お子さんの検査結果に「3p25.3欠失」や「3p25.3微細欠失症候群」と書かれていて、検索してこのページにたどり着かれたのかもしれません。
結論からお伝えします。3p25.3欠失症候群は、3番染色体短腕(3p)の25.3という領域が生まれつき欠けている、非常に稀な染色体疾患です。欠ける範囲によって症状の重さや組み合わせが変わるため、同じ病名でもお子さんごとに現れ方は異なります。
この記事では、3p25.3欠失症候群の基本的な仕組みから、原因遺伝子SETD5との関係を整理します。主な症状、診断方法、NIPT(出生前診断)との関係、治療と支援、ご家族の相談先まで扱います。米国国立衛生研究所(NIH)のGARD、NCBIのMedGen、臨床遺伝学的検査情報を根拠にお伝えします。専門用語が多い病名ですが、一つずつ確認していきましょう。
💡 この記事でわかること
- 3p25.3欠失症候群とはどのような染色体の変化で、なぜ症状の幅が大きいのか
- より広い範囲が欠ける「3pter-p25欠失症候群(3p-症候群)」との違い
- 原因遺伝子SETD5の役割と、SETD5関連障害(点変異型)との関係
- 主な症状と、報告されることが多い特徴的な行動
- 出生前診断・NIPTでこの病気が対象になるケースとならないケース
- 診断後の治療方針とご家族が頼れる相談先
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1. 3p25.3欠失症候群とは
3p25.3欠失症候群とは、3番染色体の短腕(p)にある25.3という領域が生まれつき欠けている状態です。英語ではdel(3)(p25.3)、あるいは「知的障害・てんかん・常同的な手の動きを伴う症候群」とも呼ばれます。
私たちの体はおよそ37兆個の細胞からできています。それぞれの核には、体の設計図である遺伝子を束ねた染色体が収められています。ヒトには23対、46本の染色体があり、中心のくびれより短い方を「短腕(p)」、長い方を「長腕(q)」と呼びます。3p25.3欠失症候群は、この3番染色体の短腕側、末端に近い部分で起こる欠失です。
3pter-p25欠失症候群(3p-症候群)との違い
3番染色体の短腕が欠ける病気には、実はもう一つ有名なものがあります。染色体の末端(3pter)から3p25あたりまで広く欠ける「3pter-p25欠失症候群(3p-症候群)」です。こちらは成長障害、小頭症、瞼が下がる眼瞼下垂、両目が離れる眼間解離など、特徴的な顔立ちが目立つことで知られています。
一方、この記事で扱う3p25.3欠失症候群は、より限定的で小さな範囲の欠失です。知的障害・てんかん・言葉の遅れ・失調(ふらつき)・常同的な手の動きが中心的な特徴とされ、顔立ちの特徴は必須ではありません。米国国立衛生研究所(NIH)の希少疾患情報センターGARD(Genetic and Rare Diseases Information Center)でも、この2つは別の項目です。「3p」という同じ言葉が使われていても、指している範囲が違う点に注意してください。
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2. 主な症状と特徴
3p25.3欠失症候群で報告されることが多いのは、知的障害・てんかんやEEG(脳波)異常・言葉の遅れ・失調・常同的な手の動きです。ただし、すべての方に同じ症状が現れるわけではありません。
| 領域・分類 | 報告されることが多い特徴 |
|---|---|
| 神経発達 | 知的障害(軽度〜重度)、発語の遅れや欠如、運動発達の遅れ |
| 神経症状 | てんかん発作(強直間代・ミオクロニー・欠神など)、失調(ふらつき)、筋緊張低下 |
| 行動特性 | 手をひらひらさせるなどの常同運動、自閉スペクトラム症に似た特性 |
| 顔立ち・骨格 | 小顎症、眼瞼裂の下方傾斜、口蓋裂、母指や母趾の幅広さ |
| その他 | 心房中隔欠損や動脈管開存などの心疾患、難聴、小眼球症 |
神経発達の遅れは、ほぼ全例で見られる中心的な症状です。発語がまったく出ない方から、単語レベルで話せる方まで幅があります。てんかんは新生児期から乳幼児期にかけて始まることが多いとされています。
特徴的なのが、手をひらひらと動かす、指をこすり合わせるといった常同的な手の動きです。これは病名の由来にもなっている所見で、他の染色体疾患との鑑別点の一つとされています。心疾患や難聴などの合併症は、専門医による定期的なチェックで早期に見つけられることがほとんどです。
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3. 原因:SETD5遺伝子と欠失の範囲
3p25.3欠失症候群の症状の多くは、この領域にある「SETD5」という遺伝子が失われることで起こります。欠失の大きさによっては、周囲の別の遺伝子も一緒に失われ、症状の幅がさらに広がります。
SETD5遺伝子の役割
SETD5は、脳の神経細胞が育つ過程で、他の遺伝子のはたらきを調節する酵素をつくる遺伝子です。この遺伝子が片方だけ働かなくなる「ハプロ不全」という状態が起こると、神経の発達に影響が出ます。SETD5は3番染色体の短腕25.3領域にあり、この遺伝子の欠失や変異が、知的障害・言葉の遅れ・自閉的な行動特性の中心的な原因と考えられています。
興味深いことに、SETD5は点変異(1文字だけの変化)でも同じような症状を引き起こします。この場合は「常染色体顕性知的発達障害23型(MRD23)」あるいは「SETD5関連障害」と呼ばれます。当院のコラムでもSETD5関連障害(MRD23)の解説記事で詳しく取り上げています。染色体が丸ごと欠ける「欠失型」も、遺伝子1文字が変わる「点変異型」も、根っこにある原因はどちらもSETD5の機能不足です。
近くの遺伝子BRPF1が加わると症状が変わる
3p25.3領域には、SETD5のすぐ近くにBRPF1という遺伝子も存在します。欠失の範囲がBRPF1まで広がると、眼瞼下垂(まぶたが下がる)や特徴的な顔立ちが加わりやすくなると報告されています。欠失の「端から端まで」の長さが、現れる症状の組み合わせを左右するという点が、この病気を理解するうえで欠かせない視点です。
遺伝形式:多くは偶発的な変化
3p25.3欠失症候群の多くは、精子や卵子がつくられる過程、あるいは受精卵の初期の細胞分裂中に、偶発的に発生します。専門用語でde novo(デ・ノボ)変異と呼ばれるものです。ご両親の年齢や生活習慣、薬の服用などが原因になるものではありません。
ごく稀に、ご両親のどちらかが「均衡型転座」を持っていて、次のお子さんに不均衡な形で受け継がれるケースもあります。次子への影響が気になる場合は、ご両親の染色体検査と遺伝カウンセリングで確認できます。私自身、外来で希少な染色体疾患のお子さんを持つご家族から、次の妊娠について相談を受けることがあります。ご両親の検査結果がわかるだけで、見通しを立てやすくなると感じています。
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4. 診断と検査
診断は、発達の様子や症状の確認と、精密な染色体検査を組み合わせて行われます。3p25.3欠失は範囲が小さいため、従来の検査だけでは見つからないことがあります。
① 染色体分染法(G-バンド法)
血液中の細胞を培養し、顕微鏡で染色体の数や大まかな形を確認する検査です。3p25.3の欠失は範囲が小さいことが多く、この検査だけでは見逃されることがあります。
② 染色体マイクロアレイ検査(CMA)
現在、最も推奨される高精度な検査です。米国の医学データベースGTR(Genetic Testing Registry)にも、SETD5関連の遺伝学的検査が登録されています。
- 特徴:G-バンド法では見つけられない、ごく微細な欠失(マイクロデリーション)を特定できます。
- メリット:欠失の範囲と含まれる遺伝子を詳細に把握でき、今後の合併症の予測や療育方針の検討に役立ちます。
③ 全エクソーム解析・遺伝子パネル検査
てんかんや知的障害の原因を幅広く調べる検査として、SETD5を含む多数の遺伝子を一度に解析する手法も使われます。欠失が見つからずSETD5単独の変異が疑われる場合、この検査が診断確定の決め手になることがあります。

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5. 出生前診断・NIPTとの関係
3p25.3欠失症候群は、基本的なNIPTの対象には通常含まれません。微小欠失まで対象を広げた拡大検査でも、対象になるかはプランと欠失の範囲によって異なります。
一般的な基本NIPTが調べるのは、21・18・13トリソミーという染色体の「数」の変化が中心です。22q11.2欠失症候群など、比較的頻度の高い一部の微小欠失を対象に含むプランもあります。ただし3p25.3欠失は欠ける範囲が症例ごとに異なります。拡大検査であっても、検出対象に含むかは検査会社やプランの技術仕様によって差があります。
私たちヒロクリニックNIPTにも、「超音波検査で心臓の異常を指摘され、微小欠失の検査を検討している」というご相談が寄せられます。まず知っていただきたいのは、NIPTはあくまで非確定的なスクリーニング検査だという点です。公益社団法人日本産科婦人科学会のNIPTに関する指針でも、NIPTの結果はスクリーニング検査の範囲にとどまるとされています。
超音波検査で心疾患や成長の遅れが疑われた場合や、NIPTの微小欠失検査で陽性所見が出た場合。いずれも羊水検査による染色体マイクロアレイ検査(CMA)が確定診断の中心です。あわてて結論を出さず、遺伝カウンセリングで一つずつ整理してください。
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6. 治療と支援:日々の生活をよくするために
失われた染色体そのものを元に戻す根治的な治療法はありませんが、症状に合わせたケアと早期の療育で、お子さんの可能性を広げられます。
多職種による連携チーム
3p25.3欠失症候群のお子さんのケアには、複数の専門家の連携が欠かせません。
- 小児神経科:てんかんの管理と、脳波・発達の評価を担当します。
- リハビリテーション科(PT/OT/ST):運動・手先の動き・言葉の発達を支えます。
- 循環器科:心疾患がある場合、経過観察や治療方針を検討します。
- 耳鼻科・眼科:難聴や小眼球症の有無を定期的にチェックします。
療育と行動面のサポート
「療育」とは、お子さんの発達段階に合わせたトレーニングを行い、社会生活を送りやすくするための支援です。個別支援計画をもとに、園や学校と連携してください。絵カードによる視覚化や、落ち着ける環境づくりが助けになります。
言葉での意思疎通が難しい場合は、サインやタブレット端末による代替コミュニケーションを積極的に取り入れてください。お子さんのフラストレーションを減らせます。常同的な手の動きについては、無理に止めさせるのではなく、専門家と相談しながら見守る姿勢も大切です。
ご家族への負担と、頼れる場所
医療費や療育費がかさみ、家計への負担を感じるご家庭も少なくありません。公的な医療費助成や、地域の福祉サービスの利用を早めに調べておくと安心です。日常の介護によるストレスや、将来への不安を一人で抱え込む必要はありません。
私自身、外来診療の中で、診断名を告げられたばかりのご家族の緊張した表情に出会うことが少なくありません。それでも通院を重ねるうちに、お子さんの小さな成長を一緒に喜べるようになっていくご家族の姿を、何度も見てきました。焦らず、支援者を頼りながら進めていく姿勢が何よりの力になります。
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7. 予後と見通し
発達の遅れが軽度な方から、支援が長く必要な方まで幅があり、欠失の範囲や含まれる遺伝子によって見通しは変わります。
長期的な経過を一律に断定することは、現時点の医学では困難です。てんかんが良好にコントロールできるかどうか、言語療法をいつから始められるかによって、生活のしやすさが変わってくるとされています。定期的な医学的フォローと、早期からの療育が、長い目で見た生活の質(QOL)を支える鍵です。
8. ご家族へのメッセージと相談先
希少疾患ゆえの孤独感は大きいものですが、遺伝カウンセリングや患者会など、頼れる場所は複数あります。
診断名を聞いた瞬間、目の前が暗くなり、将来への希望が見えなくなるような気持ちになられたかもしれません。しかし、どうか知っておいてください。お子さんは、染色体の番地だけで決まる存在ではありません。
3p25.3欠失症候群のお子さんたちも、大好きな遊びがあり、家族との触れ合いを喜ぶ、かけがえのない一人の人間です。発達がゆっくりであるということは、一つひとつの「できた!」を、より深く長く家族で喜べるということでもあります。
なお、同じ3p25.3領域が反対に増える「3番染色体短腕末端重複症候群」という病気もあります。欠失と重複では症状の出方が異なりますが、同じ領域の遺伝子が関わる点は共通しています。気になる方はあわせてご確認ください。近所で同じ悩みを共有できる相手がいなくても、国内の患者会やSNSを通じて、同じ染色体の特性と歩む家族とつながれることがあります。迷ったり疲れたりしたときは、主治医や遺伝カウンセラー、地域の相談支援員を頼ってください。
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他の微小欠失症候群についても気になる方は、あわせてご確認ください。
微小欠失全般が心配な方は染色体の微細な異常がもたらすリスクについての記事、発達の特性についてはNIPTで分かる知的障害のリアルについての記事も参考になります。
次のお子さまに向けてNIPTを検討する場合、微小欠失をどこまで対象に含むかでプランの内容が変わります。ご自身に合うプランが分からない場合は、プラン診断を試してください。お電話でのご相談も受け付けています。0120-169-629までお気軽にお問い合わせください。
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よくある質問
3p25.3欠失症候群とはどのような病気ですか。
3番染色体短腕(p)の25.3領域が生まれつき欠けている状態です。知的障害・てんかん・言葉の遅れ・失調・常同的な手の動きが主な特徴とされる、非常に稀な染色体疾患です。
3pter-p25欠失症候群(3p-症候群)とは違う病気ですか。
はい、範囲が異なる別の疾患として整理されています。3pter-p25欠失症候群は末端から広く欠け、成長障害や特徴的な顔立ちが目立ちます。3p25.3欠失症候群はより限定的な範囲で、知的障害やてんかんが中心です。
原因遺伝子のSETD5とはどのような遺伝子ですか。
脳の神経細胞の発達に関わる酵素をつくる遺伝子です。3p25.3欠失でこの遺伝子が失われるほか、点変異でも同様の症状(SETD5関連障害・MRD23)を起こすことが知られています。
3p25.3欠失症候群はNIPTでわかりますか。
基本的なNIPTの対象には通常含まれません。微小欠失まで対象を広げた拡大検査でも、範囲によって検出対象に含まれるかはプランごとに異なります。NIPTは非確定的な検査のため、疑いがある場合は羊水検査による染色体マイクロアレイ検査で確定します。
遺伝性の病気ですか。次の子どもにも影響しますか。
多くは偶発的な突然変異(デノボ)で、次のお子さまへの再発リスクは一般的に低いとされます。ただしご両親のどちらかが均衡型転座を持つ場合があるため、遺伝カウンセリングで確認してください。
どのような検査で診断が確定しますか。
染色体マイクロアレイ検査(CMA)が中心です。従来の顕微鏡検査(G-バンド法)では見つけられない微細な欠失も特定でき、必要に応じて全エクソーム解析や遺伝子パネル検査を組み合わせます。
監修:岡博史(おか ひろし) / 医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、医学博士。国内でも数少ないラボディレクター資格を保有しています。本記事は医療広告ガイドラインに配慮し、GARD・NCBI MedGen・臨床遺伝学的検査情報(GTR)・日本産科婦人科学会などの公的機関・学術情報を参照して作成しています。記載の頻度・症状は文献により幅があり、診断・治療の最終判断は担当医にご相談ください。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

