妊娠中に持病が悪化しても、多くの場合は主治医・産科医と連携しながら治療を続けられます。自己判断で薬をやめたり、逆に市販薬を追加したりするのは避けてください。この記事では、妊娠中に悪化しやすい代表的な持病と治療の考え方、そして「すぐ相談したいサイン」を医師が解説します。
💡 この記事でわかること
- 妊娠中に持病が悪化すると、母体・赤ちゃんにどんな影響が出るか
- 糖尿病・高血圧・心疾患・喘息など代表的な持病の治療の考え方
- 妊娠中の薬物治療で自己判断しないために知っておきたいこと
- 「これはサインかも」とすぐ相談したい症状の目安
- 医師との連携を密にするために日常でできる工夫
妊娠中に持病が悪化するとどうなる?母体と赤ちゃんへの影響
持病の悪化に気づかないまま過ごすと、流産や早産、赤ちゃんの発育不全、母体の重い合併症につながることがあります。糖尿病や高血圧、心疾患は、妊娠に伴うホルモン変化や体重増加の影響を受けやすい代表的な持病です。妊娠前は落ち着いていた症状が、妊娠中に急に不安定になるケースも珍しくありません。
私自身、外来で「妊娠前は薬も飲んでいなかったのに」と戸惑う妊婦さんに何度もお会いしてきました。持病があるからといって、出産をあきらめる必要はありません。定期的な診察と早めの相談が、母子ともに安心して出産を迎えるための土台になります。
妊婦の持病治療で最優先されること
妊娠中の治療は、母体の健康を守りながら赤ちゃんへの影響をできるだけ小さくすることを軸に組み立てられます。妊娠中は使用できる薬に制限があるため、治療方針が妊娠前と変わることもあります。
医師は、妊娠週数や母体の状態、これまでの病歴を踏まえたうえで、必要最小限の治療を選びます。生活習慣の見直しや食事指導も、薬物療法と並ぶ治療の柱です。治療方針は主治医(内科・専門科)と産科医が情報を共有しながら決めていくのが基本の形。自己判断で中止や変更をせず、必ず両方の医師に相談してください。
妊娠糖尿病・糖尿病合併妊娠の治療の考え方
妊娠糖尿病も糖尿病合併妊娠も、血糖値を目標範囲に保つことが治療の中心です。妊娠24〜28週ごろの妊婦健診で指摘されることが多い病気です。食事療法・運動療法・血糖自己測定を基本に、必要に応じてインスリン療法が検討されます。
妊娠糖尿病の場合
妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて指摘される血糖値の異常です。放置すると、赤ちゃんが大きく育ちすぎる「巨大児」や出生後の低血糖、母体の妊娠高血圧症候群などのリスクが高まります。
- 食事療法
炭水化物の摂り方や食事の回数を見直し、血糖値の急な上昇を防ぎます。管理栄養士による指導を受けながら、無理のない範囲で続けます。 - 運動療法
ウォーキングなど負担の少ない運動が、血糖コントロールの助けになります。体調に応じて量を調整してください。 - インスリン療法
食事・運動だけでは目標の血糖値に届かない場合、医師の判断でインスリンの使用が検討されます。妊娠中でも使用できる製剤があり、量や回数は個々の状態に合わせて調整されます。
SNS上でも、妊娠糖尿病と診断された方の投稿を見かけます。@ai_ue_ottoさんは「食事制限&血糖値管理&インスリン生活だが、担当する先生や栄養士によってインスリンを使うかどうか、糖質をどこまで制限するかのスタンスに幅がある」と綴っていました。私の外来でも、同じ疑問を持つ方によくお会いします。方針に迷いを感じたときほど、遠慮せず担当医に理由を尋ねてみてください。
妊娠前からの糖尿病(糖尿病合併妊娠)の場合
妊娠前から糖尿病がある場合は、妊娠初期から血糖コントロールを整えておくことが望まれます。妊娠糖尿病より血糖値の変動が大きくなりやすく、インスリン注射や、妊娠中でも使用できる経口薬が使われることがあります。定期的な血糖測定に加え、赤ちゃんの発育や胎盤機能のチェックも並行して行われます。
妊娠糖尿病の基礎知識は妊娠糖尿病とは?妊婦健診で指摘されたら気を付けること、食事の工夫は妊婦が糖尿病と診断されたときの食事管理法で詳しく取り上げています。血糖コントロールの一般的な知識は、国立国際医療研究センター 糖尿病情報センターも参考になります。
妊娠高血圧症候群・慢性高血圧の治療の考え方
妊娠20週以降に血圧140/90mmHg以上となるのが妊娠高血圧症候群です。放置すると子癇前症など重い合併症に進むことがあるため、早めの対応が欠かせません。もともと高血圧がある方は、妊娠前からの血圧管理が土台になります。
- 安静と生活管理
体調が安定するよう、無理のない生活を心がけます。就寝時は左側を下にすると血流が保たれやすいといわれています。 - 薬物療法
血圧のコントロールが必要な場合、妊娠中でも比較的安全に使用できる降圧薬が、医師の判断で選ばれます。薬の種類や量は、妊娠週数や血圧の程度によって異なります。 - 食事療法
塩分を控えめにし、栄養バランスの取れた食事と適度な体重管理を意識します。
妊娠高血圧症候群は、自覚症状がはっきりしないまま進むことも少なくありません。@oimo_skincareさんも「妊娠高血圧になってしまった方の投稿をよく見るが、自覚症状がないみたいで怖い。どう気をつけたらいいのか」とつづっていました。だからこそ、家庭での血圧測定と妊婦健診での定期チェックが頼りになります。むくみや頭痛だけで判断せず、数値による確認を習慣にしましょう。
妊娠高血圧症候群の基礎知識は妊娠高血圧症候群とは?注意したいポイント、妊娠中毒症との違いは妊娠中毒症と妊娠高血圧症候群の違いで解説しています。診療の詳細は日本妊娠高血圧学会の情報も参考にしてください。
心疾患がある場合の妊娠中の管理
心疾患は、妊娠による血液量の増加や心臓への負担で悪化しやすいため、専門医による継続的なモニタリングが欠かせません。特に心不全や心筋症は、妊娠後期に症状が強まりやすいとされています。
使用できる薬剤は限られており、循環器内科と産科医が連携しながら、母体と赤ちゃん双方に配慮した薬剤選択を行います。心電図や心臓の超音波検査を定期的に行い、心機能の変化を早めにとらえる体制が取られます。動悸や強い息切れ、むくみの急な悪化を感じたら、我慢せずすぐに相談してください。
喘息・腎疾患・自己免疫疾患など、その他の持病との付き合い方
喘息・腎疾患・自己免疫疾患も、妊娠中は症状の変化に気づきにくいことがあるため、普段以上に体調の記録を意識したい持病です。
喘息
喘息のコントロールが不十分だと、母体が低酸素状態になり、赤ちゃんの発育に影響することがあります。吸入薬は、妊娠中でも比較的安全に使用できるとされるものが選ばれます。
体重や体形の変化に紛れて、症状の変化そのものに気づきにくいこともあります。@bonbonhoshiiyoさんは「つわりと持病の喘息悪化による食欲不振で、10ヶ月かけて10キロ痩せながら妊娠継続していたが、周囲にはほとんど気づかれなかった」と振り返っていました。見た目の変化だけに頼らず、息苦しさや咳の頻度など、自分の体感を記録して医師に伝える姿勢が助けになります。
腎疾患・自己免疫疾患
腎疾患があると、妊娠中に腎機能が変化しやすく、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を合併しやすいことも知られています。血圧と水分管理を中心に、腎機能を定期的に確認しながら治療が進められます。
全身性エリテマトーデスや関節リウマチなどの自己免疫疾患は、妊娠中も治療の継続が基本です。妊娠中に使用できる薬剤を選びながら、病状の悪化を防ぐために定期的な検査と専門医のフォローを受けます。詳しくは妊娠中の病気と赤ちゃんへの影響とは?もあわせてご覧ください。
妊娠中の薬物治療で知っておきたいこと
妊娠中の薬は「危険」か「安全」かで単純に分けられるものではなく、薬の種類・使う時期・量によってリスクの大きさが変わります。自己判断での中止や変更は避けてください。
持病の治療薬を、妊娠が分かったとたんに自己判断でやめてしまうケースがあります。かえって持病が悪化し、母体にも赤ちゃんにも負担がかかることがあります。逆に、妊娠中は避けたほうがよい薬を知らずに使い続けてしまうケースもあります。どちらのケースも避けたいのは、自分ひとりでの判断。必ず医師や薬剤師に確認してください。

妊娠中の薬について迷ったときは、専門的な相談窓口を活用する方法もあります。国立成育医療研究センターの妊娠と薬情報センターはその一つです。主治医や薬剤師に相談する際は、市販薬やサプリメントの使用も忘れずに伝えてください。
「これはサインかも」とすぐ相談したい症状
血圧の急な上昇、血糖値の乱れ、動悸や息切れ、むくみの急な悪化は、母子の安全に関わるサインである可能性があります。次のような変化に気づいたら、次の健診を待たずに連絡してください。
| 気づいた変化 | 関連しやすい持病 | 目安となる対応 |
|---|---|---|
| 血圧が急に上がった、頭痛やめまいが強い | 妊娠高血圧症候群 | 次の健診を待たず早めに連絡 |
| 血糖値が目標範囲を大きく外れる | 妊娠糖尿病・糖尿病合併妊娠 | 自己判断でインスリン量を変えず相談 |
| 動悸・強い息切れ・むくみの急な悪化 | 心疾患 | 早めに循環器内科・産科へ連絡 |
| 咳や息苦しさが増える | 喘息 | 吸入薬の使用状況とあわせて相談 |
「これくらいで連絡していいのかな」とためらう方も多いのですが、迷ったときこそ連絡してください。異常がなければそれで安心材料になりますし、早い段階での相談が、その後の治療をスムーズにします。
▼ 赤ちゃんの状態も含めて相談したい方へ
医師との連携を密にするためにできること
体調の変化を記録し、定期健診以外のタイミングでも共有することが、的確な治療方針につながります。血圧や血糖値の測定結果、体重の変化、症状が出た時間帯などをメモしておくと、診察の際に状況を正確に伝えられます。
産婦人科医と内科・循環器科・内分泌科などの専門医が連携するケースも多くあります。情報が整理されているほど、各科の判断がかみ合いやすくなります。持病の治療と妊娠管理を両立させる鍵は、自己判断ではなく医師との対話です。ライフスタイルの見直しも、体重管理やストレスケアを中心に、無理のない範囲で続けてください。
持病がある方の妊娠前からの準備
持病がある方は、可能であれば妊娠前に主治医へ相談し、コントロール状態を整えてから妊娠に臨むことが望まれます。すでに妊娠している場合も、今から連携先を整えることに意味があります。
糖尿病や高血圧のように、妊娠前の管理状態が妊娠中の経過に影響しやすい持病もあります。次の妊娠を考えている方は、産婦人科と持病の主治医の両方に、早めのタイミングで相談しておくと安心です。避けたい行動は妊婦の病気治療で避けたいNG行動5選を、治療の流れは妊婦が病気になったときの治療ガイドをご覧ください。
ヒロクリニックNIPTでできること
持病があるとハイリスク妊娠として扱われることが多く、赤ちゃんの状態を正確に把握したいというご相談も少なくありません。ヒロクリニックNIPTは、出生前検査を通じてそうした不安に寄り添う専門クリニックです。
これまでの検査実績は75,000件以上。産婦人科専門医・小児科専門医・臨床遺伝専門医が連携し、医師による遺伝カウンセリングを行っています。NIPTは21トリソミーなど特定の染色体疾患について高い検出精度を持つ非確定的検査であり、確定には羊水検査などが必要です。国内の検査機関(東京衛生検査所)で解析するため、最短2〜5日というスピードで結果を報告できる点も特徴です。持病があることを理由に受検が制限されることはなく、年齢制限もありません。
ただし、NIPTは持病そのものの治療方針を決める検査ではありません。持病の管理は主治医・産科医と、赤ちゃんの染色体疾患に関する不安はNIPTで——役割を分けて相談していただくのが、安心への近道です。
よくある質問(FAQ)
外来でよくいただく質問に、簡潔にお答えします。気になる項目から読み進めてください。
妊娠中に持病の薬を自己判断でやめてもいいですか?
自己判断でやめるのは避けてください。急に中断すると持病が悪化し、母体にも赤ちゃんにも負担がかかることがあります。妊娠がわかったら、まず主治医に相談してください。
妊娠糖尿病はいつごろわかりますか?
多くは妊娠24〜28週ごろの妊婦健診の検査で指摘されます。食事療法・運動療法を基本に、必要に応じてインスリン療法が検討されます。
妊娠高血圧症候群はどんな症状に注意すればいいですか?
血圧の急な上昇のほか、強い頭痛やむくみの急な悪化に注意してください。自覚症状がはっきりしないまま進むこともあるため、家庭での血圧測定と健診での確認が頼りになります。
持病があると出産方法に制限はありますか?
持病の種類や重症度によって、分娩方法や管理入院の必要性が変わることがあります。産科医と持病の主治医が連携して、個々の状態に合わせて判断します。
複数の診療科にかかっている場合、情報共有はどうすればいいですか?
血圧・血糖値の記録や服薬状況をメモにまとめ、産婦人科と各専門科の両方に伝えると、治療方針がかみ合いやすくなります。母子健康手帳の活用も役立ちます。
持病があってもNIPT(出生前診断)は受けられますか?
受けられます。年齢制限はなく、持病があることを理由に受検が制限されることもありません。ただし持病の治療方針そのものはNIPTでは分からないため、主治医への相談とあわせてご検討ください。
まとめ
妊娠中に持病が悪化しても、多くの場合は治療を続けながら安心して出産を迎えられます。大切なのは、自己判断で薬を中断・変更しないこと、そして体調の変化を我慢せず早めに医師へ伝えることです。糖尿病・高血圧・心疾患・喘息など、持病ごとに気をつけたいポイントは異なりますが、根っこにある考え方は同じです。
「いつもと違う」と感じたら、健診を待たずに連絡してください。主治医・産科医との連携を密にしながら、無理のない範囲で生活習慣を整えていくこと。それが、持病がある方にとっても、安心して妊娠期間を過ごすための確かな一歩になります。
監修:岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、医学博士。国内でも数少ないラボディレクター資格を持つ。著書『妊娠したら最初に読んで欲しい本』。本記事は医療広告ガイドラインに配慮し、公的機関・学会の情報を参照して作成しています。記載の数値は文献により幅があり、診断・治療の最終判断は担当医にご相談ください。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

