ダウン症(21トリソミー)とは?原因や特徴・検査方法を解説

ダウン症(21トリソミー)

ダウン症(21トリソミー)とは?原因や特徴、遺伝の可能性、高齢出産との関係、症状、支援制度などを詳しく解説。妊娠中の不安に寄り添う情報を提供します。

ダウン症の検査
気になる費用はこちら

ダウン症の検査
気になる費用はこちら

妊娠中、お腹の赤ちゃんの健康を願うと同時に、さまざまな不安を感じるのは自然なことです。 とくにダウン症については、多くの情報に触れる中で、正確な知識を得ておきたいと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。 ダウン症は、21番目の染色体が1本多いことで起こる生まれつきの状態で、その特徴や成長のペースには個人差があります。 ​ 本記事では、ダウン症の基本的な知識から原因や種類、遺伝の可能性と高齢出産との関係、そして出生前診断に至るまで解説します。 これからの時間をより安心して過ごすために、ぜひダウン症への理解を深めてください。

胎児の性別は10週目でわかる

ダウン症患者の健康と生活実態【医師監修】
現在、国内においてダウン症患者数は約8万人といわれています。小児科医療や合併症などの術後管理の向上にともない平均寿命は約60歳とされ、今後は...

ダウン症候群(21トリソミー)とは

ダウン症候群は、生まれつきの体質の1つです。
これは、通常2本1組である21番目の染色体が、何らかの原因で3本になることで起こる染色体異常症です。
「21トリソミー」とも呼ばれ、19世紀にイギリスの医師ジョン・ラングドン・ダウンによって初めて報告されたことからその名が付きました。
ダウン症のある方は、ゆっくりとした発達や特有の身体的特徴、さまざまな合併症を持つことがありますが、その程度には個人差が大きいです。

ここでは、以下4つを解説します。

それぞれ見ていきましょう。

原因

└既存見出し「<h2>ダウン症候群(21トリソミー)の障害について」を統合

ダウン症候群の根本的な原因は、体の細胞に含まれる21番染色体が通常より1本多いことによるものです。


私たちの体は、父親と母親から23本ずつ、合計46本の染色体を受け継いでできています。
しかし、卵子や精子が作られる過程で「染色体不分離」という現象が起こると、21番染色体が1本多い、計47本の染色体を持つことがあります。

この余分な染色体によって、遺伝子の働きに変化が生じ、心臓の疾患や発達の遅れといったさまざまな症状が現れるからです。


21番染色体は他の染色体に比べて小さく、含まれる遺伝子情報も少ないため、他の多くの染色体トリソミーと比べて出生に至るケースが多いとされています。
根本的な治療法はまだ確立されていませんが、療育と呼ばれる支援によって、その子が持つ能力を最大限に伸ばすアプローチが取られています。

発症率

ダウン症候群は、約700人に1人の割合で生まれるとされており、決して珍しいものではありません。
実際、受精卵の段階ではこれよりも高い確率で発生していますが、多くは自然流産となり、出産まで至らないケースも含まれます。


この発症率は母親の出産年齢と関連があることが分かっていますが、父親の年齢も無関係ではないという指摘もあります。
​​

ダウン症候群と母親の出産年齢

母親の出産年齢が上がるにつれて、ダウン症候群の子どもが生まれる確率は高くなることが知られています。
これは、年齢と共に卵子も老化し、細胞分裂の際に染色体が正常に分離しない「染色体不分離」が起こりやすくなるためです。


たとえば、20歳では約1,667人に1人の確率ですが、35歳では約385人に1人、40歳になると約106人に1人まで上昇します。
ただし、これはあくまで統計上の確率であり、若い年齢での出産でもダウン症の子どもが生まれる可能性はあります。
また、出産経験の有無は、この確率に影響しません。

ダウン症の種類

ダウン症候群は、染色体の成り立ちによっておもに3つのタイプに分けられます。
もっとも多いのが、全体の約95%を占める「標準型」です。
そのほかに、染色体の一部が他の染色体に結合する「転座型」や、正常な細胞と染色体異常のある細胞が混在する「モザイク型」があります。

ここでは、これら3つの種類について、それぞれの特徴を解説します。

各種の違いを理解することで、ダウン症候群の多様性について分かります。

標準型

ダウン症候群の中でもっとも多く、全体の約95%を占めるのが標準型です。
これは、卵子か精子が作られる際の減数分裂という過程で、21番染色体がうまく分離できない「染色体不分離」が原因で起こります。
その結果、受精卵の段階で21番染色体が3本になります。

標準型は、両親の染色体に異常がなくても偶然に発生するもので、遺伝が原因ではありません。
おもに、母親の出産年齢が高いほど発生頻度が上がるとされていますが、父親由来の場合もあります。
ダウン症候群のほとんどがこのタイプにあたるため、一般的に「ダウン症」という場合、この標準型を指していることが多いです。

転座型

転座型は、ダウン症候群全体の約3〜4%を占めるタイプです。
このタイプでは、21番染色体の一部がちぎれて、他の染色体(多くは14番染色体)に付着することで発生します。
そのため、染色体の総数は46本のままですが、21番染色体の遺伝情報が過剰な状態になります。

転座型は、親から子へ遺伝する可能性があるのが特徴です。
親自身が症状のない「均衡型転座保因者」である場合、子どもが転座型ダウン症候群になる確率が高まります。
このタイプは母親の年齢とは関係なく起こるため、若い年齢の親から生まれることもあります。
親族にダウン症の方がいる場合は、遺伝カウンセリングを受けることも選択肢の1つです。

モザイク型

ダウン症赤ちゃん

ダウン症候群の中ではもっともまれで、全体の約1〜2%に見られます。
これは、受精卵が細胞分裂を繰り返す過程で染色体不分離が起こり、体内に21番染色体が3本ある細胞と、2本である正常な細胞が混在している状態です。
モザイクのように入り混じっていることから、この名前が付けられました。

正常な細胞の割合が多いほど、ダウン症候群としての身体的特徴や発達への影響が軽くなる傾向があります。
しかし、症状の程度は個人差が大きく、外見だけではモザイク型かどうかを判断することは困難です。
診断には染色体検査が必要です。

ダウン症候群(21トリソミー)は染色体の数の異常

ダウン症候群は、染色体の「数的異常」によって引き起こされる代表的な疾患です。
私たちの体の設計図である染色体は、通常46本1組で構成されていますが、この数に過不足が生じると、体の発達や機能にさまざまな影響が現れます。
数の問題だけでなく、染色体の一部の形が変わる「構造異常」も、さまざまな疾患の原因となるものです。

ここでは、これら染色体異常の種類について解説します。

  • 数的異常
  • 構造異常

詳しく見ていきましょう。

数的異常(染色体の数の異常)

染色体の数的異常は、本来2本1組であるはずの常染色体や性染色体の数が、正常とは異なる状態を指します。
もっともよく知られているのが、染色体が1本増えて3本になる「トリソミー」です。

ダウン症候群(21トリソミー)がこれにあたります。
ほかにも、18番染色体が3本になる18トリソミー(エドワーズ症候群)や、13番染色体が3本になる13トリソミー(パタウ症候群)などがあります。

反対に、染色体が1本減って1本だけになる状態が「モノソミー」と呼ばれるものです。
すべての染色体が3本ずつ(合計69本)になる「三倍体」というケースもありますが、その多くは流産に至ります。

構造異常(染色体の構造の異常)

染色体の構造異常は、染色体の数に変化はないものの、その形や構成の一部が変化している状態です。
たとえば、染色体の一部がちぎれて別の染色体に付着する「相互転座」や、染色体の一部が逆さまになる「逆位」などがあります。

ほかにも、以下のさまざまな種類が存在します。

  • 染色体の一部が失われる「部分欠失
  • 反対に一部が重複する「重複」
  • 染色体の端同士が結合して輪のようになる「環状染色体」


これらの構造異常は、遺伝子の働きに影響を与え、さまざまな症状を引き起こす原因となります。
ダウン症候群の中でも「転座型」は、この構造異常が関連しています。

ダウン症候群(21トリソミー)が持つ身体的特徴

ダウン症候群のある人には、いくつかの共通した身体的特徴が見られることがあります。
ただし、これらの特徴の現れ方には個人差が大きく、すべてが当てはまるわけではありません。
代表的な特徴として、ややつり上がった目や低い鼻、平坦な顔立ちなどがあげられます。

全体的に筋肉の緊張が低い(フロッピーインファント)ため、体が柔らかく感じられることもあります。
そのほか、手のひらに「猿線(単一手掌線)」と呼ばれる一直線のしわが見られたり、手足が比較的小さめであったりすることも特徴の1つです。
これらの特徴は、成長とともに少しずつ顕著になることもあります。

ダウン症と発達障害の関連性

ダウン症候群は、染色体異常が原因で起こる生まれつきの体質であり、発達障害者支援法においては発達障害の一種として分類されています。
発達障害とは、脳機能の発達が通常と異なることで、学習やコミュニケーション、行動面に特徴が現れる状態の総称です。
ダウン症候群のある人の多くは、知的発達の遅れを伴います。


人によっては、注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)といった、ほかの発達障害をあわせ持つことも。
ただし、発達の特性や程度は一人ひとり異なり、早期からの療育や個々に合わせた支援を通じて、その人らしく成長できます。

ダウン症と知的障害の関連性

ダウン症候群のある人のほとんどに、知的障害(知的発達症)が見られます。
知的障害とは、物事を理解したり考えたり、判断したりする知的機能の発達に遅れがあり、日常生活や社会生活への適応が難しい状態を指します。
ダウン症候群の場合、その程度は軽度から中等度であることが多いですが、個人差が大きいです。


たとえば、ゆっくりとしたペースで言葉を覚えたり、抽象的な概念の理解が苦手だったりすることがあります。
しかし、適切な教育や支援を受けることで、多くの人が読み書きや計算を学び、社会の一員として自立した生活を送ることが可能です。

ダウン症候群(21トリソミー)を持つ子どもの成長

ダウン症候群のある子どもの成長は、一般的な子どもと比べてゆっくりとしたペースで進むことが特徴です。
たとえば、首がすわる、お座りする、歩き始めるといった運動発達の段階を一つひとつ時間をかけてクリアしていきます。
また、言葉の発達や知的な発達にも、その子なりのペースがあります。

ここでは、ダウン症候群のある子どもの成長について、以下7つの側面から見ていきましょう。

  • 言語発達
  • 知能
  • 精神
  • 視覚と聴覚の認知処理
  • 心疾患
  • 消化器関係
  • その他の合併症・疾患

特徴を理解し、一人ひとりの成長に合わせたサポートを行うことが大切です。

言語発達

ダウン症候群のある子どもの多くは、言葉の発達がゆっくり進む傾向にあります。
筋肉の緊張が低いことや、口や舌の動きをコントロールすることが難しいことから、はっきりとした発音が苦手な場合があります。
言葉を理解する力(受容言語)に比べて、自分の思いを言葉で表現する力(表出言語)の発達が緩やかであることも特徴です。


しかし、言葉の理解は着実に進んでいるため、身振りや手話、絵カードなどを活用することで、コミュニケーションの幅を広げられます。
根気強く関わることで、多くの子が自分の意思を伝えられるようになります。

知能

ダウン症候群のある人の知能(IQ)は、個人差が大きいものの、平均すると50前後(軽度〜中等度の知的障害の範囲)であるとされています。
これは、一般的な子どものIQを100とした場合の数値です。
そのため、新しいことを学んだり、複雑な問題を解決したりすることに時間がかかることがあります。


しかし、これはあくまで1つの目安に過ぎません。
一人ひとりの得意なことや好きなことを見つけ、それを伸ばしていくような教育や支援を行うことで、多くの知識やスキルを身につけることが可能です。
社会生活に必要なルールを学び、仕事に就く人も少なくありません。

精神

ダウン症候群のある人は、一般的に「人懐っこく、陽気で頑固」といった性格のイメージを持たれることがありますが、性格は健常児と同じように一人ひとり異なります。
育った環境や経験によって、その人の個性が形作られていくからです。


ただし、ほかの人と比べてうつ病や不安障害などの精神的な問題を抱えやすい傾向があることも報告されています。
とくに、思春期や青年期には、自分の障害について悩んだり、周囲との違いを感じたりすることで、ストレスを感じやすくなることも。
本人の気持ちに寄り添い、必要であれば専門家のサポートを受けることが大切です。

視覚と聴覚の認知処理

ダウン症候群のある人は、耳で聞く情報よりも目で見る情報を理解する方が得意な傾向があります。
これを「視覚優位」といい、言葉だけで説明されるよりも、絵や写真・実物を見せながら説明する方が、内容を理解しやすくなります。


たとえば、一日のスケジュールを絵カードで示したり、作業の手順を写真で伝えたりするといった工夫が有効です。
難聴や中耳炎を合併しやすく、音が聞こえにくい場合もあるため、聴覚の定期的なチェックも重要です。
聞こえの問題が学習やコミュニケーションの妨げにならないよう、配慮が必要となります。

心疾患

ダウン症候群のある子どもの約半数に、生まれつき心臓に何らかの疾患(先天性心疾患)が見られます。
もっとも多いのは、心臓の部屋を隔てる壁に穴が開いている「心室中隔欠損」や「心内膜床欠損」といった病気です。


心疾患は生まれた直後の検査で発見されることが多く、自然に穴が閉じたり、薬で治療できたりする場合もありますが、手術を要するケースもあります。
医療の進歩により、現在では多くの心疾患が手術で治療可能となっており、治療後は元気に過ごせる子どもがほとんどです。

消化器関係

ダウン症候群のある子どもには、消化器系の合併症が見られることもあります。
代表的なものとして、十二指腸や小腸が生まれつき塞がっている「十二指腸閉鎖」や「鎖肛」などがあり、生後すぐに手術が必要となる場合があります。

筋肉の緊張が低いことから、食べ物を飲み込む力や、消化管の動きが弱い傾向です。
そのため、食事に時間がかかったり、便秘になりやすかったりすることがあります。
一人ひとりの状態に合わせて、食事の形態を工夫したり、排便のコントロールを行ったりするなどのサポートが必要です。

その他の合併症・疾患

ダウン症候群のある人は、心疾患や消化器疾患のほかにも、さまざまな合併症のリスクがあることが知られています。


たとえば、甲状腺機能の低下や亢進、糖尿病といった内分泌系の病気にかかりやすい傾向です。
白内障や斜視、難聴などの感覚器の問題や、関節が外れやすい(脱臼)、けいれん発作なども見られることがあります。
さらに成人期以降は、加齢に伴いアルツハイマー型認知症を発症するリスクが高いことも分かっています。


これらの合併症を早期に発見し、適切な治療につなげるためにも、乳幼児期から成人期に至るまで、定期的な健康管理が肝心です。

ダウン症の社会進出

かつてダウン症候群のある人の多くは、施設や家庭内で生活を送っていました。
しかし現在では、教育制度や社会の理解が進んだことにより、多くの人が学校や職場で活躍しています。
特別支援学校だけでなく、地域の小中学校の通常学級や特別支援学級で学ぶ子どもも増えています。


企業への就職や、福祉的就労の場で自分の得意なことを生かして働く成人も少なくありません。
近年では、モデルや俳優、アーティストとして世界的に活躍するダウン症候群のある人も登場し、その可能性の豊かさが社会に広く知られるようになっています。

公的支援制度

ダウン症候群のある人やその家族は、さまざまな公的支援制度を利用できます。
これらの制度は、医療費の助成や発達を支援する「療育」、日常生活のサポートなど、多岐にわたるものです。


具体的には、身体障害者手帳や療育手帳(愛の手帳など地域により名称が異なる)を取得することで、さまざまな福祉サービスを受けられます。
障害児通所支援や相談支援事業などを利用して、専門家からのアドバイスやサポートを受けることも可能です。
利用できる制度は、住んでいる自治体や個人の状況によって異なるため、まずは市町村の福祉担当窓口や保健センターに相談しましょう。

参考資料:厚生労働省「障害者手帳について」

ダウン症候群(21トリソミー)の寿命

かつてダウン症候群のある人の寿命は短いと考えられていましたが、医療の進歩、とくに先天性心疾患の手術の成功率向上により、その平均寿命は大きく延びました。
現在では、ダウン症候群のある人の平均寿命は約60歳とされています。


しかし、心疾患や白血病、呼吸器系の感染症などの合併症のリスクが依然として高く、これらがおもな死因となることも。
また、成人期以降はアルツハイマー病の発症率が高いことも知られています。
健康で長い人生を送るためには、乳幼児期から生涯にわたる定期的な健康管理と、合併症の早期発見・早期治療が重要です。

参考資料:日本小児科学会「Down 症候群」

ダウン症候群(21トリソミー)が遺伝する確率は?

ダウン症 子供

ダウン症候群が遺伝するのではないかと心配される方は少なくありません。
しかし、ダウン症候群のほとんどは遺伝ではなく、卵子や精子が作られる過程で偶然に起こるものです。
そのため、親や親族にダウン症候群の人がいても、それが直接遺伝する可能性は極めて低いとされています。

ここでは、さまざまなケースにおける遺伝の確率について解説します。

これらの情報を正しく理解しましょう。

両親がダウン症候群(21トリソミー)だった場合

ダウン症候群の人が子どもを持つことは可能ですが、まれなケースです。
もし、母親か父親のどちらかがダウン症候群(標準型)であった場合、その子どもがダウン症候群となる確率は理論上50%となります。
これは、ダウン症候群の親が作る生殖細胞(卵子または精子)の半分に、21番染色体が2本含まれるためです。


しかし、実際には流産に至るケースも多く、無事に出産まで至る確率はさらに低くなると考えられています。
ダウン症候群の人が妊娠・出産を考える場合は、遺伝カウンセリングなど専門家のサポートを受けることが重要です。

親族がダウン症候群(21トリソミー)だった場合

親戚にダウン症候群の人がいる場合、自分の子どもも遺伝するのではないかと心配になるかもしれません。
しかし、ダウン症候群の大部分を占める「標準型」や「モザイク型」は、個人の生殖細胞が作られる過程で偶然起こる突然変異が原因です。
そのため、血縁者にダウン症候群の人がいても、それが原因で自分の子どもがダウン症候群になる確率は、一般の確率と変わりません。
遺伝を心配する必要はほとんどないといえるでしょう。


ただし、親族のダウン症候群がまれな「転座型」であり、その原因となる染色体構造を親が受け継いでいる場合は、話が異なります。

転座型遺伝の場合

ダウン症候群のうち、約3〜4%を占める「転座型」の一部は、親からの遺伝が原因となることがあります。
これは、両親のどちらかが症状は現れないものの、21番染色体が他の染色体に付着した「均衡型転座」という染色体構造を持っている場合です。
この場合、母親の年齢に関わらず、子どもが転座型ダウン症候群になる確率が一般より高くなります。


もし、近親者にダウン症候群の人が複数いる場合や、若くしてダウン症候群の子どもを授かった場合などは、転座型遺伝の可能性も考えられます。

気になる場合は、遺伝カウンセリングを検討しましょう。

>>関連記事「ヒロクリニック|遺伝カウンセリングは医師がする。」はこちら

いとこがダウン症候群(21トリソミー)だった場合

いとこにダウン症候群の人がいる場合でも、遺伝の心配はほとんどありません。
ダウン症候群のほとんどは、遺伝とは関係のない「標準型」です。
そのため、いとこがダウン症候群であっても、それが自身の妊娠・出産に影響を与えることはまず考えられません。


いとこのダウン症候群が遺伝性の「転座型」である可能性もゼロではありませんが、その確率は低いです。
不安な場合は、遺伝カウンセリングで相談できますが、基本的には過度に心配する必要はないでしょう。

兄弟がダウン症候群(21トリソミー)だった場合

第一子がダウン症候群(標準型)であった場合、次の子どももダウン症候群となる確率は、同じ年齢の女性の一般的な確率よりもわずかに高くなると報告されています。
これは、両親のどちらかの生殖細胞に、21番染色体の不分離が起こりやすい体質(生殖細胞モザイク)が隠れている可能性がごくまれにあるためです。


しかし、それでも確率は1%程度とされており、兄弟でダウン症候群となるケースはまれです。
もし第一子が「転座型」であった場合は、両親の染色体検査を行い、遺伝性のものであるかを確認することが推奨されます。

高齢出産におけるダウン症候群(21トリソミー)の確率

一般的に35歳以上の出産を「高齢出産」と呼び、ダウン症候群を含む染色体異常のある子どもが生まれる確率が高まることが知られています。
女性の卵子は胎児期に作られ、長い年月を経て排卵されます。

加齢とともに卵子も年を重ねるため、細胞分裂をコントロールする機能が低下し、染色体がうまく分かれない「不分離」が起きやすくなるからです。


男性も加齢により精子の染色体異常が増えるといわれていますが、ダウン症候群のリスク上昇は、おもに母親の加齢が影響すると考えられています。
ただし、これはあくまで統計的なリスクであり、ダウン症候群のある子どもは母親の年齢に関わらず、ある一定の確率で生まれるという事実も重要です。

ダウン症候群(21トリソミー)の検査方法

お腹の中の赤ちゃんがダウン症候群である可能性を調べるためには、いくつかの出生前診断があります。
これらの検査は、結果の確実性によって「非確定的検査(スクリーニング検査)」と「確定的検査」に大別されます。
どの検査を受けるかは、それぞれの特徴やリスクを理解したうえで、パートナーや医師と十分に話し合って決めることが大切です。

ここでは代表的な検査方法として、以下4つを解説します。

それぞれ見ていきましょう。

NIPT

NIPT(新型出生前診断)は、母親の血液を採取するだけで、胎児のダウン症候群などの染色体異常のリスクを調べられる非確定的検査です。
妊娠初期の早い段階から検査が可能で、流産などのリスクがほとんどないのが大きな特徴です。
血液中に含まれる胎児由来のDNA断片を分析することで、高い精度で染色体の数の異常を検出します。

ただし、あくまでも「可能性が高いか低いか」を調べるスクリーニング検査のため、陽性となった場合は、診断を確定するために羊水検査などの確定的検査が必要です。

羊水検査

ダウン症候群などの染色体異常を確定診断するための検査です。
妊娠15週以降に、母親のお腹に細い針を刺して羊水を採取し、その中に含まれる胎児の細胞から染色体を直接分析します。
これにより、染色体の数や構造の異常を正確に診断可能です。


診断精度は極めて高いですが、針を刺すことによる破水や流産のリスクが約0.1〜0.3%程度の割合で存在します。
そのため、NIPTなどの非確定的検査で陽性となった場合や、超音波検査で異常が疑われた場合などに、最終的な診断のために行われることが一般的です。

エコー検査

妊婦健診で定期的に行われる基本的な検査です。
超音波を使ってお腹の中の赤ちゃんの様子を画像で確認し、発育状態や心臓の動きなどを観察します。


このエコー検査で、ダウン症候群の可能性を示唆するいくつかの特徴(所見)が見られることがあります。

ただし、これらの所見は確定的なものではなく、あくまでも可能性の1つとして捉えなければなりません。

エコー検査に見られるダウン症の特徴

妊娠初期のエコー検査で、ダウン症候群の可能性を示唆する特徴としてよく知られているのが「NT(胎児後頸部浮腫)」です。
これは、赤ちゃんの首の後ろに見られるむくみのことで、この厚みが一定の基準を超えると、ダウン症候群などの染色体異常や心疾患のリスクが高まるとされています。


そのほかにも、鼻の骨(鼻骨)が短い、または確認できないことや、心臓の血流に逆流が見られることなども、可能性を示唆する所見としてあげられます。
ただし、これらの特徴は正常な赤ちゃんにも見られることがあり、これらだけでダウン症候群と診断できません。

出生後の検査

出生前に検査を受けなかった場合や、出生後にダウン症候群が疑われる特徴が見られた場合には、赤ちゃんの血液を採取して染色体検査を行います。
この検査は、染色体の数や構造を詳しく調べ、ダウン症候群であるかどうかを確定診断するものです。


診断が確定したあとは、心臓や消化器、目や耳など、合併症が起こりやすい部分の詳しい検査を定期的に行います。

必要な治療やサポートを早期に開始することが、赤ちゃんの健やかな成長にとって大切です。

ダウン症候群(21トリソミー)に関する最新研究

ダウン症候群の根本的な治療法はまだ確立されていませんが、世界中でさまざまな研究が進められています。

ここでは、とくに期待されている2つの最新研究について紹介します。

  • CRISPR‑Cas9による“トリソミー除去”
  • 創薬ターゲットとしての遺伝子制御

これらの研究は、将来のダウン症候群の治療に新たな可能性をもたらすものと期待されています。

CRISPR‑Cas9による“トリソミー除去”

CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)は、「ゲノム編集」と呼ばれる技術の1つで、遺伝子を狙って改変できます。
三重大学の研究チームは、この技術を応用し、ダウン症候群の患者から作製したiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、過剰な21番染色体を1本だけ除去することに成功しました。


この研究はまだ基礎段階ですが、将来的にはダウン症候群の根本的な治療につながる可能性を秘めた、画期的な成果として注目されています。

参考資料:三重大学「【ゲノム操作・解析技術開発ユニット】ダウン症候群の人の細胞から余分な21番染色体を除去///ゲノム編集技術CRISPR-Cas9を用いた革新的な手法の開発」

参考資料:論文「Trisomic rescue via allele-specific multiple chromosome cleavage using CRISPR-Cas9 in trisomy 21 cells」

妊娠15週のエコーでわかること ダウン症はわかるの? 【医師監修】
妊娠15週は一般的に安定期といわれ、つわりが治まり胎盤が安定して胎児の器官形成が終わる時期です。また、妊娠15週のエコー検査では赤ちゃんの姿...
出生前検査の羊水検査とは?まとめ【医師監修】
NIPT(新型出生前診断)は、遺伝子の量から染色体の数や全染色体領域部分欠失・重複疾患をみる検査ですが、羊水検査は染色体そのものを羊水からみ...

創薬ターゲットとしての遺伝子制御

ダウン症候群のさまざまな症状は、21番染色体上にある特定の遺伝子が過剰に働くことで引き起こされると考えられています。
そのため、これらの遺伝子の働きを薬で調整し、症状を緩和しようとする創薬研究が進められています。


たとえば、知的発達に関わる「DYRK1A」という遺伝子をターゲットにした薬剤の開発などがその一例です。
まだ研究段階のものがほとんどですが、将来的には、ダウン症候群のある人々の生活の質を向上させる治療薬が登場することが期待されています。

参考資料:厚生労働科学研究成果データベース「京都大学臨床研究ハイウェイを活用した難治疾患・がん等の新規治療法の開発」

まとめ

ダウン症 赤ちゃん

ダウン症候群について理解を深めると、妊娠中の不安が少し和らぐかもしれません。
もし、お腹の赤ちゃんの健康状態をより詳しく知りたいとお考えであれば、NIPT(新型出生前診断)も選択肢の1つです。
ヒロクリニックNIPTでは、ダウン症(21番染色体)単体の検査から、さまざまなプランをご用意しています。
国内の検査機関との連携により、迅速に結果をお届けできるだけでなく、陽性時の羊水検査費用補助など、アフターフォローも充実しています。
ご不安な点は専門医までお気軽にご相談ください。

ヒロクリニックNIPTを選ぶ理由
ヒロクリニックNIPTが多数の人に選ばれているの理由は、安心安全の国内検査、迅速な結果確認、遺伝子専門の医師によるカウンセリング、知的障害・...

Q&A

  • Q
    ダウン症とは何ですか?
    ダウン症候群(21トリソミー)は、21番目の染色体が通常より1本多いことによって引き起こされる遺伝子疾患です。これにより知的障害や身体的な発達の遅れが見られることが多いです。ダウン症の発症率は700人に1人とされています。
  • Q
    ダウン症の特徴は何ですか?
    ダウン症の特徴には、顔の平坦な輪郭、小さい耳、鼻が低い、吊り上がった目、筋肉の低緊張などがあります。また、手のひらに一本の横線が見られることが多く、手や指が短い傾向があります。
  • Q
    高齢出産とダウン症のリスクは関係がありますか?
    母体の年齢が高くなるとダウン症のリスクは増加します。例えば、35歳の女性では385人に1人の確率でダウン症の子供が生まれるとされています。このリスクは年齢とともに上昇します。
  • Q
    ダウン症候群(21トリソミー)は遺伝しますか?
    ダウン症のほとんどは染色体の突然変異によるものであり、遺伝する可能性は非常に低いとされています。ただし、転座型という特殊なタイプのダウン症の場合、親が転座染色体の保因者である場合に限り遺伝する可能性があります。
  • Q
    ダウン症の赤ちゃんを妊娠している可能性がある場合、どのような検査を受けるべきですか?
    出生前診断として、超音波検査、NIPT(新型出生前診断)、クアトロテスト、羊水検査などがあります。NIPTや羊水検査は確定診断に近い結果が得られるため、必要に応じて医師と相談してください。
  • Q
    ダウン症候群(21トリソミー)の子どもがもつ合併症のリスクは何ですか?
    ダウン症の子どもには心疾患、消化器疾患(十二指腸閉鎖など)、感覚器の問題(難聴、白内障、斜視など)や、甲状腺機能障害、白血病、肥満、アルツハイマー病などのリスクが高い傾向があります。
  • Q
    ダウン症の子どもの平均寿命はどのくらいですか?
    医療の進歩により、ダウン症の方の平均寿命は60歳前後まで延びています。ただし、合併症のリスクが高いため、定期的な健康管理が重要です。
  • Q
    ダウン症の赤ちゃんの特徴はいつからわかりますか?
    ダウン症の特徴は出生後に現れることが多いですが、出生前診断で可能性を予測することも可能です。エコー検査では、胎児の首の後ろの浮腫(NT)や鼻骨の形成異常などの特徴が確認される場合があります。
  • Q
    ダウン症の子どもの発達支援にはどのような方法がありますか?
    ダウン症の子どもには「療育」と呼ばれる支援が有効です。これは、医療と教育を並行して行うアプローチで、個々の能力を最大限に引き出し自立を支援します。また、専門の医療機関や教育機関と連携して支援計画を立てることが重要です。
  • Q
    ダウン症の子どもが社会進出することは可能ですか?
    はい、ダウン症の方の多くが支援を受けながら社会に参加しています。福祉団体や企業、親の会のサポートを活用し、適切な教育やトレーニングを行うことで、多くの方が仕事や趣味で活躍しています。
  • Q
    ダウン症の子どもを育てる際、親が注意すべき点は何ですか?
    ダウン症の子どもは、体力や免疫力が低い場合があるため、感染症対策や健康管理が重要です。また、発達に合わせた支援や療育を早期に開始し、個々の能力を引き出すことも大切です。
  • Q
    ダウン症の合併症は全ての子どもに現れますか?
    合併症の発生率は個人差があります。例えば、心疾患は約50%の子どもに見られるとされていますが、すべてのダウン症児に現れるわけではありません。医師の診察を定期的に受けることで早期発見が可能です。
  • Q
    ダウン症の子どもの運動能力はどのようにサポートできますか?
    筋肉の低緊張や運動発達の遅れが見られることが多いため、理学療法や作業療法などを取り入れることが効果的です。楽しく参加できる運動プログラムを通じて、体力や運動能力を少しずつ伸ばしましょう。
  • Q
    ダウン症は出生前に完全に診断することは可能ですか?
    出生前診断(NIPTや羊水検査)により高い精度で診断が可能ですが、確定的な診断には羊水検査や絨毛検査などが必要です。これらは医師とよく相談して進めることが重要です。
  • Q
    ダウン症の子どもに特別な食事制限は必要ですか?
    一般的に特別な食事制限は必要ありませんが、肥満リスクが高いため、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。また、消化器の問題がある場合は、医師や栄養士の指導を受けると良いでしょう。
  • Q
    ダウン症児の早期療育はどのような内容ですか?
    早期療育には、言語発達を促すトレーニング、身体的な発達を支援する運動療法、社会性を育む遊びや学習などが含まれます。専門機関や自治体の支援サービスを利用することがおすすめです。
  • Q
    ダウン症児の保育園や学校選びで注意すべき点は何ですか?
    個々の発達状況やニーズに合った環境を選ぶことが重要です。障害児保育を行う保育園や特別支援学校、またはインクルーシブ教育を実施している施設などが候補になります。見学や相談を通じて最適な選択をしてください。
  • Q
    ダウン症の人でもスポーツや芸術で活躍することはできますか?
    はい、多くのダウン症の方がスポーツや芸術活動で才能を発揮しています。特に視覚的認知が得意な方が多いため、絵画や写真、舞台芸術などの分野で活躍する例が増えています。
  • Q
    ダウン症の赤ちゃんに兄弟がいる場合、どのような対応が必要ですか?
    兄弟にもダウン症について理解してもらうために、年齢に応じた説明を行い、サポートを求めることが大切です。また、兄弟が孤立感を感じないよう、親が十分な愛情と時間を分け与えることも重要です。
  • Q
    ダウン症の子どもの将来のために親ができる準備は何ですか?
    将来の生活を見据えた計画を立てることが大切です。障害者手帳の取得、福祉サービスの利用、経済的な準備、また成年後見制度などの法的支援を活用することで、子どもの自立や生活支援を充実させることができます。

ダウン症(21トリソミー)とは?原因や特徴、遺伝の可能性、高齢出産との関係、症状、支援制度などを詳しく解説。妊娠中の不安に寄り添う情報を提供します。

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

記事の監修者


伊藤 雅彦先生

岡 博史先生

【役職】

【資格】

【略歴】

【所属】

【SNS】

関連記事

  1. 医者
  2. 妊婦さん
  3. 手を優しく握ろう
  4. おててを握ろう
  5. ダウン症の確率が高い場合の選択肢
  6. 公園で遊ぶママと子供