高齢出産による母体と胎児へのリスクとNIPT(新型出生前診断)について【医師監修】

赤ちゃんの手

高齢での妊娠は適齢期の妊婦さんとくらべ、母体と胎児にさまざまなリスクが生じます。高齢妊娠や出産が母体に与える影響と、赤ちゃんの染色体異常症による健康リスクを事前に知るためのNIPT(新型出生前診断)について医師が解説します。

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高齢出産のリスクとは?

妊娠や出産は年齢に関わらず、多くのリスク・トラブルを伴います。また、35歳以上の高齢での妊娠は一般的に適齢期といわれる、初産が35歳未満の妊婦さんと比べると、さらにリスク・トラブルの生じる確率は上昇するといえるでしょう。

リスク1: 流産の確率が高くなる

母体年齢ごとの流産率は以下の表になります。

年齢 流産
20代~35歳 20%
36歳~39歳 30%~35%
40歳 40%
43歳 50%
44歳 60%
45歳~48歳 70%
49歳以上 90%

参考資料:ヘルスサイエンス・ヘルスケア – 高齢出産は先天異常を増やすか?生殖補助医療先天異常データの分析

一般的に妊娠適齢期といわれる35歳未満までは、約20%と流産率は低いとされています。しかし、高齢妊娠とされる35歳以上より流産の確率は少しずつ高まり、40歳以上となると流産の確率は約40%とさらに上昇するといえるでしょう。

年齢が上がるとともに流産の確率が上昇する理由の一つとして、卵子と精子の劣化が挙げられます。加齢とともに卵子の数が減少し、精子も同様に精子の濃度・運動率が低下します。これらの卵子と精子の劣化は染色体異常症の原因ともされ、この場合の流産は現代の医療では防ぐことができません。

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リスク2:染色体異常症(ダウン症)の発生率が高くなる

母体年齢ごとのダウン症とその他の染色体異常症の発生率は以下の表になります。

年齢 ダウン症(21トリソミー)の確率 その他の染色体異常の確率
25歳 1/1250人 1/476人
30歳 1/952人 1/384人
35歳 1/385人 1/192人
40歳 1/106人 1/66人
45歳 1/30人 1/21人
49歳 1/11人 1/8人

参考資料:厚生労働省 – 「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」報告書 参考資料

35歳以上の高齢妊娠は卵子・精子の劣化に伴い、胎児の染色体異常症リスクが高まります。染色体異常症は流産の確率の上昇と、染色体異常症の中で最も多く見られるダウン症(21トリソミー)の発症率が上がるとされています。

ダウン症(21トリソミー)は、正式には「ダウン症候群」といい、21番目の染色体が3本であることが原因として起こる病気のことです。扁平な輪郭につり目といった外見的特徴と、筋力低下に伴う発育の遅延・知的発達の障害を持ちます。またダウン症は、先天性心疾患や、消化器疾患など多くの合併症が見られるケースも少なくありません。

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リスク3:低出生体重児の可能性が高まる

母体年齢ごとの低体重児の出生率は以下の表になります。

年齢 低体重児出生割合
~34歳 10%未満
35~39歳 11%
40~44歳 13%
45歳以上 17%

参考資料:厚生労働省 – 母子保健の現状

高齢出産は妊娠高血圧症候群や、妊娠糖尿病を引き起こすリスクが高いとされています。妊娠高血圧症候群妊娠糖尿病は母体だけでなく、赤ちゃんの発育不全など、さまざまな影響を与えるといえるでしょう。

一般的に出産時の赤ちゃんの体重は3000グラムほどですが、低出生体重児とは2500グラム未満の赤ちゃんを指します。低出生体重児は、発育や発達の遅延および障害が認められることがあり、また成人後の健康リスクにも関わることも少なくありません。

リスク4:難産になりやすい

高齢出産の場合、産道や子宮口が硬くなり難産になりやすく、赤ちゃんの脳性まひ・妊婦死亡などのリスクも考えられます。これらのことから、高齢出産で難産となった際は、帝王切開による出産の確率が上がるとされています。

妊婦の死亡率は以下の表になります。

年齢 妊婦死亡率
~29歳 2.8
30~34歳 4.3
35~39歳 7.0
40歳~ 11.8

参考資料:日本産科婦人科学会 – 年齢別の妊産婦死亡率(2010-2016年)  妊産婦死亡数/100,000出産

高齢出産は出産時に、大きなトラブルが起こる可能性も少なくありません。母体と赤ちゃんが生命の危機状態となることもあるため、NICU(新生児特定集中治療室)を備えた医療機関を事前に探すことが大切です。

高齢出産の妊婦さんのリスク

出生前診断で高齢出産のリスクに備える

高齢妊娠・高齢出産で多く見られる「染色体異常症」は、現代の医療では予防も治療も行うことができません。しかし出生前診断によって、赤ちゃんの染色体異常症を出産前に知ることは可能とされています。

出生前診断にはいくつかの種類があり、検査方法や診断精度はそれぞれ異なります。高精度な出生前診断を行うことで、母体へのリスクを考慮し人工妊娠中絶(中絶)の選択、また、先天性疾患をもった赤ちゃんを育てるための環境を事前に整えることができるでしょう。

出生前診断の種類とおおよその費用・検査時期については以下の表になります。

検査名 検査方法 費用 検査時期 診断内容
NIPT検査 血液検査 12~21万円 妊娠確認時 全染色体異数性
性染色体異数性
微小欠失症候群
部分欠失部分重複
コンバインド
検査
血液検査 2~3万円 妊娠11~13週 21・18トリソミー
母体血清
マーカーテスト
血液検査 2~3万円 妊娠15~17週 21・18トリソミー
開放性神経管奇形
絨毛検査 胎盤の一部
(絨毛)を採取
10~20万円 妊娠10~13週 赤ちゃんの染色体異常症の
有無
羊水検査 羊水を採取 10~20万円 妊娠15~18週 赤ちゃんの染色体異常症の
有無/遺伝性疾患の有無/
遺伝子変異/
酵素の変化

日本産婦人科学会の出生前診断の概念は、「妊娠中に胎児が何かの疾患に罹患していると思われる場合や、胎児の異常はあきらかでないが、何らかの理由で胎児が疾患を有する可能性が高くなっていると考えられる場合に、その正確な病態を知る目的で検査を行うことが基本的な出生前診断、診断の概念である」と定義されています。

高齢での妊娠は『何らかの理由で胎児が疾患を有する可能性が高くなっていると考えられる場合』に、あてはまります。なお、現在では母体と赤ちゃんの健康リスクのために、NIPT(新型出生前診断)といわれる、非侵襲性出生前遺伝学的検査を行う高齢妊婦さんが増えているとされています。

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高齢出産のリスクを下げるためにできること

高齢妊娠・高齢出産には赤ちゃんの染色体異常症以外にも、さまざまなリスクが伴います。お母さんが健やかな妊娠期間を過ごし、出産を迎えるためには「ストレスの少ない生活環境」と「栄養バランスのとれた食生活」が何より大切です。

ポイント1.葉酸を摂取する

葉酸は妊婦さんの必須栄養素とされています。葉酸にはおもに以下のような働きがあります。

  • 血流を良くして子宮内膜を育てる
  • 胎児の『神経管閉鎖障害』と『無脳症』のリスクを軽減する
  • 悪性貧血(巨赤芽球性貧血)が予防できる
  • 産後の体調回復をサポートする

<ステージごとの1日に必要な葉酸摂取量>

ステータス 葉酸摂取量/1日
成人女性 240μg(マイクログラム)
妊活~出産 480μg
授乳期 340μg

厚生労働省の最低推奨摂取量は1日400μg。栄養バランスに考慮した食事であれば291.2μg程度の葉酸を摂取しているので、サプリメントなどで過剰摂取(1日1,000μg以上)にならないよう注意が必要です。

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ポイント2.栄養バランスのよい食生活をする

妊娠中の肥満や、つわりなどによる著しい体重減少は、赤ちゃんの発育に影響を与えます。流産早産、胎児死亡を引き起こすおそれもあることから、妊娠高血圧症候群妊娠糖尿病に注意した食生活を送ることが大切です。

<肥満>

妊娠糖尿病
  • 流産早産、胎児死亡などの合併症を引き起こす可能性がある。
  • 赤ちゃんにも糖尿病やメタボリック症候群の発症リスクが高まる。
妊娠高血圧症候群
  • 重症化すると、けいれん発作・脳出血・肝機能障害を引き起こす。
  • 胎児機能不全・胎児死亡といったリスクが高まる。

<体重の減少>

低出生体重児 出産時の体重が2,500g未満。出生体重が低いほど死亡率が高まる。
子宮内胎児発育遅延 胎児の成長が止まったり、発育が遅い症状。周産期の死亡率が高まる。
切迫流産 流産の一歩手前の状態。
切迫早産 早産の可能性が高い状態。
鉄欠乏症貧血 胎児に十分な酸素を送ることができない状態。
妊婦さん 栄養・葉酸を摂る

ポイント3. 無理のないストレスフリーな生活を心がける

妊娠中も多くの仕事をこなす妊婦さんもいらっしゃるでしょう。しかし、高齢妊娠・高齢出産の場合は体調管理に注意する必要があります。

とくに妊娠中はホルモンバランスの関係でストレスを感じやすく、ストレスにより分泌されたアドレナリンの作用で血管が収縮するとされています。血流が悪くなると、赤ちゃんへ必要な量の酸素や栄養がうまく届かず、発育不全を引き起こすことも少なくありません。

また妊婦さんが強いストレスを感じると、コルチゾールと呼ばれるホルモンが分泌されます。コルチゾールは通常、胎盤により赤ちゃんへ届くことはありません。しかし、高齢妊娠により、胎盤機能が低下することで、コルチゾールが胎盤を通過し、赤ちゃんの神経系の発達を障害するともいわれるため注意が必要です。

ポイント4.妊婦健診は必ず受ける

妊婦健診は母体と赤ちゃんを守るための必須検査です。とくに高齢妊娠・高齢出産にはさまざまなリスクが伴います。妊娠高血圧症候群妊娠糖尿病などの早期発見のためにも、必ず妊婦健診を受けることが大切です。

赤ちゃんの染色体異常症の不安はヒロクリニックNIPTまで

高齢妊娠・高齢出産にはさまざまなリスクが生じます。また、年齢の上昇とともに赤ちゃんの染色体異常症による先天性疾患リスクが高まるでしょう。ヒロクリニックNIPTによるNIPT(新型出生前診断)は年齢制限がありません。母子手帳をお持ちの方であれば何歳でも実施可能です。

NIPT(新型出生前診断)は母体血液のみで行う、スクリーニング検査です。そのため胎児への直接的な侵襲(ダメージ)は、ほとんどありません。またダウン症(21トリソミー)に関しては、感度・特異度ともに99.9%と高精度な出生前診断といえるでしょう。

より健やかな妊娠期間と出産を迎えるために。高齢妊娠・高齢出産による染色体異常症や、NIPT(新型出生前診断)についてのご質問は、ヒロクリニックNIPTまで、ぜひご相談ください。

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【参考文献】

Q&A

  • Q
    高齢出産とは何歳からを指しますか?
    一般的に35歳以上で初めての出産を迎えることを「高齢出産」といいます。この年齢を超えると、染色体異常のリスクが上昇するとされ、特に出生前診断の重要性が高まります。
  • Q
    なぜ高齢出産では染色体異常のリスクが高くなるのですか?
    年齢とともに卵子の質が低下し、染色体の分配ミスが起こりやすくなるため、ダウン症候群などの染色体異常のリスクが上昇します。35歳以降で妊娠した場合、検査を受ける方が増えています。
  • Q
    高齢出産ではNIPTを受けるべきですか?
    はい、高齢妊娠では染色体異常のリスクが上がるため、NIPT(非侵襲的出生前診断)は有力な選択肢です。採血のみで胎児の染色体異常の可能性を高精度で判定でき、母体や胎児へのリスクが少ないのが特徴です。
  • Q
    高齢出産の場合、NIPT以外にも検査が必要ですか?
    NIPTはスクリーニング検査なので、**陽性結果が出た場合は確定診断(羊水検査や絨毛検査)**を行うことが推奨されます。また、超音波検査や血清マーカー検査なども併用して総合的に判断するケースもあります。
  • Q
    高齢出産に対する不安を減らすにはどうしたらよいですか?
    適切な情報とサポートを得ることが大切です。NIPTを含めた検査の活用や、遺伝カウンセリングを受けることで、検査の内容や結果の理解が深まり、不安の軽減につながります。

高齢での妊娠は適齢期の妊婦さんとくらべ、母体と胎児にさまざまなリスクが生じます。高齢妊娠や出産が母体に与える影響と、赤ちゃんの染色体異常症による健康リスクを事前に知るためのNIPT(新型出生前診断)について医師が解説します。

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

記事の監修者


岡 博史先生

岡 博史先生

【役職】

NIPT専門クリニック医学博士
ヒロクリニック統括院長

【資格】

平成8年 医師免許 取得 
平成14年 慶應義塾大学医学博士号 取得
平成15年 皮膚科専門医 取得
平成29年 産業医 取得

【略歴】

平成8年 慶應義塾大学医学部 卒業
平成8年 慶應義塾大学医学部皮膚科学教室 入局
平成11年 川崎市立川崎病院総合心療内科 勤務
平成12年 川崎市立川崎病院皮膚科 勤務
平成14年 慶応義塾大学病院皮膚科 勤務
平成17年 城本クリニック 勤務
平成20年 ヒロクリニック開院・院長就任
平成21年 医療法人社団福美会 設立・理事長就任

【所属】

医療法人社団福美会

【SNS】

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