21q22.11-q22.12 微小欠失症候群

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21q22.11-q22.12微小欠失症候群は、発達遅延、知的障害、行動異常などを引き起こす遺伝疾患です。早期の支援と医療管理により生活の質を向上できます。

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「21q22.11-q22.12微小欠失症候群」という診断名を見て、ダウン症(21トリソミー)と同じ病気なのか、混乱していらっしゃるかもしれません。

結論からお伝えします。この病気はダウン症とは異なり、21番染色体の長腕「22.11」から「22.12」の一部が欠けることで起こる、世界の報告例が限られたごく希少な染色体疾患です。発達の遅れや特徴的な顔つきに加え、血小板が少なくなる血液の症状を伴う点が大きな特徴です。この記事では原因遺伝子や症状、ダウン症との違い、NIPTとの関係、診断から治療までを整理します。

GARD(米国国立衛生研究所 希少疾患情報センター)・NCBI MedGen・医学論文などの公的機関・学術情報にもとづいてお伝えします。聞き慣れない言葉が続きますが、一つずつ確認していきましょう。

💡 この記事でわかること

  • 21q22.11-q22.12微小欠失症候群がどのような染色体の変化なのか
  • ダウン症(21トリソミー)とは何が違うのか
  • 発達の遅れや血小板減少を中心とした主な症状
  • 原因遺伝子RUNX1が血液の病気とどう関わるのか
  • 出生前診断・NIPTでこの病気が対象になるかならないか
  • 診断後の治療方針とご家族への支援の選択肢

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1. 21q22.11-q22.12微小欠失症候群とは(原因となる染色体の変化)

この病気は、21番染色体の長腕22.11から22.12にかけての領域が、生まれつき欠けている状態です。米国国立衛生研究所(NIH)が運営する希少疾患情報センターGARD(Genetic and Rare Diseases Information Center)では、出生前後の成長遅延・低身長、重い発達の遅れと言葉の遅れ、知的障害、血小板減少症、特徴的な顔つきを伴う染色体疾患と説明されています。

この領域に含まれる代表的な遺伝子がRUNX1です。RUNX1は血液細胞、特に血小板のもとになる巨核球という細胞が正常に分化するために欠かせない転写因子(遺伝子の働きを調整するタンパク質)です。欠失の範囲がRUNX1だけにとどまるか、周辺の遺伝子まで広がるかによって、症状の重さが変わってくると考えられています。

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2010年の報告と、その後の症例の広がり

この病気を体系的にまとめた代表的な報告が、2010年に発表された3名の患者さんの論文です。アレイCGHという解析技術で見つかった、いずれも突発的な欠失(デノボ)でした。全員に重い発達の遅れ・特徴的な顔つき・行動の問題・血小板減少症が共通して見られました。

この論文では、欠失の広がり方によって症状のパターンが二通りに分かれる可能性も指摘されています。欠失がRUNX1周辺に限られる場合は血小板減少症が目立ち顔つきの変化は軽い、あるいは目立たないケースがある一方、欠失が広い場合は血小板減少症に加えて成長・発達の遅れが重なりやすい、という傾向です。

その後も、新生児期から重い血小板減少を示した例(Journal of Perinatology誌の症例報告)や、先天感染症と紛らわしい経過をたどった例(症例報告)など、個別の症例報告が積み重ねられています。世界的にもまだ症例が少なく、頻度や典型的な経過が確立している段階ではありません。

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2. ダウン症(21トリソミー)との違い

同じ21番染色体が関わるため混同されやすいのですが、ダウン症(21トリソミー)と本記事の21q22.11-q22.12微小欠失症候群は、染色体の変化の方向がまったく逆です。違いを表で整理します。

比較項目ダウン症候群(21トリソミー)21q22.11-q22.12微小欠失症候群(本記事)
染色体の変化21番染色体が1本多い(3本ある)21番染色体の一部領域が欠けている
頻度比較的頻度が高く、標準的なNIPTの主要な対象世界の報告例が限られる超希少疾患
血小板減少一部で新生児期に一過性の血液異常が見られることがあるRUNX1の働きにより持続的な血小板減少が中心的な症状
知的障害・発達の遅れ軽度から中等度が中心重い発達の遅れ・言葉の遅れを伴うことが多い
NIPTでの検出基本NIPTの対象基本NIPTの対象外

ダウン症は21番染色体が3本になる「トリソミー」であるのに対し、本記事の病気は21番染色体の一部が失われる「微小欠失」です。同じ染色体番号でも、増えるか減るかで原因も症状の中心も異なります。検査結果に「21番染色体」という言葉があっても、トリソミーか欠失かで意味が大きく変わりますので、担当医に確認してください。

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3. 主な症状

発達の遅れと血小板減少症を軸に、成長の遅れや特徴的な顔つきを伴うことがあり、症状の組み合わせは一人ひとり異なります。GARDおよび2010年の症例報告をもとに、報告されている特徴を整理します。

症状・特徴報告の状況
出生前後の成長遅延・低身長複数の報告例に共通
重い発達の遅れ・言葉の遅れほぼ全例に見られる中心的な症状
知的障害複数例で報告
血小板減少症RUNX1の関与により中心的な症状として報告
特徴的な顔つき(小頭症・つり目瞼裂・低い位置の耳・広い鼻・薄い上唇・への字口)複数例で報告
脳MRI異常(脳梁欠損など)一部の症例で報告
行動の問題複数例で報告
けいれん発作一部の症例で報告

血小板減少症は、あざができやすい、鼻血が止まりにくいといった形で気づかれることがあります。程度は軽いものから、出生直後から輸血が必要になるほど重いものまで幅があります。発達面の見通しについてはNIPTと知的障害の限界についての記事もあわせてご覧ください。

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4. RUNX1遺伝子と血液の病気(血小板減少と将来のリスク)

この病気の症状の中でも特に注意したいのが、原因遺伝子RUNX1に由来する血液の問題です。RUNX1は血小板をつくる仕組みに関わるだけでなく、血液細胞全体の分化にも関与しています。

RUNX1の変化だけが単独で起こる場合、「RUNX1関連家族性血小板異常症(RUNX1-FPDMM)」という常染色体顕性の病気として知られています。軽度から中等度の血小板減少や血小板機能の異常に加え、生涯を通じて骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)を発症しやすくなることが報告されています。本記事の病気のように、RUNX1を含む広い範囲が欠ける場合も、同じ遺伝子の働きが失われるため、血液内科による長期的な経過観察が勧められています。

すべての方が血液のがんを発症するわけではありません。ただし、定期的な血液検査で血小板数や血球の状態を確認し続けることが、将来の変化に早く気づくための備えになります。

似た症状を示す別の疾患(ブラドック・ケアリー症候群)

21番染色体のより広い範囲(21q21-q22領域)が欠けると、ピエール・ロバン症候群(下顎が小さく舌が沈み込む状態)、持続する先天性血小板減少症、脳梁欠損、重い発達の遅れなどを伴う「ブラドック・ケアリー症候群」という疾患名が使われることもあります。この疾患名は1994年に初めて報告され、2016年にRUNX1を含む21q領域の欠失が原因であると確認されました。なお、同じ症状を示しながら21番染色体の欠失を伴わず、3番染色体上のKIF15遺伝子の変化が原因と判明した家系も報告されており、見た目の症状が同じでも原因遺伝子が異なるケースがある点は知っておいて損はありません。

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5. 原因と遺伝形式

2010年の代表的な症例報告では、確認された欠失はすべて偶発的な変化(デノボ)でした。多くの場合、次のお子さまへの影響を心配しすぎる必要はありません。

精子や卵子が作られる過程、あるいは受精後まもない細胞分裂の際に、偶然この欠失が生じることがあります。妊娠中の食事や生活習慣が原因で起こるものではありません。ご自身を責める必要はありません。

一方で、RUNX1関連家族性血小板異常症は常染色体顕性遺伝の形式をとることが知られており、片方の親が同じ変化を軽度に持っている場合は、次のお子さまにも約半分の確率で伝わる可能性があります。ご家族の遺伝形式を正確に把握するには、両親の染色体検査が有用です。

私自身、外来で希少な染色体疾患のお子さまを持つご家族から、次子について相談を受けることがあります。ご両親の検査結果が分かるだけでも、次の妊娠に向けた見通しを立てやすくなると感じています。次のお子さまへの影響が気になる場合は、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングをご検討ください。

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6. 出生前診断・NIPTとの関係

21q22.11-q22.12領域の欠失は、標準的なNIPTの対象には含まれず、微小欠失まで対象を広げた拡大検査でも、名指しで検査対象に含む会社は限られるごくまれな領域です。

一般的な基本NIPTが調べるのは、21・18・13トリソミーという染色体の「数」の変化が中心です。前章で触れた通り、この病気は染色体が「増える」トリソミーではなく「欠ける」欠失であり、検出の仕組みが異なります。22q11.2欠失症候群のような比較的頻度の高い微小欠失を対象に含む拡大プランもありますが、21q22.11-q22.12領域は世界の報告例が限られるごく希少な領域のため、対象に含めるかどうかは検査会社やプランによって異なります。ご自身が検討しているプランの検査対象範囲は、事前に確認しておくと安心です。

私たちヒロクリニックNIPTにも、「微小欠失まで調べる検査で、聞いたことのない領域が候補に挙がったらどうすればよいか」というご相談が寄せられることがあります。まず知っていただきたいのは、NIPTはあくまで非確定的なスクリーニング検査だという点です。

公益社団法人日本産科婦人科学会のNIPTに関する指針でも、NIPTの結果はスクリーニング(非確定的)検査の範囲にとどまるとされています。確定診断には、羊水検査などの侵襲的な検査が必要です。微小欠失は対象範囲が広くなるほど、陽性であっても実際に疾患を有する割合(陽性的中率)が下がりやすい傾向も知られています。

NIPTで21q22.11-q22.12領域を含む微小欠失の陽性所見が出た場合、流れは次の通りです。まず遺伝カウンセリングで結果の意味を確認します。その上で、羊水検査による染色体マイクロアレイ検査(CMA)を受けるかどうかを判断します。あわてて結論を出さず、専門家と一緒に一つずつ整理してください。

7. 診断が確定するまでの流れ

確定診断には、染色体マイクロアレイ検査(CMA)という精密検査が中心的な役割を果たします。

染色体マイクロアレイ検査(CMA)

従来の顕微鏡による染色体検査(G分染法)では見つけられないような、数百kbから数Mb単位の微細な欠失や重複を検出できる検査です。この検査により、欠失している範囲がどこからどこまでか、RUNX1が含まれているかどうかまで詳細に分かります。羊水検査マイクロアレイ検査の関係については羊水検査によるマイクロアレイ検査の解説記事で詳しく整理しています。

両親の検査と出生後の評価

両親の血液を調べることで、デノボなのか家族内で伝わったものなのかを判別できます。出生後は、血液検査による血小板数の確認、心エコー、脳MRI、発達検査を組み合わせて、お子さまの状態を総合的に把握していきます。

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8. 治療とサポート

失われた染色体の一部を元に戻す根本的な治療法はまだありませんが、血液面の管理と発達支援を組み合わせて、お子さまらしい成長を支えることができます。

  • 血液面の管理:血液内科と連携し、血小板数を定期的に確認します。出血傾向が強い場合は血小板輸血を検討し、将来的な血液疾患の兆候にも注意を払います。
  • 発達支援(療育):理学療法(PT)、作業療法(OT)、言語聴覚療法(ST)を通じて、運動・言葉・生活動作の発達を後押しします。
  • けいれん発作への対応:発作がある場合、小児神経科と連携して抗てんかん薬による管理を行います。
  • 成長・栄養面のフォロー:成長の遅れがある場合、小児科と相談しながら栄養面のサポートを進めます。
  • 行動面の支援:行動療法や心理療法を通じて、行動面の問題に対応します。

症状の組み合わせも重さも一人ひとり違うため、「この病気なら必ずこうなる」という決まった経過はありません。担当する血液内科医・小児神経科医・療育スタッフと相談しながら、お子さまに合わせた支援計画を少しずつ組み立てていくことになります。

9. 予後と見通し

報告されている症例数がごく少ないため長期的な見通しを断定することは難しく、血小板減少の程度と将来の血液疾患リスクへの備えが、生活の質を左右する大きな要因の一つとされています。

発達の遅れや顔つきの変化が軽度な方がいる一方、出生直後から輸血を要するほど血小板減少が重い報告もあります。この差は、欠失の範囲やRUNX1以外に含まれる遺伝子の組み合わせによって生じると考えられています。

私がこれまでの診療の中で感じるのは、血液面の管理が落ち着いた後は、療育をどれだけ早く始められるかによって、日々の生活のしやすさが変わってくるということです。世界的にも症例の蓄積が続いている段階のため、担当医と経過を確認しながら見通しを立てていくことになります。

10. ご家族への支援と、次のお子さまを考えるときに

希少疾患ゆえの孤独感は大きいものですが、遺伝カウンセリングや患者会、公的な相談窓口など、頼れる場所は複数あります。

近所で同じ病気のお子さまを見つけるのは難しいかもしれません。それでも、染色体起因の希少疾患をもつ家族どうしのつながりや、遺伝カウンセリングの専門的なサポートは活用できます。医療的な管理は医師や療育スタッフに任せ、ご家族の役割は、目の前のお子さまの小さな成長を一緒に喜ぶことだと考えています。

他の微小欠失症候群についても気になる方は、あわせてご確認ください。

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微小欠失全般が心配な方は染色体の微細な異常がもたらすリスクについての記事も参考になります。

次のお子さまに向けてNIPTを検討する場合、微小欠失をどこまで対象に含むかでプランの内容が変わります。ご自身に合うプランが分からない場合は、プラン診断を試してみてください。お電話でのご相談も受け付けています。0120-169-629までお気軽にお問い合わせください。

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よくある質問

21q22.11-q22.12微小欠失症候群はダウン症と同じ病気ですか。

別の病気です。ダウン症(21トリソミー)は21番染色体が3本になる変化であるのに対し、本記事の病気は21番染色体の一部が欠ける変化で、原因も症状の中心も異なります。

血小板が少なくなるのはなぜですか。

欠失した領域に含まれるRUNX1という遺伝子が、血小板をつくる細胞の分化に関わっているためです。RUNX1の働きが弱まることで血小板減少症が起こりやすくなります。

21q22.11-q22.12領域の欠失はNIPTでわかりますか。

標準的なNIPTの対象には通常含まれず、微小欠失まで対象を広げた拡大検査でも、名指しで対象に含む会社は限られます。NIPTは非確定的な検査のため、陽性所見が出た場合は羊水検査などの確定検査で判断します。

遺伝性の病気ですか。次の子にも影響しますか。

代表的な症例報告では、確認された欠失はすべて偶発的な変化(デノボ)でした。この場合、次のお子さまへの再発リスクは一般的に低いとされます。ただしご両親のどちらかが同じ変化を軽度にお持ちの場合は、約半分の確率で伝わる可能性があるため、遺伝カウンセリングで確認してください。

将来、血液のがんになりやすいのですか。

RUNX1の変化に由来する病気では、骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)を発症しやすくなることが報告されています。すべての方が発症するわけではありませんが、血液内科による定期的な経過観察が勧められています。

どのような検査で確定診断されますか。

染色体マイクロアレイ検査(CMA)が中心です。従来の顕微鏡検査では見逃されるような微細な欠失も発見でき、必要に応じて両親の検査で確認します。

監修:岡博史(おか ひろし) / 医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、医学博士。国内でも数少ないラボディレクター資格を保有しています。本記事は医療広告ガイドラインに配慮し、GARD・NCBI MedGen・学術論文などの公的機関・学会情報を参照して作成しています。記載の頻度・数値は報告例が少なく文献により幅があり、診断・治療の最終判断は担当医にご相談ください。

21q22.11-q22.12微小欠失症候群は、発達遅延、知的障害、行動異常などを引き起こす遺伝疾患です。早期の支援と医療管理により生活の質を向上できます。

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医師監修 監修日:2024年11月15日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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