NIPTや流産後の染色体検査で「13番・18番・21番以外のトリソミー」という結果を受け取り、聞き慣れない染色体番号に戸惑っていらっしゃるかもしれません。
結論からお伝えします。トリソミーとは特定の染色体が通常の2本ではなく3本存在する状態で、8番・9番・16番などの13・18・21番以外の常染色体で起こると、多くは妊娠初期の流産という形で経過します。一方で、体の一部の細胞だけに異常がある「モザイク型」であれば出生まで至る例も報告されており、その場合の症状の重さは欠失や重複の範囲・モザイク率によって大きく異なります。
この記事では、13番・18番・21番以外のトリソミーの基本的な仕組みから、8トリソミー・9トリソミー・16トリソミーなど代表的な種類の特徴、NIPTとの関係、流産との関連、確定診断までの流れ、生まれた後の見通しまでを整理します。Orphanet(欧州希少疾患データベース)や米国NIH(国立衛生研究所)のGARD、PubMed収録の学術論文、日本産科婦人科学会・厚生労働省の公的情報にもとづいてお伝えします。数値や頻度は報告によって幅がある領域のため、一つずつ確認していきましょう。
💡 この記事でわかること

妊娠中に誰の子か
分かるDNA親子鑑定
詳しくはこちら
1. 13番・18番・21番以外のトリソミーとは
トリソミーとは、本来2本1対である染色体が3本になっている状態を指し、21番(ダウン症候群)・18番(エドワーズ症候群)・13番(パトウ症候群)以外の常染色体でも同じ現象が起こり得ます。ヒトの染色体は22対の常染色体と1対の性染色体からなり、理論上はどの番号でもトリソミーが生じる可能性があります。
ただし、13・18・21番以外の常染色体トリソミーは、細胞のすべてに異常がある「完全型」の場合、胎児の発育に必要な遺伝情報のバランスが大きく崩れるため、多くは妊娠のごく早い段階で発育が止まります。これに対して、体の一部の細胞だけに異常がある「モザイク型」や、染色体の一部分だけが重複する「部分トリソミー」では、症状が比較的軽くなり、出生まで至る例が報告されています。
私が外来でお伝えしているのは、「トリソミー」という一つの言葉でも、完全型かモザイク型か、どの染色体のどの範囲に及ぶかによって、経過も見通しも大きく変わるという点です。番号だけで一律に判断せず、検査結果に記載された詳細な情報を確認する姿勢が欠かせません。
妊娠中に誰の子か
分かるDNA親子鑑定
詳しくはこちら
2. 主な種類と特徴(8トリソミー・9トリソミー・16トリソミーのモザイク型)
13・18・21番以外の常染色体トリソミーのうち、出生例の報告が比較的多いのは8番・9番・16番のモザイク型です。いずれも完全型では出生に至ることがほとんどない一方、モザイク型では特徴的な症状を伴いながら成長するケースが報告されています。
モザイク型8トリソミー(ワーカニー症候群2型)
米国NIHのGARD(希少疾患・遺伝病情報センター)やOrphanetによると、モザイク型8トリソミーは指の関節が曲がったまま伸びにくい「カンプトダクチリー」が約70%、手のひらや足の裏のしわが深くなる所見が約75%、脊椎の形態異常が約65%に見られると報告されています。心臓や大血管の異常は25〜40%程度に伴い、知能は軽度から中等度の遅れにとどまる例が多く、正常範囲にとどまる例も報告されています。
モザイク型9トリソミー
完全型トリソミー9は出生後まもなく致命的となることが多いのに対し、モザイク型は子宮内発育遅延、顔立ちの特徴、骨格の異常、先天性心疾患、性器の異常などを伴いながらも、長期生存する例が報告されています。2013年に報告された症例では、成長障害・顔面の非対称・小耳症を伴う6歳の男児と、先天性心疾患・聴覚障害を伴う2歳の女児が、従来報告されてきた「生後1年未満」という目安を超えて生存したことが示されています。
16トリソミー(完全型とモザイク型・胎盤限局性モザイク)
流産で見つかる染色体異常のなかでもっとも頻度が高いのが16トリソミー。妊娠初期の流産の原因として、他のどの染色体異常よりも高頻度で見つかることが知られています。完全型は妊娠11週を超えて経過することはほぼないとされ、多くは胎嚢のみ、あるいは発育が止まった状態で流産に至ります。一方、モザイク型や、胎盤の細胞だけに異常が生じる「胎盤限局性モザイク(CPM)」では、胎児本体は正常な染色体を持つため出生に至る可能性がありますが、胎盤の機能が不安定になりやすく、子宮内胎児発育遅延(IUGR)や妊娠高血圧腎症、早産のリスクが上がることが報告されています。
NIPTでトリソミー16の陽性所見をきっかけに詳しく調べた症例報告シリーズでは、14例のうち確定検査で真陽性となった5例の転帰として、体重1.9kgでの出生、先天性心疾患による生後13日での死亡、妊娠中止、子宮内胎児死亡などが挙げられており、経過が一様でないことが分かります。
3. NIPTとの関係・基本検査と拡張検査の違い
一般的な基本NIPTが対象とするのは21・18・13トリソミーの3種類のみで、8番・9番・16番など他の常染色体トリソミーは基本検査の範囲外です。
NIPTで「陰性」の結果を受け取ると、多くの方が安堵します。実際にX(旧Twitter)上でも、@hyakuten_manさんが「NIPT結果出ました、13.18.21トリソミー陰性でした!妊娠してやっと少し安心して、マタニティライフを楽しめそうです」と投稿しており、多くの妊婦さんが抱く率直な気持ちを代弁しています。私が外来でお伝えしたいのは、この「陰性」があくまで13・18・21番という3種類の染色体数的異常についての結果であり、それ以外の常染色体トリソミーの有無まで否定するものではないという点です。
公益社団法人日本産科婦人科学会のNIPTに関する指針でも、本指針が対象とする検査は13・18・21トリソミーの数的異常を検出する非確定的検査であり、性染色体異常や染色体微小欠失、その他の全染色体異数性は指針の対象範囲に含まれていないと明記されています。厚生労働省のNIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書でも、13・18・21トリソミー以外の疾患については分析的妥当性・臨床的妥当性が現時点では十分に確立されていないとされ、検査対象の拡大は臨床研究などの形で慎重に評価すべきとの考え方が示されています。
ヒロクリニックNIPTでは、基本の3トリソミーに加えて1番から22番までの全常染色体と性染色体を対象とする全染色体異数性検査を拡張オプションとして提供しており、8番・9番・16番トリソミーやそのモザイク型も対象の範囲に含まれ得ます。ただし全染色体検査であっても、モザイク率が低い場合や胎盤限局性モザイクの場合には検出が難しいことがあり、対象になるかどうかはプランの検査範囲表で事前に確認してください。
| 検査の種類 | 対象となる染色体 | 13・18・21番以外のトリソミー |
|---|---|---|
| 基本NIPT | 21番・18番・13番の数的異常のみ | 対象外 |
| 微小欠失・重複を含む拡張検査 | 基本3トリソミー+特定の微小欠失・重複領域 | 領域による(多くは対象外) |
| 全染色体異数性検査 | 1番〜22番の全常染色体・性染色体 | 対象になり得る(モザイク率により検出限界あり) |
あくまで非確定的なスクリーニング検査という位置づけ。この原則は、対象範囲がどれだけ広がっても変わりません。陽性所見が出た場合は、必ず羊水検査などの確定検査で判断する流れになります。
妊娠中に誰の子か
分かるDNA親子鑑定
詳しくはこちら
4. 流産との関連と生存率の考え方
13・18・21番以外の常染色体トリソミーは、完全型であれば妊娠初期の流産という形で経過することがほとんどで、出生に至る割合は極めて低いとされています。
私が外来でお話をうかがっていると、稽留流産の原因が13・18・21番以外のトリソミーだったと分かり、ご自身を責めてしまう方が少なくありません。SNS上にも同じような経過を投稿する方がいます。@potatooo76さんは、自然妊娠での稽留流産、不妊治療の開始、複数回の移植を経て「6wで心拍確認後の稽留流産(7番トリソミー)」という経過をXに投稿しており、そのうえで不育症検査やPGT-A(着床前胚染色体異数性検査)の検討へ進んだことを共有しています。トリソミーの多くは受精後の偶発的な細胞分裂の誤りで生じるものであり、妊娠中の生活習慣が原因ではありません。
生存率は染色体の番号やモザイク率によって幅があります。16トリソミーは流産で見つかる染色体異常のなかでもっとも頻度が高い一方、モザイク型であれば出生に至る例も一定数報告されています。8トリソミー・9トリソミーもモザイク型であれば長期生存する例が報告されていますが、いずれも完全型では出生に至ることがまれです。「このトリソミーなら何%生存する」と一律に言い切ることは難しく、欠失・重複の範囲やモザイク率、超音波での所見を踏まえて個別に見通しを立てる必要があります。
5. 確定診断までの流れ
NIPTなどのスクリーニング検査で陽性所見が出た場合、確定診断には染色体マイクロアレイ検査(CMA)や核型分析(染色体分析)が中心的な役割を果たします。
羊水検査・絨毛検査による確定診断
妊娠中であれば、羊水検査や絨毛検査で胎児由来の細胞を直接調べます。核型分析でトリソミーの有無を確認したうえで、必要に応じて染色体マイクロアレイ検査を追加し、モザイク率や欠失・重複の範囲を詳しく調べます。
流産後の絨毛染色体検査
すでに流産に至った場合でも、娩出された絨毛や胎盤の組織を調べることで、原因がトリソミーだったかどうかを確認できることがあります。次の妊娠を考えるうえで、原因を把握しておくことには意味があります。
出生後の評価と経過観察
出生に至った場合は、発達検査、身体所見の確認、心臓・消化器・骨格などの評価を組み合わせ、お子さまの状態を総合的に把握していきます。ここで欠かせないのは、単発の検査で終わらせず、定期的な経過観察を続けることです。
妊娠中に誰の子か
分かるDNA親子鑑定
詳しくはこちら
6. 生まれた後の見通しとご家族への支援
出生した場合の見通しは番号やモザイク率によって幅があり、発達支援や定期的な医療的フォローを組み合わせることで、お子さまらしい成長を支えることができます。
- 発達支援(療育):理学療法(PT)、作業療法(OT)、言語聴覚療法(ST)を通じて、運動・言葉・生活動作の発達を後押しします。
- 循環器・消化器などの継続フォロー:先天性心疾患や消化器の異常を伴う場合、小児循環器科・消化器科など複数の診療科が連携して経過を見ていきます。
- 教育環境の選択:特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室など、お子さまの特性に合わせた学びの場を、地域の教育センターと相談しながら選んでいきます。
症状の組み合わせも重さも一人ひとり違うため、「このトリソミーなら必ずこうなる」という決まった経過はありません。希少な染色体異常ゆえの孤独感。近所で同じ染色体異常のお子さまを見つけるのは難しいかもしれませんが、遺伝カウンセリングや希少疾患の患者家族会、公的な相談窓口など、頼れる場所は複数あります。医療的な管理は医師や療育スタッフに任せ、ご家族の役割は目の前のお子さまの小さな成長を一緒に喜ぶことだと私は考えています。
次のお子さまへの影響が気になる方は、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを利用してください。トリソミーの多くは偶発的に生じるため再発リスクは一般に低いとされますが、染色体の構造異常が背景にある場合は家族内での伝わり方が異なるため、個別の確認が欠かせません。発達の特性が気になる方はNIPTで見つかる可能性のある障害についての記事も参考になります。
21トリソミー(ダウン症候群)について詳しく知りたい方はダウン症の原因・症状・検査方法についての記事も、NIPT全般で何がわかり何がわからないかについてはNIPTを超簡単に説明する記事もあわせてご覧ください。
次の妊娠に向けてNIPTを検討する場合、全染色体異数性まで対象に含めるかどうかでプランの内容が変わります。ご自身に合うプランが分からない場合は、プラン診断を試してみてください。お電話でのご相談も受け付けています。0120-169-629までお気軽にお問い合わせください。
妊娠中に誰の子か
分かるDNA親子鑑定
詳しくはこちら
よくある質問
13番・18番・21番以外のトリソミーとはどのような状態ですか。
本来2本1対の染色体が3本になる「トリソミー」が、21・18・13番以外の常染色体(8番・9番・16番など)で起こっている状態です。細胞すべてに異常がある完全型では妊娠初期の流産に至ることがほとんどですが、一部の細胞だけに異常があるモザイク型では出生に至る例も報告されています。
8トリソミー・9トリソミー・16トリソミーは生まれてくることがありますか。
完全型では出生に至ることがまれですが、モザイク型であれば出生例が報告されています。モザイク型8トリソミー(ワーカニー症候群2型)では特徴的な顔立ちや手足の形態異常、モザイク型9トリソミーでは子宮内発育遅延や先天性心疾患などを伴いながら成長する例が学術論文で示されています。
この病気はNIPTで分かりますか。
基本的なNIPTの対象は21・18・13トリソミーの3種類のみで、8番・9番・16番などのトリソミーは対象外です。1番から22番までの全常染色体を対象とする全染色体異数性検査であれば候補にあがりますが、モザイク率が低い場合や胎盤限局性モザイクの場合は検出が難しいことがあります。
モザイク型と診断されたら、確定診断はどう進みますか。
妊娠中であれば羊水検査や絨毛検査による核型分析・染色体マイクロアレイ検査で確定診断を行います。すでに流産している場合でも、娩出された絨毛や胎盤組織を調べることで原因を確認できることがあります。まずは遺伝カウンセリングで結果の意味を確認してください。
流産の原因がトリソミーだった場合、次の妊娠に影響しますか。
多くのトリソミーは受精後の偶発的な細胞分裂の誤りで生じるため、次の妊娠への再発リスクは一般的に低いとされます。ただし染色体の構造異常が背景にある場合は伝わり方が異なるため、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングで個別に確認してください。
出生後の子どもにはどのような支援がありますか。
理学療法・作業療法・言語聴覚療法などの発達支援(療育)、循環器や消化器の継続的なフォロー、特別支援学校や特別支援学級などの教育環境の選択肢があります。症状の重さは一人ひとり異なるため、複数の診療科と地域の相談窓口を組み合わせながら支援計画を立てていきます。
監修:岡博史(おか ひろし) / 医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、医学博士。国内でも数少ないラボディレクター資格を保有しています。本記事は医療広告ガイドラインに配慮し、Orphanet・米国NIH(GARD)・日本産科婦人科学会・厚生労働省などの公的機関・学会情報および学術論文を参照して作成しています。症例数の少ない領域のため、記載の頻度・数値は文献により幅があります。診断・治療の最終判断は担当医にご相談ください。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

