この記事のまとめ
2q13欠失症候群は、2番染色体長腕(2q13)の領域が失われることで生じる、非常に希少な染色体変化です。含まれるのはBUB1・BCL2L11・FBLN7・TMEM87Bなど9つの遺伝子です。同じ欠失を持っていても、症状がまったく出ない方から発達遅滞・先天性心疾患を伴う方まで幅があります。この幅の大きさこそが、この疾患の理解を難しくしている一番の理由です。家族内での遺伝子検査(家系調査)が、診断とその後の見通しを立てるうえで欠かせません。本記事では、原因・症状・出生前診断で判明した場合の考え方から、治療や支援制度までを解説します。公表されている医学論文をもとにまとめました。
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お子様や胎児の検査結果に「2q13欠失」という言葉が出てきたら、戸惑う方も多いはずです。意味がすぐには分からず、不安になる方もいらっしゃるでしょう。
私たち医師の立場から申し上げると、この染色体変化は報告された症例数自体が非常に少ない疾患です。インターネット上でも、断片的な情報しか見つからないのが実情です。
筆者自身、遺伝カウンセリングの外来である相談を受けたことがあります。「同じ欠失を持つ家族なのに、症状の重さがまったく違う」という内容でした。まずは落ち着いて、現時点で分かっていることを一つずつ整理していきましょう。同じ不安を抱えるご家族は、決して少なくありません。
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1. 2q13欠失症候群とは|まず知っておきたい基本
2q13欠失症候群とは、2番染色体の長腕2q13領域の一部が失われることで生じる、遺伝子量の異常です。同じ欠失でも症状の有無・重さに大きな個人差があるのが最大の特徴です。
「2q13」という表記は、2番染色体の長腕(q腕)にある13番目の区分を指します。染色体地図上の住所のようなものだと考えると分かりやすいでしょう。
2015年の論文※1では、この領域の欠失に伴う遺伝子が具体的に示されています。共通して影響を受けるのは次の9つです。
- BUB1・ACOX1・BCL2L11・ANAPC1・MERTK
- TMEM87B・FBLN7・ZC3H8・ZC3H6
なかでもBCL2L11・FBLN7・TMEM87Bは中心的な領域です。報告された患者全員で共通して欠けています。
この2q13領域のすぐ近くには、NPHP1という別の遺伝子があります。NPHP1は腎臓の尿細管に関わる遺伝子です。この部分だけの欠失は、一般集団のおよそ0.5%に見られます。
多くは無症状の親から受け継がれる、病的意義の低い変化です※2。同じ「2q13」という名前でも、どの遺伝子を含むかで受け止め方が変わる点に注意してください。
2q13は染色体の構造上、重複や欠失が起こりやすい「反復配列」を含む領域でもあります。そのため、この領域が逆に増える2q13重複症候群についてという疾患も報告されています。
2. 原因|なぜ2q13の欠失が起こるのか
2q13欠失症候群の多くは、偶然新たに生じる(デノボ)ケースです。症状のない親から受け継ぐケースも報告されています。
2011年に発表された大規模な症例対照研究※3を紹介します。知的障害や発達遅滞、先天奇形のある15,767人のうち、12人にこの欠失が見つかりました。健常な成人8,329人では1人にとどまっています。発達の課題を持つ集団で明らかに頻度が高いという結果です。
一方で2015年の報告※1では、症状のある患者の母親と祖母が、ともに健康な保因者でした。同じおよそ1.8Mbの欠失を持ちながら、2世代にわたって症状が出ていませんでした。これは、浸透率(欠失を持つ人のうち実際に症状が出る割合)が完全ではないことを意味します。
本人だけでなく両親や近親者まで含めた家系調査。これが、遺伝カウンセリングの精度を左右します。
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3. 症状|出やすい症状とその頻度
2q13欠失症候群の症状は、無症状から複数の合併症を伴うケースまで幅広く分布しています。報告数がもっとも多いのは、発達遅滞・知的障害と顔貌の特徴。
これまでに報告された29例をまとめた文献※1では、症状の頻度が具体的に示されています。下の表を参考にしてください。
| 症状 | 報告数(29例中) |
|---|---|
| 発達遅滞・知的障害 | 13例 |
| 顔貌の軽度な形態異常 | 13例 |
| 先天性心疾患 | 7例 |
| 筋緊張低下 | 7例 |
| てんかん発作 | 5例 |
| 自閉スペクトラム症 | 4例 |
| 大頭症 | 4例 |
| 小頭症 | 3例 |
| 停留精巣などの生殖器の異常 | 3例 |
| 注意欠陥・多動性障害(ADHD) | 3例 |
症状の組み合わせは一人ひとり異なります。代表的な特徴を、体の部位別に整理しました。
- 発達・知的面
言語や運動発達の遅れ、軽度から重度までの知的障害が見られることがあります。 - 心臓の異常
先天性心疾患が報告されており、出生後の心エコー検査で確認されるケースがあります。 - 神経・筋の症状
筋緊張低下やてんかん発作が一部の症例で見られます。 - 身体的な特徴
顔貌の軽度な形態異常、大頭症または小頭症が報告されています。 - 行動面の特性
自閉スペクトラム症に似た特性やADHDの傾向が見られることがあります。
欠失の範囲や含まれる遺伝子によって、現れる症状の種類と重さが変わります。同じ「2q13欠失」という診断名でも、一人ひとりの欠失範囲を確認することが欠かせません。
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4. 出生前診断・出生後の検査でわかった場合に知っておきたいこと
2q13欠失はNIPTそのものでは検出できません。羊水検査などの確定検査に伴うマイクロアレイ検査で、偶然見つかることが一般的です。見つかったからといって、必ず症状が出るわけではありません。
NIPTは13・18・21トリソミーなど、特定の染色体数の異常を対象としたスクリーニング検査です。2q13欠失のような微細な構造異常は、通常の検査対象には含まれません。
NIPTは母体の血液中に含まれる胎児由来のDNA断片を解析する検査です。数Mb以下の微細な構造異常を安定して検出するには限界があります。
2q13欠失の多くは1〜2Mb程度の範囲にとどまり、この検出限界に近い大きさです。そのためマイクロアレイ検査などの確定検査で、偶発的に発見されるケースが大半を占めます。
日本産科婦人科学会の指針でも、検査前後の遺伝カウンセリングを重視しています※4。偶発的にこの欠失が見つかった場合は、次の3つのステップで整理すると分かりやすいでしょう。
- まず両親の血液検査で同じ欠失がないかを確認する。
- 欠失の範囲(Mb数)と含まれる遺伝子を具体的に確認する。
- 遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医と一緒に、報告例と照らし合わせて見通しを話し合う。
不安な気持ちを一人で抱え込まず、専門医への相談を検討してください。当院のLINE無料相談でも、検査結果の読み方についてご質問いただけます。
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5. 治療と療育|今からできるサポート
2q13欠失症候群そのものを治す治療法はなく、症状に応じた発達支援と医療管理が中心になります。早期からの介入が、その後の生活の質を大きく左右します。
- 発達支援・療育
言語療法、理学療法、作業療法を組み合わせ、個別の療育計画に沿って進めます。 - 行動面のサポート
ASDに似た特性が見られる場合、行動療法や学校との連携を通じて支援体制を整えます。
身体合併症がある場合は、以下のような医療的な管理も必要になります。
- 心臓のフォロー
先天性心疾患がある場合、小児循環器科での定期的な経過観察を行います。 - てんかんの管理
発作がある場合は、抗てんかん薬による発作コントロールを行います。 - 発育・発達のフォロー
大頭症や小頭症を伴う場合、頭囲と発達の推移を定期的に確認します。
6. 予後|見通しの立て方
予後は欠失の範囲と症状の有無によって大きく異なり、一律に語ることはできません。無症状のまま経過する方もいれば、継続的な支援が必要な方もいます。
早期の療育開始と定期フォローの継続。この2点が、発達面・身体面いずれの見通しを考えるうえでも土台になります。欠失範囲が狭く、無症状の保因者としての報告が複数ある場合は、過度に悲観する必要はありません。
一方で欠失範囲が広く、心臓や神経の症状を伴う場合は、専門医と長期的な管理計画を立てておくと安心です。乳幼児期は半年〜1年ごとの発達評価が目安です。学齢期以降は年1回程度、身体的合併症をチェックするとよいでしょう。
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7. ご家族の負担とサポート制度
2q13欠失症候群のお子様を育てるご家庭には、医療・経済・精神面でさまざまな負担がかかります。一人で抱え込まず、公的な制度を積極的に利用してください。
- 医療的な管理の負担
循環器・神経など複数科にわたる定期受診が必要になる場合があります。 - 経済的な負担
療育費や通院費がかさむ場合は、自立支援医療(育成医療)の対象か確認してください。小児慢性特定疾病医療費助成についても、自治体の窓口で相談できます。
発達の程度によっては療育手帳や特別児童扶養手当の対象となることもあります。まずはお住まいの市区町村の保健センターや児童発達支援センターに相談してみてください。地域の福祉窓口や患者会への相談も、精神的な負担の軽減につながります。医療・教育・福祉、この3つの窓口を早めに把握しておくこと。
8. 似た名前の疾患との違い
「2q13」「21q22」など似た名前の疾患が多く、混同しやすい分野です。以下の表で当院の関連記事とあわせて整理します。
| 疾患名 | 染色体変化 | 特徴 |
|---|---|---|
| 2q13欠失症候群(本記事) | 2番染色体q13の欠失 | 症状の個人差が大きく、無症状の保因者も多い |
| 2q13重複症候群 | 2番染色体q13の重複 | 同じ領域の「重複」タイプ |
| 21q22.11-q22.12微小欠失症候群 | 21番染色体q22の欠失 | 染色体番号が異なる別疾患 |
9. よくある質問
診察やLINE相談でよくいただくご質問を、6つにまとめました。
Q1. 2q13欠失症候群は遺伝しますか?
親から子へ受け継がれる場合と、偶然新たに生じる場合の両方があります。両親の血液検査で確認できます。
Q2. NIPTでこの欠失はわかりますか?
通常のNIPTは対象外です。羊水検査などに伴うマイクロアレイ検査で偶然見つかるケースがほとんどです。
Q3. 欠失が見つかっても症状が出ないことはありますか?
あります。症状のある患者の母親と祖母が、健康な保因者だった報告もあります。
Q4. 2q13重複症候群とは何が違いますか?
同じ2q13領域の変化ですが、欠失と重複は逆方向の変化です。症状の出方も異なります。
Q5. 次の妊娠でも同じことが起こりますか?
両親のどちらかが同じ変化を持つ場合は、再発の可能性があります。次回妊娠前に遺伝カウンセリングを受けてください。
Q6. どの診療科に相談すればいいですか?
臨床遺伝専門医や小児科の遺伝外来が窓口です。当院のNIPT外来でも検査結果の読み方についてご相談いただけます。
ここまで読んで「次に何をすればいいか」が見えてきたら、まず両親の血液検査から始めてください。かかりつけの産婦人科や小児科に相談すれば、臨床遺伝専門医のいる医療機関を紹介してもらえます。
当院のNIPT外来でも、検査結果の読み方や次の一歩についてご相談いただけます。お電話(0120-169-629)またはLINEでどうぞ。おひとりで抱え込まず、まずは話を聞かせてください。
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参考文献:
※1 Hladilkova E, et al. “A recurrent deletion on chromosome 2q13 is associated with developmental delay and mild facial dysmorphisms.” Mol Cytogenet. 2015;8:57.(PubMed)
※2 ClinGen Dosage Sensitivity Curation「2q13 recurrent region (proximal) (includes NPHP1)」
※3 Cooper GM, et al. “A copy number variation morbidity map of developmental delay.” Nat Genet. 2011;43(9):838-846.(PubMed)
※4 出生前検査認証制度等運営委員会
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日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

