女性ホルモンとは?妊娠中の変化と役割【医師監修】

女性ホルモンとは

女性ホルモンは、女性の身体を女性らしく保つために大切なものです。また、妊娠を継続するためにも重要な役割を果たしています。今回は、そもそも女性ホルモンとは何か、女性ホルモンの役割とその働き、女性ホルモンが乱れる場合とその症状、また妊娠・出産に伴うホルモンの変化とその役割について簡単にまとめました。

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女性ホルモンとは

そもそもホルモンとは、生命や健康、活動性を保つため、また身体を成長させたり生殖機能を維持するために、色々な働きを調整する役割を持つ重要な物質です。

ホルモンは脳の中にある下垂体を始め、甲状腺や副甲状腺、副腎、膵臓など、身体のさまざまな組織でつくられています。2022年現在、100種類以上のホルモンが発見されています。代表的なホルモンとしては、血糖値を下げる「インスリン」や血圧を上げる「アドレナリン」などが知られています。

ホルモンの中で、女性の卵巣でつくられ、女性としての成長や成熟、生殖機能を維持しているのが「女性ホルモン」です。 

女性ホルモンの役割と働き

女性ホルモンには「エストロゲン(卵胞(らんぽう)ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体(おうたい)ホルモン)」の2種類があります。

エストロゲンは女性らしさをつくるホルモンです。その働きは「女性らしい身体を作る」とともに、「妊娠の準備」をすることです。子宮などの生殖器官を発育、維持するとともに、女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を綺麗にする作用も持っています。

エストロゲンの分泌量は、月経周期による毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎えます。その後およそ20年間の性成熟期が続きます。そして45〜55歳でやってくる更年期になると分泌量は急激に減り、閉経にいたります。閉経後はエストロゲンがほとんどなくなるため、男性と同じように生活習慣病にかかりやすくなったり、骨が脆くなったりします。

プロゲステロンの働きは「妊娠の維持」です。基礎体温を上げるとともに、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を安定化させます。妊娠中は、妊娠を継続させる働きを担っています。食欲を増やしたり、水分や栄養素を溜め込むのもその一環です。また、乳腺を発達させる働きもあります。

妊娠と女性ホルモン

女性ホルモンは、妊娠の成立と維持に欠かせない役割を持っています。ここでは、月経期間中の女性ホルモンの変動や、ホルモンバランスの乱れが引き起こす症状とその解決方法について分かりやすくお示しします。

月経周期で変化する女性ホルモン 

正常であれば約28日間の周期で訪れる月経も、女性ホルモンの作用によってコントロールされています。月経周期は、卵胞期と排卵期、そして黄体期の後にくる月経の4つに分かれています。

卵胞期は、脳からの指令を受けて、卵巣の中の原子卵胞が卵胞に育つ時期です。大脳にある視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)が分泌されると、脳下垂体から性腺刺激ホルモンである卵巣刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)が分泌されます。これらの刺激により卵胞が育つと、そこから分泌されるエストロゲンの量が増え、子宮内膜が徐々に厚くなっていきます。

卵胞が十分に育ち子宮内膜が十分に厚くなった時点でFSHとLHの分泌がピークに達します。これにより排卵が起こり、卵胞から卵子が放出されます。これが排卵期です。

排卵が起こると卵胞は黄体に変化し、黄体期を迎えます。黄体から分泌されるプロゲステロンの働きによって子宮内膜は、受精卵が着床しやすい状態に整えられます。

受精卵が着床しなかった、つまり妊娠が成立しなかった場合、排卵の1週間後くらいからプロゲステロンは減り始めます。さらに1週間くらい経つと、妊娠のために厚くなっていた子宮内膜がはがれる「月経」が始まります。

女性ホルモンの動きは、基礎体温によって分かります。エストロゲンの動きが優勢なときは『低温期』、プロゲステロンの働きが優勢なときは『高温期』です。

つまり、毎日基礎体温を確認することで、どちらの女性ホルモンが活発であるかを把握できます。基礎体温が高くなると、例えば2週間前後で生理が来るというサインが見て取れます。また高温期が2週間以上続き、生理が来ない場合には、妊娠している可能性が高くなります。

女性ホルモンの乱れによる症状と原因 

女性ホルモンの乱れが引き起こす症状として最もよくあるのが、月経周期の変化です。月経は微妙なホルモンバランスの上に成り立っています。エストロゲンとプロゲステロンは対の関係にあり、一方の分泌量が増えると、もう一方の分泌量は減少するという特徴があります。月経周期とともに規則的な増減を見せる女性ホルモンですが、心身に不調や悩みを抱えているだけでも女性ホルモンの分泌が乱れ、月経周期に異常が起こることがよくあります。

そのほか女性ホルモンの乱れによる症状として有名なものとして、更年期やPMS(月経前症候群)などがあります。

更年期になると、前述の通りエストロゲンの分泌量が急激に減ります。これにより、のぼせ(ホットフラッシュ)やほてり、発汗の他、めまいや耳鳴り。イライラ・うつ症状などの多彩な症状を引き起こします。これらの症状を総称して更年期障害と呼んでいます。

PMS(月経前症候群)は、生理前に乳房の張りや痛み、体重増加や疲れ・だるさ、のぼせ感やむくみなどなど体の症状の他に、イライラやうつ症状などの精神的な症状などが出現するものです。

ただし、生理不順や不妊のために治療を受けていると女性ホルモンのバランスが崩れることも多く、年齢に関係なくこれらの症状が現れることがあります。 

ホルモンバランスを整える

 女性ホルモンのバランスを整えるためには、以下のような点に気をつけましょう。

  • 適度な運動を行う(疲れすぎない程度、3回/週以上が目安)
  • 規則正しい生活を送る(できれば朝起きたら朝日を浴びる)
  • しっかり睡眠をとる(7時間以上がおすすめ、夜12時までには就寝する)
  • 栄養バランスのよい食事をとる
  • 無理なダイエットをしない

また、以下のような場合は、他の病気がないか確認したり、薬によるホルモンバランスの調整が必要なことがありますので、一度婦人科を受診すると良いでしょう。

  • 強い月経痛で日常生活に支障がある
  • 月経時以外にも出血が見られる(不正出血)
  • 月経前症候群(PMS)
  • 更年期症状
  • 不妊
  • 自律神経失調症など 
ホルモンバランスを整える

妊娠中の女性ホルモンの変化

妊娠中は女性ホルモンの分泌量がダイナミックに変化します。ここでは、着床した時、妊娠初期、妊娠中・後期、出産後に分けて要点を説明します。 

着床した時の女性ホルモンの変化

 着床すると、後に胎盤になる部分からヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)と呼ばれるホルモンが分泌されます。hCGは胎盤の絨毛組織のみから分泌されるホルモンであり、妊娠検査薬はこのホルモンの数値が一定以上あることを検知する仕組みとなっています。 

妊娠初期(妊娠1~4カ月)の女性ホルモン

 hCGは妊娠8〜12週ごろに最も分泌量が増えるのが特徴です。その後は急激に減少し、胎盤が完成する妊娠16週になる頃には分泌量も落ち着いていきます。妊娠成立によりhCGが分泌されることでエストロゲンとプロゲステロンも増えていき、体は赤ちゃんを育てやすいように変化していきます。

hCGは妊娠の成立・維持には欠かせないホルモンですが、これの影響でつわりが起こります。これまで大丈夫だった臭いがダメになるなどの嗅覚の変化は、hCGが増えることによって生じるものです。

また、エストロゲンの増加により、吐き気や嘔吐などつわりの主な症状が起こります。さらに、プロゲステロンの増加は腸の動きに影響を与えるため、お腹の張りやガスの溜まり、便秘などが起こります。エストロゲン・プロゲステロンの増加により肌トラブルが多くなったり、乳腺が発達するため胸の張りや痛みが起こることもあります。

NIPT(新型出生前診断)を受けることができるのも、この時期となります。NIPT(新型出生前診断)は妊娠10週目から実施可能となり、赤ちゃんの健康と発育状態に影響を与えるダウン症や18トリソミー、13トリソミーなどの染色体疾患や性染色体などを確認することができます。

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妊娠中期・後期(妊娠5~10カ月)の女性ホルモン

妊娠後期になると、エストロゲンとプロゲステロンがさらに増えます。どのくらい増えるのかというと、エストロゲンの数値は妊娠前の50〜1100倍ほどとなります。プロゲステロンの影響で強い眠気が出たり、便秘がいっそうひどくなることがあります。

また、妊娠20週頃でhCGの増加が完全に落ち着くとともに、ヒト胎盤ラクトゲン(hPL)の分泌が増加します。hPLは、赤ちゃんと母体へ確実に栄養を届ける役割をするホルモンです。出産前後がピークとなり、出産後は激減します。

乳腺を発達させて母乳を作る働きを担うプロラクチン(PRL:乳腺刺激ホルモン)も徐々に増加していきますが、プロゲステロンがPRLの働きを抑えているため、出産までは母乳は出ません。

出産後の女性ホルモンの役割と働き

 妊娠期間中に著明な増加を見せていたエストロゲンとプロゲステロンですが、出産を終えて胎盤が母体からはがれ落ちると、ほぼゼロとなります。

その一方で、PRLを抑えていたプロゲステロンが急激に減少することから、出産後すぐに母乳が作られ始めます。

産後うつ病は、産後3〜6カ月以内の10〜20%の女性にみられるといわれていますが、その一因として、特にプロゲステロンを中心とした産後のホルモンの急激な変動が影響を与えているとされています。

最近注目を集めているのがオキシトシンというホルモンです。脳にある視床下部で作られ下垂体から分泌されるオキシトシンは、赤ちゃんが母乳を飲みやすいように乳頭から押し出す役割を持っています。また、妊娠によって大きく広がった子宮を収縮させ、元に戻すのに一役かっています。 

まとめ

以上、妊娠中の女性ホルモンの役割と働きについてまとめました。女性ホルモンは女性が生きていく上で欠かせないものであり、妊娠中にもダイナミックに変化していきます。それに伴い数々の不調を起こすことがありますので、気がついたことがありましたらお近くの婦人科を受診してみましょう。

妊娠が判明したら、NIPT(新型出生前診断)をぜひご検討ください。妊娠10週目から実施可能な検査であり、赤ちゃんの成長と発育に影響を与える生まれつきの病気がないかどうかのスクリーニングを行います。NIPT(新型出生前診断)についてご不明な点がありましたら、ヒロクリニックNIPTまでお気軽にお問い合わせください。

女性ホルモンは、女性の身体を女性らしく保つために大切なものです。また、妊娠を継続するためにも重要な役割を果たしています。今回は、そもそも女性ホルモンとは何か、女性ホルモンの役割とその働き、女性ホルモンが乱れる場合とその症状、また妊娠・出産に伴うホルモンの変化とその役割について簡単にまとめました。

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記事の監修者


川野 俊昭先生

川野 俊昭先生

ヒロクリニック博多駅前院 院長
日本産科婦人科学会専門医

産婦人科医として25年以上、主に九州で妊婦さんや出産に向き合ってきた。経験を活かしてヒロクリニック博多駅前院の院長としてNIPT(新型出生前診断)をより一般的な検査へと牽引すべく日々啓発に努めている。

略歴

1995年 九州大学 医学部卒業
1995年 九州厚生年金病院 産婦人科
1996年 九州大学医学部付属病院 産婦人科
1996年 佐世保共済病院 産婦人科
1997年 大分市郡医師会立アルメイダ病院 産婦人科
1998年 宮崎県立宮崎病院 産婦人科 副医長
2003年 慈恵病院 産婦人科 医長
2007年 日本赤十字社熊本健康管理センター診療部 副部長
2018年 桜十字福岡病院 婦人科
2020年 ヒロクリニック博多駅前院 院長

資格

日本産科婦人科学会専門医
検診マンモグラフィ読影認定医
日本スポーツ協会公認 スポーツドクター
厚生労働省認定臨床研修指導医
日本抗加齢医学会専門医

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