この記事のまとめ
NIPTの陽性は「染色体の変化がある可能性が高い」というスクリーニングの結果で、確定診断ではありません。陽性でも、実際には赤ちゃんに染色体の変化がないことがあります。次のステップは、①結果を落ち着いて正しく受け止める、②遺伝カウンセリングを受ける、③羊水検査や絨毛検査などの確定検査を検討する、という流れです。どう受け止め、どう選ぶかは、ご本人とご家族の気持ちがいちばん尊重されます。一人で抱え込まず、担当医や遺伝カウンセラーに相談してください。
この記事でわかること
NIPTで陽性と出たときの意味|確定診断ではありません
NIPTの陽性は「対象の染色体に変化がある可能性が高い」というスクリーニングの結果であり、それ自体は確定診断ではありません。NIPT(新型出生前診断)は、主に21・18・13トリソミーなど限られた染色体を調べる非確定的検査です。陽性でも、確定検査で赤ちゃんに染色体の変化がないと分かることがあります。まずは、この意味を丁寧に整理します。
陽性という言葉は、どうしても強く響きます。けれども結果票が示しているのは、あくまで「可能性」です。母体の血液に含まれる胎児由来のDNA(cfDNA)を調べる仕組みのため、胎盤の状態や検査の特性によって、実際とは異なる結果が出ることもあります。だからこそ、次に確定検査という段階が用意されています。
ここで知っておきたいのが、陽性的中率(PPV)という考え方です。陽性的中率とは、陽性と出た人のうち、実際に染色体の変化があった人の割合を指します。この数値は一定ではありません。妊婦さんの年齢や、その集団での有病率によって変わります。ですから「陽性=必ず変化がある」ではないのです。
SNSでも、この点をていねいに伝える医療者の声が見られます。陽性と伝えられて相談に来られた方の中には、よく調べると解釈の難しいケースもあり、最終的にはなんでもなかった例もある。そうした現場の実感がつづられていました。数字だけで結論を急がない姿勢が、ここでも大切になります。
NIPTの陽性と、その後の確定検査の結果が食い違う理由については、NIPTと確定検査の結果が異なる理由の記事でくわしく解説しています。仕組みを知っておくと、陽性という言葉に過剰に振り回されずにすみます。
陽性のあとに進む「次の3つのステップ」
陽性のあとは、①結果を正しく受け止める、②遺伝カウンセリングを受ける、③確定検査を検討する、という3つのステップで進むと考えを整理しやすくなります。いきなりすべてを決める必要はありません。段階を分けて一つずつ進む。それだけで、気持ちの負担はやわらぎます。まずは全体の流れを見ていきましょう。
この流れには、あわてて答えを出さないための時間が組み込まれています。遺伝カウンセリングで疑問を整理し、そのうえで確定検査を受けるかどうかを考える。順番を守ると、一つひとつの判断が地に足のついたものになります。結果票の見方に迷うときは、NIPTの検査結果の見方の記事もあわせて読んでみてください。
大切なのは、この3ステップの先にある選択が、だれかに強制されるものではないということです。どう受け止め、どう進むかは、ご本人とご家族の気持ちがいちばん尊重されます。ここから先は、各ステップを順にくわしく見ていきます。
ステップ1|まず結果を落ち着いて正しく受け止める
最初のステップは、感情的に結論を急がず、結果の意味を正しく理解することです。陽性という言葉に、胸がざわつくのは自然な反応。無理に平静を装う必要はありません。ただ、この段階では「まだ確定ではない」という一点を、心のよりどころにしてください。まず何を確認すればよいかを整理します。
私は妊婦さんの相談に立ち会ってきた経験から、結果を聞いた直後ほど、説明が頭に入りにくいと感じています。だからこそ、医師の説明を最後まで聞ききること。そして、その場で分からない点はその場で質問することが役立ちます。あいまいなまま持ち帰ると、不安だけがふくらみやすいからです。
結果を受け取ったあとに確認したい点を、下の表にまとめました。医師の説明を聞くときの手がかりにしてください。メモを取りながら聞くと、あとで気持ちを整理しやすくなります。
| 確認すること | なぜ大切か |
|---|---|
| どの染色体の陽性か | 対象や意味が染色体ごとに異なるため |
| 陽性的中率(PPV)の考え方 | 陽性でも変化がないことがあるため |
| 次に受けられる検査と時期 | 週数によって選べる検査が変わるため |
| 相談できる窓口 | 一人で抱え込まないため |
心のケアも、このステップに含まれます。不安や悲しみを感じたときは、その気持ちを抑え込まないでください。信頼できる家族や友人に話すだけでも、心の重さは変わります。眠れない、食べられないといった状態が続くときは、産科医や助産師、自治体の相談窓口に早めに声をかけてください。
ステップ2|遺伝カウンセリングを受ける
2つ目のステップは、遺伝カウンセリングを受けて、結果の意味と選択肢をていねいに整理することです。遺伝カウンセリングとは、専門の医師やカウンセラーが、検査結果や次の選択について中立の立場で情報を伝え、気持ちに寄り添う場を指します。答えを押しつける場ではありません。疑問を言葉にできる時間です。
カウンセリングでは、陽性的中率の意味、確定検査の内容、対象となる染色体の特性などを、ご自身の状況に合わせて聞くことができます。ネット検索だけでは埋まらない不安が、対話でほどけていくことは少なくありません。分からないことは、遠慮なくその場で聞いてください。
ヒロクリニックNIPTでは、産婦人科専門医・小児科専門医・臨床遺伝専門医が連携し、医師による遺伝カウンセリングを行っています。陽性となった場合の羊水検査については、他院で受ける場合も含めて費用をサポートする体制を整えています。一人で抱えず、まず相談してください。
公的・学術的な情報にあたることも、落ち着いた判断を支えます。出生前検査の相談先については出生前検査認証制度等運営委員会の情報が参考になります。妊娠や分娩に関する一般的な情報は日本産科婦人科学会の発信も確認してください。信頼できる情報にあたることが、安心につながります。
ステップ3|確定検査(羊水検査・絨毛検査)を検討する
3つ目のステップは、羊水検査や絨毛検査などの確定検査を受けるかどうかを、医師と相談しながら検討することです。確定検査は、胎児の染色体を直接調べ、診断を確定させる方法です。受ける・受けないの選択自体も、ご本人とご家族の意思が尊重されます。ここでは検査の位置づけと、心の準備のヒントを整理します。
羊水検査は、おなかに細い針を刺して羊水を採取し、染色体を調べる検査です。多くはおおむね妊娠15〜16週以降に受けられます。絨毛検査は、それより早い時期に胎盤の一部を採取する方法です。どちらもごくわずかながら流産などのリスクを伴うため、実施時期や安全性を医師とよく話し合って決めてください。
確定検査を控えた妊婦さんが、痛みや結果までの日数を気にされるのは自然なことです。実際にXでも、NIPTで21トリソミー陽性となり後日羊水検査を受ける予定の方が、経験者に「針の痛みはどうでしたか」「結果はどのくらいで来ましたか」と情報を求めていました。@tetete_4649さんのそうした問いかけには、同じ道を歩む人の切実さがにじみます。分からないことを人に尋ねる姿勢こそ、次に進む力になります。
羊水検査の流れや、当日の様子、結果までの期間については、羊水検査についての記事でくわしくまとめています。検査のイメージを事前につかんでおくと、当日の緊張がやわらぎます。あわせて読んでみてください。
費用の見通しを立てておくことも、安心につながります。確定検査を含めた出生前検査の費用は、出生前検査の費用の記事を参考にしてください。ヒロクリニックNIPTでは、他院での羊水検査にも適用できる補助を用意しています。金銭面の不安があるときも、遠慮なくご相談ください。
パートナー・家族との共有と、正確な情報の集め方
陽性という結果は一人で抱えるものではなく、パートナーや家族と気持ちを分かち合い、正確な情報を一緒に集めることが支えになります。心の揺れは、本人だけでなくパートナーにも起こります。だからこそ、率直に話す時間をつくってください。焦って結論を出さず、少しずつ理解を深めることが大切です。

検査を受ける前に、結果がどうであっても家族としてどう向き合うかを話し合っておくと、心づもりがしやすくなります。実際にXでも、もし陽性だったらこの子のことだけでなく家族計画としてどうするかを事前に夫と決めてから受けた、という声がありました。@nene0258さんは「どうするかはご家庭それぞれ」と前置きしつつ、検査前に方向性を話し合っておくことの大切さをつづっています。何を選ぶかに正解はなく、話し合う過程そのものに意味があると感じます。
情報の集め方にも、コツがあります。陽性のあとは不安からネット検索に頼りがちですが、根拠の乏しい情報や、必要以上に不安をあおる内容も混じっています。頼りにしたいのは、主治医や検査機関の資料、学会や公的機関の発信です。他の人の体験談は心の支えになりますが、あくまで個別のケースだと受け止めてください。
もし赤ちゃんを迎えると決めたとき、支援制度を知っておくことも準備の一つになります。障害のあるお子さんの支援についてはこども家庭庁 障害児支援の情報が参考になります。妊娠中から相談先を知っておくと、生まれたあとの見通しが立ちやすくなります。どんな選択をしても、頼れる制度と人がいることを覚えておいてください。
よくある質問
Q. NIPTで陽性が出たら、赤ちゃんに必ず染色体の変化があるのですか?
必ずではありません。NIPTは対象の染色体を調べる非確定的検査で、陽性は「可能性が高い」ことを示すにとどまります。陽性でも、確定検査で染色体の変化がないと分かることがあります。実際にどれくらいの割合で変化があるか(陽性的中率)は、年齢やその集団での有病率によって変わります。確定には羊水検査などの確定検査が必要です。まずは担当医や遺伝カウンセラーに相談してください。
Q. 陽性と分かったあと、まず何をすればよいですか?
結果を落ち着いて正しく受け止めることから始めてください。次に、遺伝カウンセリングで結果の意味や選択肢を整理し、そのうえで羊水検査や絨毛検査などの確定検査を受けるかどうかを検討します。この3つの順番で進むと、一つずつ判断でき、気持ちの負担がやわらぎます。分からない点はその場で医師に質問し、メモを取りながら聞くと安心です。
Q. 遺伝カウンセリングは受けたほうがよいですか?
受けることで、結果の意味や次の選択肢を、ご自身の状況に合わせて中立の立場から聞くことができます。答えを押しつける場ではなく、疑問や不安を言葉にできる時間です。ネット検索だけでは埋まらない疑問が、対話でほどけることは少なくありません。ヒロクリニックNIPTでは臨床遺伝専門医が連携し、医師による遺伝カウンセリングを行っています。迷ったときはまず相談してください。
Q. 確定検査(羊水検査)はいつ受けられますか?費用は補助されますか?
羊水検査は、多くはおおむね妊娠15〜16週以降に受けられます。ごくわずかながらリスクを伴うため、時期や安全性を医師とよく相談して決めてください。費用の見通しは事前に確認しておくと安心です。ヒロクリニックNIPTでは、他院での羊水検査にも適用できる補助を用意しています。金銭面の不安があるときも、遠慮なくご相談ください。
Q. これから先の選択について、家族と意見が合わないときはどうすればよいですか?
急いで結論を出さず、時間をかけて理解を深めてください。どう受け止め、どう進むかは、ご本人とご家族の気持ちがいちばん尊重されます。お互いの感情や考えを率直に話す時間を意識的に設け、必要なら一緒に遺伝カウンセリングを受けると、情報の整理に役立ちます。話し合いに正解はなく、その過程そのものに意味があります。一人で抱え込まず、専門の相談窓口も頼ってください。
Q. 結果を待つ間の不安が強いときは、どうすればよいですか?
不安を感じるのは自然なことです。まず、信頼できる家族や友人に気持ちを話してみてください。話すこと自体が、気持ちの整理につながります。ネット検索を続けると不安が増すことがあるため、情報に触れる時間を区切るのも一つの工夫です。眠れない、食べられないといった状態が続くときは、産科医や助産師、自治体の相談窓口に早めに声をかけてください。
著者・監修
岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
- American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG), Society for Maternal-Fetal Medicine (SMFM). Practice Bulletin No. 226: Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities. Obstetrics & Gynecology. 2020;136(4):e48-e69. doi:10.1097/AOG.0000000000004084
- Bianchi DW, Parker RL, Wentworth J, Madankumar R, Saffer C, Das AF, et al. DNA sequencing versus standard prenatal screening for fetal trisomies. New England Journal of Medicine. 2014;370(26):2510-2517. doi:10.1056/NEJMoa1311074
- Norton ME, Jacobsson B, Swamy GK, Laurent LC, Ranzini AC, Brar H, et al. Cell-free DNA analysis for noninvasive examination of trisomy. New England Journal of Medicine. 2015;372(17):1589-1597. doi:10.1056/NEJMoa1407349
- Gil MM, Accurti V, Santacruz B, Plana MN, Nicolaides KH. Analysis of cell-free DNA in maternal blood in screening for fetal aneuploidies: updated meta-analysis. Ultrasound in Obstetrics & Gynecology. 2017;50(3):302-314. doi:10.1002/uog.17484
- Rose NC, Barre LK, Bristow RE, Brown S, Curnow KJ, Gross SJ, et al. Positive Predictive Value of Noninvasive Prenatal Screening for Fetal Chromosome Abnormalities in a General Clinical Population. American Journal of Perinatology. 2020;37(8):836-841. doi:10.1055/s-0040-1710014
