知的障害を伴う23種の微小欠失・重複疾患

微小欠失・重複疾患をやさしく解説するマンガ
このページのまとめ:本ページでは、知的障害をともなうことがある主要な23種の微小欠失・重複疾患を、国内の検査機関(東京衛生検査所)で解析するNIPT(新型出生前診断)としてくわしく解説します。ディ・ジョージ症候群など指定難病を中心に、染色体のどこが欠けて起こるのか(欠損部位)や、当院の検査実績データをまとめました。より広い143種を対象とする拡張オプションとの違いもあわせてご確認いただけます。

このページでわかること

  • 微小欠失・重複疾患とは何か、なぜ母体の年齢に関係なく起こるのかがわかります
  • 本ページで解説する主要な23種と、拡張オプションの143種の違いを整理して確認できます
  • ディ・ジョージ症候群など、頻度の高い疾患の症状と欠損部位がわかります
  • 当院で実際に検査した4,543件の実績データを確認できます
  • 検査の「陽性」と診断の「確定」の違い、陽性時に羊水検査へ進む流れがわかります
はじめにお読みください:NIPTは、赤ちゃんの染色体の状態を調べるスクリーニング検査(非確定的検査)です。対象は、このページで紹介する微小欠失・重複などに限られます。結果が「陽性」であっても、それだけで診断が確定するわけではありません。確定診断には羊水検査などの確定的検査が必要です。本ページの内容は、産婦人科・臨床遺伝の知見にもとづき、統括院長 岡 博史が監修しています。

23種と143種の微小欠失・重複疾患の違い

ヒロクリニックの微小欠失・重複疾患の検査には、大きく2つの種類があります。本ページで解説する主要な23種と、より広い範囲を調べる143種です。調べられる疾患数と解析する検査機関、結果までの日数が異なります。目的に合わせてお選びください。

項目主要な23種
(このページ)
143種
拡張オプション
検査対象指定難病を中心とした主要な23疾患最大143種類の微小欠失・重複疾患
解析する検査機関国内の検査機関
(東京衛生検査所)
国内の検査機関
(東京衛生検査所)
結果までの目安国内解析で最短2〜5日の報告体制国内解析で最短2〜5日の報告体制
特徴当院の検査実績データを公開・欠損部位までくわしく解説調べられる疾患数がもっとも多い網羅型
正常 領域がそろっている 微小欠失 × 一部が欠けている 微小重複 一部が増えている
図:微小欠失と微小重複のちがい(イメージ)

知っておきたい用語

微小欠失・重複(びしょうけっしつ・じゅうふく)
染色体のごく一部(およそ50万〜300万塩基)が欠けたり増えたりして、発達の遅れなどの症状が現れる状態です。
塩基(えんき)
遺伝情報を形づくる最小の単位です。「50万塩基」は、その並びの長さを表します。
指定難病
国が定める、原因の解明や治療研究が必要な病気です。医療費助成の対象になることがあります。
顕性遺伝(けんせいいでん)・潜性遺伝(せんせいいでん)
片方の遺伝子の変化で特徴が現れやすいのが顕性、両方の変化がそろって現れるのが潜性です(以前の「優性・劣性」の呼び方が改められました)。微小欠失・重複の多くは、両親にはなく赤ちゃんに新しく生じる変化(de novo)で、母体の年齢に関係なく起こります。

微小欠失・重複疾患(指定難病)とは

微小欠失・重複疾患とは染色体の特定の位置の遺伝子が欠失することによって生じる疾患です。

微小の名の通り、そのサイズは小さいものでは50万塩基からあり、通常50万から300万塩基配列の欠失によって生じると言われています。その欠失サイズと欠失位置によって、精神遅滞などの発達遅滞をともなう様々な症状と重症度の判定が行われます。また、微小欠失・重複疾患の多くは自然発生的なものであり、母体の年齢に関係なく発症すると言われています。

つまり、若齢から高齢のいずれの年齢の妊婦さんにおいても検査をする価値がないとは言い切れないということです。

頻度の高いディジョージ症候群(指定難病203)とは

ディジョージ症候群(指定難病203)は、22番染色体の特定の領域が欠けることによって引き起こされる遺伝的状態です。この症候群は、免疫系の問題、心臓の欠陥、特徴的な顔の違いなど、多岐にわたる影響を及ぼすことが知られています。比較的まれな疾患であるにもかかわらず、影響を受ける個人とそのご家族にとっては深刻な影響をもたらす可能性があります。

ヒロクリニックのNIPT検査による検出実績

ヒロクリニックで実施された3,322件の検査から5件のディジョージ症候群に関連する遺伝子異常が確認されました。これは、一般的な疫学的データに基づく4,000人〜6,000人に1人という割合よりも高く、約600人に1人の割合でディジョージ症候群(指定難病203号)が検出されています。これは、ヒロクリニックが提唱する微小欠失・重複疾患の検査が重要であることの裏付けにもなります。特に、遺伝的リスクが高いと考えられる妊婦様やそのご家族にとって、この検査は重要な情報を提供し、早期の介入や準備を可能にします。

ヒロクリニックNIPTで検査可能な微小欠失・重複疾患

ディ・ジョージ症候群(指定難病203)は生存している個体数ではダウン症の次に多いと言われています。これは、生命予後が比較的良いことが関係していると考えられます。このディ・ジョージ症候群を含め、本ページで解説する主要な23種は、国内の検査機関(東京衛生検査所)で解析します。ヒロクリニックのNIPTでは、さらに広い範囲を対象とする最大143種の微小欠失・重複疾患検査もご用意しています。

症例名ディ・ジョージ症候群1p36欠失症候群スミス・マギニス症候群ウォルフヒルシュホーン症候群クリ・デュ・チャット症候群
(猫鳴き症候群)
プラダー・ウィリー症候群アンジェルマン症候群
罹患部位22q11.21p3617p11.24p16.35p-15q11.215q11.2
最大頻度1/20001/50001/150001/500001/150001/100001/12000
最小頻度1/60001/100001/250001/960001/500001/150001/20000

ヒロクリニックにおける検査実績

過去75,000件以上(※1)のNIPT(新型出生前診断)を行ってきたヒロクリニックでは、4,543人(※2)が微小欠失・重複疾患について検査を実施しました。

4,543人の内、ディ・ジョージ症候群については1人が明確な陽性判定を受け、侵襲的検査にて陽性とありました。また、判定不能とされた5人の中で2人が羊水検査を受け、その結果1人は22q11.2の重複、もう1人はエマヌエル症候群が検出されました。エマヌエル症候群と診断されたケースは47,XY,+der(22)t(11;22)(q23.3;q11.2)として羊水検査がでており、これは11番染色体のq23.3の位置と22番染色体のq11.2の位置が入れ替わっているケースでした。ディジョージ検査は22番染色体のq11.2の欠失をを検出する検査ですが、この場所の位置が変わっているために異常として検出されました。ヒロクリニックのNIPT検査は微小欠失だけでなく重複や転座に関係する異常も検出することができることを示しています。残りの3人は検査後の後追いの報告がありません。さらに、陽性の可能性が高い(ボーダ判定)とされた5人のうち2人は後に羊水検査で陰性と判定されました。残りの3人は羊水検査を受けていません。

ディ・ジョージ症候群は、一般人口において約4,000~6,000人に1人の割合で発生すると推定され、22番染色体に微小欠失があることで生じる疾患です。微小欠失・重複疾患の検査を通じて、微小欠失・重複疾患と同領域の異常が発見されることもあります。これまでのところ少なくても4,543人中3人は侵襲的検査で22番染色体長腕11.2の領域の欠損重複が検出できているということになります。ほかの侵襲的検査未実施の人のデータが報告された時点で以下の表は更新いたします。

NIPT検査 羊水検査陽性 羊水検査陰性 未実施
陽性 1 1 0 0
陽性の可能性が高い 6 0 2 4
判定不能 5 2 0 3
サンプル数4543件数

この1,391件はすべて微小欠失・重複疾患の検査を含んでいます。

ディジョージ
症候群
1p36
症候群
猫なき
症候群
ウォルフ・ヒルシュホーン
症候群
アンジェルマン
症候群
陽性数0件0件0件0件0件
全件数1391件


約43%の妊婦で10%以下のFFしか得られていないため、DiGeorge症候群の微小欠失検査を行っても偽陰性になる可能性が高いです。

ディ・ジョージ症候群のNIPT検出結果を示す散布図(欠損範囲と検出限界)


Di George症候群では☆★で表されています。☆は本当は陽性だけど陰性と診断されたものです。★は正しくDi George症候群と診断されたものです。縦軸が欠損範囲です。多くの星は3Mb以下のところにあります。Di George症候群の9割ぐらいは3Mb以下で発症するからです。点線の曲線が検出限界値です。このラインより下にいる症例は偽陰性になります。つまり陽性と出るはずのものが陰性となります。左下の5つの☆がそうです。14症例中5症例が偽陰性となっています。感度が71.4%ということになります。

ヒロクリニックにおける胎児DNA割合(FF)の分布図

ヒロクリニックにおけるFFの分布図は上記のようです。10%以下のFFの割合は43.7%である。(2024年6月時点のデータ)つまり半数近くの人が10%以下のFFであり、その結果のディジョージ症候群の結果が偽陰性になる可能性があります。

ディ・ジョージ症候群の概要と症状

ディ・ジョージ症候群は、特定の遺伝子の欠損によって引き起こされる遺伝疾患です。この症候群は胸腺や副甲状腺の低形成、先天性心血管系の異常、特徴的な顔貌など多様な症状を引き起こす可能性があります。また、免疫系の問題や反復する感染症、粘膜下口蓋裂による発話困難などが特徴的です。

エマヌエル症候群の概要と症状

染色体の一部が他の染色体と入れ替わる現象を転座染色体と呼びます。この現象により、転座保因者は子どもを持つ際に流産や不妊のリスクがあります。特に11番と22番の染色体の転座から、エマヌエル症候群が生じることがあります。この症候群は特定の遺伝子検査により診断され、生まれつきの心疾患や、口蓋裂、鎖肛や腎臓の奇形など重篤な染色体異常が引き起こされます。

22q11.2 微細重複症候群の概要と症状

22番染色体の一部が重複することで発生し、80%の患者に先天性心疾患などが見られます。特にファロー四徴症が代表的で、心室中隔欠損や大動脈騎乗などが含まれます。心血管疾患は生命予後に大きく影響し、その他多様な臨床症状も見られます。

【調査概要】
調査期間 2020年6月~2023年11月 2023年4月~2024年3月
調査機関
(調査主体)
東京衛生検査所
調査対象 当院にてNIPT(新型出生前診断)検査を受けた19歳〜51歳
有効回答数
(サンプル数)
約75,000件 4,543件
※本リリースのデータ数値は全て当院の受検者データによるもの

23種の微小欠失・重複疾患の欠損部位

23種の微小欠失・重複疾患は、以下の表の部位における微細な領域に欠損があるために生じる疾患です。
下の罹患部位に書いてある一番最初の数字が染色体の番号であり、そのあとの「p」が短腕、「q」が長腕を指します。短腕は染色体の上の部分、長腕は染色体の下の部分を指します。その次の番号は中央のセントロメアから数えて何番目の領域かを示しており、「-(マイナス)」はその部位が欠失していることを指しています。

23種の微小欠失・重複疾患の染色体上の欠損部位を示す図 23種の微小欠失・重複疾患の染色体上の欠損部位を示す図(スマートフォン用)
疾患名(症候群名) 染色体部位 備考・別名 厚生労働省指定難病
1p36欠失症候群 1p36 最も頻度の高い微小欠失の一つ
2q33.1欠失症候群 2q33.1 成長障害や精神遅滞
4p16.3欠失症候群 4p16.3 ウォルフ・ヒルシュホーン症候群(4P症候群)
5p欠失症候群 5p15 猫なき症候群(クリ・ドゥ・チャ症候群)
ランガー・ギデオン症候群 1p36 8q23.3-q24.1
9p欠失症候群 9p 特徴的な顔貌、性分化異常など
クリーフストラ症候群 1 9q34.3 KLEFS1、重度の知的障害
ディジョージ症候群 2 10p14-p13 副甲状腺機能低下、心欠損
ポトツキ・シャッファー症候群 11p11.2 11p11.2欠失症候群
WAGR症候群 11p13 11p13欠失症候群
ヤコブセン症候群 11q23-25 11q末端欠失、血小板異常
アンジェルマン症候群 15q11-q13 母方由来の欠失
プラダー・ウィリー症候群 15q11-q13 父方由来の欠失
16p12.2-p11.2欠失症候群 16p12.2-p11.2 発達遅滞、行動異常など
ルビンシュタイン・テイビ症候群 16p13.3 一部の症例(16p13.3欠失)
スミス・マゲニス症候群 17p11.2 睡眠障害、自傷行為などの行動特性
17p13.3欠失症候群 17p13.3 ミラー・ディーカー症候群(滑脳症)
17q21.31欠失症候群 17q21.31 クール・デ・フリース症候群
18p欠失症候群 18p 低身長、軽度〜中等度の知的障害
アラジール症候群 1 20p12 JAG1遺伝子の欠失・変異
22q11.2欠失症候群 22q11.2 ディジョージ症候群(VCFS)
フェラン・マクダーミド症候群 22q13 22q13欠失症候群
スミス・レムリ・オピッツ症候群 11q13.2-13.4 一部の症例(11q13.2-q13.4欠失)

もし、陽性であったなら羊水検査を推奨します

検査結果が陽性になった場合、当院では羊水検査を強く推奨いたします。羊水穿刺後、羊水はマイクロアレイまたはエクソーム解析にかける必要があります。
この検査を行っている国内の検査所は少ないのが実情です。解析にかけ、状態を確認したいという受検者様は当院にご相談ください。検査所をご紹介いたします。

羊水検査になった場合の費用サポート

微小欠失・重複疾患のNIPTで「陽性」となり羊水検査に進む場合、費用のご負担が心配な方もいらっしゃいます。ヒロクリニックでは、他院での羊水検査にも使える費用サポートをご用意しています。少ないご負担で確定検査に進めます。

プランご負担サポート上限
ライト3,300円最大10万円
スタンダード5,500円最大20万円
ワイド11,000円最大30万円

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よくある質問(FAQ)

Q. 微小欠失・重複疾患とは、どのような病気ですか?

A. 染色体のごく一部(およそ50万〜300万塩基)が欠けたり増えたりして起こる病気の総称です。発達の遅れや先天性の心疾患などをともなうことがあります。多くは両親にはなく赤ちゃんに新しく生じる変化のため、母体の年齢に関係なく起こります。

Q. 主要な23種と143種の検査は何が違いますか?

A. 本ページで解説する主要な23種は、指定難病を中心とした疾患を解析します。一方、143種は調べられる疾患数がもっとも多い網羅型となります。

Q. NIPTで「陽性」なら、赤ちゃんは必ずその疾患ですか?

A. いいえ。NIPTは非確定的検査のため、「陽性」は「可能性が高い」ことを示すもので、診断の確定ではありません。とくに微小欠失では、胎児DNAの割合(FF)が低いと結果が不確かになることもあります。確定には羊水検査などの確定検査が必要です。

Q. ディ・ジョージ症候群はどのくらいの頻度で起こりますか?

A. 一般的には4,000〜6,000人に1人とされています。当院の4,543件の検査では、これに近い頻度で関連する遺伝子の変化が確認されています。生存している方の数では、ダウン症の次に多いと言われる微小欠失・重複疾患です。

Q. 微小欠失・重複は親から遺伝しますか?

A. 多くは、両親にはなく赤ちゃんに新しく生じる変化(de novo)で、遺伝とは限りません。一方で、両親のどちらかが染色体の入れ替わり(転座)の保因者の場合、エマヌエル症候群のように受け継がれることもあります。心配な点は遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 結果はいつわかりますか?

A. 主要な23種は国内の検査機関(東京衛生検査所)で解析するため、最短2〜5日でご報告できます。結果の見方や陽性だった場合の進め方は、医師による遺伝カウンセリングでていねいにご説明します。

まずは気軽にご相談ください

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医師監修 監修日:2022年8月2日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2022年8月2日
水田 俊 (医師・医学博士/ヒロクリニック岡山駅前院 院長)

日本小児科学会 小児科専門医/日本小児科学会認定 出生前コンサルト小児科医/小児科(NIPT・出生前診断)

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

医師監修 監修日:2022年8月2日
新田 啓三 (医師/ヒロクリニック札幌駅前院 院長)

日本小児科学会 小児科専門医/日本アレルギー学会 所属/小児科(NIPT・出生前診断)

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。