めまいの原因
めまいを表す症状の分類として回転性めまいと、非回転性めまいがあげられます。
自身がグルグル回っているようなめまいを回転性めまいといい、それ以外の非回転性めまいには足下がふわふわするような浮動性めまい、フラフラする感じなどが含まれます。スーッと頭から血の気がひくような感じをめまいと表現するケースもあります。
めまいを起こす原因は様々ありますが、耳鼻科的な問題(良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎、メニエール病、突発性難聴)であったり、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害、脳腫瘍といった脳が原因でめまいを起こすこともあります。

そのほかにも血圧や貧血、自律神経の問題であったりと原因をあげるとキリがありません。
病気によって回転性、非回転性と決まっためまいがあるわけではありませんが、一般的に回転性めまいは急に起こることが多く、非回転性のめまいは慢性的におこりやすいといえます。
一般的にめまいを訴えて外来を受診する場合には原因の6割が耳鼻科的な問題といわれますが、妊娠中のめまいでは一概に耳鼻科的な問題といえないことも大半です。
検査結果に異常がでてこないことも多い妊娠中のめまいについて解説していきます。
妊娠中のめまいで1番多いのはホルモンバランスの変化?
めまい症は誰でも起こりうるごく一般的な症状のひとつですが、いままでめまいなんて経験したことがなかったのに・・・妊娠してからの不調に戸惑う人も多いかも知れません。
妊婦で多いめまいの原因として考えられるものはいくつかありますが、ホルモンバランスの変化が一番関係しているのではないかといわれています。
妊娠10週頃にはhCGというホルモンがピークとなり、その後はエストロゲン、プロゲステロン、hPLといったホルモンが上昇していきます。もちろん妊娠中に変化するホルモンは他にもまだまだあります。
ホルモンは赤ちゃんを守り、ママが母親になるための準備をするために大切なものですが、妊娠をきっかけに様々なホルモンの急激な増減が起こり、自律神経のバランスが崩れめまい症状につながります。
身体のホルモンの状態がめまぐるしく変わることでめまい以外にも様々な体調不良を引き起こすことはきいたことがあると思います。気分の変調や肌のシミが濃くなったり、髪が抜けたり・・・
妊娠週数で分泌されるホルモンに増減があったり、出産により大きくホルモンのバランスが変わることで症状がよくなることが考えられます。思い悩まず、妊娠中の身体の変化と捉えることも必要です。

脱水も原因のひとつ
つわりでご飯が食べられないということも多くあるでしょう。つわりは妊娠8~10週頃をピークとして16週頃にはよくなることが多いですが、人によっては妊娠期間中ずっとつわりに悩まされる人も。
食事がすすまない、水分をとるだけで気持ち悪くなってしまうという場合には容易に脱水になってしまいます。
妊娠中は必要な血液の量も多く、ホルモンの働きで血管が広がるので妊娠前と同じように水分を摂るようにしていても相対的に脱水になりやすい状況です。
脱水はめまいや頭痛など様々な症状の原因となってしますし、ひどい脱水の状態では体力も消耗し危険な状態となってしまいます。
食べられない飲めないつわりが続き、何キロも体重がおちてしまう場合には点滴、場合によっては入院が必要となります。
食べられないときには塩分量に注意しながら経口補水液での水分補給も必要かもしれません。
つわりがひどくなく、食事は食べられているという方でもいつも以上に水分をしっかり摂ることを心がけることが大切です。

立ちくらみをめまいということも
立ち上がったときやお風呂からでたときなどに目の前がクラッとするような感じや血の気がひくような感じを経験したことがある方は多いのではないでしょうか。
一般に、立ちくらみと呼ばれていますが、妊娠中には妊娠していないときにくらべて立ちくらみの頻度も増えます。
医学的にはおもに「起立性低血圧」や「神経調節性失神」によるめまい症状が立ちくらみにあたります。
妊娠中の血液量の増減により血圧の増減が起きることがあります。妊娠高血圧症など高血圧になることが母子ともに危険な状態を引き起こすのはよく知られています。反対に、妊娠を機に血圧が下がる場合もあるのです。
特に、急に立ち上がったときなどは血圧が維持できずに起立性低血圧を引き起こしやすくなります。
また、排尿後やくしゃみ、咳がひどいときや大きな感情の変動があったときなどは自律神経のバランスが乱れてめまい症状がおきることがあります。
妊娠するまでは問題なくできていた行動も妊娠中に同じ行動をするとめまい症状がでてしまうこともあるでしょう。
立ち上がったときにクラッとする場合には急がずにゆっくりと体勢を変えたり、めまいが起きやすい状況がわかっている場合にはすぐに何かに掴まれるようにしておいたり椅子を用意しておくといいかもしれません。
また、充分な休養と水分を摂ることで立ちくらみも減らすことができますので日頃の体調管理にも気を配ってください。

妊娠中は鉄欠乏性貧血になりやすい
「貧血の症状で・・・」と病院を受診される方がいますが、実際に採血の値からは貧血になっていることはあまり多くありません。
実際に貧血で症状がでる状況というのは、急激に貧血になったときや慢性的に貧血が高度な状態が続くときに多く見られます。そのため、めまいの原因が貧血であるケースは多くないかもしれませんが、妊娠中に貧血が増えることも事実です。
妊娠中は必要な血液が多くなるため、鉄分も多く必要になります。
妊娠可能年齢の女性では毎月の月経もあり、定期的な出血があることから蓄えている鉄も少なく、鉄欠乏性貧血といわれている方も少なくありません。
そのため、どんどん血液を作らなくてはいけない状況で妊娠前と同じ食生活では相対的に鉄分が不足してしまいます。
母体が貧血のときは、胎児も貧血の状態となってしまうため、妊娠期間中に採血で貧血の項目をみることは必須です。
妊娠中の食事ではレバーやうなぎ、小松菜、海藻類など鉄分を多く含む食品を意識してメニューに取り入れたり、鉄分のサプリメントで補うこともいいでしょう。

ただし、どんな食品でも偏って摂ると、栄養素のかたよりがでてしまうためバランスのよい食事を心がけてみてください。
また、サプリメントでは容易に過剰になってしまうため用法用量を守ることが大切です。
めまいが起きたらどうする
妊娠中にめまいで困ったときの対処法としては安静にすることが一番です。ホルモンのバランスや貧血などは一朝一夕で改善するものではありませんが普段からの体調を整えておくことはめまい症状が出にくくするためにはとても大切です。
バランスのよい食事、睡眠を十分にとって水分をこまめに補給することでめまいの改善を待つしかありません。
また、重篤なめまいの症状として、脳の問題があります。頭が割れるように痛い、ろれつがまわらない、手足が動かしにくいなどの症状を伴う場合には頭の病気であることも考えられるため早めに医療機関を受診してください。
そのほかにも、心臓が原因のめまいも重篤です。妊娠中に突然起こるということは稀ですが、異常に息があがる、浮腫がひどい、動悸症状があるという場合にも医療機関の受診をお勧めします。
妊娠中は妊娠前の体調とはまったく違ってしまうため不安に思うこともおおいでしょう。
焦らず体調管理を行い、つらければ休む、無理をせず身体を気遣ってください。

記事の監修者

白男川 邦彦先生
ヒロクリニック名古屋駅前院 院長
日本産科婦人科学会専門医
産婦人科専門医として40年近くにわたる豊富な経験を持ち、多くの妊婦さんとかかわる。
現在はヒロクリニック名古屋駅前院の院長としてNIPTの検査担当医を行う一方、全国のヒロクリニック各院からのオンラインで妊婦さんの相談にも乗っている。
経歴
1982年 愛知医科大学付属病院
1987年 鹿児島大学附属病院 産婦人科
1993年 白男川クリニック 院長
2011年 かば記念病院
2019年 岡本石井病院
2020年 ヒロクリニック名古屋駅前院 院長