甲状腺から分泌されるホルモンは妊娠・出産だけでなく、赤ちゃんの発育・発達にも大きな影響を与えます。甲状腺の病気をお持ちの方も、今まで指摘されたことがない方も、甲状腺について理解しておくことで安心して妊娠・出産ができるでしょう。
お母さんと赤ちゃんのためにNIPT検査で安心を
はじめに
甲状腺疾患があっても、適切に治療を続ければ妊娠・出産は十分に可能です。妊娠前から気になる症状がある方は甲状腺機能を調べ、妊娠がわかった方は早めに産婦人科を受診しましょう。
甲状腺ホルモンは赤ちゃんの脳や神経の発達に深く関わっています。数値が乱れたまま放置すると、流産や早産のリスクが上がることがわかっています。当院にも「薬を飲みながら妊娠してよいのか」「甲状腺の数値が引っかかったが赤ちゃんに影響はないか」というご相談を数多くいただきます。
甲状腺疾患をお持ちの方は、妊娠・出産に伴って薬剤の種類や内服量を調整する必要があります。自己判断で服薬を中断せず、必ず主治医と相談しながら進めてください。
【監修】岡博史(おか ひろし)
医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長/Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本と米国、双方の医師国家試験に合格した医学博士。国内に20人ほどしかいないラボディレクター資格を保有し、NIPT検査の精度管理に携わっている。
この記事でわかること
- 甲状腺ホルモンの働きと、増えすぎ・少なすぎで起こる病気の違い
- 甲状腺疾患があっても妊娠できるのか、妊娠経過にどう影響するのか
- 妊娠前・妊娠中・治療中それぞれの注意点と食事のポイント
- 実際にSNSで語られている体験談から見える不安との向き合い方
甲状腺ホルモンとは
甲状腺ホルモンは、全身の代謝と赤ちゃんの発育を支える重要なホルモンです。
甲状腺ホルモンは、のどぼとけの下にある甲状腺という蝶のような形をした臓器から分泌されます。体の代謝を活発にする働きがあり、心拍数や体温、エネルギー消費量をコントロールしています。
甲状腺ホルモンには、甲状腺刺激ホルモン(TSH)とFT3・FT4の3種類があります。TSHは脳の下垂体から分泌され、甲状腺ホルモンの分泌量をコントロールする司令塔です。FT3・FT4が少なくなるとTSHの分泌量が増え、反対にFT3・FT4が増えるとTSHの分泌量は少なくなります。
甲状腺ホルモンに異常があると起こる病気
甲状腺ホルモンの異常は「増えすぎた場合」と「少なすぎる場合」の2つに分けられます。それぞれ症状や代表的な病名が異なるため、順に確認しましょう。
甲状腺ホルモンの分泌が増えすぎた場合
FT3・FT4の分泌が増えすぎた状態を、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)といいます。
甲状腺機能亢進症になると全身の代謝が活発になります。食べても体重が減る、動悸がする、脈が速くなる(頻脈)、イライラする、疲れやすい、手が震えるなどの症状がみられます。のどぼとけの下の部分が腫れる場合もあります。
代表的な病名はバセドウ病・中毒性多結節性甲状腺腫・甲状腺腫です。まれに薬剤やヨウ素の過剰摂取が原因で発症することもあります。日本甲状腺学会の「バセドウ病治療ガイドライン2019」では、妊娠初期(妊娠5週から9週6日まで)の薬物治療について具体的な注意点が示されています。
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甲状腺ホルモンの分泌が少なすぎる場合
FT3・FT4の分泌が少なすぎる状態を、甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)といいます。
甲状腺機能低下症になると顔の表情が乏しくなり、話し方がゆっくりになります。元気がなくなり声がかすれる、まぶたや顔がはれぼったくなる、皮膚がカサカサになる、毛が薄くなるといった症状も特徴です。月経周期が乱れ、過多月経や無月経になる人もいます。
代表的な病名は橋本病です。ほかにも、がんや腫瘍で甲状腺を全摘出した場合が該当します。日本内分泌学会によると、成人の治療では合成T4製剤(チラーヂン®S)を服用し、症状と甲状腺ホルモン値・TSH値をもとに診断がおこなわれます。
亢進症と低下症は症状が対照的です。下の表で違いを整理しました。
| 項目 | 甲状腺機能亢進症 | 甲状腺機能低下症 |
|---|---|---|
| 代表的な病名 | バセドウ病 | 橋本病 |
| 体重の変化 | 食べても減る | 増えやすい |
| 脈拍・動悸 | 速くなる・動悸 | 変化は目立たない |
| 皮膚・むくみ | 汗をかきやすい | カサカサ・むくみ |
| 妊娠への主な影響 | 流産・早産・妊娠高血圧症候群 | 流産・児の神経発達への影響 |
表はあくまで目安です。症状の出方には個人差があるため、気になる症状があれば自己判断せず産婦人科や内分泌内科を受診してください。

妊娠と甲状腺ホルモン
甲状腺ホルモンは卵胞の成長に欠かせないため、分泌の乱れは妊娠のしやすさにも影響します。
甲状腺ホルモンの分泌が増えすぎる(亢進する)と、排卵までの日数が短くなる傾向があります。反対に分泌が少なすぎると卵胞が十分に発達せず、無排卵月経や無月経になることがあります。甲状腺ホルモンの分泌が乱れると卵胞が育ちにくくなり、妊娠の可能性が低くなるのです。
日本産婦人科医会も、甲状腺疾患は性成熟期の女性に多く、不妊診療の現場ではさらに高頻度にみられると指摘しています。不妊治療を検討する際には、FT4値とTSH値の測定が推奨されています。
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甲状腺疾患があっても妊娠できる?
結論からいうと、甲状腺疾患があっても適切な治療をしていれば妊娠しにくいわけではありません。
甲状腺の病気がある方は、妊娠前から適切な治療をおこない、甲状腺ホルモンの分泌量を正常範囲内にコントロールしておきましょう。未治療でなければ、不妊の原因になりにくいことがわかっています。妊娠中も治療を継続すれば、流産・早産・妊娠高血圧症候群のリスクを、甲状腺疾患がない人とほぼ同程度まで抑えられます。
私たちが相談を受けていて感じるのは、「甲状腺の薬=妊娠に悪影響」と思い込んでいる方が意外に多いことです。多くのケースでは、薬の種類を調整したうえで内服を継続しながら出産に至っています。自己判断で服薬をやめず、主治医の指示に従うことが何より大切です。
妊娠中の甲状腺ホルモン
妊娠中は甲状腺ホルモンの必要量が20~50%程度増えます。
その理由は、甲状腺や脳の発達が不十分な妊娠初期には、赤ちゃんが自分自身で甲状腺ホルモンを作れないからです。お母さんの甲状腺ホルモンは胎盤を通して赤ちゃんに届けられます。胎盤を通過する過程で一部が分解されてしまうため、妊娠していないときよりも多く分泌する必要があるのです。
甲状腺疾患が胎児に及ぼす影響
甲状腺機能異常を治療せずに放置すると、流産・早産・妊娠高血圧症候群など、妊娠経過に影響が及ぶことがあります。
甲状腺機能亢進症の場合には、流産・早産・妊娠高血圧症候群のリスクが高くなります。適切に治療していないと、在胎週数の経過よりも赤ちゃんの成長が遅れるといわれています。
お母さんの血液中の抗TSH受容体抗体(TRAb)が高値の場合は、赤ちゃんの甲状腺が刺激され、甲状腺機能亢進症を発症することがあります。TRAbの影響は生後3か月頃に自然によくなることが多く、過剰に心配しすぎる必要はありません。気になる場合は出生後の小児科フォローについても産科医に確認しておきましょう。
甲状腺機能低下症のお母さんの場合は、妊娠初期に甲状腺ホルモンが不足する可能性があります。甲状腺ホルモンが不足すると、流産や赤ちゃんの精神・知能・神経の発達に障害が起こる確率が上がることが報告されています。IQの低下やてんかんの発症、思春期以降の抗精神病薬・抗不安薬の内服頻度が上がるといった報告もあります。
実際にSNSでも「妊娠中に甲状腺が亢進気味と知り、動悸がひどく救急車を呼んだ」という投稿がありました。@susuino55さんは、暑い時期にドキドキする症状が残っていることや、薬の副作用にも触れています。動悸や息切れなど気になる症状があれば、我慢せず早めに主治医へ相談してください。
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胎児の健康はNIPT(新型出生前診断)
赤ちゃんに染色体異常などの病気がないか気になる方には、NIPT(新型出生前診断)という選択肢があります。
NIPT(新型出生前診断)はお母さんの採血だけで受けられる出生前診断です。赤ちゃんへの身体的な負担がなく、ヒロクリニックNIPTでは全項目感度99.9%以上・結果報告率99.98%という実績があります。検体は東京衛生検査所(国内)で検査するため、最短2〜5日で結果がわかります。
NIPT(新型出生前診断)は、赤ちゃんにダウン症(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーなどの染色体異常の可能性を評価し、リスクが「高い」か「低い」かを知る非確定検査です。確定させるには羊水検査や絨毛検査などの専門的な検査が必要ですが、感染症や流産のリスクが伴うため気軽には受けにくいのが実情です。
ヒロクリニックNIPTは年齢制限なし・紹介状不要で、経験豊富な医師とスタッフが検査前後のカウンセリングに対応します。甲状腺疾患などの持病がある方も、遠慮せずご相談ください。
甲状腺疾患の治療
甲状腺疾患をお持ちの方の妊娠・出産には、タイミングごとにいくつかの注意点があります。
妊娠前からの甲状腺疾患がある場合
甲状腺ホルモン剤を内服している方は、妊娠を希望する時点で赤ちゃんへの影響が少ない薬への変更が必要になる場合があります。赤ちゃんへの影響を最小限にするため、あらかじめ主治医と相談しておいてください。
妊娠に伴い甲状腺ホルモンの必要量が増えるため、妊娠経過に応じた服用量の調整が必要です。妊娠7週目頃から甲状腺に負担がかかり始めるため、妊娠がわかったら早めに受診し、TSHを適切な範囲内に維持できるよう服用量を調整してもらいましょう。
甲状腺ホルモンが高値な状態を放置していると、つわりや出産、帝王切開などでストレスを受けた際に全身の臓器機能が低下し、甲状腺クリーゼを発症するケースがあります。甲状腺クリーゼは心臓や肝臓の機能が低下する重篤な状態で、約10%の患者さんが命を落とすとされています。妊婦さんが発症すると赤ちゃんの死亡リスクも高くなるため、甲状腺ホルモンの値を適正範囲内にコントロールする必要があります。
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妊娠中に甲状腺疾患にかかった場合
妊娠中に甲状腺疾患がわかった場合は、早期に治療を始めることが赤ちゃんを守る一番の近道です。
処方薬を適切に内服し、甲状腺ホルモンの分泌量を目標範囲内にコントロールできれば、赤ちゃんの成長や発達への影響は最小限に抑えられます。不安な気持ちになるのは自然なことですが、主治医と相談しながら治療を継続することが大切です。
X(旧Twitter)でも「血液検査で甲状腺の数値が高く甲状腺炎と言われ、レボチロキシンを服用している。胎児への影響を調べるほど心配になる」という投稿が見られました。@nyokenyokemaruさんのように、診断名を告げられて不安になる方は少なくありません。同じ悩みを持つ方は多く、珍しいことではないケースがほとんどです。心配な点は遠慮せず主治医に質問し、必要であれば内分泌専門医への紹介を相談してみてください。
治療が及ぼす胎児の奇形
薬の種類と内服時期によっては、赤ちゃんへの影響に注意が必要です。
お母さんが妊娠初期(妊娠5週から13週6日頃)に「メルカゾール」という薬を内服していると、赤ちゃんのおへそや腸、頭の皮膚に奇形が生じるリスクが高くなることが報告されています。赤ちゃんのお父さんが内服していても、赤ちゃんへの影響はありません。
妊娠中期以降にメルカゾールを内服した場合の影響は、まだ十分にわかっていません。妊娠を希望される場合は、妊娠前から赤ちゃんへの影響が少ない薬剤への変更を検討する必要があります。あらかじめ甲状腺疾患の主治医に相談しておきましょう。

食事の注意点
甲状腺疾患がある方は、甲状腺ホルモンの材料となる「ヨウ素」の摂りすぎに注意してください。
昆布や海藻類にはヨウ素が多く含まれ、過剰摂取は甲状腺機能に影響することがあります。海藻類を積極的に食べるのは避け、主治医から食事指導があれば従いましょう。ただし、必要な制限の程度は病状によって異なります。X(旧Twitter)では、「妊娠を機に甲状腺の数値が引っかかり薬を飲み続けたが、産後の経過観察では特に食事制限はなく、普通に海藻類も食べている」という投稿もありました。@momoiropanda198さんの例のように個人差が大きいため、自己判断で極端に制限せず、必ず主治医の指示を確認してください。
甲状腺ホルモンの分泌が少ない状態が続くと代謝が落ち、太りやすくなります。体重管理は、極端な食事制限ではなく、バランスの良い食事と主治医への相談を軸に考えてください。
よくある質問
甲状腺疾患と妊娠に関して、当院に寄せられることの多い質問をまとめました。
Q1. 甲状腺の薬を飲んだまま妊娠しても大丈夫ですか?
薬の種類によって対応が異なります。妊娠中も内服が必要な薬が多い一方、メルカゾールのように妊娠初期の使用に注意が必要な薬もあります。自己判断で中断せず、必ず主治医に妊娠の希望や妊娠が判明したことを伝えてください。
Q2. 妊娠中はいつ甲状腺の検査を受ければよいですか?
妊娠がわかったら、できるだけ早く産婦人科を受診しましょう。日本産婦人科医会も、妊娠前・妊娠初期の甲状腺機能検査の重要性を指摘しています。すでに甲状腺疾患の治療中であれば、妊娠7週目頃までに主治医へ相談してください。
Q3. 橋本病があっても妊娠・出産できますか?
橋本病(甲状腺機能低下症)があっても、ホルモン値を適切にコントロールすれば妊娠・出産は可能です。国立成育医療研究センターの情報でも、レボチロキシンによる治療で母体・胎児への影響を抑えられるとされています。放置せず定期的な検査を続けてください。
Q4. バセドウ病の治療中でも赤ちゃんに影響はありませんか?
未治療のまま放置すると流産・早産・妊娠高血圧症候群のリスクが上がりますが、適切な治療でリスクを抑えられます。日本甲状腺学会のガイドラインでは妊娠初期の薬剤選択に関する指針が示されているため、主治医と内服薬の相談をしてください。
Q5. 甲状腺の数値と赤ちゃんの染色体異常は関係ありますか?
甲状腺機能異常そのものが染色体異常の直接的な原因になるわけではありません。ただし、赤ちゃんの状態が気になる方は、NIPT(新型出生前診断)のような出生前検査で確認する方法もあります。不安な点は産婦人科医に相談しながら検査の要否を検討してください。
Q6. 甲状腺の薬をやめたいのですが、自己判断でやめてもよいですか?
自己判断での中断は避けてください。急に服薬をやめると甲状腺クリーゼなど重篤な状態を招くおそれがあります。体調の変化や不安があれば、まず主治医に相談してください。
まとめ
甲状腺ホルモンは妊娠・出産、赤ちゃんの成長・発達に欠かせないホルモンです。
甲状腺に病気があるからといって妊娠できないわけではありませんが、放置すると妊娠しにくくなったり流産の可能性が高くなったりするため、適切な治療を受けることが大切です。SNS上の体験談を見ても、多くの方が薬を続けながら出産に至っています。数値が気になる方は、まず主治医に相談することから始めてください。
ヒロクリニックNIPTではNIPT(新型出生前診断)に精通した医師とスタッフによるサポート体制により、甲状腺疾患などの持病がある方も安心してご相談いただけます。赤ちゃんに染色体異常がないかご心配な方は、検査をご検討ください。
お電話でのご相談は 0120-169-629 までお気軽にどうぞ。
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【参考文献】
- MSDマニュアル プロフェッショナル版 – 甲状腺機能亢進症
- MSDマニュアル プロフェッショナル版 – 甲状腺機能低下症
- 一般社団法人日本内分泌学会 – 甲状腺クリーゼ
- 一般社団法人日本内分泌学会 – 甲状腺機能低下症
- 公益社団法人日本産婦人科医会 – 甲状腺機能と妊娠
- 一般社団法人日本甲状腺学会 – 潜在性甲状腺機能異常症の診断と治療の手引き(妊娠編)
- 国立成育医療研究センター – 妊娠と橋本病
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA) – 重篤副作用疾患別対応マニュアル 甲状腺機能低下症
甲状腺から分泌されるホルモンは妊娠・出産だけでなく、赤ちゃんの発育・発達にも大きな影響を与えます。甲状腺の病気をお持ちの方も、今まで指摘されたことがない方も、甲状腺について理解しておくことで安心して妊娠・出産ができるでしょう。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。


