18p 欠失症候群

NIPT ヒロクリニックにおけるNIPT判定不能ケースの状況と対策 File name: 25027204_s.jpg

18p欠失症候群は、18番染色体の欠失によって発達遅延、知的障害、筋緊張異常などの症状が現れる遺伝的疾患です。早期の支援と治療で生活の質を向上させることができ、家族は専門機関と連携してサポートを受けることが重要です。

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この記事のまとめ

18p欠失症候群は、18番染色体の短腕(18p)の一部または全部が失われることで起こる、生まれつきの染色体疾患です。成長障害や精神発達遅滞、言語発達の遅れ、特徴的な顔立ちなどが主な症状で、約10%では全前脳胞症という脳の重い形成異常を伴います。出生5万人に1人程度と推定される稀な疾患で、約60%は偶発的に生じる孤発例です。ヒロクリニックNIPTの基本的な微小欠失検査(23種)の対象ではありませんが、全ゲノム解析による拡大検査(116種)には対象疾患として含まれています。確定診断には出生後または出生前の染色体検査が必要です。根本的な治療法は確立されていませんが、早期の療育と対症療法によって生活の質を支えることができます。

この記事でわかること

  • 18p欠失症候群とはどのような病気か、原因となる染色体領域
  • 成長障害・発達遅滞・顔立ちの特徴など、主な症状の全体像
  • 診断の流れと、確定検査でわかること
  • NIPTでわかるのか、基本検査と拡大検査での位置づけの違い
  • 18q欠失症候群・テトラソミー18p・18トリソミーとの違い
  • 治療の選択肢と、家族が使える相談窓口

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18p欠失症候群とは|18番染色体短腕の欠失で起こる稀少疾患

18p欠失症候群は、18番染色体の短腕(短い方の腕・18p)の一部または全体が失われることで起こる、生まれつきの染色体疾患です。失われる範囲は人によって異なり、ごく一部の欠失から短腕全体の欠失まで幅があります。欠失の大きさと含まれる遺伝子の種類によって、現れる症状の組み合わせも一人ひとり違ってきます。

どのくらい稀な病気なのか

18p欠失症候群の発症頻度は、出生5万人に1人程度と推定されています。性別による差もあり、女性と男性の比は3対2で、やや女性に多い傾向です。世界でこれまでに報告された症例数は150例超。実際の患者数はさらに多いとみられています。

数字だけでは実感しにくい疾患です。ですが、稀な病気だからこそ、正しい情報にたどり着きにくいという事情があります。この記事では、公的機関や学術情報をもとに、現時点でわかっていることを整理していきます。

原因|なぜ18番染色体の短腕が失われるのか

原因は18番染色体短腕(18p)の一部または全体が失われることで、約60%は両親の染色体に異常がない偶発的な孤発例(デノボ)です。残りは、ご両親のどちらかが均衡型転座(染色体の一部が入れ替わっているものの、遺伝情報の過不足がない状態)を持っている場合に起こります。

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短腕の末端に近い18p11.3という領域には、TGIF1という遺伝子があります。この遺伝子は胎児の脳の正中構造がつくられる過程に関わっており、欠失に含まれていると全前脳胞症のリスクに関係するとされています。ただし、TGIF1が欠けていても症状が出ない人もいるため、欠失があれば必ず発症するというものではありません。遺伝子の欠失と症状の重さが、単純な比例関係にはならない疾患です。

私は遺伝カウンセリングの現場で、「妊娠中の自分の行動が原因ではないか」と自分を責めてしまうご両親に、何度も出会ってきました。ですが、均衡型転座を持つご両親の場合を除けば、妊娠中の生活習慣が原因になることはありません。次のお子さんを考える際は、ご両親の染色体検査で状況を確認できます。気になる場合は遺伝カウンセリングで専門家に相談してください。

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主な症状|成長障害・発達遅滞・特徴的な顔立ちなど

主な症状は、成長障害、精神発達遅滞、言語発達の遅れ、そして特徴的な顔立ちで、現れ方や重さには個人差があります。すべての症状が同時にそろうわけではありません。代表的な症状を整理します。

  • 成長障害: 低身長が目立つことが多く、出生後の発育曲線で確認されます。
  • 精神発達遅滞・言語発達の遅れ: 運動能力や言葉の発達がゆっくりで、程度は軽度から中等度が中心です。
  • 特徴的な顔立ち: 小頭症、短い人中、広く平らな鼻、眼瞼下垂、両眼隔離症などがみられることがあります。
  • 手足の特徴: 手足が小さめで指が短く、リンパ浮腫を伴うケースも報告されています。
  • 免疫・皮膚の特徴: 免疫グロブリンA(IgA)の欠乏や、乳児期からの脱毛がみられることがあります。
  • 先天性心疾患: 約5%で心臓の構造的な異常を伴うと報告されています。

なかでも注意が必要なのは、約10%で発生する全前脳胞症です。全前脳胞症は、妊娠初期に脳が左右に分かれる過程がうまく進まず、脳の正中構造や顔の形成に重い影響が出る状態を指します。すべての方に起こるわけではありませんが、欠失の範囲にTGIF1遺伝子が含まれる場合、リスクが高まるとされています。

みられることのある主な症状 成長障害 低身長 発達遅滞 言語発達の遅れ 顔立ちの特徴 個人差が大きい 手足の特徴 リンパ浮腫を伴うことも 免疫・皮膚 IgA欠乏・脱毛 先天性心疾患 約5%で報告
18p欠失症候群でみられることのある主な症状のイメージ
18p欠失症候群の症状や経過について家族が医師に相談するイメージ

診断の流れ|症状の確認から確定検査まで

診断は、成長障害や発達遅滞といった臨床症状の確認に加え、染色体検査による18番染色体短腕の欠失確認をあわせて行い、確定します。国内で統一された診断基準は確立されていないため、症状だけで診断することは困難です。

出生後であれば、血液を用いた染色体検査(G分染法)や、より詳細な範囲を調べるFISH法・染色体マイクロアレイ検査(アレイCGH)で欠失範囲を特定します。全前脳胞症が疑われる場合は、頭部MRIや超音波検査で脳の形成状態も確認します。出生前であれば、羊水検査絨毛検査による染色体検査で調べられることもあります。

検査位置づけ18p欠失症候群への対応体への負担
基本的なNIPT(13・18・21トリソミー)非確定的検査対象外(染色体の数の異常が対象)採血のみ
拡大検査(全ゲノム解析・116種)非確定的検査対象疾患に含まれる採血のみ
羊水検査+染色体検査(G分染法・FISH法)確定的検査欠失範囲まで確定できる流産リスク約0.3%前後
出生後の血液検査(染色体検査)確定的検査生まれた後に確定できる採血のみ
18p欠失症候群に関わる検査の比較(位置づけと負担の整理)

NIPTでわかるのか|基本23種検査の対象外・拡大116種検査の対象

18p欠失症候群は、基本的なNIPT(13・18・21トリソミー)や23種の基本的な微小欠失検査の対象ではありませんが、全ゲノム解析をもとにした拡大検査には対象疾患として含まれています。検査を検討する際は、この位置づけの違いを押さえておくことが大切です。

ヒロクリニックNIPTを例にすると、知的障害を伴う23種の微小欠失・重複疾患検査には18p欠失症候群は含まれていません。一方、全ゲノム解析をもとにした116種の微小欠失・重複症候群検査には、18p欠失症候群(18p deletion syndrome)が対象疾患の一つとして含まれています。同じ116種のリストには、短腕が過剰になるテトラソミー18pも別の疾患として含まれています。

ここで誤解しないでほしいのは、拡大検査で「陽性」や「疑いあり」と出ても、それだけでは診断が確定しないということです。NIPTはあくまで非確定的なスクリーニング検査であり、確定診断には出生前であれば羊水検査、出生後であれば血液による染色体検査が必要です。この点について、産婦人科領域で情報発信を行う室月淳氏(@junmurot)も指摘しています。「21トリソミーに対するNIPTの性能が高いからといって、微小欠失にも同じ性能があるわけではありません」。「微小欠失は感度特異度などは確立しておらず、日常臨床導入には十分な検討が必要です」とも述べています。私も、微小欠失検査の結果は数の異常のNIPTと同じ感覚で受け止めない方がよいと感じています。

18q欠失症候群・テトラソミー18p・18トリソミーとの違い

18p欠失症候群は、同じ18番染色体に関わる18q欠失症候群やテトラソミー18p、18トリソミー(エドワーズ症候群)とは、原因も症状の傾向も異なる別の病気です。名前が似ているため混同されやすい、要注意の組み合わせ。検査結果を見るときは病名を一文字ずつ確認してください。

病名染色体の変化特徴
18p欠失症候群18番染色体の短腕(p)の一部・全部が欠失成長障害・言語発達の遅れが中心、約10%で全前脳胞症
テトラソミー18p18番染色体の短腕(p)が通常の2本ではなく4本発達遅延・筋緊張異常・小頭症など、18p欠失症候群とは逆に短腕が過剰
18q欠失症候群18番染色体の長腕(q)の一部が欠失発達遅滞・難聴・白質形成不全など多様な症状
18トリソミー(エドワーズ症候群)18番染色体が3本(全体が1本多い)心臓・腎臓など複数臓器に重い合併症を伴うことが多い
18番染色体に関わる代表的な染色体疾患の違い

詳しい症状の違いは、18q欠失症候群を解説した記事テトラソミー18pを解説した記事18トリソミー(エドワーズ症候群)を解説した記事もあわせてご覧ください。検査結果に記載された染色体の変化の内容(欠失か重複か、短腕か長腕か)を確認することが、正しい理解の第一歩です。染色体異常全体の分類を先に押さえたい方は、染色体異常の種類一覧も参考にしてください。

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治療と療育|根本的な治療法はないが、できることは多い

18p欠失症候群を根本的に治す治療法は確立されていませんが、症状に応じた対症療法と早期の療育を組み合わせることで、生活の質を支えられます。複数の専門科がチームで関わることが基本です。

  • 発達支援: 理学療法・作業療法・言語療法を通じて、運動や言葉の発達を支えます。
  • 行動面へのアプローチ: 行動上の課題がある場合、心理療法や行動療法が提供されることがあります。
  • 内臓・全身管理: 先天性心疾患があれば循環器科、免疫の異常があれば専門科での定期的な管理が必要です。
  • 全前脳胞症への対応: 脳の形成異常の程度に応じて、小児神経科を中心にした継続的な経過観察が行われます。

予後は、症状の程度や医療支援の有無によって大きく異なります。全前脳胞症を伴わず、先天性心疾患も軽度であれば、早期の療育により発達の伸びが期待できるケースも少なくありません。一方で、重い脳の形成異常や心疾患を伴う場合は、生後早期からの集中的な医療管理が必要になります。

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妊娠中に18p欠失症候群の可能性を指摘されたら

拡大検査などで18p欠失症候群の可能性を指摘された場合は、まず確定検査で範囲を確認したうえで、遺伝カウンセリングを受けながら今後を考えることが基本の流れです。一人で抱え込まず、専門家に相談してください。

妊娠中に微小欠失の可能性を考え始めると、不安が次々と湧いてくるものです。実際、二人目の妊娠を控えたある方は「NIPTは確実にやるとして、無認可の方がいいのか、微小欠失までやるべきか、考えすぎて調べすぎて寝れない」とSNSに投稿しています(@yu________9240)。情報を集めるほど、かえって迷いが深くなる妊婦さんの気持ちがよく伝わってきます。

検査結果に「疑いあり」と書かれていても、それは確定診断ではありません。前述のとおり微小欠失検査の精度には限界があり、確定には出生前なら羊水検査、出生後なら血液検査が必要です。結果の意味を正しく理解するためにも、検査を受ける前後で遺伝カウンセリングを利用してください。

ご両親の心理的・経済的負担とサポート

長期的な療育や医療管理が必要なため、ご両親には経済的にも心理的にも負担がかかることがあります。稀な病気だからこそ、孤立しない環境づくりが支えになります。

私が診療の中で感じるのは、情報が少ない病気だからこそ、家族が孤立しないことが何より大切だということです。同じ経験をした家族とつながることや、公的な相談窓口を早めに知っておくことが、長い療育生活を支える力になります。

難病や希少な疾患の情報を調べたいときは、難病情報センターが窓口になります。発達支援については、国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センターが相談先や支援の考え方をまとめています。18p欠失症候群自体は指定難病として個別に指定されてはいませんが、症状によっては小児慢性特定疾病の対象となる疾患群に該当することもあるため、認定の可否は自治体の窓口や主治医に確認してください。

身近な支えとしては、地域の保健センターや児童発達支援センター、そして同じ経験を持つ家族会の存在があります。医療費や療育に関する助成制度もあるため、市区町村の窓口で確認してください。

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よくある質問

Q. 18p欠失症候群はNIPTで分かりますか?

基本的なNIPT(13・18・21トリソミー)や23種の基本的な微小欠失検査の対象ではありません。全ゲノム解析をもとにした116種の拡大検査には対象疾患として含まれていますが、NIPTは非確定的なスクリーニング検査のため、陽性であってもそれだけでは確定しません。確定診断には染色体検査が必要です。

Q. 18q欠失症候群と同じ病気ですか?

いいえ、別の病気です。18p欠失症候群は18番染色体の短腕(p)の欠失、18q欠失症候群は長腕(q)の欠失によって起こります。含まれる遺伝子も症状の傾向も異なるため、検査結果に記載された内容を確認して区別してください。

Q. テトラソミー18pとは違うのですか?

はい、違います。18p欠失症候群は短腕(p)が失われる疾患ですが、テトラソミー18pは反対に短腕が通常の2本ではなく4本存在する疾患です。染色体の変化の方向が逆で、原因も症状の出方も異なります。

Q. 診断はどのように確定するのですか?

成長障害や発達遅滞などの臨床症状に加え、染色体検査(G分染法・FISH法・染色体マイクロアレイ検査)による18番染色体短腕の欠失確認をあわせて総合的に診断します。出生前であれば羊水検査絨毛検査で、出生後であれば血液検査で調べられます。

Q. 親の妊娠中の生活が原因ですか?

いいえ、原因ではありません。約60%は偶発的に生じる孤発例(デノボ)で、まれにご両親のどちらかが均衡型転座を持っている場合がありますが、その場合も生活習慣が原因ではありません。気になる場合は遺伝カウンセリングで相談してください。

Q. 指定難病に認定されていますか?

18p欠失症候群自体は、現時点で公表されている資料の範囲では指定難病として個別に指定されていません。ただし、症状によっては小児慢性特定疾病の対象となる疾患群に該当することもあります。認定の可否は自治体の窓口や主治医で確認してください。

著者・監修

岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。

18p欠失症候群は、18番染色体の欠失によって発達遅延、知的障害、筋緊張異常などの症状が現れる遺伝的疾患です。早期の支援と治療で生活の質を向上させることができ、家族は専門機関と連携してサポートを受けることが重要です。

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医師監修 監修日:2024年11月15日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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