この記事のまとめ
妊娠後期(妊娠28週〜出産)は、大きくなったお腹に合わせて体を休めながら、睡眠・食事・軽い運動・冷え対策で心地よく過ごし、出産の準備を整えていく時期です。むくみや腰痛、頻尿、お腹の張りといった症状は多くの妊婦さんに見られます。一方で、規則的なお腹の張りや出血、胎動の減少は受診の目安になります。この記事では、妊娠後期の症状と過ごし方、注意点、すぐ受診すべきサインまでをまとめました。
この記事でわかること
妊娠後期はいつからいつまで?(28週〜出産)
妊娠後期とは、妊娠28週(妊娠8か月)から出産までの期間を指します。赤ちゃんが産まれるための最後の準備が進む時期です。
妊娠週数でいうと、28週0日から出産までが妊娠後期にあたります。つわりが落ち着き、気持ちに少し余裕が生まれる方も多い時期です。その一方で、お腹が大きくなることで体には新しい変化が次々と現れます。
妊娠中期からの体の変化を振り返りたい方は、安定期の過ごし方もあわせてご覧ください。安定期の心地よさとくらべると、後期は体の重さを感じやすくなります。
臨月とは?妊娠後期との違い
臨月とは、一般に出産予定日のおよそ1か月前、妊娠36週から39週ごろを指す言葉です。厳密な医学的定義があるわけではありません。妊娠後期という大きなくくりの中で、出産が近づいた最後の時期が臨月と考えてください。
臨月に入ると、いつお産が始まってもおかしくありません。入院の準備や連絡先の確認を早めにすませておくと、慌てずにすみます。妊娠週数や母子保健の基本的な言葉は、女性の健康推進室 用語集も参考になります。
妊娠後期によくある症状
妊娠後期には、むくみ・腰痛・胎動の変化・便秘・頻尿・お腹の張り・こむら返りといった症状が多くの妊婦さんに見られます。お腹が大きくなり、子宮が周囲の臓器を圧迫することが背景にあります。
私が妊婦さんの話をうかがっていて感じるのは、後期の不調は「ひとつが強い」というより「小さなつらさが重なる」形で現れやすいという点です。Xでも@baby1224828さんが、妊娠初期は楽だと思っていたのに、逆流性食道炎のような胸のつかえ、足が成長痛のように怠く痛む感じ、夜眠りが浅くて何度も起きるといった地味なマイナートラブルがしんどいと書いていました。ひとつずつは軽くても、積み重なると心身の負担になります。
| 症状 | 主な背景 | 過ごし方の目安 |
|---|---|---|
| むくみ | 体の水分量が増え、子宮が静脈を圧迫しやすい | 足を高くして休む・軽くマッサージ・冷え対策 |
| 腰痛 | 重心が前に移り、腰へ負担がかかる | ゆっくり動く・支えを使う・ストレッチ |
| 胎動の変化 | 赤ちゃんが大きくなり動ける範囲が狭まる | 動きの強さや向きが変わる。ふだんの様子を知っておく |
| 便秘 | ホルモンの影響や子宮による腸の圧迫 | 水分・食物繊維・無理のない範囲で体を動かす |
| 頻尿・尿もれ | 大きくなった子宮が膀胱を圧迫する | 我慢しすぎず水分はしっかり取る |
| お腹の張り | 子宮が収縮しやすくなる | 張ったら横になって休む。規則的なら受診 |
| こむら返り | 血流やミネラルバランスの変化 | ふくらはぎを伸ばす・体を温める・水分補給 |
むくみ・こむら返り
妊娠中は体の水分量が増え、足から心臓へ戻る静脈が子宮に圧迫されやすくなります。そのため、足や手がむくみやすくなります。夕方になると靴がきつく感じる方も少なくありません。足を少し高くして休んだり、むくんだ部分をやさしくもみほぐすと、めぐりが助けられます。
夜中や明け方に、ふくらはぎがつるこむら返りに悩む方も多い時期です。つったときは、つま先を体側へゆっくり引き寄せてふくらはぎを伸ばしてください。日ごろから体を温め、水分を意識して取ると起こりにくくなります。
便秘・頻尿・お腹の張り
大きくなった子宮は腸や膀胱を圧迫します。便秘や頻尿が起こりやすいのはそのためです。頻尿や尿もれが気になっても、水分を控えると膀胱炎につながることがあります。赤ちゃんのためにも、水分はしっかり取ってください。便秘のセルフケアは妊娠中の便秘解消のコツで詳しく紹介しています。
お腹の張りは、子宮が収縮するときに感じる症状です。張ったら、まず横になって体を休めてください。休んでやわらぐ張りは、多くの場合心配のいらない生理的なものです。ただし、張りが規則的に繰り返す、休んでもおさまらないといったときは、我慢せず産婦人科へ相談してください。
胎動の変化・腰痛
妊娠後期は赤ちゃんが大きくなり、子宮の中で動ける範囲が狭まります。そのため、初期のころとくらべて胎動の感じ方が変わってきます。回転する動きから、手足で押すような動きへと変化する方が多いです。動きが完全になくなるわけではありません。ふだんの胎動のパターンを知っておくと、変化に気づきやすくなります。
腰痛は、重心が前に移り、上半身が反りやすくなることで起こります。動くときは、何かにつかまってゆっくり体を動かしてください。腹帯や骨盤ベルトで支えを足すと楽になる方もいます。

妊娠後期を心地よく過ごすコツ
妊娠後期は、体を休めることを最優先に、睡眠・軽い運動・バランスのよい食事・冷え対策を組み合わせて過ごすと心地よく過ごせます。無理をしない過ごし方が、お産に向けた土台になります。
体を休める・腰痛をやわらげる
後期の腰痛は、夕方から夜にかけて強くなりやすいと感じます。日中の疲れが腰にたまるためです。Xでも@byXnsLVoGWcVHaBさんが、妊娠後期の夕方から夜中にかけて腰痛がしんどすぎて、どの態勢でも痛くて苦しいと書いていました。痛みが強い日は、家事を一度手放して横になる時間をつくってください。
働いている方は、産休を活用してください。労働基準法では、出産予定日の6週間前から出産後8週間までの休業が認められています。体を休めることは、わがままではなく大切な準備です。
睡眠の姿勢と眠りの工夫
お腹が大きくなると、あお向けでは息苦しさを感じることがあります。横向きで眠ると、体が楽になりやすいです。バスタオルで高さを調整したり、抱き枕を使うと姿勢が安定します。夜にまとまって眠れないときは、日中に短い昼寝を取り入れてください。
軽い運動・食事・冷え対策
体調のよい日は、散歩などの軽い運動が心と体の両方を助けてくれます。激しい運動は避けてください。ゆっくり歩くだけでも、気分転換や体力づくりになります。運動の可否に迷うときは、健診で医師や助産師に確かめてください。
食事は、3食をバランスよくとることが基本です。つわりが落ち着く反動で食べすぎると、体重が増えやすくなります。塩分を取りすぎないこと、鉄分やたんぱく質を意識することも、後期の体を支えます。冷えはむくみやこむら返りの一因になります。腹巻きや靴下、温かい飲み物で下半身を冷やさない工夫を続けてください。
出産に向けた準備
妊娠後期のうちに、入院の荷物・連絡体制・産後の生活の3つを整えておくと、いざというときに落ち着いて動けます。出産は予定より早まることもあります。
まずは、入院に必要なものをひとつのバッグにまとめておいてください。母子健康手帳・健康保険証・診察券・産褥用品・赤ちゃんの肌着などが基本です。玄関の近くなど、すぐ持ち出せる場所に置いておくと安心できます。
陣痛や破水が起きたときの連絡先、病院までの移動手段も、家族と共有しておいてください。夜間や休日の連絡方法まで決めておくと、慌てずにすみます。里帰り出産を考えている方は、移動の時期や受け入れ先の確認を早めにすませてください。段取りは里帰り出産の準備とタイミングで詳しく解説しています。
出産までの流れや呼吸法を、あらかじめおさらいしておくのも心強い準備です。イメージができていると、お産のときに落ち着いて臨みやすくなります。妊娠・出産の一般的な情報は、日本産婦人科医会の解説も参考になります。
赤ちゃんの染色体について気になる方の中には、妊娠後期に出生前検査を検討する方もいます。NIPT(新型出生前診断)は、13・18・21トリソミーなど対象の染色体を調べる非確定的検査(スクリーニング)です。結果が陽性の場合、確定診断には羊水検査などが必要になります。妊娠後期は羊水検査を受けられる時期を過ぎていることもあるため、検討する際は受けられる範囲や意味を医師とよく相談してください。

妊娠後期に注意すること
妊娠後期は、体重の増えすぎ・妊娠高血圧症候群・切迫早産の3つに気を配り、無理のない過ごし方を続けてください。いずれも早めに気づくことが、母体と赤ちゃんを守る助けになります。
体重の増えすぎに気をつける
後期は体重が増えやすい時期です。急な増加はむくみや高血圧の背景になることがあります。健診で示される目安を参考に、食事と体調を整えてください。増えすぎを気にするあまり食事を減らしすぎるのも避けてください。バランスよく食べることが基本です。
妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群は、妊娠中に血圧が高くなる状態で、後期に起こりやすいといわれます。むくみや強い頭痛、目のかすみをともなうこともあります。家庭で血圧を測る習慣があると、変化に気づきやすくなります。気になる数値や症状があれば、健診を待たずに相談してください。しくみと対策は妊娠高血圧症候群の解説でまとめています。
切迫早産
切迫早産とは、妊娠22週から36週の間に、早産につながりかねない兆候が現れた状態です。規則的なお腹の張りや出血、おりものの変化などがサインになります。原因はさまざまで、細菌性の腟の炎症などがかかわることもあります。お腹に負担のかかる力仕事や重い物を持つことは控えてください。気になる症状があれば、早めにかかりつけへ連絡してください。
妊娠中の体調管理や母子保健の基本は、こども家庭庁 母子保健の情報もあわせて確認してください。公的な情報を土台にすると、判断に迷ったときの支えになります。
すぐ受診すべきサイン
お腹の張りが規則的に続く・出血がある・胎動が減る、または感じない・強い頭痛やむくみがあるときは、我慢せずかかりつけへ連絡してください。迷ったときこそ、早めの相談が安心につながります。
次のような様子に気づいたら、時間帯を問わず産婦人科へ連絡してください。自己判断で様子を見すぎないことが、母体と赤ちゃんを守ります。
とくに胎動は、赤ちゃんの元気さを知る大切な手がかりです。ふだんとくらべて動きが明らかに少ない、しばらく感じないと思ったときは、遠慮なく連絡してください。私は、心配を抱えたまま夜を越すより、早めに一本連絡を入れるほうがずっと心が軽くなると感じます。
よくある質問
妊娠後期の過ごし方について、妊婦さんからよく寄せられる疑問をまとめました。参考にしてください。
Q. 妊娠後期はいつからいつまでですか?
妊娠後期は妊娠28週(妊娠8か月)から出産までの期間です。その最後、出産予定日の約1か月前ごろが臨月にあたります。つわりが落ち着く一方で、お腹が大きくなり体の変化が現れやすい時期です。
Q. 妊娠後期の腰痛やむくみはどうすれば楽になりますか?
腰痛は、ゆっくり動く・支えを使う・横になって休むことで負担がやわらぎます。むくみは足を高くして休み、体を冷やさないことが助けになります。痛みやむくみが強い、急に悪化したと感じるときは、我慢せず産婦人科へ相談してください。
Q. お腹の張りはどこまでが正常ですか?
横になって休むとやわらぐ張りは、多くの場合心配のいらない生理的なものです。一方で、規則的に繰り返す張り、休んでもおさまらない張り、出血をともなう張りは受診の目安になります。迷ったときは、時間帯を問わずかかりつけへ連絡してください。
Q. 妊娠後期に胎動が減った気がします。受診すべきですか?
後期は赤ちゃんが大きくなり動きの感じ方が変わりますが、胎動がなくなるわけではありません。ふだんとくらべて明らかに少ない、しばらく感じないと思ったときは、遠慮なく産婦人科へ連絡してください。早めの相談が安心につながります。
Q. 妊娠後期でもNIPTは受けられますか?
NIPT(新型出生前診断)は、13・18・21トリソミーなど対象の染色体を調べる非確定的検査(スクリーニング)で、採血で受けられます。結果が陽性の場合、確定診断には羊水検査などが必要です。妊娠後期は羊水検査を受けられる時期を過ぎていることもあるため、受ける意味や範囲を医師とよく相談してから判断してください。
著者・監修
岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。
Q&A
よくある質問
妊娠後期の過ごし方についてよくある質問としては、以下のようなものがあります。
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Q妊娠後期に運動をして良いのか?
前述した通り、適度な運動であれば妊娠後期にしても構いません。むしろ、適度に運動したほうが、体力がついたり身体も精神もリフレッシュできたり、とメリットが多いです -
Qおりものが多いときはどうすれば良いか?
妊娠後期は、ホルモンバランスの乱れからおりものが多くなりやすいです。多少の増減であれば気にしなくても良いでしょう。
ただし、おりものの量が急増した、または色や臭いがいつもと違う時は感染症の可能性があります。感染症は切迫流産を起こすこともありますのですぐに病院へ行くようにしましょう。 -
Q妊娠後期の夏はどう過ごす?
妊娠後期の夏はとにかく熱中症に気をつけてください。妊娠中は赤ちゃんを育てるために体温が高くなっていて、通常よりも熱中症になるリスクがあがります。
また、汗をかきすぎて脱水になると、お腹の赤ちゃんにも影響が出ることもあります。赤ちゃんは血液を通して母親から酸素や栄養を受け取っています。脱水になると血液量が減るため、この受け渡しが十分にできなくなり危険です。
涼しい場所でこまめに水分補給をするのが、妊娠後期の夏の理想の過ごし方です。暑い日はなるべく外に出ないようにするのが良いでしょう。 -
Q妊娠後期の冬はどう過ごす?
冬は、感染症に気をつけて過ごします。妊娠中は感染症にかかるなど重症化しやすい状態です。ワクチンを打ったり、食事や運動で健康を保ったりして、感染症が重症化しないような体を作りましょう。
また、冷えにも気をつけないといけません。体が冷えると血管が収縮して、赤ちゃんにいく血液が減ってしまいます。お風呂につかったり、厚着をしたりしてなるべく体を温めるようにしましょう
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
- 日本産科婦人科学会, 日本産婦人科医会. 産婦人科診療ガイドライン―産科編2023. 東京: 日本産科婦人科学会; 2023.
- Artal R, O'Toole M. Guidelines of the American College of Obstetricians and Gynecologists for exercise during pregnancy and the postpartum period. Br J Sports Med. 2003;37(1):6-12.
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- Borg-Stein J, Dugan SA. Musculoskeletal disorders of pregnancy, delivery and postpartum. Phys Med Rehabil Clin N Am. 2007;18(3):459-476.
- American College of Obstetricians and Gynecologists. ACOG Committee Opinion No. 804: Physical activity and exercise during pregnancy and the postpartum period. Obstet Gynecol. 2020;135(4):e178-e188.

