1番染色体はヒトで最も大きい染色体で、まるごとのトリソミー・モノソミーはほぼ出生に至りません。実際に診断される1p36欠失症候群などの部分的な欠失・重複と、NIPTで分かる範囲・分からない範囲を整理します。
検査の結果や超音波の所見で「1番染色体」という言葉が出てきて、どういう意味なのか確かめたいと思われたかもしれません。
結論からお伝えします。1番染色体は、まるごと1本多い・少ないという形では、赤ちゃんとして生まれてくることがほぼありません。実際に診断名としてつくのは、この染色体の「一部」が欠けたり増えたりした場合です。そしてその多くは、標準的なNIPTの対象には含まれません。
この記事では、1番染色体で実際に問題になる変化、それぞれの疾患の入口、そしてNIPTでどこまで分かるのかを整理します。個々の疾患の詳しい解説は、それぞれのページへご案内します。
💡 この記事でわかること
- 1番染色体がヒトで最も大きい染色体であること
- 「1番染色体のトリソミー・モノソミー」が生まれてこない理由
- 実際に診断される1番染色体の疾患と、その一覧
- NIPTで分かる範囲と、分からない範囲
- 疑われたときに受ける検査の流れ
1. 1番染色体はどんな染色体か
ヒトの染色体の中で最も大きく、約2億4,900万塩基対からなります。タンパク質をつくる遺伝子はおよそ2,000個とされ、ヒトの遺伝子全体のおよそ8%がこの1本に載っています。番号は大きさの順につけられているため、「1番」は最大の染色体という意味です。
載っている遺伝子が多いということは、過不足が起きたときに体への影響が広い範囲に及ぶということでもあります。次の章で見るとおり、これが「まるごとの過不足では生まれてこない」ことにつながります。
2. 1番染色体のトリソミー・モノソミーは、なぜ生まれてこないのか
21トリソミー(ダウン症候群)のように、染色体が1本多い状態で赤ちゃんが生まれてくる例は、21番・18番・13番と性染色体にほぼ限られます。これらは載っている遺伝子が比較的少ない染色体です。
1番染色体は最も多くの遺伝子を載せているため、まるごと1本多い(トリソミー)・1本足りない(モノソミー)状態では発生の初期を越えられず、出生に至った報告はごくまれです。受精卵や着床のごく初期の段階で経過が止まると考えられています。
ここは誤解の生じやすいところです。「NIPTで1番染色体のトリソミーが陰性だった」ことに、実務上あまり意味はありません。もともと生まれてくることがほとんどない状態だからです。1番染色体で本当に問題になるのは、次章の「一部の過不足」のほうです。
3. 実際に診断されるのは「一部」の欠失・重複
1番染色体で診断名がつくのは、染色体の一部が欠けている(欠失)、あるいは余分にある(重複)場合です。代表的なものを、当院の解説ページとあわせて整理します。
| 領域 | 疾患 | 特徴 |
|---|---|---|
| 1p36 | 1p36欠失症候群 | 末端の欠失としては最も頻度が高く、米国のデータで出生5,000〜10,000人に1人。発達の遅れ・筋緊張低下・てんかん・心疾患などを伴う |
| 1p32-p31 | 1p32-p31欠失症候群 | NFIA遺伝子を含む欠失。脳梁の異常や水頭症、発達の遅れが報告されている |
| 1q21.1 | 1q21.1 部分重複 | 同じ領域で欠失と重複のどちらも起こる。症状の出方に幅が大きく、症状が出ない方もいる |
| 1q41-q42 | 1q41-q42欠失症候群 | 発達の遅れ、特徴的な顔つき、横隔膜ヘルニアなどが報告されている |
| 1q43-q44 | 1q43-q44欠失症候群 | 小頭症、脳梁の低形成、てんかんを伴うことがある |
同じ「1q21.1」でも、欠失と重複、さらにTAR症候群(血小板減少橈骨欠損症候群)と、複数の状態が知られています。領域の名前が同じでも中身は別物ですので、診断書の表記は担当医と一緒にご確認ください。
4. NIPTでどこまで分かるか
整理すると、次のようになります。
| 調べたいこと | NIPTでの扱い |
|---|---|
| 21・18・13トリソミー | 基本のNIPTの主対象 |
| 1番染色体まるごとのトリソミー・モノソミー | 全染色体を対象にするプランで扱われることがあるが、そもそも出生に至ることがほぼない |
| 1p36欠失などの部分的な欠失・重複 | 基本のNIPTの対象外。微小欠失や部分欠失・重複まで対象を広げたプランでのみ扱われる |
そのうえで、NIPTは非確定的なスクリーニング検査です。公益社団法人日本産科婦人科学会の指針でも、NIPTの結果はスクリーニングの範囲にとどまるとされています。陽性所見が出た場合は、羊水検査などの確定検査で判断します。対象範囲が広くなるほど、陽性であっても実際に疾患を有する割合(陽性的中率)は下がりやすい傾向も知られています。
どこまでを対象にするかは検査プランで異なります。迷われる場合はプラン診断もご利用ください。
5. 疑われたときの検査の流れ
部分的な欠失・重複の確定診断で中心になるのは染色体マイクロアレイ検査(CMA)です。従来の顕微鏡による染色体検査(G分染法)では見つけられない、数百kb〜数Mb単位の微細な過不足を検出でき、どこからどこまでが欠けているのかという範囲まで分かります。
妊娠中であれば羊水検査などで採取した細胞を、出生後であれば血液を用いて調べます。見つかった変化がご両親から受け継いだものか、偶発的に生じたもの(デノボ)かを確かめるため、ご両親の検査を併せて行うことがあります。次のお子さまを考えるときの見通しに直結する情報です。
よくある質問
Q. 1番染色体のトリソミーはありますか。
まるごと1本多い状態で生まれてきた報告はごくまれです。1番染色体は載っている遺伝子が最も多く、発生のごく初期を越えられないと考えられています。
Q. 1番染色体の異常はNIPTで分かりますか。
実際に診断される多くは一部の欠失・重複で、これらは基本のNIPTの対象外です。微小欠失や部分欠失・重複まで対象を広げたプランでのみ扱われます。
Q. 1番染色体でいちばん多い疾患は何ですか。
1p36欠失症候群です。染色体の末端が欠ける疾患としては最も頻度が高く、米国のデータで出生5,000〜10,000人に1人と報告されています。
Q. 確定診断はどの検査で行いますか。
染色体マイクロアレイ検査(CMA)が中心です。欠けている範囲や含まれる遺伝子まで分かります。必要に応じてご両親の検査も行います。
監修:岡博史(おか ひろし) / 医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、医学博士。国内でも数少ないラボディレクター資格を保有しています。本記事は医療広告ガイドラインに配慮し、公的機関・学会情報および査読済みの学術論文を参照して作成しています。記載の頻度・数値は文献により幅があり、診断・治療の最終判断は担当医にご相談ください。
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日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

