出産後の過ごし方について気になっている方もいるのではないでしょうか。今回は、産後の入院期間や過ごし方、母子同室と母子別室のメリットデメリット、そして赤ちゃんとママの検査について詳しく解説します。これから出産される方はぜひ参考にしてくださいね。
産後の入院期間
出産後、母体が妊娠前の状態に戻るのには時間がかかります。子宮が元の大きさまで収縮したりホルモンバランスが整ったりするまでには、約2か月の期間が必要です。
出産は、ただでさえママの体に大きなダメージを与えます。出産後に無理をすると、元の状態に戻るまでにより時間がかかるかもしれません。体をゆっくり休めるために、産後の入院は欠かせないのです。
赤ちゃんを出産した後の入院期間は、自然分娩か帝王切開か、初産か経産婦か、そして病院によって異なります。
自然分娩は、帝王切開よりも母体の回復が早い傾向にあります。出産時に問題がなければ、入院期間は1週間程度で済むでしょう。しかし、帝王切開の場合、お腹を切り開いているため回復に時間がかかります。入院期間は約1週間から2週間程度になります。
初産の場合、出産を経験したことがある人よりも産後の回復に時間がかかりやすいです。そのため、経産婦は出産後約3〜5日で退院できますが、初産婦は退院まで3〜7日程度かかります。
入院から退院までのスケジュール
入院から退院までのスケジュールや過ごし方は、自然分娩の場合と帝王切開の場合で異なります。
また、計画分娩であれば、決められた日に入院して決められた日に出産をします。そのため、退院日の目処も立ちやすいでしょう。
反対に、陣痛が起きてからの出産や緊急帝王切開になると、退院日の予想がつきにくかったり退院までの期間が伸びたりします。
以下で紹介するスケジュールは、あくまでも目安として参考にしてください。

自然分娩の場合
自然分娩の場合、計画分娩であれば妊娠予定日の前に予め入院をします。計画分娩でなければ、陣痛がきてから病院に行き、出産することになるでしょう。
出産後は、体力が回復するまで数時間から1日程度、ゆっくりと休みます。その後の過ごし方としては、授乳や沐浴などの赤ちゃんのお世話を助産師から指導してもらったり実際に行ったりします。
数日経ち、検査をして体調に問題がなければ退院です。
帝王切開の場合
計画的な帝王切開であれば、あらかじめ決めている入院日に入院します。入院中に必要な処置を行い、出産へ臨みましょう。
出産後は、まず歩行の練習から始めます。食事はお粥やうどんなど、消化に良いものが提供されるでしょう。
歩行できるようになれば、自然分娩の場合と同様に赤ちゃんのお世話の指導が始まります。間には、採血や体重測定などママの検査も行われます。
体調や縫合後の傷に問題がなければ1〜2週間で退院が可能です。
入院期間中の過ごし方
出産後の過ごし方は、母子同室の場合と母子別室の場合で大きく変わります。
同室と別室にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、よく比較して自分に合った方を選ぶと良いでしょう。
母子同室の場合
母子同室は、その名の通りママと赤ちゃんが同じ部屋で入院している状態です。
母子同室は主に個室で行われることが多いです。個室は大部屋だと眠れない方にも向いています。家族の付き添いや面会も、気兼ねなく行うことができます。
母子同室のメリット
母子同室だと、常に赤ちゃんの様子が見られるのがメリットです。好きなときに抱っこができるのも魅力です。
退院後の生活が想像しやすいのも、メリットとして挙げられます。赤ちゃんと暮らしていると出てくる心配や不安を前もって発見して、入院中に助産師さんに質問することもできます。退院後に困ることを減らしたければ、母子同室を選ぶと良いでしょう。
母子同室のデメリット
母子同室だと、ママがゆっくり休めないかもしれません。夜中に赤ちゃんが泣き止まない、寝ないとなると、体力が削られてしまうでしょう。
退院前に確実に休息を取りたいのであれば、母子別室にしたほうが良いと言えます。

母子別室の場合
母子別室は、ママが入院している部屋と赤ちゃんが過ごす部屋が別々の状態を指します。
大部屋での入院だと、多くの病院で母子別室になるでしょう。金銭的にも母子別室の方が安い可能性が高いです。
母子別室のメリット
母子別室のメリットは、赤ちゃんを気にせずに生活できる時間があるということです。助産師さんなど赤ちゃんの扱いに長けている人に預けるので、安心感もあります。
特に帝王切開をして安静が必要なママにとっては、一人でゆっくりできる時間は大切だと言えます。睡眠時間も確保しやすいので、退院前にゆっくりと寝て体力を回復したい方にもおすすめです。
母子別室のデメリット
母子別室のデメリットは、同室の場合と比べて赤ちゃんと過ごす時間が短くなるということです。一日中赤ちゃんと一緒に過ごせるわけではないので、少し辛いと感じるかもしれません。
また、退院後に赤ちゃんとの過ごし方がわからずに困ってしまう可能性も出てきます。
赤ちゃんが受ける検査と診察
入院中、赤ちゃんはさまざまな検査を受けられます。
障害や疾患を引き起こす先天性の病気を早期に見つけることで、必要な治療や生活上の注意点について指導を受けることができます。早期発見、発症予防のためにも、ぜひ積極的に検査を受けるようにしましょう。
先天性代謝異常等検査
赤ちゃんは出生後4〜6日以内に、先天性の代謝疾患や異常がないかどうかの検査を行います。全部で26種類の疾患が対象になっていて、一度の検査でまとめて調べられるのが特徴です。
検査は微量の採血を元にして行われます。検査の費用は主に公費で負担されるので安心です。
聴覚スクリーニング検査
退院前に赤ちゃんの聴覚スクリーニング検査を受けることもできます。
聴覚スクリーニング検査は、赤ちゃんの耳が聞こえているかどうかを確認する検査です。赤ちゃんが眠っている間に行われ、刺激や痛みなどはありません。検査にかかる時間は5分程度です。
NIPT(新型出生前診断)は出産前にできる検査
NIPT(新型出生前診断)は、出産前にできる検査です。ダウン症など、赤ちゃんの染色体異常の可能性を調べられます。妊娠10週目から受けられるので、妊娠初期に赤ちゃんの病気を知りたい方に向いています。
検査方法は至って簡単で、ママの腕から少しの血液を採取するだけです。血液中の赤ちゃんのDNAを元に検査されます。羊水検査などとは違い検査による流産のリスクがないため、気軽に検査を受けられます。
検査精度が高いのも魅力ですが、NIPT(新型出生前診断)は非確定的検査ですので、結果が陽性の場合には、確定検査である羊水検査を推奨しています。また、血液の中に赤ちゃんのDNAが少ないとまれに再検査になることもあるため注意が必要です。
ママが受ける検査と診察
出産後にママが受ける検査には、主に採血や尿検査と内診があります。帝王切開をした場合は、傷口の診察も行われます。
採血や尿検査は、出産後の体調を測るのに重要な検査です。出産後は体重が5kg前後減ることもあるので、栄養バランスやタンパクの値を確認します。
内診では、子宮の大きさや出血の有無を確認します。帝王切開の傷の診察では、感染していないかどうかが診られるでしょう。
まとめ
今回の記事では、出産後の過ごし方や検査についてご紹介しました。
出産後の母体は大きなダメージを受けている状態です。そのため、産後は無理に動かず安静に過ごすようにしましょう。
入院中は母子同室または母子別室で過ごすことになります。それぞれにメリットとデメリットがあるので、自分にとって合うものを選ぶようにしてください。
また、出産後には赤ちゃんもママも様々な検査を受けるでしょう。それぞれの検査がどういう目的で行われるかも知っておくのがおすすめです。
ぜひ、今回の記事を参考にしてより良い産後を過ごしてくださいね。
【参考文献】
- 北海道 – 保健福祉部子ども未来推進局子ども子育て支援課
- NTT東日本 関東病院 – 入院について
出産後の過ごし方について気になっている方もいるのではないでしょうか。今回は、産後の入院期間や過ごし方、母子同室と母子別室のメリットデメリット、そして赤ちゃんとママの検査について詳しく解説します。これから出産される方はぜひ参考にしてくださいね。
記事の監修者

川野 俊昭先生
ヒロクリニック博多駅前院 院長
日本産科婦人科学会専門医
産婦人科医として25年以上、主に九州で妊婦さんや出産に向き合ってきた。経験を活かしてヒロクリニック博多駅前院の院長としてNIPT(新型出生前診断)をより一般的な検査へと牽引すべく日々啓発に努めている。
略歴
1995年 九州大学 医学部卒業
1995年 九州厚生年金病院 産婦人科
1996年 九州大学医学部付属病院 産婦人科
1996年 佐世保共済病院 産婦人科
1997年 大分市郡医師会立アルメイダ病院 産婦人科
1998年 宮崎県立宮崎病院 産婦人科 副医長
2003年 慈恵病院 産婦人科 医長
2007年 日本赤十字社熊本健康管理センター診療部 副部長
2018年 桜十字福岡病院 婦人科
2020年 ヒロクリニック博多駅前院 院長
資格
日本産科婦人科学会専門医
検診マンモグラフィ読影認定医
日本スポーツ協会公認 スポーツドクター
厚生労働省認定臨床研修指導医
日本抗加齢医学会専門医