妊婦の飲酒が胎児へ及ぼす影響【医師監修】

妊婦の飲酒が胎児へ及ぼす影響

「妊娠していると気づかず飲酒をしてしまった」「飲酒をすると赤ちゃんにどのような影響があるの?」この記事では、妊娠中の飲酒が赤ちゃんへどういった影響を及ぼすのかを具体的な例を挙げながら解説していきます。

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はじめに

「妊娠中の飲酒はよくない」ということは、多くの方が知っていることだと思います。しかし、飲酒によって赤ちゃんにどのような影響が出るのかをご存知の方はあまりいないのではないでしょうか。

厚生労働省のデータによると、飲酒の習慣がある女性の割合は8.3%だといわれています。そもそも女性は妊娠の有無にかかわらず、飲酒によって肝硬変やアルコール依存症になりやすいなどのリスクがあり注意が必要です。

普段から飲みすぎないことが大切ですが、妊娠を機にいきなり飲酒量を減らすのは難しいと感じる方もいます。もちろん、妊娠中の飲酒はしないことが原則です。

ところが、妊婦の飲酒率は0%ではありません。平成29年のデータでは、1.2%の妊婦が飲酒をしていました。妊娠中の飲酒は早産や妊娠高血圧症候群、癒着胎盤のほか、赤ちゃんの発育にも影響を及ぼします。長いようで短い妊娠期間、赤ちゃんのことを第一に考えて禁酒をしてください。

では、飲酒が赤ちゃんにどのような影響をもたらすのか、詳しく見ていきましょう。

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アルコールが及ぼす胎児への影響

妊娠中の飲酒は厳禁です。赤ちゃんにとってアルコールは、負担でしかありません。

では、なぜ母親が飲酒すると赤ちゃんに影響が出るのでしょうか。

妊娠中に飲酒をすると、胎盤を通してアルコールが赤ちゃんにも運ばれていってしまいます。運ばれたアルコールは、赤ちゃんの肝臓で代謝されるのですが、小さな赤ちゃんの肝臓はまだまだ未熟です。うまく代謝ができないこともあり、早産や流産の原因になるだけでなく、赤ちゃん自身にも影響が出る恐れがあります。

早産・流産・分娩異常の原因に

妊娠中のアルコール摂取は、早産や流産を招くことが明らかです。妊娠中期や妊娠後期のアルコール摂取量と早産リスクには、J字型の相関性があります。つまり、飲酒量が増えれば増えるほど早産リスクが上昇するのです。

時期が早ければ早産ではなく流産となります。また、分娩異常の原因となることもわかっているため、妊娠中の飲酒は絶対に避けなければなりません。

妊婦の飲酒は早産・流産・分娩異常の原因に

胎児性アルコール症候群(FAS)

胎児性アルコール症候群(Fetal Alcohol Syndrome:FAS)とは、赤ちゃんが子宮内でアルコールに暴露することにより身体面や認知面でさまざまな異常を示すものです。

この疾患では、特徴的な顔面、身体発育の遅れ、中枢神経の問題といった症状が見られます。平らな顔をしており頭が小さく、薄い上唇や不明瞭な人中など容貌が見られることが特徴です。発達障害や行動障害、学習障害などが見られることもあります。

以前は容貌や低体重のみが重要視されていましたが、最近では学習障害が出やすい面も注目されるようになりました。胎児性アルコール症候群では、ADHD(注意欠陥・多動症)やうつ病、依存症などのリスクが上がることがわかってきたのです。

妊娠中に母親が飲酒をしなければ、赤ちゃんが胎児性アルコール症候群になることはありません。1日のアルコール摂取量が15ml(350mlの缶ビール1本程度)未満であれば胎児への影響は少ないとされています。しかし、影響がゼロというわけではありません。アルコール量が120ml以上になると胎児性アルコール症候群の発生率が30〜50%になります。

胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)

胎児性アルコール・スペクトラム障害(Fetal Alcohol Spectrum Disorders:FASD)とは、特徴的な容貌や脳障害が見られるなどの異常が表れるものです。妊娠中の方がアルコールを摂取したために赤ちゃんに影響が出るものを総称して胎児性アルコール・スペクトラム障害と呼んでいます。

上記で解説した胎児性アルコール症候群も胎児性アルコール・スペクトラム障害の一つです。飲酒量が増えるほどリスクも増大します。容貌が特徴的であったり低体重や中枢神経障害などが代表的な症状です。

アルコール依存症で妊娠中に飲酒した女性から生まれた赤ちゃんの30%が胎児性アルコール・スペクトラム障害だといわれています。

「この量までならアルコールを飲んでも大丈夫」という基準が飲酒にはありません。そのため、妊娠がわかったらアルコールはきっぱりとやめるべきです。妊娠初期であっても後期であっても、全妊娠期間を通して飲酒は赤ちゃんになんらかの影響をもたらす可能性があるので注意が必要になります。

胎児性アルコール・スペクトラム障害を発症した場合、とくに治療方法はありません。そのため、妊娠中にアルコールを摂取しないという予防を行うことがもっとも大切です。

その他奇形などの先天性異常

妊娠中の飲酒は、胎児が奇形になるリスクを上げます。アルコールが代謝されてできるアセトアルデヒドが胎盤を通して赤ちゃんの発育に影響を及ぼすことがあるのです。

とくに器官が形成される妊娠初期に飲酒をすると、奇形が生じやすくなります。アルコール摂取量が1日90ml以上になると、奇形になる確率が明らかに高くなるため要注意です。

もちろん90mlを超えなければ飲酒をしていいというわけではありません。飲酒をした時点で何かしらの影響が出る可能性がありますので注意してください。

妊娠に気づいた時点で禁酒

飲酒した時期と胎児に起こる異常の関連

飲酒は妊娠の時期にかかわらず、なんらかの影響をもたらす可能性があります。とくに妊娠初期は器官形成期であるため、アルコール摂取により奇形が生じる可能性が高い時期です。

妊娠中期や妊娠後期では、胎児発育不全や中枢神経障害のリスクが上昇します。早産のリスクについては、妊娠初期の飲酒は関連性がないというデータもありますが、早産にかかわらず飲酒はさまざまな影響をもたらすものなので、避けなければなりません。

しかし、お腹が出ていないために妊娠していると気づかず、アルコールを飲んでしまったという方もいるはずです。少量であれば大きな問題はありませんので、妊娠に気づいた時点で禁酒しましょう。なお、妊娠0〜4週未満の妊娠超初期の飲酒は赤ちゃんへの影響はほとんどないといわれています。

NIPT(新型出生前診断)とは

赤ちゃんに先天性の異常がないか気になっている方も多いのではないでしょうか。なんの異常もなく無事に赤ちゃんが生まれてくるか心配で、NIPT(新型出生前診断)を検討している方もおられるかと思います。

NIPT(新型出生前診断)とは、母体から採血を行い赤ちゃんに染色体異常がないかを調べる検査のことです。アルコールが原因で起こる障害について調べることは残念ながらできませんが、ダウン症エドワーズ症候群パトウ症候群などについては高い精度で調べることができます。

もしも赤ちゃんの染色体異常について気になる場合は、ヒロクリニックNIPTにご相談ください。ヒロクリニックNIPTでは、これまでに35,000件以上の検査実績があります。双子の場合でも検査が可能です。連携医療機関も含めて全国46都道府県で、エコー検査で妊娠が確認できたらすぐに検査ができます。

世界最高水準のNIPT
新型出生前診断(NIPT)とは、「お母さんから採血した血液から胎児の、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、1...

まとめ

妊娠中の飲酒は、赤ちゃんへさまざまな影響をもたらします。妊娠初期は奇形のリスクを上げ、妊娠中期や妊娠後期は胎児発育不全や中枢神経障害などのリスクを上げてしまうのです。 

胎児性アルコール症候群や胎児性アルコール・スペクトラム障害などのように、特徴的な容貌になったり身体面や精神面での発育に問題が出たりすることもあるため、妊娠がわかった時点で飲酒はやめましょう。

赤ちゃんの先天性異常が気になる場合は、NIPT(新型出生前診断)を受けてみるのも一つの方法です。ヒロクリニックNIPTなら全国で検査が受けられますので、まずはお気軽にご相談ください。

Q&A
よくある質問

妊婦の飲酒についてよくある質問をいくつかまとめました。参考にしてみてください。

  • Q
    妊活中に飲酒をすると妊娠しにくくなる?
    妊活中であっても適量であれば妊娠に影響を与える可能性は少ないと考えられます。

    ただし、妊娠が成立した時期と飲酒の時期がかぶってしまうと「赤ちゃんに影響はないかな?」と心配になってしまいますので、妊娠の可能性が少しでもあるのなら飲酒は控えたほうが無難です。

    過度な飲酒は妊娠しにくい体になるともいわれているため、妊活中であればアルコールは控えましょう。
  • Q
    妊娠中でも少量なら飲酒しても良い?
    少量であっても飲酒は禁物です。

    アルコールの摂取量が増えるほど赤ちゃんへの影響も大きくなりますが、少量であっても影響がゼロになるわけではありません。

    妊娠がわかった時点で禁酒してください。
  • Q
    飲酒は母乳に影響がある?
    授乳中の飲酒は母乳に影響を与えます。

    母乳中にアルコールが含まれてしまうため、赤ちゃんにアルコールを摂取させることになり危険です。

    授乳中も飲酒は避けてください。

「妊娠していると気づかず飲酒をしてしまった」「飲酒をすると赤ちゃんにどのような影響があるの?」この記事では、妊娠中の飲酒が赤ちゃんへどういった影響を及ぼすのかを具体的な例を挙げながら解説していきます。

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

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記事の監修者


岡 博史先生

岡 博史先生

NIPT専門クリニック 医学博士

慶應義塾大学 医学部 卒業

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