SNP(スニップ)とは一塩基多型(いちえんきたけい)のことです。生命の設計図ともいわれるゲノムDNAの塩基配列の中で1つだけ異なる塩基に置き換わったことを意味しています。これによりヒトの姿形や体質といった個人差が生じるとされています。
SNP(一塩基多型)とは、ヒトの遺伝情報であるDNA配列の中で、たった1つの塩基が個人によって異なっている状態を指します。普段の生活では意識する機会が少ない言葉ですが、体質の違いや病気のかかりやすさ、さらにはNIPT(新型出生前診断)の検査方式にまで関わる、意外と身近な仕組みです。
この記事では、SNPの基本的な定義から、遺伝子・DNA・ゲノムとの関係、体質や病気との結びつき、そしてNIPTの一部の検査方式で実際にSNPがどう使われているかまでを順番に整理します。私自身、外来で「SNPとNIPTは何か関係があるのですか」と尋ねられることが少なくありません。専門用語が多い分野だからこそ、一つずつかみ砕いてお伝えします。
💡 この記事でわかること
SNP(一塩基多型)とは
SNP(スニップ)とは、Single Nucleotide Polymorphismの略称で、日本語では一塩基多型と呼びます。ヒトの遺伝情報であるゲノムDNAの塩基配列のうち、1か所だけ異なる塩基に置き換わっている状態のことです。
ヒトの塩基配列は約30億対あるといわれていますが、その配列は誰もが100%同じというわけではありません。東京大学医科学研究所が運営するBioBank Japanの解説によれば、個人間のゲノムは99.5%以上が同一とされる一方、残りのわずかな違いの多くがSNPによるものです。ゲノム全体には数百万か所以上のSNPが存在すると見積もられており、決して珍しい現象ではありません。
なお、SNPは集団の中で1%以上の頻度で見られる塩基の違いと定義されています。頻度が1%に満たない場合は「変異(ミューテーション)」として区別され、SNPとは分けて扱われます。個人差として扱うか、まれな変化として扱うかを分ける境界線です。
遺伝子・DNA・ゲノム・染色体とSNPの関係
SNPを理解するには、遺伝子・DNA・ゲノム・染色体という4つの言葉の役割を先に整理しておく必要があります。似たような場面で使われる言葉ですが、指しているものはそれぞれ異なります。
遺伝子・DNA・ゲノムはどう違うのか
遺伝子とは、皮膚を支えるコラーゲンや、体中に酸素を運ぶヘモグロビンなど、体を作るタンパク質の設計データにあたります。ヒトの遺伝子は約2万種類とされ、これらが集まったものがゲノムです。ゲノムはgene(遺伝子)とome(すべて)を組み合わせた言葉で、「その生物を作るために必要な遺伝子のすべて」を意味します。
DNAは、A(アデニン)・T(チミン)・G(グアニン)・C(シトシン)という4種類の塩基が、二重らせん状に連なった物質です。この塩基の並び方(塩基配列)こそが遺伝情報であり、DNAは遺伝子やゲノムを記録する設計図の実体といえるでしょう。
染色体とSNPが生じる場所
染色体は、ヒストンというタンパク質に糸状のDNAを巻き付けた構造体です。父親と母親から1本ずつ受け継いだものが対になり、ヒトの染色体は46本(23対)あります。このうち44本が常染色体、残る2本が性別を決める性染色体です。
SNPは、この染色体上のDNA配列のどこにでも起こり得ます。遺伝子の内部で起これば体質や病気のリスクに関わることがあり、遺伝子以外の領域で起これば、体への影響がほとんどないまま個人差として残ることも珍しくありません。違いが表れる場所によって、意味合いも様々です。
SNPが体質・病気のかかりやすさに与える影響(テーラーメイド医療)
SNPのわずかな違いは、姿かたちや性格だけでなく、花粉症やアルコールへの耐性、特定の病気へのかかりやすさにも関わっています。ただし、SNP単独で病気の有無が決まるケースは多くありません。
遺伝的な要因と環境要因が重なって初めてリスクが表に出てくることは、SNSでの体験談からもうかがえます。X(旧Twitter)で@marine0630さんは、父親を大腸がんで亡くした後に遺伝子検査を受け、遺伝性のがんではないと診断されたものの、姉妹4人で内視鏡検査を受けたところ、飲酒習慣のある人にポリープができていたと投稿していました。もともとの遺伝的な素養に飲酒という環境要因が重なると発がんリスクが上がるかもしれない、という実感は、SNP研究が示す「遺伝要因×環境要因」の考え方そのものです。
体質診断の分野でも、SNPを応用した検査は身近になりました。同じくXで@AEiKxYUrGs81050さんは、遺伝子検査を受けたことで「胃腸が弱いこと」「有酸素運動だけでは痩せにくい体質」など、これまでの体験と一致する結果が出たと振り返っていました。もちろんすべてを鵜呑みにする必要はありませんが、こうした気づきのきっかけになる点は、SNP解析の実用的な側面です。
医療の現場では、SNPの情報を薬の効き方や副作用の出やすさに応用する「テーラーメイド医療」の研究が進んでいます。個人の遺伝的な背景に合わせて薬の種類や量を調整する考え方で、2003年のヒトゲノム解読完了以降、着実に研究が積み重ねられてきました。病気は遺伝要因だけで決まるものではなく、生活習慣などの環境要因が複雑に絡み合って発症します。SNP解析の結果は「絶対的な運命」ではなく、体質を知るための手がかりの一つとして受け止めてください。
SNP型NIPTとは?母体と胎児のDNAを見分ける仕組み
SNP型NIPTとは、母体血液中のDNAと胎盤由来のDNAをSNPのパターンの違いから比較し、染色体数の変化を推定する検査方式です。NIPTにはいくつかの検査方式があり、SNP型はそのうちの一つに位置づけられます。
妊娠中の母体血液には、母体自身のDNAに加えて、胎盤由来のDNA断片(cfDNA)がわずかに含まれています。公益社団法人日本産科婦人科学会の技術資料によれば、SNP法は母体血漿中のcfDNAから21番・18番・13番・X・Y染色体を中心とする多数のSNP領域をPCR法で増幅し、次世代シーケンサーで解析することで、各SNPの量的な変化から染色体疾患を検出する方式です。母親と胎児(胎盤)でSNPの型がどれだけ異なるかを手がかりに、両者のDNAを区別します。
この方式は、双子妊娠が一卵性か二卵性かを判定できる点も特徴の一つとされています。NIPTの4つの主な検査方式の違いはNIPTの種類と精度を解説した記事で比較していますので、あわせてご確認ください。
母体血中の胎児由来DNAの割合は「フィータルフラクション」と呼ばれ、この割合が十分でないと判定不能になることもあります。NIPT全体の検査手順についてはNIPTの手順を解説した記事で詳しく紹介しています。
SNP型NIPTの限界と、確定診断までの流れ
SNP型を含め、どの検査方式のNIPTも非確定的なスクリーニング検査であり、陽性の場合は羊水検査などの確定検査が必要です。この点は検査方式によらず共通しています。
「精度が高い」は「確定診断」ではない
私が外来でお話をうかがう中でも、「SNP型の検査は精度が高いと聞いたので、確定診断のように受け止めていた」という声を耳にすることがあります。ですが、どのNIPTも陽性的中率(結果が陽性のときに実際に疾患がある確率)は対象疾患や母体の年齢によって変わるため、確定診断とは区別して考える必要があります。
日本医学会出生前検査認証制度等運営委員会の解説ページでも同様の説明があります。陽性の場合は病気がない可能性(偽陽性)もあるため、確認のための確定的検査が必要とされています。陰性であっても、確定するための羊水検査は通常行われません。厚生労働省の専門委員会がまとめた出生前検査に関する報告書でも、NIPTは非確定的な検査として位置づけられています。
陽性所見が出た場合の流れ
陽性所見が出た場合の一般的な流れは、次の通りです。まず遺伝カウンセリングで結果の意味を確認します。そのうえで、羊水検査による確定診断を受けるかどうかを、ご夫婦で相談しながら判断していくことになります。あわてて結論を出さず、専門家と一つずつ整理してください。
SNP解析・NIPTでわかること・わからないこと
SNP解析もNIPTも、遺伝情報の一部を映し出す有力な手がかりですが、万能の診断ツールではありません。あくまで一つの判断材料。ここまでの内容を、わかること・わからないことに整理してお伝えします。
| 比較項目 | SNP解析(体質・疾患リスク) | SNP型NIPT(出生前スクリーニング) |
|---|---|---|
| わかること | 体質の傾向、一部疾患のかかりやすさの目安 | 染色体数の変化の可能性、双子の一卵性・二卵性判定 |
| わからないこと | 病気の発症を断定すること | 確定診断そのもの(陽性でも確定診断ではない) |
| 結果の確かめ方 | 生活習慣・環境要因との組み合わせで考える | 陽性時は羊水検査などの確定検査を受ける |
体質判定であれ出生前スクリーニングであれ、SNPという小さな個人差から読み取れる情報には限界があります。数値や判定結果を一喜一憂の材料にするのではなく、次の行動を考えるための一つの材料として活用する姿勢が欠かせません。気になる結果が出た場合は、一人で抱え込まず、遺伝カウンセリングなどの専門的なサポートを頼ってください。
NIPTでSNP型を含むどの方式を選ぶか迷う場合や、ご自身に合うプランが分からない場合は、プラン診断を試してみてください。お電話でのご相談も受け付けています。0120-169-629までお気軽にお問い合わせください。
NIPT全般で何がわかり、何がわからないかについてはNIPTでわかること・わからないことについての記事も参考になります。羊水検査の詳細は羊水検査についての記事で解説しています。
よくある質問
SNPと遺伝子は同じものですか。
別の概念です。遺伝子は体の設計図となるDNAの機能単位で、SNPはその配列の中に生じる一塩基の個人差を指します。SNPは遺伝子の中にも、遺伝子以外の領域にも存在します。
SNPはどのくらいの頻度で存在しますか。
ヒトゲノムには約30億対の塩基があり、そのうちSNPは数百万か所以上に及ぶとされています。ゲノム全体に広く分布する、ありふれた個人差です。
SNP型NIPTと通常のNIPTは何が違いますか。
NIPTには複数の検査方式があり、SNP型はそのうちの一つです。母体と胎盤由来のDNAをSNPのパターンの違いから比較する方式で、双子妊娠の一卵性・二卵性判定ができる点が特徴とされています。他の方式との違いは検査会社の説明資料や本サイトの比較記事でご確認いただけます。
SNP型NIPTなら確定診断になりますか。
いいえ。SNP型を含め、どのNIPTも非確定的なスクリーニング検査です。陽性の場合は、羊水検査などの確定的検査で診断を確定させる必要があります。
SNPは病気の診断に直接使われますか。
SNP単体で病気の有無を確定することは基本的にありません。多くの疾患では、複数のSNPや他の要因が組み合わさってリスクに影響するため、疾患のリスク評価や研究の手がかりとして使われることが中心です。
SNPの解析はどのような技術で行われますか。
DNAシーケンシング、SNPアレイ、PCRとRFLPを組み合わせた方法などが用いられます。近年は次世代シーケンサー(NGS)の普及により、より短い期間で大量のSNPを解析できるようになっています。
監修:岡博史(おか ひろし) / 医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、医学博士。国内でも数少ないラボディレクター資格を保有しています。本記事は医療広告ガイドラインに配慮し、BioBank Japan(東京大学医科学研究所)・日本産科婦人科学会・厚生労働省・日本医学会出生前検査認証制度等運営委員会などの公的機関・学術情報を参照して作成しています。記載の数値・技術動向は研究の進展により変わることがあるため、最新情報や個別の検査結果の解釈は担当医にご相談ください。
SNP(スニップ)とは一塩基多型(いちえんきたけい)のことです。生命の設計図ともいわれるゲノムDNAの塩基配列の中で1つだけ異なる塩基に置き換わったことを意味しています。これによりヒトの姿形や体質といった個人差が生じるとされています。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
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- Curnow KJ, Wilkins-Haug L, Ryan A, Killion A, Banjevic M, Stosic M, et al. Detection of triploidy, twins, and vanishing twins using a single-nucleotide polymorphism-based noninvasive prenatal test. Am J Obstet Gynecol. 2015 Jan;212(1):79.e1-79.e9.
- Wapner RJ, Babiarz JE, Levy B, Stosic M, Banjevic M, Curnow KJ, et al. Noninvasive prenatal detection of submicroscopic disease: a prospective cohort study. Am J Obstet Gynecol. 2015 Mar;212(3):332.e1-332.e9.

