20p13 微小欠失症候群

20p13微小欠失症候群は、発達遅延や知的障害、行動異常を引き起こす稀な遺伝疾患です。早期支援と医療管理で生活の質を向上させることが期待できます。

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この記事のまとめ

20p13微小欠失症候群は、20番染色体の短腕の先端(20p13)のごく一部が失われることで起こる、とても稀な先天性の疾患です。多くは新たに生じた変化(新生突然変異)が原因で、ご両親から受け継ぐ場合もあります。発達の遅れ、軽度から中等度の知的障害自閉スペクトラム症や注意の偏り、特徴的な顔立ち、心臓や内臓の合併症などが現れることがありますが、症状の出方には大きな個人差があります。確定診断は染色体マイクロアレイ検査で行い、この微小欠失はNIPT(新型出生前診断)の一般的な対象ではありません。早期からの療育と医療的な管理、そして公的な支援を組み合わせることで、お子さんとご家族の暮らしを支えられます。気になることがあれば、遺伝カウンセリングで専門家に相談してください。

この記事でわかること

  • 20p13微小欠失症候群とは何か、どうして起こるのか(新たに生じた変化=新生突然変異)
  • 発達の遅れ・知的障害・行動面の特徴・合併症など、みられる症状の全体像
  • 染色体マイクロアレイでの確定診断と、NIPTでは分かる範囲が限られる理由
  • 言語療法や理学療法などの療育、医療的な管理、家族が使える公的な支援窓口

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20p13微小欠失症候群とは|原因となりたち

20p13微小欠失症候群は、20番染色体の短腕の先端部分(20p13)が微小に欠けることで、発達や神経のはたらきに関わる遺伝子が影響を受ける、ごく稀な疾患です。染色体は、体の設計図であるDNAが折りたたまれたものです。その一部がわずかに失われると、そこに含まれる遺伝子のはたらきが変わり、さまざまな特徴が現れます。まずは、なりたちから見ていきましょう。

この疾患の多くは、新たに生じた変化(新生突然変異)として起こります。ご両親には欠失がなく、お子さんのなかで初めて生じるケースです。つまり、ご両親の育て方や妊娠中の過ごし方が原因になるわけではありません。ここは、はじめに知っておいてほしいところ。自分を責める必要はまったくありません。

一方で、ご両親のどちらかが同じ欠失を持っていて、それを受け継ぐ場合もあります。ご家族に同じような特徴を持つ方がいるときは、遺伝の受け継がれ方を知るために遺伝カウンセリングが役立ちます。次のお子さんを考えるうえでの見通しも、専門家と一緒に整理できます。

20番染色体と微小欠失のイメージ 通常の染色体 短腕の先端(20p13) 先端が欠けた染色体 この一部が失われる
20番染色体の短腕の先端(20p13)のごく一部が失われるイメージ

20p13微小欠失症候群は、欠けている範囲や含まれる遺伝子によって、現れる特徴が一人ひとり異なります。同じ「20p13の欠失」でも、症状の重さや種類には幅があるのが実情です。微小欠失全体の位置づけをもう少し広く知りたい方は、微小欠失症候群のリスクを解説した記事もあわせてご覧ください。

主な症状と特徴

20p13微小欠失症候群では、発達の遅れや知的障害、行動面の特徴、特徴的な顔立ち、心臓や内臓の合併症などがみられることがありますが、その出方には大きな個人差があります。すべての症状がそろうわけではなく、軽く経過するお子さんもいます。ここでは、報告されている主な特徴を順に整理します。

20p13微小欠失症候群のお子さんの発達を見守る家族のイメージイラスト

発達の遅れと知的障害

もっともよくみられるのが、発達の遅れです。首のすわりや歩き始め、ことばの出方がゆっくりになることがあります。知的障害を伴う場合は、その程度は軽度から中等度のことが多いと報告されています。ただし個人差が大きく、成長とともに少しずつできることが増えていくお子さんも少なくありません。

妊娠中に知的発達への影響が気になる方は、背景の要因を整理した妊娠と知的障害のリスクを解説した記事も参考になります。原因はさまざまで、染色体の変化はそのひとつにすぎません。

行動面の特徴

行動やコミュニケーションの面では、自閉スペクトラム症の特性や、注意の偏り・落ち着きにくさ(注意欠如・多動症の特性)を伴うことがあります。人との関わり方や、こだわりの強さとして表れる場合も。こうした特性は、早い時期から関わり方を工夫することで、お子さんが過ごしやすくなります。

顔立ちや身体の特徴・合併症

一部のお子さんには、特徴的な顔立ちや、低い筋緊張(体の力が入りにくい状態)がみられることがあります。加えて、心臓や腎臓など内臓の合併症を伴う場合もあります。合併症の有無は、生まれてからの健診や検査で確認されます。心配な所見があれば、小児科や各専門科と連携して見守っていきます。

領域みられることのある特徴関わりの方向性
運動・ことば発達の遅れ、ことばの出るのがゆっくり理学療法・作業療法・言語療法
知的発達軽度〜中等度の知的障害(個人差大)療育・就学支援
行動・対人自閉スペクトラム症や注意の偏りの特性行動面の支援・環境調整
身体・内臓特徴的な顔立ち、心臓や腎臓の合併症小児科・専門科での定期管理
20p13微小欠失症候群でみられることのある特徴と関わりの整理(すべてがそろうわけではありません)

表のとおり、特徴は多岐にわたりますが、あくまで「みられることがある」もの。お子さんによって現れる組み合わせは違います。よく似た染色体の変化として9p13微小欠失症候群の解説記事もありますので、比較の参考にしてください。

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どう診断するのか|染色体マイクロアレイ検査

20p13のような微小な欠失を確定するには、染色体マイクロアレイ検査が中心となり、通常の染色体検査では見つけにくい小さな変化まで調べられます。従来の顕微鏡で染色体を見る検査では、ここまで小さな欠失は捉えきれないことがあります。マイクロアレイは、染色体全体を細かく読み取り、どこがどれだけ欠けているかを調べる方法です。

生まれる前に調べる場合は、羊水検査絨毛検査で採取した細胞を用いて、染色体マイクロアレイを組み合わせて確定診断を行います。羊水検査はおなかに針を刺して羊水を採る検査で、流産のリスクはおおむね0.3%前後とされます。絨毛検査は胎盤の一部を採る検査で、リスクはおおむね1%前後と報告されています。検査の内容や受け方は、羊水検査について解説した記事で詳しく紹介しています。

出生前の検査の位置づけ 非確定的検査(NIPT 主に13・18・21番を調べる 微小欠失は一般的な対象外 結果は確定ではない 確定的検査 羊水検査絨毛検査 +染色体マイクロアレイ 微小欠失の確定に必要 受ける・受けないは自己決定。迷うときは遺伝カウンセリングへ
非確定的検査と確定的検査の位置づけのイメージ

生まれたあとに発達の遅れや合併症がきっかけで検査を受け、この欠失が分かることもあります。診断はゴールではなく、必要な支援につなぐための出発点。名前がつくことで、使える療育や制度がはっきりする面もあります。診断結果の受けとめ方に迷うときは、遺伝カウンセリングで気持ちも含めて相談してください。

NIPTで分かる範囲と、微小欠失の扱い

NIPTは主に13・18・21トリソミーなどを調べる非確定的検査で、20p13のような微小欠失は一般的な対象ではありません。NIPTは、お母さんの血液に含まれる、胎児由来の細胞外を流れるDNAを調べる検査です。採血だけで受けられる負担の少ない方法ですが、調べられる範囲は限られます。ここは誤解の多いところなので、丁寧に整理します。

微小欠失は、一部の施設でオプションとして調べられることがあります。ただし対象となる疾患は限られ、検出率にも幅があります。NIPTの結果はあくまで可能性を示すもので、確定診断にはなりません。陽性的中率(実際にその疾患である割合)は、年齢や有病率によって変わります。稀な疾患ほど、陽性でも実際には該当しないことが起こりやすい点も知っておいてください。NIPTで分かること・分からないことの全体像は、NIPTで分かる疾患を解説した記事にまとめています。

検査を受けて、限られた範囲でも安心につながったという声は少なくありません。私自身、相談の場で「すべてが分かるわけではないと理解したうえで、それでも受けてよかった」という声をよく聞きます。Xでも、認証施設でNIPTを受けて陰性だった@shirokumabanbanさんが、これで完全に安心というわけではないけれど、3つの染色体異常が無いと分かっただけでも気持ちが落ち着いた、と率直につづっていました。検査で分かる範囲を正しく理解したうえで、その範囲での安心を受けとる。まさに、そうした向き合い方の一例だと感じます。

療育と医療的な管理

20p13微小欠失症候群には根本的な治療はありませんが、早い時期からの療育と、合併症に応じた医療的な管理で、お子さんの成長と暮らしやすさを支えられます。症状の種類や重さに合わせて、複数の専門職がチームで関わります。ここでは、代表的な関わり方を紹介します。

発達を支える療育には、いくつかの柱があります。ことばの発達を促す言語療法、体の動きを育てる理学療法、日常の動作や手先の使い方を練習する作業療法です。行動面の特性には、環境を整えたり関わり方を工夫したりする支援を組み合わせます。順番に見ていきましょう。

発達を支える療育の柱 言語療法 ことば・コミュニケーション 理学療法 姿勢・体の動き 作業療法 手先・日常の動作 行動面の支援 環境調整・関わりの工夫
言語・理学・作業療法と行動面の支援を組み合わせて発達を支えるイメージ

心臓や腎臓などの合併症がある場合は、小児科や各専門科が定期的に状態を確認します。必要に応じて治療や手術が検討されることも。合併症の有無や程度はお子さんによって違うため、担当医と相談しながら、その子に合った管理の計画を立てていきます。あせらず一歩ずつで大丈夫です。

療育は、早く始めるほど積み重ねの時間が長くなります。ただし「出遅れた」と感じる必要はありません。私が接してきたご家族でも、就学前後から支援につながって、その子らしいペースで伸びていく姿を何度も見てきました。今日からできることを、専門職と一緒に見つけていってください。

家族への支援と相談できる窓口

稀な疾患を持つお子さんのご家族には、医療・福祉・経済の各面で使える公的な支援があり、早めに窓口を知っておくと負担を和らげられます。長く続く療育や通院は、ご家族に心理的にも経済的にも負担がかかりやすいものです。一人で抱え込まず、使える制度や仲間とつながることが支えになります。

まず、稀な疾患の情報を調べたいときは、難病情報センターが役立ちます。疾患の解説や相談先、各種制度の情報がまとまっています。発達面の支援については、国立障害者リハビリテーションセンター発達障害情報・支援センターが、地域の相談窓口や支援の考え方を紹介しています。

お住まいの地域では、児童発達支援や放課後等デイサービスなどの障害児支援を利用できます。保健センターや児童相談所、市区町村の窓口が入り口です。同じ疾患や近い状況のご家族が集まる患者会・家族会も、実際の暮らしの知恵を分け合える心強い場所。孤立を防ぐという意味でも、つながりを持っておいてください。

妊娠中に出生前検査を検討している方は、検査の考え方を中立にまとめた日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会の情報も参考になります。受ける・受けないは、ご夫婦で話し合って決める自己決定です。迷うときは、遺伝カウンセリングで専門家と一緒に整理してください。実際の相談事例はNIPTの事例を紹介した記事も参考になります。

検査との向き合い方

出生前の検査は、受けること自体が目的ではなく、結果とどう向き合うかをご夫婦で話し合う時間こそが大切です。検査で分かる範囲、分からない範囲、そして結果が出たあとの選択肢。これらを事前に知っておくと、落ち着いて臨めます。ここでは、向き合い方のヒントをお伝えします。

検査を受けるかどうか迷うのは、とても自然なことです。私は、迷いながらも結論を急がず、ご夫婦で言葉を交わすこと自体に意味があると感じています。Xでも@chiisunmonさんが、受けるべきか迷ったけれど陰性で安心材料になった、陽性だった時のことは事前に決めず「その時考えよう」と夫婦で話して受けた、とつづっていました。答えを先に用意しなくてもいい。迷いや揺れを含めて話し合うプロセスが、その後の支えになります。

どんな結果であっても、次にできることは必ずあります。稀な疾患であっても、療育や医療、公的な支援という受け皿があります。不安が先に立つときこそ、正確な情報と専門家の伴走が助けになります。一人で決めきろうとせず、遠慮なく相談の場を使ってください。

よくある質問

Q. 20p13微小欠失症候群は遺伝しますか?

多くは、お子さんのなかで新たに生じた変化(新生突然変異)として起こり、ご両親の育て方や妊娠中の過ごし方が原因ではありません。一方で、ご両親のどちらかが同じ欠失を持ち、それを受け継ぐ場合もあります。次のお子さんへの見通しを知りたいときは、遺伝カウンセリングで受け継がれ方を確認してください。

Q. NIPTで20p13微小欠失症候群は分かりますか?

NIPTは主に13・18・21トリソミーなどを対象とする非確定的検査で、20p13のような微小欠失は一般的な対象ではありません。一部の施設でオプションとして調べられることもありますが、対象は限られ検出率にも幅があります。確定には羊水検査絨毛検査に染色体マイクロアレイを組み合わせる必要があります。

Q. どうやって確定診断するのですか?

染色体マイクロアレイ検査で、小さな欠失まで細かく調べて確定します。生まれる前に調べる場合は、羊水検査流産リスクはおおむね0.3%前後)や絨毛検査(おおむね1%前後)で採取した細胞を用います。生まれたあとは、採血などで検査できます。検査の選び方は担当医と相談してください。

Q. どんな症状が出ますか?

発達の遅れ、軽度から中等度の知的障害自閉スペクトラム症や注意の偏りといった行動面の特性、特徴的な顔立ち、心臓や腎臓の合併症などがみられることがあります。ただし出方には大きな個人差があり、すべてがそろうわけではありません。軽く経過するお子さんもいます。

Q. 治療や療育はどう進めますか?

根本的な治療はありませんが、言語療法・理学療法・作業療法や、行動面の支援を組み合わせて発達を支えます。心臓や腎臓の合併症があれば、小児科や専門科が定期的に管理します。早い時期から始めるほど積み重ねの時間が長くなりますが、あせる必要はありません。その子のペースで進めてください。

Q. 家族はどこに相談できますか?

難病情報センターや発達障害情報・支援センターで、疾患や支援の情報を調べられます。地域では、児童発達支援や放課後等デイサービスなどの障害児支援を、保健センターや市区町村の窓口から利用できます。患者会・家族会も心強い場です。一人で抱え込まず、早めにつながってください。

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著者・監修

岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。

20p13微小欠失症候群は、発達遅延や知的障害、行動異常を引き起こす稀な遺伝疾患です。早期支援と医療管理で生活の質を向上させることが期待できます。

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医師監修 監修日:2024年11月15日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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