日本で中絶が可能なのは妊娠21週6日までです。妊娠初期(12週未満)での中絶は母体の負担が少ないですが、妊娠中期での中絶は入院が必要で体に大きな負担がかかります。中絶を選ぶ可能性のある方は、出生前診断結果を21週6日までに確認することが必要です。
人工妊娠中絶とは、母体保護法に基づき、一定の条件のもとで人工的に妊娠を終わらせることです。実施できるのは妊娠22週未満と法律で定められています。方法や心身への負担は時期により異なり、必ず医療機関で相談・実施します。
| 時期 | 方法の目安 |
|---|---|
| 妊娠初期(〜12週未満) | 手術または経口中絶薬による方法 |
| 妊娠中期(12〜22週未満) | 分娩に近い方法 |
| 妊娠22週以降 | 法律上、実施できない |
人工妊娠中絶は、母体保護法にもとづいて指定医師が行う医療行為です。実施できる時期は妊娠21週6日まで、方法は妊娠週数によって内服薬と手術に分かれます。出生前診断を検討するなかで、中絶という選択肢に向き合う方は少なくありません。ここでは是非を論じるのではなく、制度・方法・母体への影響・相談先を、当事者を責めない筆致で淡々と整理します。
この記事でわかること
- 人工妊娠中絶は母体保護法にもとづく医療行為で、指定医師が行うこと
- 実施できるのは妊娠21週6日まで。初期と中期で方法が異なること
- 内服薬(メフィーゴパック)と手術のそれぞれの位置づけと、母体への影響
- 出生前診断との関係、そして一人で抱え込まないための相談先
人工妊娠中絶とは
人工妊娠中絶とは、母体保護法にもとづき、指定された医師が妊娠を人工的に中断させる医療行為です。自己判断で行えるものではなく、法律で枠組みが定められています。
日本では刑法で堕胎が原則禁止されています。そのうえで母体保護法が、一定の条件を満たす場合に限って中絶を認めるという構造です。
母体保護法が定める中絶の理由は、大きく2つに整理されます。ひとつは、妊娠の継続や分娩が身体的または経済的な理由で母体の健康を著しく害するおそれがある場合。もうひとつは、暴行や脅迫などによって妊娠した場合です。
手術の実施には、原則として本人と配偶者(パートナー)の同意が必要とされています。実施できるのは、母体保護法によって指定された「指定医師」だけです。制度の詳細は日本産婦人科医会や日本産科婦人科学会が情報を公開しています。
中絶は、語りにくさゆえに正確な情報が届きにくいテーマでもあります。ある文学作品を紹介する投稿では、中絶が戦後、患者が公に語ることなく行われてきた大きな医療だったと触れられていました。Xでも@ringomomo7811さんが、そうした語りにくさに静かに光を当てていました。だからこそ、私たちは煽らず・断定せず、事実を淡々とお伝えすることを心がけています。
中絶が可能な時期と方法の全体像
中絶ができるのは妊娠21週6日まで、初期(妊娠11週6日まで)と中期(12〜21週6日)で方法が変わります。週数が進むほど母体への負担が大きくなる傾向があります。
まずは全体像を表で整理します。数字は一般的な目安で、実際の週数区分や費用は医療機関によって幅があります。
| 区分 | 時期の目安 | 主な方法 |
| 初期(内服) | 妊娠9週0日(63日)以下 | 内服薬(メフィーゴパック) |
| 初期(手術) | 妊娠11週6日まで | 吸引法・掻爬法 |
| 中期 | 妊娠12〜21週6日 | 分娩に近い方法(人工流産) |
| 後期 | 妊娠22週以降 | 妊婦の申し出による中絶は認められていません |
妊娠22週目を過ぎると妊娠後期と呼ばれ、妊婦の申し出による中絶は法的に認められていません。出生前診断の結果を受けて方針を考える方は、遅くとも妊娠21週6日までに結果を確認しておく必要があります。時間的な余裕をどう確保するかは、後半で改めて触れます。
内服薬による中絶(メフィーゴパック)
2023年に国内承認された経口中絶薬メフィーゴパックは、母体保護法指定医師のもと、院内の管理下で使用される医薬品です。薬局やインターネットで購入できるものではありません。
以前は中絶といえば手術のみでしたが、選択肢が広がりました。承認内容の要点を表にまとめます。
| 販売名 | メフィーゴパック |
| 一般名 | ミフェプリストン/ミソプロストール |
| 承認取得者 | ラインファーマ株式会社 |
| 効能又は効果 | 子宮内妊娠が確認された妊娠63日(妊娠9週0日)以下の人に対する人工妊娠中絶 |
国内第Ⅲ相試験では、ミソプロストール投与後24時間までに中絶が成功した割合は93.3%(112/120例)と報告されています。有害事象の発現割合は57.5%(69/120例)で、主なものは下腹部痛(30.0%)や嘔吐(20.8%)でした。重い出血や感染症などが報告されることもあります。
ここで知っておいてほしいのが、流通の仕組みです。本剤は製造販売業者から卸売業者、そして登録された医療機関へというルートのみで流通します。個人輸入や自己判断での使用は、健康を大きく損なう危険があります。妊娠週数の確認や出血・感染への対応を含め、必ず医療機関で相談してください。
私たちの外来でも、「薬だけ手に入れば」という相談を受けることがあります。そのたびにお伝えしているのは、薬の効果と同じくらい、使用前後の医学的な管理が身体を守るということです。
手術による中絶
手術による中絶は、初期は吸引法や掻爬法、中期は分娩に近い方法で行われ、いずれも麻酔を用いて指定医師が実施します。週数によって身体への負担や入院の要否が変わります。
初期と中期で方法がどう違うのか、まず図で整理します。
妊娠初期の手術は、子宮の内容物を取り去る方法をとります。吸引法は吸引器を用いる方法、掻爬法は器具でかき出す方法です。近年は身体への負担が少ない吸引法が広く用いられる傾向にあります。
どちらも、子宮口を開く処置をしたうえで静脈麻酔をかけて行います。手術そのものの時間は10〜15分程度が一般的です。経過に問題がなければ、その日のうちに帰宅できることが多いとされています。
妊娠中期の中絶は、子宮口を開いてから薬で陣痛をおこし、分娩に近い形で行われます。身体への負担があるため、通常は数日間の入院が必要です。妊娠12週以降は、法令にもとづき死産届や埋火葬の手続きが必要になります。
費用の目安は、初期でおよそ10〜15万円、中期で40〜60万円程度と幅があります。いずれも健康保険の適用外です。中期は分娩の扱いとなるため、出産育児一時金の対象となることがあります。金額は医療機関や地域で異なるため、受診の際に必ず確認してください。
中絶が母体に与える影響
中絶は指定医師のもとで行えば基本的に安全な医療ですが、身体面・精神面ともにケアが必要な場面があります。「終わったら終わり」ではないという視点を大切にしたいところです。

身体面では、手術が終わって時期が来れば、子宮はもとの状態に近づいていきます。次の生理は、手術のあと1か月ほどで来ることが多いとされています。まれに、遺残(子宮内に組織が残ること)や子宮穿孔(子宮に穴があくこと)といった合併症が起こることもありますが、その頻度は高くありません。
合併症が起きなければ、その後の妊娠に大きく影響することは少ないと考えられています。ただし複数回の手術で子宮内に癒着が生じ、不妊の一因となる場合もまれにあります。気になる症状が続くときは、我慢せず産婦人科を受診してください。
もうひとつ、見落とされがちなのが精神面です。中絶のあとに気分の落ち込みや涙もろさが続くことは、けっして珍しくありません。私たちの外来でも、時間が経ってから「あのとき誰かに話したかった」と振り返る方に出会います。つらさが長く続くときは、産婦人科やカウンセリングの専門家に相談してください。心のケアは、身体のケアと同じくらい必要な支えです。
出生前診断と中絶の関係
NIPTなどの出生前診断は「非確定的検査」で、確定診断には羊水検査が必要です。結果をどう受け止めるかは、本人と家族が支えられながら決めていく選択です。

出生前診断には、母体の血液などから調べる非確定的検査と、羊水検査や絨毛検査といった確定診断があります。NIPT(新型出生前診断)は非確定的検査の代表で、対象となる染色体(主に13・18・21トリソミーなど)に限定して、その可能性を調べる検査です。陽性という結果が出ても、それだけで確定にはなりません。
ここで大切なのがPPV(陽性的中率)という考え方です。PPVとは、陽性と出た人のうち実際にその疾患である人の割合を指します。対象疾患の頻度が低いほどPPVは下がるため、陽性結果は絨毛検査や羊水検査による確定診断で確かめる流れになります。ダウン症についてはダウン症(21トリソミー)の解説もあわせてご覧ください。
羊水検査は妊娠15〜16週以降、絨毛検査は妊娠11〜14週ごろから実施できます。確定診断そのものにも0.2〜1%前後の流産リスクが伴うとされています。検査を早い時期に受けておくと、結果を確認してから考える時間を確保しやすくなります。より詳しい費用や補助の目安は出生前診断の関連ページでも案内しています。
検査結果を前にしたとき、どう受け止め、どう選ぶかは、本人と家族の価値観によって異なります。正解を外から押しつけるものではありません。だからこそ、産婦人科医や臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングが、情報の整理と気持ちの整理の両面を支えます。中立的な相談先として、NPO法人 遺伝カウンセリング・クリニカルジェネティクス(FPCR)のような専門団体も知っておくと安心です。
一人で抱え込まないために
不安や迷いは、一人で抱え込まず、産婦人科や相談窓口に早めに声を届けてください。専門家に話すことは、弱さではなく身を守る行動です。
妊娠や中絶をめぐる悩みは、身体のことだけにとどまりません。つわりのつらさ、パートナーとの関係、経済的な不安。いくつもの心配が同時に押し寄せ、誰にも言えないまま揺れてしまう方は、少なくありません。
Xでも@mikan22_さんが、手術を控えるなかでの体調のつらさや、周囲に頼れないもどかしさといった、揺れる胸の内を静かに綴っていました。同じように言葉にできず苦しむ方は、きっと多いはずです。だからこそ、専門家に相談してほしいと私たちは考えています。
産婦人科では、身体の状態だけでなく、これからの選択についても相談できます。気持ちの整理がつかないときは、カウンセリングを併用する方法もあります。まず何から、と迷うなら、電話やオンラインで話せる窓口から始めてみてください。
ヒロクリニックでも、遺伝カウンセリングやオンラインでのご相談をお受けしています。ひとりで結論を出す前に、専門家と一緒に考える時間を持ってみませんか。
よくある質問(FAQ)
ここでは、妊娠初期から中期の妊婦さんやパートナーの方から寄せられることの多い疑問に、中立的な立場でお答えします。
Q1. 人工妊娠中絶ができるのはいつまでですか?
母体保護法にもとづき、妊娠21週6日までとされています。妊娠22週以降は、妊婦の申し出による中絶は認められていません。時期によって方法や身体への負担が変わるため、判断は早めに医師と相談してください。
Q2. 中絶の方法にはどんな種類がありますか?
大きく分けて、内服薬による方法と手術による方法があります。妊娠9週0日以下では経口中絶薬メフィーゴパックが用いられることがあり、手術は初期に吸引法・掻爬法、中期に分娩に近い方法がとられます。適応は週数や体調に応じて医師が判断します。
Q3. 中絶薬はインターネットで買えますか?
買えません。メフィーゴパックは登録された医療機関のみに流通し、指定医師の管理下で使われる医薬品です。個人輸入や自己判断での使用は健康を大きく損なう危険があります。必ず医療機関で相談してください。
Q4. 中絶をすると将来妊娠しにくくなりますか?
指定医師のもとで行い、大きな合併症がなければ、その後の妊娠に強く影響することは多くありません。ただし合併症や複数回の手術による癒着が不妊の一因となる場合もまれにあります。気になる症状が続くときは産婦人科を受診してください。
Q5. NIPTで陽性が出たら中絶しなければいけませんか?
そのようなことはありません。NIPTは対象となる染色体に限定した非確定的検査で、確定には羊水検査などが必要です。結果をどう受け止めるかは本人と家族の選択であり、遺伝カウンセリングで支えられながら決めていくものです。
Q6. 気持ちがつらいときはどこに相談できますか?
産婦人科のほか、カウンセリングの専門家や遺伝カウンセリングの窓口に相談できます。落ち込みが長く続くときは我慢せず、早めに声を届けてください。一人で抱え込まないことが、心と身体を守る第一歩になります。
監修者
岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)
岡山県出身。慶應義塾大学医学部卒業後、日本とアメリカの医師国家試験に合格。臨床研修後2年で医学博士を取得。日本に20人ほどしかいないラボディレクター資格を保有しています。著書『妊娠したら最初に読んで欲しい本』、YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」を運営。本記事は同院長の監修のもと作成しています。
出生前診断(NIPT)について相談したい方は、ヒロクリニックNIPTの無料カウンセリングをご利用ください。国内検査・産婦人科医対応で、妊娠10週ごろから受けられます。
Q&A
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QNIPTの結果が陽性だった場合、中絶を選ぶ人もいるのですか?はい、NIPTで染色体異常の可能性が高いと判定された場合、医師との相談や確定検査の結果を踏まえたうえで、妊婦さんとそのご家族が中絶を選択することもあります。ただし最終的な判断は非常に個人的で慎重に検討されるべきものです。
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QNIPTの結果だけで中絶を決めてもよいのでしょうか?NIPTはあくまでスクリーニング検査であり、確定診断ではありません。陽性判定が出ても、必ず羊水検査や絨毛検査などで確定診断を行った上で判断することが推奨されます。
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Q中絶を選択する際、どのような支援がありますか?医療機関では、遺伝カウンセリングや精神的サポートを通じて、妊婦さんとそのご家族を支援します。また、必要に応じて心理士やソーシャルワーカーと連携し、相談体制を整えていることもあります。
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Q中絶にはどのような時期や条件がありますか?日本では原則として妊娠22週未満までが中絶可能とされています。妊娠週数や母体への影響など、医学的な条件にもよるため、早めの相談が重要です。
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QNIPTと中絶に関する倫理的な問題とは何ですか?出生前診断の結果をもとに中絶を選択することは、生命倫理や宗教観、社会的価値観とも深く関わります。誰もが正解を持っているわけではなく、それぞれの家族にとって納得のいく選択ができるよう、対話と支援が重要です。
日本で中絶が可能なのは妊娠21週6日までです。妊娠初期(12週未満)での中絶は母体の負担が少ないですが、妊娠中期での中絶は入院が必要で体に大きな負担がかかります。中絶を選ぶ可能性のある方は、出生前診断結果を21週6日までに確認することが必要です。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
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日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
- 日本産科婦人科学会. 母体保護法医師指定基準及び不妊手術・人工妊娠中絶取扱規程. 東京: 日本産科婦人科学会; 2021.
- 厚生労働省. メフィーゴパックの適正使用について(薬生発0428第1号). 東京: 厚生労働省医薬・生活衛生局長通知; 2023.
- Sugiura-Ogasawara M, Ebara T, Matsuki T, Kano H, Kurihara T, Saitoh S, et al. Artificial abortion and subsequent pregnancy outcomes: the Japan Environment and Children's Study. J Maternal-Fetal Neonatal Med. 2020;33(21):3642-3648.
- Samura O, Sekizawa A, Suzumori N, Ueda Y, Miura K, Kamei Y, et al. Current status of non-invasive prenatal testing in Japan: a report from the NIPT consortium. J Obstet Gynaecol Res. 2017;43(5):836-844.

