セートレ・ヒョッツェン症候群(Saethre-Chotzen症候群)なら、赤ちゃんの頭の形は自然に治りません【医師監修】

セートレ・ヒョッツェン症候群(Saethre-Chotzen症候群)

このページはセートレ・ヒョッツェン症候群(Saethre-Chotzen症候群)の知識と対策が書いてあります。セートレ・ヒョッツェン症候群は、赤ちゃんの頭の形がいびつになり、赤ちゃんの人生に大きな影響をあたえます。親として、知識と対策を知っておきましょう。

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目次

親としてセートレ・ヒョッツェン症候群について知っておきましょう

生まれたばかりの赤ちゃんの頭をみて「なんだか赤ちゃんの頭の形がおかしい」「いずれ安定するだろう」
上記のように感じている人はいないでしょうか。

赤ちゃんのうちに、向き癖を直してあげる。出産時の子宮内圧力が原因で頭の形が変わった場合は、時間が解決してくれるかもしれません。

しかし、解決しない場合があります。遺伝子の変異による病気が原因であるときです。病気の1つにセートレ・ヒョッツェン症候群があります。

このページは

  • 赤ちゃんの頭が変な形だとおもっている方
  • 先天性の遺伝子疾患に、どんなものがあるのか知っておきたい方

へ向けて書いています。

日本ではセートレ・ヒョッツェン症候群について扱う情報がとても少なく、海外では情報量が豊富です。英語を読むのが苦手な人もいますよね。
このページは論文や海外の公的機関からの情報を参照しているので、英語のページを読まずに、セートレ・ヒョッツェン症候群について理解できます。
日本だけでなく、海外から詳しい情報を仕入れたい人にとって最適なページです。

このページを最後まで読むころには、セートレ・ヒョッツェン症候群に関する基礎知識から具体的な治療対策まで学べるので、早期から病気の対応を考えられます。
赤ちゃんがセートレ・ヒョッツェン症候群だったとしても、親として快適な人生を赤ちゃんに提供可能です。

しかし、病気についてなにも知らないと、親としての判断が遅れます。判断が遅れた場合、治療ができなくなってしまうかもしれません。
そうならないため、セートレ・ヒョッツェン症候群について学びましょう。

セートレ・ヒョッツェン症候群は、頭蓋骨縫合早期癒合症をおこす

頭蓋骨縫合早期癒合症の原因の1つに、セートレ・ヒョッツェン症候群があります。

頭蓋骨縫合早期癒合症とは、赤ちゃんの脳が成長しきらないうちに頭蓋骨の形が決まってしまうこと。

頭蓋骨は1つの骨ではなく、7つのパーツにわかれています。生まれたばかりのとき、7つのパーツはくっついていません。
月日が経って、赤ちゃんの脳がどれだけ成長したかにより、脳の大きさに合わせて頭蓋骨のパーツがくっつきます。

しかし、頭蓋骨縫合早期癒合症は、赤ちゃんの脳の成長を待たずして、パーツがくっついてしまう病気。

7つのパーツすべてが、早々にくっついてしまった場合、なにがおこるでしょうか。脳は成長したいのに大きくなれないので、圧力が高まり圧迫されます。

7つのパーツのうち、頭の右側だけのパーツがくっついた場合は、左側が空いてるので、脳の成長が左側の空いている方へ。
そうすると、左側が突出したような頭の形になります。

7つのパーツすべてが一度にくっつく、2つだけくっつくとき、3つだけなど頭蓋骨縫合早期癒合症のパターンは複数です。共通していえるのは、頭の形がいびつなこと。
頭の形がいびつになると、さまざまな身体の不調が赤ちゃんにおこります。

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成長期を考えないで、服のサイズを決めてしまう

頭蓋骨縫合早期癒合症をわかりやすく理解するため、頭蓋骨を中学校の制服、脳を成長期の身体にたとえます。

昔あなたのご両親は、中学校に上がったばかりのあなたに対し、制服を購入したのではないでしょうか。ご両親はきっと成長期を考えて、制服の注文をしたとおもいます。
そうすると、中学校1年生のときは制服がブカブカでも、中学校3年生になったらちょうどいいサイズだった経験はないでしょうか?

では仮に、この中学1年生のときの身体に合わせた制服を購入してしまったとしましょう。中学3年生になったとき、制服のサイズを変えなかったら、どうなるでしょうか。

手足が伸び、長袖であるはずなのに7分丈や半袖のような姿になってしまいますね。制服からはみだした腕や足は格好が変なだけです。
しかし脳がはみだした場合、頭や顔へ影響があり、身体の不調へつながります。

制服の締めつけがきつすぎて、身体の血流が悪くなったりするかもしれません。脳も締めつけがきついと、血流や脳脊髄液の循環が悪くなります。

赤ちゃんの生活に与える影響

頭蓋骨縫合早期癒合症になって、頭の形がいびつになっただけで終わりではありません。

赤ちゃんの頭の形がいびつになったとき、おおくでる症状は以下です。

  • 頭痛
  • 顎関節症
  • 発達遅滞
  • 乱視
  • 斜頸
  • 脊柱側彎症

頭蓋骨縫合早期癒合症の合併症

頭蓋骨縫合早期癒合症のしわ寄せが、脳や隣接している顔にやってきます。そのしわ寄せを合併症。症状が合併症をひきおこすこともあります。

上気道狭窄による呼吸不全

上気道の位置をかんたんに説明すると、鼻の穴からのどあたりまでです。しわ寄せのおかげで、上気道のどこかが狭くなり、呼吸がしづらくなります。

キアリ奇形

頭の形がかわると小脳や脳幹が本来の位置からはみだしてしまい、身体に不調をおこすのがキアリ奇形です。赤ちゃんに代表的な不調は、呼吸しづらくなる、嚥下障害(飲みこみづらい)など。

水頭症

水頭症は脳脊髄液のたまりすぎて、脳が大きくなる病気です。

頭の形の変形によって、脳脊髄液が循環しづらくなります。脳脊髄液は脳室でつくられ、循環が悪いと脳室からでていきません。
脳室の中に脳脊髄液がたまりつづけ、脳室が広がっていき、脳全体も広がる。脳全体の広がりは、頭蓋骨に脳を強く押しつけて、脳に障害がでます。

脳に障害があるとおこるのが、頭痛や嘔吐、意図しない筋肉の収縮、弛緩です。

斜視

斜視とは目がそれぞれ違う方向をみている状態。たとえば、右目はまっすぐ、左目は上をみている様相です。神経の伝達をうまくできないのが、斜視の原因の1つ。神経の伝達を邪魔するのが、頭蓋骨縫合早期癒合症です。

歯並びによる不正噛合

頭の形が正常ではないと、隣接している顔に影響がでて、不正噛合になります。不正噛合とは、上アゴと下アゴがうまく噛みあっていない状態。
出っ歯だったり、アゴのしゃくれへつながります。

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セートレ・ヒョッツェン症候群の原因は、TWIST遺伝子の異常

セートレ・ヒョッツェン症候群はTWIST遺伝子の変異でおこります。TWIST遺伝子の変異は、7p21.1の欠失が原因です。
7p21.1をかんたんに説明すると、TWIST遺伝子がある場所。

頭蓋骨縫合早期癒合症の原因は、セートレ・ヒョッツェン症候群だけではありません。

たとえば、

  • クルーゾン症候群
  • アペール症候群
  • ファイファー症候群
  • アントレービクスラー症候群
  • カーペンター症候群

これらの症候群とセートレ・ヒョッツェン症候群の違いは原因遺伝子です。Saethre–Chotzen症候群は、TWIST遺伝子が原因遺伝子。

以下では、TWIST遺伝子が存在する7p21.1について解説します。

7p21.1の欠失でTWIST遺伝子に異常

欠失とは、染色体やDNAの一部分が失われる現象です。セートレ・ヒョッツェン症候群では、7p21.1の一部が欠失。

7p21.1とは常染色体の中の位置をあらわしています。たとえるなら、住所です。

関連記事:染色体とは

  • 7は7番目の常染色体
  • pは染色体の短い方(短腕)
  • 21.1はpの中の位置を示しています。

7p21.1という住所にTWIST遺伝子が住んでいると考えたら、わかりやすいでしょうか。7p21.1という住所に火事がおこったとしましょう。
そうなると、住んでいるTWIST遺伝子にも影響がありますよね。

この火事が欠失です。

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TWIST遺伝子は早く頭蓋骨がくっつかないようにしている

TWIST遺伝子がきちんと働かないので、頭蓋骨早期癒合症になります。理由は頭蓋骨が早く、くっつかないように調整するのがTWIST遺伝子の役割だからです。

TWIST遺伝子とはTWISTの設計図

TWIST遺伝子は、TWISTと呼ばれるタンパク質をつくるための設計図。たとえば、設計図のある住所に火事がおこると、設計図がなくなったり、一部消えたりします。うまくタンパク質をつくれません。この状態が遺伝子の変異です。

TWIST遺伝子に変異があると、タンパク質がつくられません。そのとき、赤ちゃんの身体におこるのが、頭蓋骨縫合早期癒合症です。

TWISTの役割は、骨にさせない

TWISTは間葉幹細胞に働くタンパク質です。間葉幹細胞とは骨のもとになる細胞。TWISTは、間葉幹細胞が骨になるのを抑えています。

TWISTがなければ、すぐに骨になってしまいます。すぐ骨になると、骨同士が早く結合し、頭蓋骨縫合早期癒合症です。

TWISTの量がたりなくて、セートレ・ヒョッツェン症候群

1つのTWIST遺伝子が正常であっても、TWISTの量がたりません。量がたりなければ、セートレ・ヒョッツェン症候群になります。
TWISTは、2量体でないと力を発揮できないのです。

2量体とは2人で1つのような意味で、2つあるから働き、1つでは働きません。たとえるなら、自転車のタイヤです。
自転車のタイヤは前後に1つずつ必要で、どちらが欠けてもうまく走りません。

染色体は父親と母親の1つずつ赤ちゃんに受けつがれます。その染色体上にTWIST遺伝子があります。

たとえば、父親由来のTWIST遺伝子に変異があっても、母親由来のTWIST遺伝子は正常。この場合、TWISTは母親由来の遺伝子からしかつくられないので、量が半分になってしまいますよね。

TWISTは2量体だからこそ、骨になるのを遅くできます。
TWISTが1つしかできないセートレ・ヒョッツェン症候群では、骨になるのを遅くできないので、頭蓋骨縫合早期癒合症へつながります。

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出生前診断は少数、出生後の検査が多数

セートレ・ヒョッツェン症候群の出生前診断は条件が限られます。条件にあてはまらない場合、出生前診断されたケースは、ほぼありません。ほとんどのセートレ・ヒョッツェン症候群は、生まれてからの検査でわかります。

出生前診断をする条件は、家族で遺伝子の変異がみつかっていること。つまり、母親と父親の両方か、またはどちらかが変異した遺伝子をもっているとき。セートレ・ヒョッツェン症候群と診断された人が、親になった場合です。

たとえば、片方の親の遺伝子に変異があるとき、50%の確率で赤ちゃんに遺伝します。

出生前診断は確定検査

出生前診断は、羊水検査と絨毛検査です。羊水検査とは、妊娠15週~16週の期間におこなう検査。母親のお腹に針を刺し、羊水を採取します。

理由は、羊水に赤ちゃんの細胞が含まれているからです。細胞の中には染色体が含まれるので、染色体とDNAの異常を検査できます。

絨毛検査とは妊娠11週~14週の期間におこない、母親のお腹に針を刺し、胎盤の絨毛細胞をとります。
羊水検査と同様に絨毛細胞には赤ちゃんの細胞が含まれているので、染色体とDNAの異常を検査可能。
羊水検査とくらべて、妊娠の早い時期からでき、赤ちゃんの細胞をおおく採取できる検査です。
しかし、絨毛細胞には赤ちゃんの細胞だけが含まれているわけではないので、絨毛検査は羊水検査よりも確実性がありません。
絨毛検査がうまくできなかった場合、羊水検査をおこないます。

羊水検査と絨毛検査は、母親の身体に針を刺すので、以下の共通リスクがあります。

  • 破水
  • 出血
  • 子宮内感染
  • 早産
  • 羊水塞栓症
  • 穿刺による母体障害
  • 流産、死産

確率は低いですが、リスクのある検査だと理解しておきましょう。

早期の治療と診察で、赤ちゃんは快適に生活できる

赤ちゃんの頭の形に違和感を覚えた場合、小児科、外科、形成外科のどれかに早くいきましょう。
形態の異常や身体の機能を調べた結果、異常があればDNA検査をし、治療へとうつります。

セートレ・ヒョッツェン症候群の原因である遺伝子の変異は治せませんが、頭蓋骨縫合早期癒合症に対する治療法はあります。
頭蓋骨拡大形成術や頭蓋骨延長器の装着です。

生後の早い時期に治療しないと、完全に頭の形が固定し、治療が困難になります。

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私の赤ちゃんだけは違うなんて、おもわないでください

セートレ・ヒョッツェン症候群は、人種や民族、性別に関係なくおこる可能性があります。25000人から50000人に1人の割合です。

たとえば日本の人口は、約1億2650万人。そのうち25000人に1人だとしたら、5000人~5500人ですね。
2020年6月中旬、東京都のコロナウイルス感染者数とほぼ同じです。稀ではありますが、決しておこらない確率ではありません。

頭蓋骨縫合早期癒合症の原因がセートレ・ヒョッツェン症候群。セートレ・ヒョッツェン症候群の原因が、7p21.1の欠失によるTWIST遺伝子の変異でした。

どれだけ早くセートレ・ヒョッツェン症候群を疑い、診断と治療をうけさせるかで、赤ちゃんの人生がかわります。
もしも、赤ちゃんの頭の形がおかしいと感じたら、全常染色体全領域部分欠失検査を受けてみませんか?
頭蓋骨縫合早期癒合症の原因は、セートレ・ヒョッツェン症候群だけではなかったですよね。

検査で異常がなければ、その他の原因を考えてすばやく対応しましょう。なぜなら、頭の形が決まってしまうからです。

ヒロクリニックでは全常染色体全領域部分欠失検査をおこなっており、陰性的中率は99.9%を誇ります。
つまり、赤ちゃんが人生を快適に過ごすため、親としての的確な判断を陰性的中率の高い検査が大きくサポートします。
せっかく生まれてきてくれた赤ちゃんには、幸せになってほしいですよね。赤ちゃんのために親ができることは、この病気について知り、早く対応すること。
このページをきっかけに、セートレ・ヒョッツェン症候群を頭の片隅においてみてくださいね。

このページはセートレ・ヒョッツェン症候群(Saethre-Chotzen症候群)の知識と対策が書いてあります。セートレ・ヒョッツェン症候群は、赤ちゃんの頭の形がいびつになり、赤ちゃんの人生に大きな影響をあたえます。親として、知識と対策を知っておきましょう。

NIPTについて詳しく見る

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記事の監修者

水田 俊先生

水田 俊先生

ヒロクリニック岡山駅前院 院長
日本小児科学会専門医

小児科医として30年近く岡山県の地域医療に従事。
現在は小児科医としての経験を活かしてヒロクリニック岡山駅前院の院長として地域のNIPTの啓蒙に努めている。

略歴

1988年 川崎医科大学卒業
1990年 川崎医科大学 小児科学 臨床助手
1992年 岡山大学附属病院 小児神経科
1993年 井原市立井原市民病院 第一小児科医長
1996年 水田小児科医院

資格

小児科専門医

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