おなかの赤ちゃんに染色体疾患の可能性があるかを、母体の採血だけで調べられるNIPT(新型出生前診断)。実は日本だけの検査ではありません。アメリカでは2011年から民間主導で広がり、イギリスやオランダでは公的医療の枠組みで提供されています。同じNIPTでも、公費で受けられる国もあれば、日本のように自費が基本の国もあります。
この記事では、国や地域ごとの「制度の違い」に絞ってNIPT事情を中立に整理します。中絶や命の選択といった価値判断には踏み込みません。あくまで提供体制・費用・アクセス・検査の性質という切り口です。海外と比べることで、日本で受ける施設の選び方も見えてきます。
💡 この記事でわかること
- NIPTは13・18・21トリソミーなど対象疾患に限られる非確定的検査で、確定には羊水検査が必要なこと
- 日本のNIPTは認証施設と非認証施設があり、自費診療が基本であること
- アメリカ・イギリス・オランダなど国ごとに公費/自費・提供体制が大きく違うこと
- 日本と海外の共通点・相違点と、認証の有無が検査の質にどう関わるか
- 日本でNIPTを受けるときに後悔しない施設の選び方
日本で行われるNIPT(新型出生前診断)とは
NIPTは、おもに13・18・21トリソミーを対象とする非確定的な検査です。母体から採血した血液には赤ちゃん由来のDNAが含まれます。その断片を解析して、染色体数の変化の可能性を評価するしくみです。おなかに針を刺さずに調べられるため、赤ちゃんへの流産リスクがない点が特徴といえます。
ここで押さえておきたいのが、NIPTはスクリーニング検査だという点です。陽性が出ても、それだけで疾患が確定するわけではありません。確定診断には羊水検査などの確定検査が必要になります。陽性的中率は妊婦さんの年齢や有病率によって変わるとされ、一律の数字では語れません。だからこそ結果の受け止め方には、医師の説明が欠かせないのです。

検査でわかる対象疾患について、もう少し具体的に触れておきます。基本の3疾患は、21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー・13トリソミーです。結果は「陽性」「陰性」「判定保留」で通知されます。トリソミーとは、本来2本で対になる染色体が3本ある状態のこと。対象疾患の詳細はダウン症など対象疾患の解説記事もあわせてご覧ください。
妊婦さんの年齢が上がると、トリソミーのある赤ちゃんが生まれる頻度は高くなると報告されています。年齢に不安のある方が、心の準備のために受けるケースも少なくありません。NIPTの基礎についてはNIPTとは何かをまとめた記事で詳しく解説しています。
日本のNIPT制度 — 認証施設・非認証施設と費用
日本のNIPTは公的保険の対象外で、認証施設と非認証施設のどちらでも自費で受けられる制度になっています。認証施設は、出生前検査認証制度等運営委員会が定めた基準を満たした医療機関です。産婦人科と小児科の専門医が連携し、遺伝カウンセリング体制を整えていることが条件とされています。
一方の非認証施設は、認証の枠外でNIPTを提供する医療機関です。年齢や週数の条件がゆるやかで、検査項目の幅が広いところもあります。認証制度の考え方については、出生前検査認証制度等運営委員会の情報が参考になります。国の考え方は厚生労働省のNIPT関連ページでも確認できます。
費用は施設や検査項目によって幅があります。基本の3疾患だけを調べるプランと、微小欠失まで含む広いプランでは、金額が変わってくるためです。具体的な相場や内訳はNIPTの費用を解説した記事にまとめています。まずは自分に必要な検査範囲を決めることから始めてください。
なお、日本では長らく年齢や週数の条件が議論されてきました。近年はその考え方も見直されつつあります。制限の変化についてはNIPTの年齢制限に関する記事で整理しました。国内の詳しい運用は国立成育医療研究センターのNIPT解説も参照できます。
海外のNIPT(新型出生前診断)事情 — 国ごとの制度の違い
海外のNIPTは、公費で提供する国と自費が基本の国に大きく分かれます。同じ検査でも、誰がお金を負担し、どこまでの妊婦さんに提供するかは国によってまったく違います。ここからは代表的な国と地域の制度設計を、中立に見ていきましょう。数字は文献により幅があるため、目安として受け取ってください。
アメリカ — 民間主導で普及したNIPT
アメリカのNIPTは、民間保険を軸に広く普及してきました。導入は2011年で、比較的早い時期に検査が実用化された国です。専門学会は、リスクの高低にかかわらず妊婦さんへNIPTの選択肢を提示する方針を示しているとされています。
費用の負担はケースによってさまざまです。多くの民間保険で適用がありますが、条件は契約や州によって異なります。高リスクと判定された妊婦さんは適用を受けやすい傾向。陽性が出た場合は専門医のカウンセリングを受け、確定検査やサポートの説明につながる流れが整えられています。
イギリス — 公的医療NHSの枠組みで提供
イギリスのNIPTは、公的医療NHSのスクリーニングの一部として一定条件で提供されています。まず全妊婦さんに一次スクリーニングを行い、そこで高リスクと判定された方への二次検査としてNIPTが位置づけられているのが特徴です。

公的な枠組みで受けられるため、対象となる妊婦さんは費用面の心配が少ない設計です。全妊婦さんにスクリーニングを提示する背景には、検査を受けるかどうかを妊婦さん自身が選べるようにするという考え方があります。ヨーロッパでは、こうした国家的なスクリーニング体制の整備が進んできました。
オランダ・ドイツ・フランス — 国のプログラムとして整備
オランダやドイツ、フランスでは、NIPTが国のスクリーニングプログラムや公的保険の中に組み込まれています。オランダは妊娠リスクにかかわらず全妊婦さんがアクセスできる制度で、一部が公費、一部が自己負担という設計とされています。

ドイツは公的サービスが手厚い国として知られ、2020年ごろから公的保険でNIPTを受けられるようになったと報告されています。フランスも高リスク妊婦さんを対象に、公的な医療保険の適用が進みました。国ごとに対象や負担割合は違いますが、公的制度の中で提供するという方向性は共通しています。ただし受検率は国の事情によって差があり、アクセスできることと実際に受けることは別物です。
オーストラリア・中国 — 自費と認可制のかたち
オーストラリアと中国は、提供体制の考え方がそれぞれ異なります。オーストラリアは条件を問わず妊婦さんが受けられる一方、公的保険の対象外で費用は自費が基本とされています。検査結果はおおむね1週間前後で通知される運用です。
中国は2010年代初頭から都市部を中心に急速に広がりました。現在は妊婦健診の一環として用いられる場面も多いようです。国が認可した医療機関のみが実施できる制度で、検査技術の多くを国内企業が担っている点も特徴といえます。同じアジアでも、日本とは提供のしくみがずいぶん違うのがわかります。
認証の有無と検査の質 — なぜ施設選びが大切なのか
NIPTの結果を正しく生かすには、検査の質と結果を読み解く体制の両方が欠かせません。とくに性染色体に関わる項目は、解釈が単純ではないケースがあります。数値が出れば終わり、という検査ではないのです。ここに認証・非認証の議論の核心があります。
私自身、非認証のクリニックで陽性と告げられ、不安を抱えて相談に来られた妊婦さんに何人もお会いしてきました。実際、X染色体モノソミーで陽性と出ても、精査するとモザイクなどで解釈が難しく、最終的に問題のない男児だったというケースもあります。医師の@drsushi6さんも、X・Y染色体を扱うのは簡単ではなく、陽性でも精査が必要な難しさがあると綴っていました。だからこそ、結果の説明とカウンセリングまで含めて任せられる施設を選んでほしいのです。
認証施設は、遺伝カウンセリングの体制が制度として求められています。非認証施設のなかにも、質の高いラボと丁寧な結果説明を備えたところはあります。大切なのは看板の名前より、陽性が出たあとに相談できる医師がいるかという一点。海外でも、陽性後のカウンセリングを重視する国が多いのは同じ理由からです。
日本と海外のNIPTの共通点・相違点
日本と海外のNIPTは、検査の性質は同じでも、費用と提供体制が大きく異なります。共通しているのは、いずれの国でもNIPTが非確定的なスクリーニング検査で、確定には羊水検査が必要という位置づけです。母体採血で調べるという技術的なしくみも変わりません。
大きく違うのはお金の負担です。イギリスやオランダなど公的医療の枠で提供する国に対し、日本は認証・非認証を問わず自費が基本。この点はアメリカやオーストラリアと近い部分もあります。誰にどこまで提供するかという裾野の広さも、国の政策によってさまざまです。
もうひとつの相違点が、検査で調べられる範囲です。基本の3疾患に絞る国もあれば、微小欠失まで含める国もあります。制度は年々見直されるため、ここに挙げた内容も将来変わる可能性があります。海外の事情はあくまで参考として、日本で受けるなら日本の制度に沿って考えてください。
日本でNIPTを受けるときの選び方
日本でNIPTを受けるなら、費用・検査範囲・陽性後の相談体制の3点で施設を比べてください。海外のように公費で受けられるわけではないため、自分に必要な範囲を見極めることが出発点になります。安さやスピードだけで決めると、あとで迷いが残りやすいのです。
実際、どこで受けるか悩む方はとても多いと感じます。友人からは費用とスピードの良さを聞いたけれど、認証機関かどうかを重視すべきか、それが結果の精度に関わるのか判断がつかない。X利用者の@itsumonemui888さんも、そんな迷いを率直に綴っていました。私からお伝えしたいのは、認証の有無そのものより、陽性が出たあとに医師へ相談できるかを軸に選ぶという考え方です。
具体的には、次の順番で確認すると迷いにくくなります。まず調べたい対象疾患の範囲を決める。次に総額と、陽性時の羊水検査サポートの有無を見る。最後に遺伝カウンセリングの体制を確認する。この3ステップなら、はじめての方でも比べやすいはずです。
- 検査範囲:基本の3疾患だけか、微小欠失なども含めるか
- 総額と補助:検査費用と、陽性時の確定検査サポートの有無
- 相談体制:結果説明と遺伝カウンセリングを受けられるか
ヒロクリニックでは、妊娠約6週以降の早いタイミングから受けられるNIPTを提供しています。国内の検査機関で検査を実施し、最短2〜5日で結果をお伝えできる体制です。基本の3疾患に加え、性染色体や微小欠失など幅広い項目にも対応しています。陽性時の羊水検査サポートも用意していますので、まずは気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)
海外のNIPT事情や、日本での受け方について寄せられる質問をまとめました。気になる項目から読んでみてください。
NIPTは日本だけで受けられる検査ですか?
いいえ、NIPTは世界の多くの国で行われている検査です。アメリカでは2011年ごろから、ヨーロッパやアジアの国々でも導入されてきました。ただし公費か自費か、誰まで提供するかといった制度は国ごとに異なります。
海外では無料でNIPTを受けられるのですか?
国によります。イギリスやオランダなど公的医療の枠組みで提供する国では、一定条件のもと費用負担が軽い設計です。一方アメリカやオーストラリア、日本は自費や民間保険が中心とされています。制度は見直されることがあるため、受ける前に最新情報を確認してください。
日本のNIPTはなぜ自費なのですか?
日本ではNIPTと遺伝カウンセリングが公的保険の対象外のためです。認証施設・非認証施設のどちらでも自費診療となります。費用は検査範囲や施設によって幅がありますので、事前に総額を確認してください。
認証施設と非認証施設では検査の質が違いますか?
認証施設は遺伝カウンセリング体制などの基準を満たしています。非認証施設のなかにも質の高いラボや丁寧な結果説明を備えたところがあります。大切なのは、陽性が出たあとに相談できる医師がいるかどうかという視点です。
NIPTで陽性が出たら疾患は確定しますか?
いいえ、確定しません。NIPTは対象疾患に限られる非確定的なスクリーニング検査です。陽性が出た場合は、羊水検査などの確定検査で診断を確かめます。陽性的中率は年齢や有病率で変わるため、医師の説明を受けてください。
海外で受けた場合、日本で相談できますか?
できます。海外で受けた結果について、帰国後に日本の医療機関で相談する妊婦さんもいます。ただし検査項目や基準が国によって異なる点には注意が必要です。結果の解釈に迷うときは、遺伝カウンセリング体制のある施設へ相談してください。
まとめ — 制度の違いを知り、日本での選び方に生かす
海外のNIPTは、公費で提供する国と自費が基本の国に分かれるのが最大のポイントです。イギリスやオランダは公的医療の枠組み、アメリカやオーストラリアは民間・自費が中心、中国は国の認可制というかたち。日本は認証・非認証を問わず自費が基本です。検査の性質そのものは、どの国でも非確定的なスクリーニング検査という点で共通しています。
制度の違いを知ると、日本で受けるときの軸が定まります。費用と検査範囲、そして陽性後に相談できる体制。この3点で施設を比べてください。海外の事情はあくまで参考に、日本の制度に沿って自分に合う受け方を選んでいきましょう。
監修:岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、医学博士。国内でも数少ないラボディレクター資格を持ち。著書『妊娠したら最初に読んで欲しい本』。本記事は医療広告ガイドラインに配慮し、公的機関・学会・査読論文の情報を参照して作成しています。記載の数値は文献により幅があり、診断・治療の最終判断は担当医にご相談ください。
【参考】
出生前検査認証制度等運営委員会
厚生労働省 NIPT関連ページ
国立成育医療研究センター NIPT


Q&A
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Q検査した方がよい条件はありますか?日本ではどなたでも検査可能です。検査対象の疾患にかかりやすくなる条件は以下のとおりです。
・年齢の高い妊婦さん
・母体血清マーカー検査で、胎児に染色体数的異常の可能性が生じた妊婦さん
・染色体数的異常を持つ子を妊娠した経験がある妊婦さん
・両親のどちらかが均衡型転座やロバートソン型転座を持っていて胎児が13トリソミーまたは21トリソミーになる可能性が生じた妊婦さん
・胎児超音波検査で胎児に染色体数的異常の可能性が生じた妊婦さん
上記の条件に当てはまる場合は、NIPTを検討しましょう。 -
Q検査で分からない疾患は何ですか?NIPTで検査できるのは、13トリソミー・18トリソミー・21トリソミーの染色体疾患です。生まれてくる赤ちゃんのうち100人に3~5人ほどは先天的な疾患をもって誕生します。その中でも染色体が原因の疾患は約25%です。染色体が原因の疾患のうち、13・18・21トリソミーの染色体疾患は約70%です。そのため、NIPTにより確率の高い染色体異常を発見しやすいといえます。
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Q検査で調べる染色体とは何ですか?染色体とは細胞の中にあり、DNAや多くの遺伝子が格納されている構造体です。多くの人の染色体は46本で、常染色体のペアとX・Y染色体のペアで成り立っています。染色体には人の体や働きの設計図が保管されているため、染色体の数や形に変化が発生すると、成長や発達に影響を与えたり、生まれつきの病気や体つきの特徴を持ったりする原因になります。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

