帝王切開のメリット・デメリットとは?2人目以降の出産についても詳しく解説【医師監修】

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帝王切開は、メスを使用した外科手術によっておこなわれる出産(分娩)のことです。麻酔や術後の痛み、傷跡など不安に感じる妊婦さんも少なくないでしょう。本記事では帝王切開のメリット・デメリットや、帝王切開後の2人目の出産についてを医師が解説します。

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この記事のまとめ

帝王切開はメスによって母体のお腹と子宮を切り開き、外科手術によって分娩をおこなう出産方法です。帝王切開のメリットとしては母子ともに出産時のリスクを減らせる、陣痛を感じないなどが挙げられ、デメリットとしては手術後の合併症のリスクがある、切開部位の傷の痛みなどが挙げられます。

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帝王切開とはどんな出産方法?

「帝王切開」は産道といわれる母体の通路を通って生まれる「普通分娩(経膣分娩)」とは異なります。メスによって母体のお腹と子宮を切り開き、外科手術によって分娩をおこなう出産方法です。語源であるドイツ語により、カイザーと呼ぶクリニックもあるでしょう。

帝王切開と聞いた場合、「緊急で危険性が高い出産」と考える妊婦さんも多くいらっしゃいます。しかし、厚生労働省が2017年に報告したデータによると、帝王切開で出産した人の割合は一般病院で出産した人の25.8%と報告されています。つまり、出産した人の約4人のうち1人が、帝王切開により出産している計算になるでしょう。1990年の割合が11.2%であったことを考えると、約30年で2倍以上にも増加していることになります。

帝王切開による出産が増加した背景には、第一に医療技術の発展に伴い、お母さんと赤ちゃんへのリスク軽減が挙げられます。また、妊娠高血圧症候群や逆子など、お母さんや赤ちゃんの状態によっては、普通の出産(分娩)よりも少ないリスクで、安全に出産をおこなうことが可能とされています。これらのことから現在、帝王切開は取り立てて珍しくも、危険な出産方法でもないといえるでしょう。

帝王切開のメリット・デメリットとは?

帝王切開の種類

帝王切開には、予定帝王切開と緊急帝王切開の2つが挙げられます。なお、予定・緊急問わず、どちらの帝王切開も、保険適用(3割負担)となります。

予定帝王切開

予定帝王切開は、医師が事前に手術予定日を決め、予定日を迎えた時点で手術をおこないます。前もって日にちが決まっていることから、妊婦さんやご家族の心構え、入院準備を余裕を持っておこなえることがメリットといえるでしょう。

「予定帝王切開」は、以下の状態が適応とされています。

  • 逆子
  • 多胎妊娠(2人以上同時に妊娠すること)
  • 前置胎盤(胎盤が通常よりも低い位置にあるため子宮口がふさがれた状態)
  • 2人目など以前も帝王切開をおこなったことがある場合
  • 母体に脳および心臓などに持病がある場合

※上記の状態以外にも医師の判断により、予定帝王切開適応となるケースも少なくありません。なお、予定帝王切開でも、手術予定日前に陣痛が始まったり、破水があった場合は緊急予定帝王切開になる場合があります。

緊急帝王切開

緊急帝王切開は、経膣分娩(普通分娩)による出産中に、緊急でおこなわれる帝王切開のことです。母体および赤ちゃんの健康リスク、または生命危機となった場合、医師の判断により緊急で帝王切開が適応されます。。

「緊急帝王切開」は、以下の状態が適応とされています。

  • 遷延分娩、分娩停止
  • 臍帯脱出(胎児より先に臍帯が、膣を通過した状態)
  • 胎児ジストレス
  • 常位胎盤早期剥離
  • 重度の妊娠高血圧症候群

予定帝王切開および緊急帝王切開の適応はそれぞれ異なりますが、手術の大きな流れは同様といえるでしょう。また帝王切開の約6割は「緊急帝王切開」という報告があります。

帝王切開の手術方法

帝王切開の手術方法には、縦切開(腹部を縦に切開する)と、横切開(横に切開する)が挙げられます。なお、緊急でおこなわれる帝王切開の場合、本人の希望する切開法を選ぶことは、当然できません。医療機関(病院)の方針および、母体と赤ちゃんの状態・緊急度によって異なるといえるでしょう。

縦切開による帝王切開

「縦切開」は、へその下辺りより下方向、約10㎝「縦」に切開をおこなう手術方法とされています。

お腹の筋肉の繊維は、縦に走行するため切開時に筋肉の損傷が少ないといえます。そのため縦切開による帝王切開は、手術後の回復が早いというメリットが挙げられるでしょう。また縦切開による帝王切開は、赤ちゃんの娩出が比較的容易な手術方法とされています。

一方、縦切開による帝王切開は、お腹を縦に約10㎝の切開をおこなうため、傷跡が目立ちやすく、創部に瘢痕およびケロイドが発生する可能性はゼロとはいえないでしょう。

横切開による帝王切開

「横切開」は、お腹の下部を横方向に約10㎝の切開をおこなう手術方法とされています。

下着に隠れる程度の部位で切開をおこなうため、傷跡が目立ちにくく、審美的観点により希望する方も多いようです。しかし横切開は、縦切開と比べて赤ちゃんの娩出に時間が掛かることや、手術後の痛みが縦切開と比較し、やや強いことがデメリットといえるでしょう。

また、横切開による帝王切開は、筋肉および臓器癒着が生じやすいともされています。臓器癒着が生じても、特に症状が見られないケースもあります。しかし、手術後に慢性的な腹痛や、次回以降の妊娠に影響を与えてしまう可能性も少なくありません。

縦切開・横切開、どちらの手術方法も、子宮の切開部は医療糸で縫合されます。溶けて体内で分解される吸収医療糸により縫合されることから、抜糸の必要はありません。また、腹部の切開部は、縫合糸および医療用ホッチキスでの縫合となります。

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帝王切開のメリット・デメリット

帝王切開は、お腹と子宮をメスで切開し、赤ちゃんを娩出する出産方法となります。手術後も含め、多くのお母さんやご家族が不安に思うことでしょう。しかし母体リスクや、赤ちゃんの状態により、緊急帝王切開をおこなうケースも少なくありません。

帝王切開には、以下のようなメリット・デメリットが挙げられます。帝王切開は経膣分娩とは異なる術後といえるでしょう。

帝王切開のメリット

帝王切開によるメリットは、以下が挙げられます。

  • 母子ともに、出産時のリスクが減らせる
  • 陣痛を感じない
  • 出産までの時間が短い
  • 予定帝王切開の場合、出産スケジュールが事前に分かる

帝王切開は母体や赤ちゃんに、何らかのリスクがある場合におこなわれる出産法です。逆子、多胎児などの娩出に多く適応されます。

帝王切開は、メスを使用して腹部を切る開腹手術です。赤ちゃんを娩出するまで麻酔がかかった状態となるため、出産時には陣痛を感じることはないでしょう。

出産にかかる時間が短いことも帝王切開の特徴です。経膣分娩の場合、数時間かかることも少なくありません。しかし通常の帝王切開であれば、数分で出産(娩出)することができます。

予定帝王切開の場合、手術をおこなう日が事前に決められています。本人やご家族を含めた関係者が出産スケジュールを立てやすい、というメリットも挙げられるでしょう。

帝王切開のデメリット

帝王切開によって生じるデメリットは以下が挙げられます。

  • 手術後の合併症リスク
  • 切開部位の傷の痛み
  • 帝王切開部位に生じる瘢痕やケロイドによる傷跡

帝王切開は腹部を切開することで出産をおこないます。そのため手術後には切開部の傷が痛み、合併症が生じるリスクも少なくありません。帝王切開術後に多く見られる合併症は、血管が血栓(血の塊)で塞がれて引き起こる血栓症のほか、切開した組織や臓器の癒着などが挙げられるでしょう。

帝王切開によって引き起こる多くの合併症リスクは、医療の発展や創傷処置により、大きく軽減したといえるでしょう。しかし、帝王切開は外科手術を伴う出産方法であることから術後、切開部の傷跡に痛みが生じるほか、瘢痕やケロイドが発生することも少なくありません。

なお、帝王切開による術後の痛みは、麻酔効果が切れてから2〜3日ほど続くとされています。通常、術後の痛みは鎮痛剤でコントロールすることが可能です。しかし週数間たっても痛みが治まらない、または縫合部位に炎症や膿など異常を生じた際は、すみやかに医師に相談しましょう

帝王切開のデメリットとは

1人目が帝王切開の場合、2人目も帝王切開をしなければならない?

1人目の赤ちゃんを帝王切開で出産し、その後2人目を妊娠した場合は、帝王切開による出産が推奨されます。これは分娩中に傷跡が開いてしまう可能性があり、子宮破裂を発症するリスクを回避するためです。

帝王切開による出産経験者は、経膣分娩(普通分娩)による出産の場合、子宮破裂が発生する確率は0.2〜0.7%との報告があがっています。この確率は普通分娩による出産で、子宮破裂が生じる確率の0.1%未満を上回る数値となります。なお、1人目の帝王切開の手術方法が、子宮の下部を横方向に切開した横切開であれば、子宮破裂のリスクは低いといわれています。

母体の状態により、1人目の赤ちゃんを帝王切開で出産していても、2人目の赤ちゃんを経膣分娩による出産が、必ずしも不可能ということはありません。しかし、過去に帝王切開の経験がある場合、経膣分娩で出産するときの成功率は、約60〜80%という報告があげられています。2人目の赤ちゃんの出産を経膣分娩で希望する場合は、これらのリスクを理解したうえで医師に相談をしてみましょう。

なお帝王切開による出産のあと、切開による傷が治癒する前に妊娠することで、傷口が開く可能性も少なくありません。母体の健康リスクを考慮し、一般的に2人目の赤ちゃんの妊娠は目安として1年ほど、間隔をあけることを推奨されています。

一方、帝王切開後の妊娠の間隔が1年未満だとしても、流産や早産との関連はなかったとの報告もあげられています。必ずしも帝王切開後、1年以上経過しないと2人目の赤ちゃんの妊娠ができないわけではありませんが、母体にリスクが生じる可能性があるため、医師としっかり相談のうえ、2人目の出産方法を決めることが大切です。

帝王切開後の傷跡はどうなる?

帝王切開について多く寄せられる質問の中には、手術の痛み以外に傷跡や色素沈着などが多く挙げられます。

通常、帝王切開の傷跡は少しずつ薄くなります。しかし術後3日間程度は、切開部位に炎症が生じるため、痛みが最も強く感じられる時期といわれています。切開部位の痛みが治まり、やがて傷跡を修復するため、細胞が産生されます。この細胞産生がおこなわれる時期には、傷跡が赤くなったり、かゆみが生じるでしょう。

さらに時間が経過すると傷跡のかゆみが消失し、少しずつ元の肌色に戻り傷跡が薄れていきます。このように帝王切開による傷跡は時間経過とともに、目立たなくなるでしょう。

しかし、お母さんの中には、切開の傷跡が赤く盛り上がる「肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)」や「ケロイド」が生じることで、目立った傷跡が残ってしまうケースも多く見られます。肥厚性瘢痕・ケロイドを予防するためには、傷跡のケアが大切です。刺激を与えないよう注意し、専用のテープや塗り薬などで、傷跡が残らないようにしましょう。

帝王切開の傷跡や色素沈着が気になる場合、レーザー治療などにより傷跡を修正することも可能です。なお治療方法によっては保険適用外(自由診療)のケースもあるため、事前に費用を調べると良いでしょう。

帝王切開となりやすい双子のNIPT(新型出生前診断)も可能

双子の赤ちゃんの場合、多くは帝王切開による出産となります。なお、多くのNIPT施設によるNIPT(新型出生前診断)は、双胎児の検査を受け付けておりません。

ヒロクリニックNIPTでは一人でも多くのお母さんの不安な気持ちに応えるべく、双胎児のNIPT(新型出生前診断)はもちろん、バニシングツインのNIPT(新型出生前診断)も受け付けております。詳しくはヒロクリニックNIPTスタッフまでご相談ください。

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NIPT(新型出生前診断)で分かる胎児の先天性疾患リスク

NIPT(新型出生前診断)とは、母体血液によって、胎児の染色体異常症による先天性疾患などの陽性リスクを調べる検査のことです。これまでの出生前診断である羊水検査や、絨毛検査のように、母体に注射針を刺したり経膣より絨毛組織の採取をおこなうことがないため、母体と胎児への侵襲(ダメージ)が非常に少ない検査法とされています。

NIPT(新型出生前診断)とは

NIPT(新型出生前診断)は、一般的には妊娠10週0日より検査をおこなうことが可能です。お母さんの腕から10mlの血液を採取し、そこに含まれる赤ちゃんのDNAの断片からダウン症(21トリソミー)エドワーズ症(18トリソミー)パトウ症(13トリソミー)などの染色体異常症リスクを調べることができます。なおヒロクリニックNIPTでは、妊娠6週から全常染色体全領域の部分欠失部分重複を調べるNIPTを実施しているため、赤ちゃんの健康状態をより詳細に確認することが可能です。

NIPT(新型出生前診断)で調べることが可能な対象疾患は、ダウン症(21トリソミー)エドワーズ症(18トリソミー)パトウ症(13トリソミー)・全染色体検査・性染色体・全常染色体部分欠失・重複疾患などです。NIPT(新型出生前診断)はスクリーニング検査(非確定的検査)ではありますが、検査精度は約99.9%と、とても高精度とされています。

世界最高水準のNIPT
新型出生前診断(NIPT)とは、「お母さんから採血した血液から胎児の、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、1...

まとめ

帝王切開はこれまで多くおこなわれてきた出産方法です。お腹の赤ちゃんが逆子や多胎児、もしくはお母さんに心臓疾患などがある場合でも、母子ともに安全な出産をおこなうことができるといえるでしょう。

帝王切開は麻酔下によりメスを使用した外科手術のため、不安を感じるお母さんも少なくありません。しかし、出産時には予期せぬ緊急の帝王切開をおこなうケースも考えられます。これらのことから、帝王切開のメリットとデメリット、そして手術後の状態や過ごし方などを事前に理解することが大切です。

また出産前に赤ちゃんの染色体異常症による先天性疾患リスクなどを知りたい場合は、ヒロクリニックNIPTにご相談ください。

全国にあるヒロクリニックNIPT各院には、NIPT(新型出生前診断)の知識が豊富な医師が多数在籍しております。NIPT(新型出生前診断)や染色体異常症について分からないことがあれば、ヒロクリニックNIPTへご相談ください。ご予約については、ホームページよりマイページを作成し、問診票にご記入ください。一緒に最適なプランを考えましょう。

【参考文献】

帝王切開は、メスを使用した外科手術によっておこなわれる出産(分娩)のことです。麻酔や術後の痛み、傷跡など不安に感じる妊婦さんも少なくないでしょう。本記事では帝王切開のメリット・デメリットや、帝王切開後の2人目の出産についてを医師が解説します。

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

記事の監修者


岡 博史先生

岡 博史先生

NIPT専門クリニック 医学博士

慶應義塾大学 医学部 卒業

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