介します。

難病や希少な疾患の情報を調べたいときは、難病情報センターが役立ちます。発達の支援については、国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センターが、相談先や支援の考え方をまとめています。国内の専門家による診断基準の整理は、染色体マイクロアレイ検査の診断基準案をまとめた学術資料(15q13.3微細欠失症候群)でも確認できます。出生前検査そのものについて中立に理解を深めたいときは、日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会の情報も参考になります。

身近な支えとしては、地域の保健センターや児童発達支援センター、そして同じ経験をもつ家族会の存在があります。似た状況を歩む家族とつながると、日々の工夫や気持ちの整理を分かち合えます。医療費や療育に関する助成制度もあるため、市区町村の窓口で確認してみてください。

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よくある質問

Q. 15q13.3欠失症候群はNIPTで分かりますか?

この微細欠失は、NIPT(新型出生前診断)の一般的な対象ではありません。一部の施設では拡大検査のオプション項目として扱われることがありますが、対象となる範囲は限られ、検出率にも幅があります。NIPTは非確定的な検査のため、仮に可能性が示されても、それだけでは確定しません。確定診断には、羊水検査絨毛検査で採取した細胞を染色体マイクロアレイ検査で調べる方法が必要です。

Q. 欠失症候群と重複症候群は何が違うのですか?

欠失(deletion/loss)は染色体の遺伝情報が失われる変化、重複(duplication/gain)は遺伝情報が余分に増える変化です。同じ15q13.3のBP4-BP5という範囲でも、欠失と重複ではまったく別の病気として扱われます。重複症候群は欠失症候群に比べて症状の現れ方がより多様で、無症状のまま経過する方も多いとされます。検査結果に「欠失」「重複」のどちらと記載されているかで判断してください。

Q. どうやって診断が確定するのですか?

染色体マイクロアレイ検査という、染色体の小さな欠失や重複まで調べられる検査で確定します。出生前であれば羊水検査絨毛検査で細胞を採取し、この検査にかけます。出生後であれば、お子さんの血液から流産のリスクなく調べられます。従来の顕微鏡による染色体検査では見つけにくい変化も、この検査でとらえられます。

Q. 親の育て方や妊娠中の過ごし方が原因ですか?

いいえ、原因ではありません。欠失のおよそ75%は両親のどちらかから受け継がれていますが、その親御さんに明らかな症状がないことも多く、これは不完全浸透という遺伝の仕組みによるものです。残りは新生突然変異です。育て方や妊娠中の生活とは関係のない、誰にでも起こりうる遺伝的な出来事です。気になるときは遺伝カウンセリングで相談してください。

Q. 症状はどのくらい重いのでしょうか?

症状の出方には非常に大きな個人差があります。てんかんや知的障害が目立つ方もいれば、目立った症状が全くない方もいます。これは不完全浸透と呼ばれる特徴によるものです。平均像を当てはめるより、目の前のお子さんやご自身の様子をていねいに見ながら、必要な支援を組み立てていくことが力になります。

Q. 出生前検査を受けるか迷っています。どうすればよいですか?

受ける選択も受けない選択も、どちらもご家族の大切な自己決定です。迷う気持ちは自然なものなので、一人で抱えこまないでください。遺伝カウンセリングで専門家に相談すると、検査で分かること・分からないこと、その後の選択肢を一緒に整理できます。納得して決めていく過程そのものが、赤ちゃんと向き合う時間になります。

著者・監修

岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。

15q13.3重複症候群は、発達遅延、行動異常、知的障害などを引き起こす遺伝性疾患です。早期の療育と支援により、症状の軽減や生活の質向上が期待されます。

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医師監修 監修日:2024年11月15日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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