VeriSeq™ NIPT Solution v2による、ゲノムワイドPCRフリーの性能とペアエンドシーケンシングに基づく非侵襲的出生前スクリーニング検査

文献

この記事は、Illumina, Inc(アメリカ・サンディエゴ)とVictorian Clinical Genetics Services(オーストラリア)の研究チームが発表した論文の要旨を、日本の読者向けにわかりやすくまとめたものです。ヒロクリニックNIPT自身が実施した検査の実績データではなく、外部の研究機関による学会発表の紹介である点に注意してください。紹介する数字はすべて、海外の特定の検査法(VeriSeq™ NIPT Solution v2)を用いた研究結果です。ヒロクリニックNIPTが実際にどの染色体異常を対象とし、どの程度の精度で報告しているかは、NIPTの仕組みと当院の検査範囲を解説した記事でご確認ください。この論文の著者は S. Bhatt、N. Flowers、D. Vavrek、K. Meier、T. Kalista、C. Deciu、S. Duenwald、M.D. Pertile の8名です。学術誌Ultrasound in Obstetrics & Gynecology(UOG)2019年号に掲載され、DOIは10.1002/uog.20430です。

この記事でわかること

  • この論文がヒロクリニックNIPTの自社データではなく、海外の外部研究であるという前提
  • ゲノムワイド解析と基本解析の違い、7Mb以上の部分的欠失・重複とは何か
  • 2,335例を対象にした研究で示された感度・特異度の実際の数字
  • 研究結果からNIPTを検討する妊婦さんが受け取れること、そしてNIPTが確定検査ではない理由

目的|VeriSeq™ NIPT Solution v2で何を調べようとしたのか

この研究の目的は、部分的な欠失・重複を含むゲノムワイドな胎児染色体異常の検出において、無細胞DNAベースのNIPTであるVeriSeq™ NIPT Solution v2の性能を評価することでした。高度に自動化されたPCRフリーの解析手法を用いている点が特徴です。まず、この検査がどんな仕組みかを整理します。

VeriSeq™ NIPT Solution v2には、基本分析とゲノムワイド分析という2つの報告オプションがあります。基本分析は、21トリソミー・18トリソミー13トリソミーという主要な3つのトリソミーを中心に調べる方法です。いっぽうゲノムワイド分析は対象を広げ、性染色体異数性、まれな常染色体異数性、そして7Mb以上の部分的な欠失・重複まで報告します。今回の研究で取り上げられたのは、このゲノムワイド分析の性能です。

「7Mb」という単位になじみのない方も多いはずです。Mbはメガベースの略で、DNAの塩基配列の長さを表す単位。7Mbは塩基にしておよそ700万個分の範囲を指します。染色体の変化のなかでも比較的大きな部類にあたり、これより小さな変化は現在の技術でも見つけにくいのが実情です。研究チームは、この大きさを検出の目安として設定しました。

方法|対象となった妊婦さんと検査の流れ

方法としては、妊娠10週以上の妊婦さんから採取した凍結血漿サンプルを、VeriSeq™ NIPT Solution v2で解析しました。すべての症例について、細胞遺伝学的検査の結果、または新生児の身体診察に基づく臨床転帰が確認できる症例のみを対象としています。裏付けとなる答え合わせがあるからこそ、精度を検証できる研究だといえます。

ここで一度、専門用語を整理しておきます。感度とは、本当に染色体異常がある妊婦さんのうち、検査で正しく陽性と判定できた割合のことです。特異度とは反対に、染色体異常がない妊婦さんのうち、検査で正しく陰性と判定できた割合を指します。感度が高いほど見逃しが少なく、特異度が高いほど的外れな陽性判定が少ない検査だといえるでしょう。この2つの数字をあわせて見ることが、検査の実力を測るポイントです。

結果|2,335例で示された感度と特異度の実際

研究コホートには、平均在胎週数10.9週、平均母体年齢35.1歳の2,335例が含まれ、2,300例の単胎妊娠と7例の双胎妊娠が対象となりました。このうち98.8%(2,307/2,335)の症例で結果が報告されています。編集部がこの論文をあらためて読み込むと、報告率の高さもさることながら、双胎妊娠まで対象に含めている点が目を引きました。単胎・双胎を問わず幅広い妊婦さんを対象にした研究だとわかります。

区分21トリソミーあらゆる異常
単胎・非モザイクでの感度99.2%(126/127)98.3%(291/296)
モザイクを含めた感度96.4%(133/138)95.5%(318/333)
モザイクを含めた特異度99.90%(1,987/1,989)99.31%(1,954/1,967)

Bhatt S, et al. Ultrasound Obstet Gynecol. 2019のデータより作成。数値は原論文の記載どおりです。

単胎・非モザイクの妊娠にしぼると、21トリソミーの感度は99.2%(126/127)、あらゆる異常の感度は98.3%(291/296)という結果でした。モザイク(正常な細胞と異常な細胞が混在する状態)の症例も含めると、感度は21トリソミーで96.4%(133/138)、あらゆる異常で95.5%(318/333)にやや下がります。モザイクは検出がむずかしい対象であり、この差自体が検査の限界を正直に示すデータだと感じました。

特異度はどうでしょうか。モザイクを含めた特異度は、21トリソミーで99.90%(1,987/1,989)、あらゆる異常で99.31%(1,954/1,967)でした。この推定値は、モザイクを除外した場合とほぼ同等だったと報告されています。加えて、このコホートでは21トリソミーが罹患した双胎妊娠が7例あり、全例で異常が検出されました。双胎という、通常より解析が難しい対象でも見逃しがなかった点は注目に値します。

結論|研究チームが導き出したこと

結論として、ペアエンドシーケンシングベースのVeriSeq™ NIPT Solution v2は、基本およびゲノムワイド報告の選択肢を備え、高い感度と高い特異度、そして低い失敗率を示しました。結果が報告できなかった症例が1.2%程度にとどまっている点からも、実用性の高さがうかがえます。

研究チームがもう一点強調しているのが、あらゆる異常に対する感度98.3%は、血清スクリーニングにおける21トリソミーの特異度(約95%)よりもはるかに高いという比較です。感度と特異度という異なる指標同士の比較ではありますが、この研究は、ゲノムワイドNIPTが従来の血清スクリーニングよりも広い範囲の染色体異常をとらえられる可能性を示しています。

この研究の意味|NIPTを検討する妊婦さんが知っておきたいこと

この研究が示す意味は、NIPT技術が従来の3つのトリソミーにとどまらず、まれな染色体異常まで検出範囲を広げつつあるという事実です。技術の進歩を示す一例として、大切な意味を持つデータだといえるでしょう。ただし、ここで一つ強調しておきたいことがあります。

NIPTはあくまで非確定的なスクリーニング検査であり、診断ではありません。この研究で示された感度・特異度がどれだけ高くても、陽性という結果は「可能性が高まったサイン」にすぎないのです。実際に私が外来で相談を受けるときも、陽性の結果を見て確定だと思い込んでしまう方が少なくありません。異常の疑いと判定された場合は、羊水検査などの確定検査で染色体を直接調べる必要があります。

また、忘れてはならないのが、この研究がVeriSeq™ NIPT Solution v2という特定の検査法を用いた、海外の一研究にすぎないという点です。検査会社や解析手法、報告基準は医療機関ごとに異なります。まれな常染色体異数性や部分的な欠失・重複の検出という考え方そのものは、NIPT全体の基礎知識をまとめた記事や、下記の関連記事も参考にしてください。

10q22.3-q23.2微小欠失の新規症例
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もう少し専門的な内容まで踏み込みたい方向けに補足します。今回紹介したのは2019年の学会発表要旨ですが、同グループによる関連の査読済み論文(Clinical Chemistry誌、2021年)も公開されています。より詳細な検証データに関心のある方は、PubMed(PMID: 34077512)で確認できます。ただし、これは2019年の要旨と同一の発表ではなく、重なりのある研究グループによる別の論文である点にご留意ください。

費用面が気になる方は出生前診断の費用を比較した記事、年齢とリスクの関係を知りたい方はダウン症の発生リスクと検査を解説した記事もあわせてご覧ください。数字だけを切り取って不安になるのではなく、自分の状況に合わせて一つずつ確認していくことが、落ち着いた判断につながります。

よくある質問

Q. この記事の数字は、ヒロクリニックNIPT自身の検査実績ですか?

いいえ、違います。この記事はIllumina, IncとVictorian Clinical Genetics Servicesの研究チームが発表した、海外の学会発表要旨を紹介したものです。ヒロクリニックNIPT自身の検査データではありません。当院が実際に対象としている染色体異常の範囲や報告の仕組みについては、NIPTの仕組みを解説した記事でご確認ください。

Q. ゲノムワイド解析と基本解析はどう違うのですか?

基本解析は21・18・13トリソミーという主要な3つのトリソミーが中心です。ゲノムワイド解析はそれに加えて、性染色体異数性、まれな常染色体異数性、7Mb以上の部分的な欠失・重複まで対象を広げた解析です。同じ検査法でも、選ぶオプションによって調べられる範囲が変わります。

Q. 感度・特異度とは、それぞれ何を意味しますか?

感度は、本当に染色体異常がある妊婦さんのうち、検査で正しく陽性と判定できた割合です。特異度は、異常がない妊婦さんのうち、正しく陰性と判定できた割合を指します。この研究では、21トリソミーの感度が96.4〜99.2%、特異度が99.90%という高い数値が示されました。

Q. 7Mb以上の部分的な欠失・重複とは、具体的にどのようなものですか?

染色体の一部が、7メガベース(塩基にしておよそ700万個分)以上の範囲にわたって欠けたり、重複したりしている状態を指します。染色体の変化のなかでは比較的大きな部類にあたり、この大きさを一つの目安として検出できるよう設計されています。より小さな変化は、現在の技術でも検出がむずかしいとされています。

Q. この研究の結果を、そのままNIPTの精度として受け取ってよいですか?

そのまま当てはめるのは避けてください。この研究は、VeriSeq™ NIPT Solution v2という特定の検査法を用いた海外の一研究の結果です。検査会社や解析手法、報告基準によって数値は変わり得ます。ヒロクリニックNIPTでの実際の検査項目や体制については、当院の公式ページでご確認ください。

Q. NIPTで異常の疑いと判定されたら、それで確定ですか?

確定ではありません。NIPTは非確定的なスクリーニング検査であり、診断そのものではないからです。異常の疑いという結果が出た場合は、羊水検査など確定検査によって染色体を直接調べる必要があります。結果を受け取ったら、自己判断せず担当医や遺伝カウンセリングに相談してください。

著者・監修

岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、臨床研修を経て医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有し、国内の検査機関の運営を統括しています。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。

医師監修 監修日:2020年12月9日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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