ウォルフ・ヒルシュホーン症候群とは?特徴や原因、症状【医師監修】

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群とは?特徴や原因、症状 足 手 ハート 写真

4番染色体短腕に位置する遺伝子群が失われることで引き起こされる疾患「4p欠失症候群」(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)。国の指定難病に認められており、顔貌上の特徴や成長障害、発達遅延を呈する症候群です。本記事では、4p欠失症候群に関する特徴をはじめ、原因や症状、治療法について解説します。

ダウン症の検査
気になる費用はこちら

ダウン症の検査
気になる費用はこちら

この記事のまとめ

4p欠失症候群(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)は、4番染色体短腕(4p16.3領域)の遺伝子欠失を原因とする指定難病198です。特徴的な顔貌、胎児期からの成長障害、精神運動発達の遅れ、難治性てんかんなどが主な症状です。

発症頻度は出生5万人に1人程度と推定されています。約8割前後は突然変異による孤発例で、遺伝が原因になるケースはまれです。

ヒロクリニックNIPTの基本的な微小欠失・重複疾患検査(23種)には4p16.3欠失症候群が対象疾患として含まれています。ただしNIPTはあくまで非確定的検査です。確定診断には羊水検査などが必要になります。

この記事でわかること

  • 4p欠失症候群(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)とはどのような病気か、指定難病としての位置づけ
  • 4番染色体短腕(4p16.3)が欠失する原因と、遺伝との関係
  • 特徴的顔貌・成長障害・難治性てんかんなど、主な症状の全体像
  • 診断の流れと、確定検査でわかること
  • NIPTでわかるのか、ヒロクリニックNIPTでの位置づけ
  • 妊娠中に指摘された場合の相談先と次の一歩

妊娠中のリスク管理に
NIPTで安心を

ご予約はこちら

 

胎児の性別は10週目でわかる

4p欠失症候群(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)とは|特徴的な顔貌や成長障害を伴う指定難病

4p欠失症候群は、4番染色体短腕(4p16.3領域)の遺伝子が微細に欠失することで起こる、指定難病198に認定された疾患です。1961年にクーパー医師とヒルシュホーン医師が初めて報告し、「ウォルフ・ヒルシュホーン症候群」(WHS)とも呼ばれています。

特徴的な顔貌は「ギリシャ兵士のヘルメット様」と称されることがあり、幅広く隆起した鼻梁や広い眉間が目立ちます。胎児期からの成長障害や精神運動発達の遅れ、難治性てんかんなど、複数の症状を伴う点も特徴です。

どのくらい稀な病気なのか

発症頻度は出生5万人に1人程度と推定されていますが、症状が軽い場合は見過ごされることもあるため、実際はもう少し高い可能性があります。性別比は女性と男性で2対1となっており、女児にやや多くみられます。

全常染色体全領域部分欠失疾患の一つで、通常の染色体検査では見つけにくいこと。それも、正確な患者数が定まらない一因です。稀な病気だからこそ、正しい情報にたどり着きにくいという事情があります。

部分欠失重複の検査
ヒロクリニックでは、委託する東京衛生検査所で、部分欠失・重複疾患も検査ができるようになったことに伴い、妊娠が判明した早期段階から全染色体の部...

4p欠失症候群が発症する原因|遺伝ではなく偶発的な欠失がほとんど

原因は4番染色体短腕(4p16.3領域)の遺伝子欠失です。内訳は、約75%が新規に生じる欠失、約12%がそのほかの構造異常、約13%が親の均衡型相互転座に由来する不均衡型転座とされています。いずれの場合も、妊娠中の生活習慣が原因になることはありません。

ヒトの細胞には23対46本の染色体があり、1〜22番の常染色体と性染色体で構成されています。4p欠失症候群は、この4番染色体短腕の一部が失われることで発症すると考えられています。

原因遺伝子の一つとされるWHSC1(現在の遺伝子名はNSD2)はヒストンメチル化酵素で、症状の一部はヒストンメチル化の異常と関連するとされています。

私は診療の中で、「妊娠中の自分の何かがいけなかったのでは」と自分を責めてしまうご家族に、何度も出会ってきました。しかし均衡型転座を持つご両親の場合を除き、生活習慣が原因になることはありません。次のお子さんを考える際は、ご両親の染色体検査で状況を確認できます。気になる場合は遺伝カウンセリングで専門家に相談してください。

4p欠失症候群が発症する原因

4p欠失症候群の主な症状|特徴的顔貌・成長障害・難治性てんかんなど

症状は欠失する染色体の範囲によって個人差があり、特徴的な顔貌、成長障害、精神運動発達の遅れはほぼすべての患者にみられます。そのほか、てんかんや骨格異常、心疾患を伴うこともあります。

特徴的顔貌

もっとも特徴的な症状が、独特な顔立ちです。突出した眉間、高く弓状の眉毛、広い鼻梁、離れた目、下がった口角、上まぶたの垂れ下がりなどがみられ、「ギリシャ兵士のヘルメット様」と称されることもあります。出生時から小児期にかけて目立ちますが、思春期には次第に目立たなくなる傾向があります。

成長障害

子宮内にいる段階から成長障害がみられ、出生後も継続します。この症状はほぼ全ての患者に共通してみられます。

てんかん・骨格異常・そのほかの合併症

難病情報センターによると、けいれん(てんかん)は90〜100%にみられます。骨格異常は60〜70%、先天性心疾患は約50%です。聴覚障害は40%以上、脳構造の異常は33%程度にみられるとされています。摂食障害や消化器系・泌尿器系の異常、睡眠障害を伴うこともあります。

症状出現割合の目安
特徴的顔貌・成長障害・発達の遅れほぼ全例
けいれん(てんかん)90〜100%
骨格異常60〜70%
先天性心疾患約50%
聴覚障害40%以上
脳構造の異常約33%
4p欠失症候群でみられる主な症状と出現割合の目安(難病情報センターの情報をもとに作成)
主な合併症の出現割合(目安) けいれん 90〜100% 骨格異常 60〜70% 先天性心疾患 約50% 聴覚障害 40%以上 脳構造の異常 約33%
4p欠失症候群の主な合併症と出現割合のイメージ(難病情報センターの情報をもとに作成)
1p36欠失症候群とは【医師監修】
1p36欠失症候群とは原因となる遺伝子異常が十分に特定されていない疾患です。治療法は未だ確立されておらず対症療法にとどまります。また、NIP...

診断の流れ|症状の確認と染色体検査による確定

診断は臨床症状の確認に加え、染色体検査で4番染色体短腕の欠失を確認し、確定します。症状だけで確定することは難しく、専門的な検査が欠かせません。

出生後は、G分染法による染色体検査や、より詳細な範囲を調べるFISH法・染色体マイクロアレイ検査(アレイCGH)で欠失範囲を特定します。てんかんの評価には脳波検査、心疾患の確認には心エコー検査が行われることもあります。

出生前であれば、羊水検査絨毛検査による染色体検査で欠失がわかることもあります。近年はNIPT(新型出生前診断)を用いた微小欠失検査も選択肢の一つです。

4p欠失症候群の治療法|対症療法と早期療育の組み合わせ

4p欠失症候群を根本的に治す治療法は確立されていませんが、症状に応じた対症療法と早期の療育を組み合わせることで、生活の質を支えられます。複数の診療科が連携して対応することが基本です。

  • てんかんへの対応: 抗けいれん薬(バルプロ酸など)の投与を、担当医の判断のもと単剤または多剤で行います。
  • 摂食障害への対応: スキルに着目した摂食訓練や、必要に応じた経管栄養を行います。
  • 骨格異常への対応: 早期からの理学療法や、必要に応じた外科的治療を行います。
  • 発達支援: 運動発達・社会性・言語・認知の各要素を伸ばす、個別のリハビリテーションプログラムを行います。
  • 合併症の管理: 先天性心疾患や聴覚障害などは、それぞれの専門科で定期的な診察を受けます。

症状や合併症の内容によって、必要な治療や生活上の制限は一人ひとり異なります。抗てんかん薬の調整や、運動・食事の制限がかかることもあるため、4p欠失症候群に精通する担当医のもとで、個別の治療方針を確認してください。

4p欠失症候群の治療法

発達障害を伴うケースでは、明確な診断基準がまだ定まっていない部分もあります。医療機関での定期的な療育に加え、通園施設の利用や特性に応じた薬物治療なども選択肢に含めながら、本人と家族に合った支援を探していくことになります。

妊娠中のリスク管理に
NIPTで安心を

ご予約はこちら

 

NIPT(新型出生前診断)でわかるのか|ヒロクリニックNIPTでの位置づけ

4p16.3欠失症候群(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)は、ヒロクリニックNIPTの基本的な微小欠失・重複疾患検査(23種)の対象疾患に含まれています。13・18・21トリソミーなど染色体の数の異常を調べる基本検査に加え、この23種の検査で4p欠失症候群のスクリーニングが可能です。

従来の母体血清マーカーなどの出生前検査は13・18・21トリソミーが中心で、染色体異常全体のうち2/3程度をカバーするものでした。NIPT(新型出生前診断)は、母体から採血した血液中の胎児DNA断片を分析する検査です。

ヒロクリニックNIPTの微小欠失・重複疾患検査(23種)を用いれば、4p欠失症候群を含む対象疾患のスクリーニングができます。

ただしNIPTはあくまで非確定的なスクリーニング検査です。陽性(疑いあり)と出ても、それだけでは診断は確定しません。確定診断には、羊水検査(FISH法・マイクロアレイ法)などの確定的検査が必要です。

微小欠失検査の感度・特異度は、13・18・21トリソミーの基本検査ほど確立されていない点にも注意が必要です。

私は診療の中で、微小欠失検査の結果を基本トリソミー検査と同じ感覚で受け止めてしまうご夫婦を数多くみてきました。

実際にSNSでも、双子を妊娠中の方が「NIPT陰性だった。重複や微小欠失もなし」と結果への安心をつづっています。Y染色体の有無から性別がわかったことも報告しています(@okupanxc4o)。微小欠失検査は基本トリソミー検査ほど感度・特異度が確立していないため、結果の意味は担当医と一緒に確認してください。

妊娠中に4p欠失症候群の可能性を指摘されたら

検査で4p欠失症候群の可能性を指摘された場合は、まず確定検査で範囲を確認したうえで、遺伝カウンセリングを受けながら今後を考えることが基本の流れです。一人で抱え込まず、専門家に相談してください。

私は「迷う時間そのものが悪いわけではありません」と、検査を受けるかどうかで悩む方にお伝えしています。

出生前診断を14週まで迷い続けたという方も「悩んで悩んで14週の時受けたけど、受けて良かったって本当に思う」と振り返っています(@tokko1638)。費用面や結果への不安を抱えながらも、受けてよかったと感じる方は少なくありません。

私が診療の中で感じるのは、情報が少ない病気だからこそ、家族が孤立しないことが何より大切だということです。同じ経験をした家族とつながることや、公的な相談窓口を早めに知っておくことが、長い療育生活を支える力になります。

難病や希少な疾患の情報を調べたいときは、難病情報センター(指定難病198)が窓口になります。

発達支援については国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センターが参考になります。医療費助成については小児慢性特定疾病情報センターで最新情報を確認できます。

妊娠初期のストレスは胎児に伝わる?【医師監修】
妊娠をすると今までと違う肌質になったり、体質になったりして、自分の体の変化に驚くことがあります。こうした変化が起きた時に気持ちが不安定になる...
13トリソミー(パトウ症候群)とは?【医師監修】
13トリソミーはパトウ症候群ともいい、5,000人〜12,000人に1人の割合で生まれる可能性のある先天的な染色体異常症です。...

まとめ

4p欠失症候群(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)は、4番染色体短腕の欠失によって起こる指定難病198です。特徴的な顔貌や成長障害、難治性てんかんなど複数の症状を伴いますが、約8割前後は突然変異による孤発例で、遺伝を心配しすぎる必要はありません。

通常の染色体検査では見つけにくく、長らく見過ごされてきた病気。ヒロクリニックNIPTの微小欠失・重複疾患検査(23種)には4p欠失症候群が対象疾患として含まれていますが、確定診断には羊水検査などの確定的検査が必要です。

症候群への理解を深め、必要な相談先を早めに知っておくことが、家族の安心につながります。気になることがあれば、一人で悩まず専門家に相談してください。

妊娠中のリスク管理に
NIPTで安心を

ご予約はこちら

 

よくある質問

Q. 4p欠失症候群はNIPTでわかりますか?

ヒロクリニックNIPTの基本的な微小欠失・重複疾患検査(23種)には、4p16.3欠失症候群(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)が対象疾患として含まれています。ただしNIPTは非確定的なスクリーニング検査のため、陽性(疑いあり)であってもそれだけでは確定しません。確定診断には羊水検査などの確定的検査が必要です。

Q. 親の妊娠中の生活が原因ですか?

いいえ、原因ではありません。約75%は新規に生じる偶発的な欠失(孤発例)で、生活習慣が発症に関わることはありません。まれにご両親のどちらかが均衡型相互転座を持っている場合がありますが、その場合も生活習慣とは関係ありません。気になる場合は遺伝カウンセリングで相談してください。

Q. 指定難病に認定されていますか?

はい。4p欠失症候群は告示番号198の指定難病に認定されており、小児慢性特定疾病の対象にもなっています。医療費助成の詳しい条件は、自治体の窓口や主治医に確認してください。

Q. てんかんはどのくらいの割合でみられますか?

難病情報センターによると、けいれん(てんかん)は患者の90〜100%にみられるとされています。多くの場合、抗けいれん薬による治療が行われます。

Q. 兄弟姉妹が生まれる場合、再発の可能性はありますか?

ご両親の染色体に異常がない孤発例であれば、再発の可能性は低いとされています。ご両親のどちらかが均衡型転座を持っている場合は、一定の確率で子どもに影響することがあります。次のお子さんを考える際は、ご両親の染色体検査と遺伝カウンセリングを利用してください。

Q. 診断後、どこに相談すればよいですか?

難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センターで公的な支援制度を確認できます。国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センターでは、発達支援に関する相談先がまとめられています。医療機関の遺伝カウンセリングも活用してください。

著者・監修

岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。検査は国内の検査機関「東京衛生検査所」で実施し、ヒロクリニックNIPTはこれまでに75,000件を超える検査実績、利用者満足度98.8%という記録を積み重ねています。エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報発信を行っています。

4番染色体短腕に位置する遺伝子群が失われることで引き起こされる疾患「4p欠失症候群」(ウォルフ・ヒルシュホーン症候群)。国の指定難病に認められており、顔貌上の特徴や成長障害、発達遅延を呈する症候群です。本記事では、4p欠失症候群に関する特徴をはじめ、原因や症状、治療法について解説します。

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

医師監修 監修日:2020年7月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

関連記事

  1. NEW 親子が手をつなぎ支え合うイメージのイラスト
  2. NEW 心臓とDNA・染色体を柔らかく描いたイラスト
  3. NEW 超音波検査と赤ちゃんのイメージ
  4. NEW 家族が寄り添う温かいイメージ
  5. NEW 多様な子どもたちが笑顔で過ごすイメージ
  6. NEW