この記事のまとめ
NIPT(新型出生前診断)の判定不能(判定保留)とは、採取した血液から十分な情報が得られず、陰性とも陽性とも判断できなかった状態を指します。珍しいことではなく、頻度は一般に数%程度で、施設や検査方法によって差があります。原因の多くは、赤ちゃん由来のDNAの割合が少ない・採血の時期が早い・体格などの条件が重なる、といった避けにくい要素です。この記事では、判定不能となる仕組みと主な原因、再採血や再検査という対策、そして確定検査(羊水検査)への流れを、中立にわかりやすくお伝えします。NIPTは可能性を調べる非確定的な検査であり、確定は羊水検査という前提をふまえて整理していきます。
この記事でわかること
- NIPTの判定不能(判定保留)とはどんな状態か、なぜ起こるのか
- 判定不能の主な原因(胎児由来DNAの割合・採血時期・体格・技術的要因)
- 判定不能はどのくらいの頻度で起こるか、施設差はあるのか
- 再採血・再検査という対策と、確定検査(羊水検査)への流れ
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NIPTの判定不能(判定保留)とはどんな状態か
判定不能とは、採取した血液を調べても十分なデータがそろわず、陰性か陽性かを判断できなかった結果のことです。「異常が見つかった」という意味ではありません。まずは、ここをはっきり分けて受けとめてください。判定保留と呼ばれることもあります。
NIPTは、お母さんの血液のなかに流れている、赤ちゃん由来の細胞外を流れるDNA(cfDNA)を分析する検査です。この赤ちゃん由来のDNAが十分にとらえられて、はじめて安定した判定ができます。逆に、量や質が足りないと、機械は「判断できない」と保留にします。慎重に設計された仕組みだからこその結果です。
私は相談の場で、判定不能という通知を受け取った妊婦さんが「赤ちゃんに何か問題があるのでは」と一気に不安になる姿を、何度も見てきました。けれど、判定不能は陽性でも陰性でもありません。多くは、検査の条件がそろわなかっただけです。まずは深呼吸。落ち着いて次の一歩を考える時間があります。
ここで大切な前提を一つ。NIPTは、対象疾患に限って可能性を調べる非確定的な検査です。21トリソミーなどで高い検出精度をもつ一方、結果を確定するものではありません。確定には羊水検査などの確定検査が必要になります。検査の位置づけはNIPTの仕組みと原理でも整理しています。
判定不能という言葉には、どうしても重たい響きがあります。ですが、その正体は「今回のデータでは判断を控えます」という、検査側の慎重さの表れです。無理に答えを出して誤った結果を返すより、保留にして採り直す。そのほうが安全だからです。仕組みとして、そう組み立てられています。
判定不能になる主な原因
判定不能のもっとも多い原因は、血液中の赤ちゃん由来DNAの割合(胎児フラクション)が低いことです。これに、採血の時期や体格、検体の状態などが重なって起こります。どれも、赤ちゃんの健康状態そのものとは別の要因です。順に見ていきます。
赤ちゃん由来DNAの割合が低い
血液中に含まれる赤ちゃん由来DNAの割合を、胎児フラクションと呼びます。この割合がある水準を下回ると、安定した判定が難しくなります。割合は妊娠週数が進むにつれて増えていくため、時期が早いと足りないことがあります。数字の問題であって、赤ちゃんの異常ではありません。
採血の時期が早い
週数が浅いうちは、赤ちゃん由来DNAの割合がまだ十分でないことがあります。心拍確認後の早い段階で受けられるのはNIPTの利点ですが、あまりに早いと保留になりやすい面もあります。少し週数を待ってから採り直すと、うまくいくことが多いです。ここは焦らず。
体格などお母さんの条件
お母さんの体格が大きめの場合、血液の量に対して赤ちゃん由来DNAが薄まりやすく、割合が下がることが知られています。体格を表す指標であるBMIが高いと、この傾向が出やすいとされます。これは体質の一つで、責められるようなことではありません。事前に見通しを共有しておくと安心です。
検体の状態などの技術的要因
採血後の血液の扱いや輸送の条件、量の不足など、検体側の要因で解析が難しくなることもあります。海外へ検体を送る方式では、輸送に時間がかかるぶん、状態が変わりやすい面が指摘されてきました。国内で検査を完結できる体制だと、この点の管理がしやすくなります。
判定不能はどのくらいの頻度で起こるか
判定不能となる頻度は、一般に数%程度とされ、施設や検査方法によって差があります。「自分だけがなった」と落ち込む必要はありません。一定の割合で誰にでも起こりうる、想定内の結果です。まずは目安として、幅のある数字だと知っておいてください。

報告される頻度に幅があるのは、検査に使う技術や、判定を保留にする基準が施設ごとに違うためです。基準を厳しくすれば保留は増え、ゆるめれば減ります。ですから、単純な数字の大小だけで良し悪しは決められません。何を基準にしているかまで見て、はじめて意味がわかります。
参考までに、ヒロクリニックNIPTでは国内の検査機関で検査を実施しており、結果を報告できた割合が高いというデータがあります。判定不能となる割合は、あくまで自院データの目安として約0.3〜0.4%です。ただし、この数字は条件や集計方法によって変わり、他院と単純に比較できるものではありません。誇張せず、目安としてお伝えします。
頻度を左右するもう一つの要素が、検体の輸送距離です。海外の検査機関へ血液を送る方式では、届くまでに日数がかかり、そのあいだに状態が変化しやすくなります。国内で採血から解析まで完結できれば、この時間を短く保てます。判定不能の頻度を下げる工夫は、こうした地道な体制づくりの積み重ねです。
結果の見方や通知の受け取り方をあらかじめ知っておくと、当日に慌てずにすみます。NIPTの検査結果の見方もあわせて確認しておいてください。判定不能という結果があり得ることを、受ける前に知っておくだけで、心の準備が変わります。
判定不能となったときの対策
判定不能となったときの基本的な対策は、まず原因に応じて再採血や時期を待っての再検査を検討し、必要に応じて確定検査へ進むことです。一つに決め打ちせず、状況に合わせて選びます。担当医とよく相談しながら進めてください。
もっとも多く選ばれるのが、週数を少し待ってからの再採血です。時期の早さや割合の低さが原因のときは、待つあいだに赤ちゃん由来DNAの割合が増え、次はうまくいくことが多いです。多くの施設では、初回の判定不能に対して再検査の費用を追加で求めない運用をとっています。
一方で、体格などの条件が背景にある場合は、再採血しても同じ結果になることがあります。そのときは、再検査にこだわらず確定検査へ進む選択も、有力な道です。どちらが向いているかは、原因の見立てによって変わります。だからこそ、医師との会話が欠かせません。
確定検査である羊水検査は、赤ちゃん由来の細胞を直接調べるため、結果を確定できます。ごくわずかですが流産などのリスクがある検査なので、受ける時期や方法は丁寧に確認してください。詳しくは羊水検査とは何かと、羊水検査を受ける適切な時期で整理しています。
確定検査(羊水検査)への流れと受け止め方
判定不能や陽性の結果が出たあと、診断を確定させたいときは、羊水検査などの確定検査へと進みます。ここは、NIPTでは代われない役割です。進むかどうかを含め、ご夫婦の気持ちを大切にしながら決めていきます。
結果を前に、心が大きく揺れるのは自然なことです。私は相談の場で、検査を受ける前のエコーで思いがけない所見が見つかり、この先どうするか悩む方に何度も出会ってきました。Xでも@umiironekoさんが、NIPTの相談に行った際のエコーで赤ちゃんのお腹に水が溜まっているとわかり、このままNIPTを受けるか、いっそ羊水検査にすべきか悩んでいる、と率直につづっていました。予期しない場面での迷いは、誰にでも起こり得ます。
NIPTで陽性となり、確定のために羊水検査へ進む方もいます。Xでは@tetete_4649さんが、NIPTで21トリソミー陽性となり、後日羊水検査を受ける予定だと書いていました。針を刺す痛みや、結果が出るまでの期間を経験者に尋ねる姿に、確定へ向かう当事者のリアルな不安がにじんでいます。こうした声は、同じ立場の方の支えになります。
確定検査へ進むときは、費用の見通しも合わせて確認しておくと安心です。ヒロクリニックNIPTでは、他院での羊水検査にも使える費用サポートを用意しています。出生前検査の費用の考え方もあわせて読んでおくと、選択の幅がつかみやすくなります。お金の不安は、早めにならしておいてください。
羊水検査の結果が出るまでには、数日から数週間ほどの待ち時間があります。この「待つ時間」がいちばんつらい、という声を、私は何度も聞いてきました。だからこそ、待つあいだの気持ちの置き場所を、あらかじめ用意しておいてください。無理に前向きになる必要はありません。不安なままで大丈夫です。
そして、判定不能という結果は、赤ちゃんの否定ではありません。検査の条件がそろわなかった、それだけのことも多いのです。次にどうするかを選べる余地が、ちゃんと残されています。一人で抱え込まず、専門家と一緒に道を選んでいってください。焦らなくて大丈夫です。
迷ったら遺伝カウンセリングと相談窓口へ
判定不能や結果の受け止め方に迷ったときは、遺伝カウンセリングや相談窓口を使うと、気持ちと情報を整理できます。一人で決めなくていい仕組みが、ちゃんと用意されています。まずは話してみることから始めてください。
遺伝カウンセリングでは、判定不能の意味、次の選択肢、確定検査の内容やリスクを、一つずつ確認できます。ヒロクリニックNIPTでは、産婦人科・小児科・臨床遺伝の専門医が連携し、医師によるカウンセリング体制を整えています。数字だけでなく、あなたの状況に合わせて言葉を選んでお伝えします。
公的な情報にあたっておくと、判断の土台が固まります。出生前検査の考え方は出生前検査認証制度等運営委員会が、妊娠と検査に関する医学情報は日本産科婦人科学会が発信しています。妊娠・出産の公的支援はこども家庭庁 母子保健のページが役立ちます。落ち着いて情報にあたってください。
結果の解釈で不安が残るときは、NIPTと確定検査の食い違いについてまとめた検査結果が一致しないケースの解説も参考になります。わからないことは、わからないままにしないでください。相談は、いつでも早すぎることはありません。
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著者・監修
岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。
よくある質問
Q. NIPTの判定不能(判定保留)とは、異常があるという意味ですか?
いいえ、異常が見つかったという意味ではありません。採取した血液から十分な情報が得られず、陰性とも陽性とも判断できなかった状態を指します。多くは、赤ちゃん由来DNAの割合が足りないなど、検査の条件がそろわなかったことが原因です。まずは落ち着いて、担当医と次の対応を相談してください。
Q. 判定不能はどのくらいの頻度で起こりますか?
一般に数%程度とされますが、施設や検査方法によって差があります。判定を保留にする基準が施設ごとに違うため、単純な数字だけで比較はできません。誰にでも一定の割合で起こりうる、想定内の結果です。自分だけがなったと落ち込む必要はありません。受ける前に起こり得ると知っておくと安心です。
Q. 判定不能になったら、再採血すれば結果は出ますか?
採血の時期が早かった場合などは、週数を待って再採血すると結果が出ることが多いです。多くの施設で初回の判定不能には再検査の費用を追加で求めない運用がとられています。ただし、体格などの条件が背景にあるときは、再採血しても同じ結果になることがあります。原因に応じて、医師と方針を相談してください。
Q. 判定不能の主な原因は何ですか?
もっとも多いのは、血液中の赤ちゃん由来DNAの割合が低いことです。採血の時期が早い、お母さんの体格などの条件、検体の状態といった技術的な要因が重なることもあります。いずれも赤ちゃんの健康状態そのものとは別の要因です。避けにくい条件が多いため、結果を過度に不安に感じる必要はありません。
Q. 判定不能のまま確定検査へ進んでもよいですか?
はい、原因や見通しによっては、再検査を経ずに確定検査へ進む選択も有力です。確定検査である羊水検査は赤ちゃん由来の細胞を直接調べるため、結果を確定できます。ごくわずかにリスクがある検査なので、時期や方法は医師と丁寧に確認してください。どちらの道が向いているかは、原因の見立てによって変わります。
Q. NIPTだけで診断は確定できますか?
できません。NIPTは対象疾患に限って可能性を調べる非確定的な検査です。陽性でも判定不能でも、診断の確定には羊水検査などの確定検査が必要になります。結果の意味や次の選択に迷うときは、遺伝カウンセリングや無料相談を使って、気持ちと情報を整理してください。一人で抱え込まず、専門家と一緒に選んでいきましょう。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
参考文献
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- Bianchi DW, Chudova D, Sehnert AJ, Bhatt S, Kurtzman G, Wilkins-Haug LE, et al. Noninvasive Prenatal Testing and Incidental Detection of Maternal Cancer. JAMA. 2015 Jul 14;314(2):162-169. doi: 10.1001/jama.2015.7120.
- Ashoor G, Syngelaki A, Poon LC, Rezende JC, Nicolaides KH. Fetal fraction in maternal plasma cell-free DNA at 11-13 weeks' gestation: relation to maternal and fetal characteristics. Ultrasound Obstet Gynecol. 2013 Jan;41(1):26-32. doi: 10.1002/uog.12331.
- Revello R, Sarno L, Reis NS, Silva Costa F, Nicolaides KH. Screening for trisomies by cell-free DNA testing of maternal blood: consequences of a failed result. Ultrasound Obstet Gynecol. 2016 Jun;47(6):698-704. doi: 10.1002/uog.15851.
- Wang E, Batey A, Struble C, Musci T, Song K, Oliphant A. Gestational age and maternal weight effects on fetal cell-free DNA in maternal plasma. Prenat Diagn. 2013 Jul;33(7):662-666. doi: 10.1002/pd.4119.

