この記事のまとめ
妊娠中期(安定期)はつわりが落ち着き体調が上向く方の多い時期ですが、「安定期」は無事を保証する言葉ではなく、お腹の張り・貧血・むくみ・こむら返りといった不調や、注意したい病気の兆候も起こり得ます。この記事では、妊娠中期に起こりやすいトラブルと生活の工夫での和らげ方、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病など気をつけたい病気のサイン、受診の目安までをまとめました。気になる症状は自己判断せず、かかりつけの産婦人科へ相談してください。
この記事でわかること
妊娠中期(安定期)とは?週数の目安と「安定=無事の保証ではない」
妊娠中期は妊娠16週頃から27週頃までを指し、つわりが落ち着き胎盤が完成して流産の頻度も下がることから、一般に「安定期」と呼ばれています。ただし、この呼び名は目安であって、無事を保証する言葉ではありません。
妊娠5か月(16週)に入るとお腹のふくらみが少しずつ目立ちはじめ、胎動を感じる方も出てきます。気持ちにゆとりが生まれ、外出や旅行の予定を立てやすくなる時期です。体調の波が落ち着く方が多いのも、この頃の特徴。
一方で、安定期に入ってもつわりが続く方や、新しい不調が出てくる方もいます。私は妊婦さんの話を聞いていて、「安定期という言葉に安心しすぎず、体のサインに耳をすませる姿勢」がいちばん大切だと感じます。実際、Xでも@mmm_kiu1さんが、妊娠16週で中期・安定期に入ったのにつわりがまだ終わっていない、ここまで来られて信じられない、と書いていました。安定期の入り方や感じ方には、はっきり個人差があります。
「安定期だから大丈夫」ではなく「安定期でも変化は起こる」。この前提で過ごすと、早めの気づきにつながります。妊娠中期の過ごし方全般については妊娠中期の過ごし方もあわせてご覧ください。妊娠・出産の基本情報は、厚生労働省の女性の健康推進室 ヘルスケアラボも参考になります。
妊娠中期に起こりやすい体のトラブル一覧
妊娠中期に多いのは、お腹の張り・腹痛・貧血・むくみ・こむら返り・便秘・胃もたれ・皮膚のかゆみで、その多くは体の変化にともなう自然な反応です。まずは全体像をつかんでおきましょう。
お腹が大きくなると重心が前に移り、子宮が周囲の臓器や血管をやさしく押し広げていきます。血液量が増え、ホルモンの働きで腸の動きがゆっくりになるのもこの時期の特徴です。体のあちこちに小さな変化が現れるのは、赤ちゃんが育っているサインでもあります。
Xでも@pui_2026さんが、妊娠16週で中期に入りお腹が出てきた、少し歩くと息切れがする、と体の変化を記録していました。私も、こうした「少しの息切れ」や「重だるさ」は多くの妊婦さんが通る道だと感じています。下の図で、起こりやすいトラブルを整理しました。
それぞれの症状の目安を、下の表にまとめました。多くは生活の工夫で和らぎますが、強い痛みや出血をともなうときは別の対応が必要になります。
| トラブル | 主な背景 | まず試したい対策 | 受診を考える目安 |
|---|---|---|---|
| お腹の張り | 子宮の収縮・疲れ・冷え | 横になって安静にする | 張りが規則的に続く・出血や痛みをともなう |
| 貧血 | 血液量の増加で鉄が不足しやすい | 鉄分の多い食事・こまめな休息 | 強い動悸・立ちくらみ・息切れが続く |
| むくみ | 血液量増加・子宮による圧迫 | 足を高くする・減塩・適度な水分 | 顔や手まで急にむくむ・体重が急増する |
| こむら返り | ミネラル不足・血流の変化 | ふくらはぎを伸ばす・水分と栄養補給 | 毎晩くり返し眠れないほどつらい |
| 便秘 | ホルモンで腸の動きがゆっくりに | 食物繊維・水分・軽い運動 | 数日以上出ず腹痛が強い |
| 胃もたれ | 子宮が胃を押し上げる | 少量を数回に分けて食べる | 食事がとれない・体重が減る |
| 皮膚のかゆみ | お腹の張りによる乾燥・ホルモン変化 | 保湿・かき壊さない | 全身に強いかゆみが広がる |
トラブル別の対策|生活の工夫で和らげる
妊娠中期のトラブルの多くは、水分・鉄分・食事・休息という生活の工夫で和らぎます。市販薬は自己判断で使わず、必要なときはかかりつけへ相談してください。
お腹の張り・腹痛
張りを感じたら、まず横になって体を休めてください。多くは短時間で治まります。疲れや冷え、長時間の立ち仕事が引き金になりやすいため、こまめに座って休む習慣が助けになります。ただし、張りが規則的に続く、出血や強い痛みをともなうときは、切迫早産などの兆候のことがあります。ためらわず産婦人科へ連絡してください。
貧血・息切れ
妊娠中は赤ちゃんに酸素や栄養を送るために血液量が増え、鉄が不足しやすくなります。レバー・赤身肉・魚・大豆製品・緑黄色野菜など、鉄分の多い食品を毎日の食事に少しずつ取り入れてください。ビタミンCと一緒にとると吸収が高まります。少し歩いて息切れするのはこの時期によくある変化ですが、動悸や立ちくらみが続くときは健診で相談し、必要なら鉄剤を処方してもらいましょう。
むくみ・こむら返り
夕方に足がむくむのは、血液量の増加と子宮による血管の圧迫が背景にあります。座るときは足を少し高くし、塩分を控えめにしてください。水分は「むくむから」と控えすぎず、適度にとるほうが循環には役立ちます。夜中のこむら返りには、寝る前にふくらはぎをやさしく伸ばすストレッチが効きます。ミネラル不足も一因なので、バランスのよい食事を心がけてください。
便秘・胃もたれ
ホルモンの影響で腸の動きがゆっくりになり、大きくなった子宮が胃腸を押すため、便秘や胃もたれが起こりやすくなります。食物繊維の多い野菜や海藻、水分をしっかりとり、朝の軽い散歩で腸を動かしてください。胃もたれには、1回の量を減らして食事の回数を増やす「少量頻回」が有効です。つらいときの下剤の使用は自己判断せず、医師に相談してください。妊娠中の便秘対策は妊娠中の便秘の食事と生活の工夫で詳しく解説しています。
皮膚のかゆみ
お腹が大きくなると皮膚が引き伸ばされ、乾燥してかゆみが出やすくなります。入浴後に保湿クリームを塗り、かき壊さないよう心がけてください。締めつけの少ない衣類を選ぶのも助けになります。まれに、全身に強いかゆみが広がる場合は肝機能に関わる病気のことがあります。範囲が広い・眠れないほどつらいときは受診してください。
気をつけたい病気の兆候|妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病・切迫早産
妊娠中期以降は、妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病・切迫早産といった、早めの気づきが大切な病気にも注意したい時期です。健診をきちんと受けることが、いちばんの備えになります。
妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群は、妊娠20週以降に高血圧が現れる状態を指します。目安は140/90mmHg以上で、むくみや尿タンパクをともなうこともあります。急な体重増加、強い頭痛、目のちらつき、みぞおちの痛みが続くときは、その兆候のことがあります。健診での血圧測定と尿検査で早く見つけることが大切です。気になる症状があれば、次の健診を待たずに連絡してください。詳しくは妊娠高血圧症候群の記事もご覧ください。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病は、妊娠中にはじめて見つかる血糖の上がりやすい状態です。自覚症状が出にくいため、健診の血糖検査で確認します。スクリーニングで高い値が出た場合は、必要に応じて75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)(ブドウ糖負荷試験)などで診断します。食事のとり方でコントロールできることが多く、主治医や管理栄養士の指導が助けになります。食事の工夫は妊娠糖尿病の食事で詳しくまとめています。
切迫早産
切迫早産は、早産になりかけている状態です。規則的で強いお腹の張り、出血、破水を思わせる水っぽいおりものが、そのサインになることがあります。安定期でも起こり得るため、「張りがおさまらない」「いつもと違う」と感じたら安静にして連絡してください。早く気づくほど、赤ちゃんを守る対応がとりやすくなります。産婦人科の病気の基礎知識は日本産科婦人科学会の情報も参考になります。
受診の目安|このサインが出たら連絡を
お腹の張りが続く・出血がある・強い頭痛・むくみの急増のいずれかがあれば、次の健診を待たずに産婦人科へ連絡してください。迷ったときは相談すること自体が正解です。
「これくらいで連絡していいのかな」とためらう方は少なくありません。私は、判断に迷う時点ですでに相談する理由が十分にあると感じています。医療者にとっても、早めの一報のほうが対応しやすいものです。下のフローを目安にしてください。
心の変化への向き合い方
妊娠中期はホルモンの変化や生活の変化から、気分が沈んだり不安が強まったりしやすく、それ自体はよくある反応です。ひとりで抱え込まないことが、いちばんの支えになります。
体が変わっていくことへの戸惑いや、出産・育児への漠然とした不安は、多くの妊婦さんが感じるものです。Xでも@pui_2026さんが、妊娠16週で中期に入りネガティブ思考になりがち、と正直な気持ちを記録していました。私も、気分の波は「がんばりが足りないから」ではなく、体の変化にともなう自然な反応だと感じます。
深呼吸や軽いストレッチ、無理のない散歩は気分転換に役立ちます。パートナーや家族、友人に気持ちを言葉にして伝えてみてください。眠れない日が続く、涙が止まらない、何も手につかないといった状態が長引くときは、我慢せず健診で相談しましょう。心のケアも妊娠の大切な一部です。困りごとはLINEでの相談から気軽に始めてください。
この時期の過ごし方とまとめ
妊娠中期は、無理をせず健診をきちんと受け、体のサインに早めに気づくことが快適に過ごすコツです。安定期という言葉に頼りすぎず、日々の変化を大切にしてください。
睡眠と休息を確保し、鉄分やたんぱく質を意識したバランスのよい食事を心がけましょう。体重の増え方は健診で相談しながら整えてください。軽い運動は気分転換にも体調管理にも役立ちますが、張りを感じたらすぐ休むこと。「今日は無理をしない」という選択も立派な自己管理です。
妊娠中期は、赤ちゃんとの時間を少しずつ実感できる時期でもあります。お腹の張りや貧血、むくみといった不調は生活の工夫で和らぐことが多く、気になる症状は早めの相談で安心につながります。妊娠・出産や母子保健の公的な情報は、こども家庭庁 母子保健もあわせてご確認ください。
なお、赤ちゃんの染色体について気になる方に向けて、NIPT(新型出生前診断)という選択肢があります。NIPTは、13・18・21トリソミーなど対象の染色体を調べる非確定的な検査で、確定診断には羊水検査などが必要です。受けるかどうかも含めて、気持ちや疑問を整理したいときは、NIPT(新型出生前診断)のページをご覧ください。
よくある質問
妊娠中期のトラブルについて、妊婦さんからよく寄せられる疑問をまとめました。参考にしてください。
Q. 安定期に入れば、もうトラブルの心配はいりませんか?
「安定期」は妊娠中期を指す通称で、無事を保証する言葉ではありません。つわりが続いたり、お腹の張りや貧血、むくみといった不調が出たりすることもあります。安定期でも体のサインに気づいたら、自己判断せずかかりつけの産婦人科へ相談してください。
Q. お腹の張りは、どの程度なら受診したほうがよいですか?
横になって短時間で治まる張りは、多くの場合心配いりません。張りが規則的に続く、出血や強い痛みをともなう、休んでも改善しないときは、切迫早産などの兆候のことがあります。次の健診を待たず産婦人科へ連絡してください。
Q. こむら返りや貧血は、家でどう対策すればよいですか?
こむら返りには、寝る前にふくらはぎを伸ばすストレッチと、水分・ミネラルの補給が役立ちます。貧血には、レバーや赤身肉、大豆製品、緑黄色野菜など鉄分の多い食品を毎日少しずつとってください。動悸や立ちくらみが続くときは健診で相談し、必要なら鉄剤を処方してもらいましょう。
Q. 妊娠高血圧症候群のサインを教えてください。
妊娠高血圧症候群は妊娠20週以降の高血圧で、目安は140/90mmHg以上です。急な体重増加、強い頭痛、目のちらつき、むくみの急増が兆候のことがあります。健診の血圧測定と尿検査で早く見つけることが大切です。気になる症状があれば早めに連絡してください。
Q. 妊娠中期は市販薬を使ってもよいですか?
便秘薬や痛み止めなどの市販薬は、自己判断で使わないでください。妊娠中は使える薬が限られることがあります。症状がつらいときは、かかりつけの産婦人科や薬剤師に相談し、安全な方法を確認してから使ってください。
著者・監修
岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
- 日本産科婦人科学会, 日本産婦人科医会. 産婦人科診療ガイドライン―産科編2023. 東京: 日本産科婦人科学会; 2023.
- 日本妊娠高血圧学会. 妊娠高血圧症候群の管理・治療ガイドライン2021. 東京: メディカルビュー社; 2021.
- 日本糖尿病・妊娠学会. 糖尿病と妊娠に関する診療指針. 東京: メディカルビュー社; 2018.
- 厚生労働省. 妊産婦のための食生活指針. 東京: 厚生労働省; 2021.
- 日本産婦人科医会. 妊婦健康診査における貧血・栄養管理. 産婦人科治療. 2018;116(増刊):234-239.
- Laine K, Martin AS, Rotzen-Osterberg R, Spigset O. Treatment of constipation during pregnancy. Acta Obstet Gynecol Scand. 2016;95(8):860-865.
- Sendag F, Terek MC, Oztekin K, Askar N. Metal supplementation in pregnancy: a double-blind, randomized, placebo-controlled trial of magnesium therapy for leg cramps. Am J Obstet Gynecol. 2002;187(2):507-512.
- Pennick V, Liddle SD. Interventions for preventing and treating pelvic and back pain in pregnancy. Cochrane Database Syst Rev. 2013;(8):CD001139.

