NIPTの拡張検査や出生後の染色体マイクロアレイ検査で「微小欠失」「重複」という結果を伝えられ、聞き慣れない言葉に戸惑っていらっしゃるかもしれません。
結論からお伝えします。微小欠失・重複疾患とは、染色体のごく一部が生まれつき欠けたり重複したりすることで起こる遺伝性疾患の総称です。従来の顕微鏡による染色体検査では見つけられないほど小さな変化のため、染色体マイクロアレイ検査(CMA)という精密検査で初めて範囲を確認できます。
この記事では、微小欠失・重複疾患の起こる仕組みから、代表的な疾患、NIPT拡張検査で分かることと分からないこと、確定診断までの流れ、陽性判定を受けた後の遺伝カウンセリング、治療や生活支援までを整理します。日本人類遺伝学会等のガイダンスや難病情報センター、日本産科婦人科学会、厚生労働省の公的資料にもとづいてお伝えします。一つずつ確認していきましょう。
ヒロクリニックNIPTでは、全国10の直営院と連携クリニック125施設で拡張検査を提供し、検査実績は累計75,000件を超えました。検体は東京衛生検査所(国内)で検査するため、結果までの日数は最短2〜5日、感度は99.9%以上、結果報告率は99.98%です。数字だけを追うのではなく、一つひとつの結果の意味を丁寧にお伝えすることを大切にしています。
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微小欠失・重複疾患とは(原因となる染色体の変化)
微小欠失・重複疾患は、染色体の特定領域がごくわずかに欠けたり重複したりすることで起こる遺伝性疾患です。欠失・重複の範囲は数百キロ塩基対から数メガ塩基対程度と小さく、従来の顕微鏡による染色体検査(G分染法)では見つけられません。
この範囲には複数の遺伝子がまとまって含まれていることが多く、一つの遺伝子ではなく周辺の遺伝子ごと失われる、あるいは重複することで多様な症状が現れます。日本人類遺伝学会等が公表したガイダンスによると、こうした微細な変化は染色体マイクロアレイ検査(CMA)を用いることで、従来の染色体検査より格段に細かい単位で検出できるとされています。
欠失した範囲にどの遺伝子が含まれるかによって、現れる症状の種類も重さも変わります。同じ「微小欠失症候群」という診断名でも、一人ひとりで経過が異なる理由はここにあります。検査結果を確認するときにまず見るべきは、欠失の範囲と、そこに含まれる遺伝子の組み合わせ。

代表的な微小欠失・重複疾患(症状の現れ方はさまざまです)
代表的な微小欠失疾患には、22q11.2欠失症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群、アンジェルマン症候群などがあります。いずれも欠失する染色体領域が異なり、心疾患中心のもの、発達特性中心のものなど現れやすい症状の傾向が分かれます。
- 22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群): 22番染色体の長腕にある22q11.2領域、約300万塩基対に含まれる約30〜40個の遺伝子が欠失することで起こります。難病情報センターの解説によると、国内では4,000〜5,000人に1人程度の頻度で生まれ、指定難病203号に指定されています。患者の約8割に先天性心疾患や胸腺低形成による免疫低下、口蓋裂、低カルシウム血症などが合併するとされます。
- ウィリアムズ症候群(7q11.23欠失症候群): 7番染色体の長腕にある7q11.23領域の欠失で起こります。独特な顔立ち、心血管系の異常、社交的な性格傾向、発達の遅れなどが特徴です。
- プラダー・ウィリー症候群/アンジェルマン症候群(15q11.2-q13): 同じ15q11.2-q13領域の変化でも、由来する親(父親由来か母親由来か)によって現れる病態が異なる、インプリンティング(遺伝子刷り込み)という仕組みが関わる代表例です。
ヒロクリニックNIPTでは、こうした微小欠失・重複を含む143種、部分欠失・重複を含めると54種以上を検査対象とする拡張プランを扱っています。個別の疾患について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
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NIPT拡張検査で分かること・分からないこと
NIPT拡張検査は微小欠失・重複を含む幅広い項目を対象にできますが、非確定的なスクリーニング検査である点は基本NIPTと変わりません。ここを取り違えると、結果の受け止め方が大きくずれてしまいます。
一般的な基本NIPTが調べるのは、21・18・13トリソミーという染色体の「数」の変化が中心です。微小欠失まで範囲を広げた拡張検査では、より多くの疾患を対象にできる一方、日本産科婦人科学会の指針が示すとおり、NIPTはあくまで確定診断ではなくスクリーニング検査の範囲にとどまります。厚生労働省のNIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書でも、微小欠失を含む拡張検査は分析的・臨床的な妥当性になお限界があると指摘されています。
陽性と判定された人が実際にその疾患を持っている割合(陽性的中率)は、対象とする疾患の頻度や欠失の大きさによって差があり、必ずしも一律に高いわけではありません。ここで見失ってはいけないのは、あくまで確率にもとづく非確定的な位置づけ。陽性所見が出た段階で結果を確定的なものと考えず、遺伝カウンセリングで意味を確認したうえで、確定検査に進むかどうかを判断する流れが基本になります。NIPT全般で何が分かり、何が分からないかについてはNIPTでわかること・わからないことについての記事も参考になります。
確定診断までの流れ(染色体マイクロアレイ検査・FISH法)
確定診断には、染色体マイクロアレイ検査(CMA)という精密検査が中心的な役割を果たします。NIPTで陽性所見が出た場合も、出生後に症状から疑われた場合も、最終的にはこの検査で欠失・重複の範囲を確定させます。
| 比較項目 | NIPT拡張検査 | 染色体マイクロアレイ検査(CMA) |
|---|---|---|
| 位置づけ | 非確定的なスクリーニング検査 | 確定診断のための精密検査 |
| 検体 | 妊婦の血液(母体血中の胎児由来cfDNA) | 羊水・絨毛(出生前)または血液(出生後) |
| 分かること | 対象疾患である可能性の高低 | 欠失・重複の正確な範囲と位置 |
| 次のステップ | 陽性の場合は確定検査を検討 | 結果にもとづき今後の管理方針を検討 |
出生前であれば羊水検査や絨毛検査で得た検体を、出生後であれば血液を用いてCMAを行います。従来のG分染法では見えない数百キロ塩基対単位の変化まで確認できるため、欠失がどの遺伝子まで及ぶかを詳細に把握できます。国内では令和3年10月から、先天異常症候群の診断を目的としたCMAが一定の条件のもとで健康保険の対象になりました。
特定の領域だけを光らせて確認するFISH法が、診断の裏付けに使われることもあります。あわせて両親の血液を調べることで、偶発的な変化(デノボ)なのか、親から受け継いだものなのかを判別できます。私が外来でお伝えしているのは、検査結果に記載された欠失の正確な座標を、必ず担当医と一緒に確認していただきたいということです。座標の範囲によって、その後注意すべき合併症の種類が変わってくるためです。
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陽性判定を受けたときの流れと遺伝カウンセリング
NIPT拡張検査や出生後の検査で微小欠失・重複の所見が出た場合、まず遺伝カウンセリングで結果の意味を確認することから始まります。いきなり結論を出す必要はありません。
- 結果の解釈: 臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが、検出された領域と想定される疾患、確定検査の必要性を説明します。
- 確定検査の検討: 妊娠中であれば羊水検査によるCMA、出生後であれば血液によるCMAを実施するかどうかを、ご夫婦で相談しながら決めます。
- 両親の検査: 必要に応じて両親の血液も調べ、デノボか家族内伝達かを確認します。
- 今後の方針の相談: 確定した結果にもとづき、出生後の医療体制や発達支援の準備について、複数の診療科と連携しながら計画を立てます。この段階では焦って結論を出さず、担当医と一緒に半年先・一年先を見据えた計画を練っていくことが大切です。
診療の場でご夫婦とお話ししていると、検査結果の数値そのものより「この先どう向き合えばいいのか分からない」という不安を強く感じていらっしゃる印象を受けます。専門家と一つずつ整理していけば、次に何をすべきかは必ず見えてきます。次子への影響が気になる方は、遺伝カウンセリングの利用を検討してください。
治療・生活への支援と今後の見通し
失われた、あるいは重複した染色体を元に戻す根本的な治療法はまだありませんが、症状ごとの医療管理と発達支援を組み合わせることで、お子さまらしい成長を支えられます。
- 合併症ごとの医療管理: 先天性心疾患があれば小児循環器科、免疫低下があれば小児免疫科など、症状に応じた専門診療科が連携します。
- 発達支援(療育): 理学療法・作業療法・言語聴覚療法を通じて、運動・言葉・生活動作の発達を後押しします。
- 教育環境の選択: 特別支援学校や通級指導教室など、お子さまの特性に合わせた学びの場を、地域の教育センターと相談しながら選んでいきます。
症状の組み合わせも重さも一人ひとり違うため、「この疾患なら必ずこうなる」という決まった経過はありません。生活の質を左右する鍵は、定期的な発達評価と多職種連携による早期対応の積み重ね。私自身、診療の中でその積み重ねの大切さを日々実感しています。近くに同じ疾患のお子さまを見つけるのは難しいかもしれませんが、遺伝カウンセリングの専門的なサポートや患者会とのつながりは活用できます。
微小欠失全般が心配な方は染色体の微細な異常がもたらすリスクについての記事もあわせてご確認ください。個別の疾患ごとの解説記事は、前述の代表的な疾患の章からもたどれます。
NIPTでどこまで微小欠失・重複を対象に含めるかによって、プランの内容は変わります。ご自身に合うプランが分からない場合は、プラン診断を試してみてください。お電話でのご相談も受け付けています。0120-169-629までお気軽にお問い合わせください。
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よくある質問
微小欠失・重複疾患とはどのような病気ですか。
染色体のごく一部(数百キロ塩基対から数メガ塩基対程度)が生まれつき欠けたり重複したりすることで起こる遺伝性疾患の総称です。欠失・重複する範囲に含まれる遺伝子の組み合わせによって、現れる症状の種類や重さが変わります。
NIPTでこれらの疾患は分かりますか。
基本NIPTの対象には含まれず、微小欠失まで対象を広げた拡張検査で候補にあがることがあります。ただしNIPTは非確定的なスクリーニング検査のため、陽性所見が出た場合は染色体マイクロアレイ検査などの確定検査で判断します。
確定診断にはどんな検査が必要ですか。
染色体マイクロアレイ検査(CMA)が中心的な役割を果たします。出生前は羊水検査や絨毛検査で得た検体、出生後は血液を用いて実施し、必要に応じてFISH法や両親の検査もあわせて行います。
遺伝性の病気ですか。次の子にも影響しますか。
多くは偶発的な変化(デノボ)で生じ、次のお子さまへの再発リスクは一般的に低いとされます。ただし親のどちらかが同じ欠失・重複をお持ちの場合は、常染色体顕性遺伝に準じて伝わる可能性があるため、遺伝カウンセリングで確認してください。
治療法はありますか。
染色体の変化そのものを元に戻す根本的な治療法はまだありません。心疾患や免疫低下など個々の合併症への医療管理と、理学療法・作業療法・言語聴覚療法などの発達支援を組み合わせて経過を見ていきます。
染色体マイクロアレイ検査は保険適用されますか。
令和3年10月から、先天異常症候群の診断を目的とした出生後の染色体マイクロアレイ検査は、一定の条件のもとで健康保険の対象になっています。適用の可否は担当医療機関にご確認ください。
監修:岡博史(おか ひろし) / 医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、医学博士。国内でも数少ないラボディレクター資格を保有しています。本記事は医療広告ガイドラインに配慮し、日本人類遺伝学会等・日本産科婦人科学会・難病情報センター・厚生労働省などの公的機関・学会情報を参照して作成しています。記載の頻度・数値は文献により幅があります。診断・治療の最終判断は担当医にご相談ください。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本小児科学会 小児科専門医/日本小児科学会認定 出生前コンサルト小児科医/小児科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本小児科学会 小児科専門医/日本アレルギー学会 所属/小児科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
- McDonald-McGinn DM, Sullivan KE, Marino B, et al. 22q11.2 deletion syndrome. Nat Rev Dis Primers. 2015;1:15071.
- Battaglia A, Hoyme HE, Dallapiccola B, et al. Further delineation of the 1p36 microdeletion syndrome. Am J Med Genet A. 2008;146A(17):2210-2222.
- Cassidy SB, Schwartz S, Miller JL, Driscoll DJ. Prader-Willi syndrome. Genet Med. 2012;14(1):10-26.
- Buiting K, Williams C, Horsthemke B. Angelman syndrome — insights into a disorders of genomic imprinting. Nat Rev Neurol. 2016;12(2):84-93.
- Mainardi PC, Pastore G, Castronovo C, et al. Cri du Chat syndrome. Orphanet J Rare Dis. 2006;1:33.
- Mattina T, Perrotta CS, Grossfeld P. Jacobsen syndrome. Orphanet J Rare Dis. 2009;4:9.
- Gross SJ, Ryan A, Jiri S, et al. Clinical experience with single-nucleotide polymorphism-based non-invasive prenatal testing for microdeletions. Ultrasound Obstet Gynecol. 2016;47(2):177-183.

