17q21.31 欠失症候群

17q21.31欠失症候群は、発達遅延や知的障害、特定の顔貌や筋力低下、てんかんなどの症状を引き起こす稀な遺伝疾患です。早期支援が生活の質向上に役立ちます。

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17q21.31欠失症候群(クーレン・デ・フリース症候群)は、17番染色体長腕のKANSL1遺伝子を含む領域が欠けることで起こる、きわめてまれな遺伝性疾患です。発達の遅れや特徴的な顔つき、てんかんなどを伴うことがありますが、症状の出方には個人差が大きく、穏やかで人懐っこい性格を示すお子さんが多いことでも知られています。外来でこの病名を検索してこられる方の多くは、「どんな病気なのか」「遺伝するのか」「NIPTでわかるのか」という三つの疑問を抱えています。

この記事では、原因遺伝子KANSL1と特有の染色体構造(H2ハプロタイプ)を出発点に整理します。症状・診断・NIPTとの関係、そして家族としてできる備えまで、公的機関や国際的な専門文献にもとづいてまとめました。似た名前の疾患と混同しやすい領域でもあるため、その違いにも触れていきます。

💡 この記事でわかること

  • 17q21.31欠失症候群(クーレン・デ・フリース症候群)の原因とKANSL1遺伝子の役割
  • 主な症状と、成長にともなう経過の目安
  • 名前が似ている他の17番染色体異常との違い
  • 通常のNIPTでわかるかどうか、確定診断に必要な検査
  • 治療・療育の考え方とご家族へのサポート体制

17q21.31欠失症候群(クーレン・デ・フリース症候群)とは

17番染色体の長腕にある17q21.31領域が欠けることで生じる先天性疾患で、国際的には「クーレン・デ・フリース症候群」という名称に統一されつつあります。2006年にKoolen医師・Sharp医師・de Vries医師らのグループがそれぞれ独立して報告したことから、この名がつきました。

発生頻度は文献によって幅があり、1万6千人に1人前後とする報告もあれば、5万5千人に1人前後とする報告もあります。染色体マイクロアレイ検査(CMA)が普及するまでは見過ごされてきた疾患であり、実際の頻度はさらに正確に把握されていく途上にあると考えられます。米国の希少疾患情報機関であるGARDや、欧州の希少疾患データベースOrphanetにも、症状・原因・診断についての解説が公開されています。

原因はKANSL1遺伝子とH2ハプロタイプ

原因は、17q21.31領域に含まれるKANSL1遺伝子の欠失、またはKANSL1遺伝子そのものの変化(バリアント)です。この遺伝子はヒストンの修飾に関わり、脳の発達を含む多くの細胞機能に影響すると考えられています。

もう一つの特徴が「H2ハプロタイプ」と呼ばれる、この領域に生じやすい染色体の反転(逆位)です。H2ハプロタイプを持つ方は、精子や卵子がつくられる過程で欠失が起こりやすくなることが知られています。ヨーロッパ系集団ではH2ハプロタイプを持つ方が約2割存在するとされ、その多くは症状を持たない保因者です。

成り立ち特徴遺伝形式
17q21.31領域の微細欠失KANSL1を含む複数の遺伝子がまとめて欠けるほとんどが突発性(両親からの遺伝ではない)
KANSL1遺伝子単独のバリアント欠失ではなく遺伝子の配列変化が原因常染色体顕性遺伝(一つのコピーの変化で発症)
17q21.31欠失症候群(クーレン・デ・フリース症候群)の主な成り立ち

いずれの場合も、多くは偶然の突発性変異(デノボ)。ご両親のどちらかに原因があるわけではなく、生殖細胞がつくられる過程で偶然に生じた変化です。ご自身を責める必要はまったくありません。ただし、ごくまれに片方の親から受け継ぐ例も報告されているため、確定診断がついた場合は臨床遺伝専門医による家族評価が勧められます。

主な症状と成長の経過

症状の中心は、筋緊張の低下、発達の遅れ、そして特徴的な顔つきの三つです。症状の強さや組み合わせは一人ひとり異なり、成長とともに変化していく点も理解しておきたいポイントです。

乳児期にまず目立つのは、筋緊張の低下。体がやわらかく、首すわりや歩行の開始がゆっくりになることが多く、言葉の発達も遅れる傾向があります。知的な発達は軽度から中等度の遅れにとどまることが多く、なかでも人懐っこく穏やかな性格を示すお子さんが多いことが、この疾患の際立った特徴として知られています。

症状目安となる頻度補足
筋緊張低下・発達の遅れほぼ全例軽度〜中等度の知的障害を伴うことが多い
特徴的な顔つき大多数面長の顔、広い額、洋ナシ状の鼻先、耳の突出など
てんかんおおよそ半数前後発症時期・重症度には個人差が大きい
先天性心疾患3割〜半数程度心エコーによる早期評価が推奨される
泌尿生殖器の異常一部の症例停留精巣や腎の形態異常など
17q21.31欠失症候群(クーレン・デ・フリース症候群)の症状と目安の頻度(文献により幅があります)

これらの数値はあくまで報告の目安であり、実際の現れ方には大きな幅があります。同じ遺伝子の変化があっても、症状がごく軽い方から、複数の医療的ケアを要する方までさまざまです。診断がついた時点での重症度だけで、将来を決めつけないことが大切です。

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名前が似ている他の17番染色体異常と混同しないために

17q21.31欠失症候群は、同じ17番染色体でも「長腕」の異常であり、「短腕」に起こるスミス・マギニス症候群やミラー・ディーカー症候群とは原因も症状も異なります。検索時に情報が混在しやすいため、まず位置の違いを整理しておきましょう。

疾患名染色体上の位置主な特徴
17q21.31欠失症候群(クーレン・デ・フリース症候群)17番染色体 長腕21.31穏やかな性格、発達の遅れ、特徴的な顔つき
スミス・マギニス症候群17番染色体 短腕11.2睡眠障害、自傷行為を含む行動特性
ミラー・ディーカー症候群17番染色体 短腕13.3滑脳症(脳の形成異常)を伴う重い神経症状
ウィリアムズ症候群7番染色体 長腕11.23心疾患、独特の陽気な性格、視空間認知の弱さ
名称や特徴が混同されやすい疾患との比較

「人懐っこい性格」という表現は、ウィリアムズ症候群でもしばしば使われる共通点。そのためインターネット上の情報が混同されているケースを見かけます。染色体そのものが異なる疾患ですので、確定診断の結果にもとづいて正確な情報を確認することが欠かせません。

NIPT(新型出生前診断)との関係

通常のNIPT(21・18・13トリソミーを対象とする基本検査)では、17q21.31欠失症候群を検出することはできません。この点は、多くの妊婦さんが誤解しやすい部分です。

NIPTの基本検査は、母体血中の胎児由来DNA断片を解析し、染色体の「本数」の変化を調べる検査です。17q21.31欠失症候群のような「一部の領域が欠ける」微小欠失は、本数の変化ではなく構造の変化にあたるため、対象そのものが異なります。微小欠失・重複を対象に含む拡大検査(オプション検査)も存在します。ただし対象となる領域は検査会社やプランによって異なり、17q21.31領域をカバーしない拡大検査も少なくありません。受検前に、対象領域を検査説明書やカウンセリングで必ず確認してください。

また、NIPT(基本・拡大いずれも)は非確定的検査です。陽性という結果が出た場合であっても、確定診断には羊水検査による染色体マイクロアレイ検査(CMA)が必要になります。日本産科婦人科学会のNIPTに関する指針でも、NIPTが確定的検査ではないことが明確に示されています。マイクロアレイ検査の全体像は東京女子医科大学ゲノム診療科の解説が分かりやすくまとめています。

拡大NIPTで17q21.31領域の微小欠失が「陽性」と示された場合、次の流れで進むのが基本です。

  1. 遺伝カウンセリング:まず結果の意味と偽陽性の可能性を専門家と確認します。
  2. 羊水検査(CMA):確定診断のため、羊水中の胎児細胞でマイクロアレイ検査を行います。
  3. 専門医への紹介:確定した場合、小児科・臨床遺伝専門医と支援体制を検討します。

NIPTで見つかる可能性のある疾患の全体像はNIPTで見つかる可能性のある障害とはで、知的障害との関係についてはNIPTで知的障害は分かる?検査範囲と限界の真実でも詳しく解説しています。

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出生前・出生後の診断方法

確定診断は、羊水検査絨毛検査で得た胎児細胞を用いた染色体マイクロアレイ検査(CMA)、または出生後の同様の遺伝学的検査によって行われます。通常の染色体検査(Gバンド分染法)だけでは、この程度の微細な欠失を見逃すことがあるため注意が必要です。

出生後に発達の遅れや特徴的な顔つきから疑われた場合も、同じくマイクロアレイ検査や、KANSL1遺伝子を対象とした遺伝子パネル検査・エクソーム解析で診断が確定します。世界的な臨床遺伝の情報資源であるGeneReviewsには、検査手順や経過観察の推奨事項が詳しくまとめられています。主治医や臨床遺伝専門医が診療方針を検討する際の参考にもなっている資料です。

治療・療育・見通し

根本的な治療法は確立されていませんが、症状ごとの医療的サポートと早期からの療育によって、生活の質を大きく高めることができます。診断名がついた瞬間がゴールではなく、そこからの歩みが本人の可能性を広げていきます。

支援は症状に応じて、複数の専門職が連携して行います。てんかんの管理と心疾患の定期評価は、特に乳幼児期に大切な項目です。

  • 発達支援・療育:言語聴覚療法や理学療法を、お子さんの発達段階に合わせて組み合わせます。
  • てんかん管理:発作の型に応じた抗てんかん薬の調整と、定期的な脳波検査で経過を見ます。
  • 心疾患・泌尿生殖器の評価:出生後早期の心エコーや腎エコーで合併症の有無を確認します。

穏やかで人懐っこい性格を持つお子さんが多いという特徴は、支援を受け入れやすく、療育の効果も表れやすいという声につながっています。もちろん個人差はありますが、早期から適切な支援につながったお子さんが、着実に力を伸ばしていく姿を、私も外来で見聞きすることがあります。診断名の重さに立ちすくむより、次の一歩を専門家と一緒に考えることが、ご本人の将来にとって何よりの支えになります。

ご家族の負担と支援体制

長期的な療育や通院が必要になるため、ご家族には経済的・心理的な負担がかかりやすいのが実情です。一人で抱え込まず、公的な支援制度や専門機関とつながることが欠かせません。

自治体の療育センターや児童発達支援事業所は、診断が確定する前の「気になる段階」からも相談を受け付けています。障害児支援の全体像はこども家庭庁の情報でも確認できますので、早めに地域の窓口へ相談してください。ご家族だけで判断を抱え込む必要はありません。

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ヒロクリニックNIPTでできること

ヒロクリニックNIPTは、検査から結果説明、陽性が出た場合の相談までを一貫して支える出生前検査の専門クリニックです。17q21.31欠失症候群のようなまれな疾患についても、事実にもとづいた説明を心がけています。

これまでの検査実績は75,000件以上。全項目で感度99.9%以上、結果報告率99.98%という実績があり、国内の検査機関(東京衛生検査所)で解析するため、最短2〜5日というスピード報告が可能です。産婦人科専門医・小児科専門医・臨床遺伝専門医が連携し、医師による遺伝カウンセリングを行っています。

拡大検査で微小欠失の陽性が示された場合も、そこで終わりにはしません。羊水検査など確定検査への費用補助制度もご用意しており、他院で受けた羊水検査についても対象になります。年齢制限はなく、紹介状も不要です。どの検査項目が合うか迷う場合は、無理に判断せず、まずご相談ください。

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よくある質問(FAQ)

17q21.31欠失症候群(クーレン・デ・フリース症候群)について、よくいただく質問にお答えします。気になる項目から読み進めてください。

17q21.31欠失症候群とクーレン・デ・フリース症候群は同じ病気ですか?

同じ病気です。もともと「17q21.31微小欠失症候群」と呼ばれていましたが、欠失がなくてもKANSL1遺伝子単独の変化で同じ症状が起こることが分かり、現在は「クーレン・デ・フリース症候群」という名称に統一されつつあります。

親から遺伝しますか、それとも突然変異ですか?

多くは突発性(デノボ)で、ご両親のどちらかに原因があるわけではありません。ただしKANSL1遺伝子のバリアントが原因の場合は常染色体顕性遺伝の形式をとることがあり、ごくまれに片方の親から受け継ぐ例も報告されています。確定診断後は臨床遺伝専門医への相談が勧められます。

通常のNIPTで17q21.31欠失症候群はわかりますか?

通常の基本NIPT(21・18・13トリソミーが対象)ではわかりません。微小欠失を対象に含む拡大検査でも、対象領域は検査会社やプランによって異なります。確定診断には羊水検査によるマイクロアレイ検査(CMA)が必要です。

どのような症状が出やすいですか?

乳児期の筋緊張低下、発達の遅れ、特徴的な顔つきが中心です。てんかんや先天性心疾患を伴うこともありますが、症状の程度には個人差が大きく、穏やかで人懐っこい性格を示すお子さんが多いとされています。

スミス・マギニス症候群など、他の17番染色体異常と何が違いますか?

同じ17番染色体でも、17q21.31欠失症候群は長腕の異常です。短腕に起こるスミス・マギニス症候群やミラー・ディーカー症候群とは、原因となる遺伝子も症状の現れ方も異なります。名称が似ているため、確定診断の結果を必ず確認してください。

治療法はありますか。将来的な見通しはどうですか。

根本的な治療法は確立されていませんが、療育・言語療法・てんかんの薬物管理など、症状に応じた支援で生活の質を高められます。早期から適切な支援につながることで、多くのお子さんが着実に力を伸ばしています。

まとめ

17q21.31欠失症候群(クーレン・デ・フリース症候群)は、KANSL1遺伝子の欠失やバリアントによって起こる、まれな遺伝性疾患です。多くは突発性で、ご両親に原因があるわけではありません。通常のNIPTでは検出できず、確定診断には羊水検査によるマイクロアレイ検査が必要になります。

症状は発達の遅れや特徴的な顔つきが中心ですが、その現れ方には個人差が大きく、穏やかな性格が支援の受け入れやすさにつながることもあります。診断名だけで将来を決めつけず、専門家とともに次の一歩を考えていくことが、ご家族にとって何よりの支えになります。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。


監修:岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director。慶應義塾大学医学部卒業。日本とアメリカの医師国家試験に合格し、医学博士。国内でも数少ないラボディレクター資格を保有しています。著書『妊娠したら最初に読んで欲しい本』。本記事はGeneReviews・GARD・Orphanet・東京女子医科大学ゲノム診療科・日本産科婦人科学会などの公的・学術情報を参照して作成しています。頻度や症状の割合は文献により幅があり、診断・治療の最終判断は担当医にご相談ください。

17q21.31欠失症候群は、発達遅延や知的障害、特定の顔貌や筋力低下、てんかんなどの症状を引き起こす稀な遺伝疾患です。早期支援が生活の質向上に役立ちます。

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医師監修 監修日:2024年11月15日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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