オルブライト症候群様中手骨・中脚短縮は染色体の一部が欠損する事で、体の様々な箇所に異常が現れる遺伝子疾患です。本記事では、当該疾患の症例報告に基づいて、発症の原因や症状、診断法などについて解説します。
この記事のまとめ
2q37欠失症候群(オルブライト症候群様の中手骨・中足骨短縮)は、2番染色体の長い腕の末端(2q37.3)が欠けることで起こる、非常に稀な生まれつきの疾患です。世界で報告例が積み上がってきた段階の希少疾患で、約半数に手足の指の短さ(短指症)がみられ、特徴的な顔立ちや発達の遅れをともなうことがあります。多くは親から受け継いだものではなく、赤ちゃんに新しく生じた変化(新生変異)です。この記事では、概要・主な症状・原因・診断の流れ・出生前検査での位置づけ・療育まで、既存の医学的な内容をそのままに、やさしい日本語で整理しました。
この記事でわかること
- 2q37欠失症候群とはどんな疾患か、名前の由来と特徴
- 手足の指の短さ・顔立ち・発達の遅れなど、報告されている主な症状
- 原因となる染色体の欠けと、主要な遺伝子であるヒストン脱アセチル化酵素4番(HDAC4)の関わり
- 蛍光を使う診断法(FISH法)と網羅的に調べるマイクロアレイの流れ
- 出生前検査でどう位置づけられるか、遺伝カウンセリングとの向き合い方
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2q37欠失症候群とは
2q37欠失症候群は、2番染色体の長い腕の末端(2q37.3)の一部が欠けることで起こる、極めて稀な遺伝子疾患です。まずは、どんな疾患で、なぜいくつもの呼び名を持つのかを整理します。
この疾患は、欠けた染色体の場所やサイズによって、あらわれる症状がさまざまに変わります。代表的な特徴が、手足の骨の短さをともなうオルブライト症候群様の中手骨・中足骨短縮です。中手骨は手のひらの骨、中足骨は足の甲の骨を指します。
1989年に最初の症例が報告され、これまでに世界で少なくとも115例が報告されてきました。報告数がまだ少ないため、わかっていない点も多く残ります。だからこそ、正確な情報を落ち着いて受け取ることが大切になります。
症状の幅が広いことから、この疾患は複数の名前で呼ばれてきました。2q37の全領域にわたる部分欠失をともなう疾患、オルブライト遺伝性骨異栄養症様症候群、上腕神経性精神遅滞症候群といった呼称です。呼び名は違っても、根っこにあるのは同じ染色体の欠けだと理解してください。難病全般の相談先を探している方は、公的な情報をまとめた難病情報センターもあわせてご覧ください。
報告されている主な症状
主な症状は、手足の指の短さ・特徴的な顔立ち・発達の遅れの3つに大きく分けられます。どれもあらわれ方には個人差があり、すべてがそろうわけではありません。まず全体像を図で確認します。
身体にあらわれる特徴
罹患した方の約半数に、手足の指が短い短指症がみられ、とくに第4指が短いと報告されています。手のひらや足の甲の骨(中手骨・中足骨)が短くなるためです。指の本数が多い多指症をともなうこともあります。
顔立ちには、突き出た額・丸顔・薄くアーチを描く眉・くぼんだ鼻すじ・薄い唇・耳の形の違いといった特徴が、多くの症例で確認されています。あわせて低身長・肥満・薄毛がみられることもあります。こうした特徴の組み合わせ方も、一人ひとりで異なります。
臓器では、心臓・消化器・腎臓の異常が、罹患した方の約3分の1で確認されています。ごく一部の患児には、腎臓に生じる小児の腫瘍である腎芽腫(Wilms腫瘍)や、腎臓の形づくりの異常がみられることもあります。これらは、染色体2q37.1に近い側まで欠けている場合に確認されてきました。

発達と神経の特徴
発達の面では、軽いものから重いものまで幅のある発達の遅れが報告されています。とくに多いのが、筋肉の張りが弱くなる筋緊張の低下です。約半数の患児にみられますが、時間の経過とともに和らいでいくと報告されています。
立つ・座る・歩くといった運動の発達がゆっくりになることもあります。発達の遅れがある方のうち約25%は、コミュニケーションや対人関係に特性がある自閉スペクトラム症をともなうと報告されています。てんかんなどの発作が起こりやすい点も特徴のひとつです。
行動面では、断続的な攻撃性・多動・注意の集中しにくさ・強いこだわり・睡眠のリズムの乱れが指摘されています。こうした神経発達の特性が重くなるかどうかは、欠けた染色体のサイズと関わると考えられていますが、症例がまだ少なく、はっきりとは立証されていません。発達の特性と検査の関係を知りたい方は、NIPTと知的障害・発達障害の限界もあわせてお読みください。
原因とHDAC4遺伝子
大部分(約95%)は両親の染色体が正常で、赤ちゃんに新しく生じた新生変異(de novo変異)が原因です。つまり、親の育て方や妊娠中の過ごし方が招くものではありません。なぜ欠けが起こるのか、その仕組みはまだ解明されていません。

新生変異は、精子や卵子がつくられるとき、あるいは受精した直後の細胞分裂のときに、遺伝情報を伝えるDNAの写し取りで生じるずれによって起こると考えられています。両親から受け継ぐことは稀です。そのため、家系のなかで遺伝子型の似た患者が少なく、遺伝子と症状の対応づけ(遺伝子型と表現型の関連づけ)はほとんど進んでいません。
欠けが起こる場所は、2番染色体の長い腕の末端付近が多く、2q37領域として同定されています。欠けのサイズは個人差が大きく、200万〜900万塩基対(2〜9Mbp)に及びます。この範囲には約100個の遺伝子があり、そのうち1つ、あるいは複数の働きが損なわれることで発症すると考えられています。
主要な遺伝子のひとつが、ヒストン脱アセチル化酵素4番(HDAC4)です。この遺伝子は、骨や筋肉の発達に関わることが知られています。ただし、症状との分子レベルでのつながりは、まだ明らかになっていません。染色体の一部が欠ける疾患を広く知りたい方は、NIPTの原理で検査の仕組みから確認できます。
診断の流れ(FISH法とマイクロアレイ)
診断は、身体の特徴の記録に加えて、染色体の欠けを直接調べる遺伝学的な検査で確定します。特徴的な所見があれば、新生児や乳幼児のうちに臨床的に見当がつくこともあります。ただし、多くはもう少し年齢が上がってから確定します。検査の流れを図で見てみましょう。
身体の所見は、エコー検査やレントゲン写真で確かめます。新生変異による疾患のため、両親の遺伝子検査はごく一部を除いてあまり意味を持ちません。染色体の欠けを調べる検査は、大きく染色体検査と分子遺伝学検査に分かれます。
染色体検査では、核型解析(カリオタイピング)で全体像を確認します。この方法では約80%が診断できますが、欠けがある程度大きい場合に限られます。欠けが小さいと正常な核型に見えてしまうため、次の分子遺伝学検査を組み合わせます。診断法の違いは下の表にまとめました。
| 検査の種類 | 調べ方 | 得意なこと |
|---|---|---|
| 染色体検査(核型解析) | 染色体全体の縞模様を観察 | 大きな欠けや構造の変化を把握 |
| FISH法 | 目印をつけた一本鎖DNAを光らせて観察 | ごく小さな欠けも高い精度で検出 |
| マイクロアレイ | ゲノム全体を網羅的に比較 | どの位置で欠けたかを幅広く分析 |
FISH法
FISH法(蛍光を使った目印づけ)は、調べたい染色体の場所に対応する一本鎖DNAを蛍光で光らせ、顕微鏡で観察する方法です。この光る一本鎖DNAをプローブと呼び、目的の場所に合わせて設計します。この疾患は末端の欠けが多いため、末端に近い領域を狙ったプローブがよく使われ、市販の検査キットもあります。
欠けが起きている場所では、プローブが結びつく相手を失い、洗い流されて光りません。反対に、正常な場所では光が観察されます。FISH法は非常に小さな欠けも検出できるため、この疾患を高い精度で診断できます。ただし、欠けた範囲にプローブの目印が含まれていることが前提です。中間部だけが欠けている場合、末端に設計したプローブでは見逃す(偽陰性になる)ことがあり、プローブの選び方が結果を左右します。
マイクロアレイ
マイクロアレイは、既知のDNA断片を敷き詰めたチップの上で、調べたい組織のDNAと正常なDNAを比べる方法です。相補的な断片が結びつくと光るので、光の分布を比べて、ゲノムのどこで欠けが起きたかを網羅的に調べられます。染色体上のコピー数の変化をとらえる、比較ゲノムハイブリダイゼーションという手法です。
この方法は、コピーが増える変化はよく見つけられます。一方で、部分的な欠けは500万〜1000万塩基対(5〜10Mbp)ほどの大きさがないと見つけにくいとされます。だからこそFISH法との組み合わせが役立ちます。検査結果の読み方に迷う方は、NIPTの検査結果の見方も参考になります。近年は次世代の配列解析も進み、遺伝子と症状の対応づけへの活用が期待されていますが、費用の面から診断の主役になるのはこれからです。
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療育と対症療法
この疾患には原因そのものを取り除く治療はまだなく、あらわれた症状に合わせた対症療法と療育が中心になります。症状の幅が広いぶん、支援もその子に合わせて組み立てます。
発達の遅れには、理学療法や作業療法、言語の支援など、専門職による療育が助けになります。てんかんがある場合は、発作を抑える治療で日々の生活を整えます。肥満のような二次的な健康問題には、早めの健康管理で向き合います。
療育の窓口や支援制度の探し方に迷う家族は少なくありません。私は相談を受けるなかで、まず公的な支援につながることが心の余裕を生むと感じています。発達障害の支援情報をまとめた国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センターは、最初の一歩として頼れる窓口です。妊娠期からの知的発達の不安については、妊娠と知的障害のリスクもあわせてご覧ください。
出生前検査での位置づけ
2q37欠失症候群は、一般的なNIPT(新型出生前診断)が主な対象とする21・18・13トリソミーには含まれない、ごく小さな領域の欠けによる疾患です。そのため、標準的なNIPTだけで見つけることは想定されていません。まず、検査ごとの守備範囲を整理します。
NIPTは、母体の血液に流れ込む赤ちゃん由来のDNAの断片を分析する、非確定的な検査です。対象となる染色体の数の変化をふるい分ける検査であり、結果はあくまで可能性を示すものにとどまります。陽性の可能性が出た場合の確定診断には、羊水検査や絨毛検査が必要です。
2q37のような小さな領域の欠けを確定するには、羊水や絨毛から採った細胞を使う染色体マイクロアレイなど、専門的な検査が用いられます。確定診断は、こうした専門検査によって初めて得られます。検査の種類ごとの守備範囲を、下の表で確認してください。
| 検査 | 性質 | 2q37の欠けとの関係 |
|---|---|---|
| 一般的なNIPT | 非確定的なふるい分け | 21・18・13トリソミーが主対象で、主な対象外 |
| 羊水検査・絨毛検査 | 確定的な検査 | 採った細胞の詳しい解析が可能 |
| 染色体マイクロアレイ | 網羅的な確定検査 | 小さな領域の欠けを詳しく調べられる |
検査にかかる費用の全体像を知っておくと、家族で話し合いやすくなります。項目ごとの目安は出生前検査の費用で確認できます。21トリソミーなど代表的な疾患の基礎知識は、ダウン症と妊娠中のリスク検査もあわせてお読みください。
検査とどう向き合うか
検査を受けるかどうかに正解はなく、遺伝カウンセリングで疑問を整理しながら、自分たちのペースで決めていくことが大切です。迷う気持ちは、多くの妊婦さんが抱くものです。
私が相談を受けていて感じるのは、検査を受けるかどうか自体で長く悩む方が多いという点です。年齢のことが頭をよぎり、受けるかどうかで揺れる。そんな声は珍しくありません。Xでも@Tamago_1003さんが、年齢のこともあって受けるつもりで遺伝カウンセリングまで受けてきた、と迷いの過程をつづっていました。まず専門家に相談してみる。その一歩が、判断の土台になります。
結果をどう受け止めるかも、事前に考えておきたいところです。とはいえ、すべてを決めきってから受ける必要はありません。Xで@chiisunmonさんは、陽性だったときのことは夫婦であえて決めずに受けた、その時になってみないとどんな気持ちになるか分からないから、と率直な思いを書いていました。陰性で安心材料になったという実感も添えられていました。決め方は人それぞれ。だからこそ、伴走してくれる専門家が要ります。
出生前検査を受けるときは、遺伝カウンセリングを受けられる体制が整った施設を選んでください。認証施設の情報は、出生前検査認証制度等運営委員会で確認できます。ひとりで抱え込まず、パートナーや専門家と一緒に考えていきましょう。
よくある質問
2q37欠失症候群について、ご家族から寄せられる疑問をまとめました。参考にしてください。
Q. 2q37欠失症候群はどのくらい稀な疾患ですか?
非常に稀な疾患です。1989年に最初の症例が報告され、これまでに世界で少なくとも115例が報告されてきました。報告数がまだ少ないため、わかっていない点も多く残ります。正確な情報は、主治医や遺伝の専門家に確認してください。
Q. 親から遺伝するのですか?
大部分(約95%)は、両親の染色体が正常で、赤ちゃんに新しく生じた新生変異が原因です。親から受け継ぐことは稀とされています。育て方や妊娠中の過ごし方が招くものではありません。
Q. どんな症状がみられますか?
約半数に手足の指の短さ(短指症)がみられ、とくに第4指が短いと報告されています。特徴的な顔立ち・低身長・肥満・薄毛のほか、運動の発達の遅れ、約25%の方に自閉スペクトラム症、てんかんがみられることもあります。あらわれ方には個人差があります。
Q. どのように診断しますか?
身体の特徴を記録したうえで、染色体の欠けを調べる遺伝学的な検査で確定します。大きな欠けは核型解析でわかりますが、小さな欠けはFISH法やマイクロアレイを組み合わせて調べます。検査の選び方は専門の医療機関にご相談ください。
Q. NIPTでわかりますか?
一般的なNIPTは21・18・13トリソミーが主な対象で、2q37のような小さな領域の欠けは主な対象外です。確定診断には、羊水や絨毛から採った細胞を使う染色体マイクロアレイなどの専門検査が必要になります。まずは遺伝カウンセリングで相談してください。
Q. 治療法はありますか?
原因そのものを取り除く治療はまだなく、あらわれた症状に合わせた対症療法と療育が中心です。発達の遅れには療育、てんかんには発作を抑える治療、肥満などの二次的な問題には健康管理で向き合います。支援制度は公的な相談窓口も活用してください。
まとめ
2q37欠失症候群は、2番染色体の末端(2q37.3)が欠けることで起こる、非常に稀な疾患です。約半数に手足の指の短さがみられ、特徴的な顔立ちや発達の遅れをともなうことがあります。大部分は親から受け継いだものではなく、赤ちゃんに新しく生じた変化です。診断はFISH法やマイクロアレイで行い、支援は対症療法と療育が中心になります。
ヒロクリニックNIPTでは、染色体の一部に欠けや重複を持つ疾患についての検査も行っています。気になることがあれば、遺伝カウンセリングとあわせて相談してみてください。ひとりで抱え込まず、専門家と一緒に考えていきましょう。
著者・監修
監修:岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報発信に取り組んでいます。
オルブライト症候群様中手骨・中脚短縮は染色体の一部が欠損する事で、体の様々な箇所に異常が現れる遺伝子疾患です。本記事では、当該疾患の症例報告に基づいて、発症の原因や症状、診断法などについて解説します。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

