この記事のまとめ
安定期はおおむね妊娠5〜7ヶ月(16〜27週)ごろで、胎盤がほぼ完成し、つわりが和らぎやすい時期です。体が動かしやすくなり、ウォーキングやマタニティヨガ、旅行やマタニティ行事、仕事の続け方など、できることが広がります。ただし体調には大きな個人差があり、「安定期=何をしても安全」ではありません。お腹の張りが続く・出血・強い頭痛やむくみ・胎動が急に減るといったサインがあるときは、自己判断せずかかりつけへ相談してください。胎動を感じ始める時期でもあり、胎教や出産準備を少しずつ始めるのに向いた季節。無理をしないことを軸に、赤ちゃんとの毎日を整えていきましょう。
この記事でわかること
- 安定期とはいつからいつまでか、体にどんな変化が起きるのか
- 運動・体重管理・栄養・旅行・仕事・歯科ケアなど過ごし方の実践ポイント
- お腹の張り・出血・頭痛など、受診の目安になるサイン
- 胎動・胎教・出産準備など、赤ちゃんとの準備の始め方
安定期とは|おおむね妊娠5〜7ヶ月(16〜27週)
安定期は、おおむね妊娠5〜7ヶ月(16〜27週)ごろを指し、胎盤がほぼ完成してつわりが和らぎやすくなる時期です。医学的に厳密な区切りがある言葉ではありません。妊娠中期に重なる、体調が落ち着きやすい期間をやわらかく表した呼び名です。まずは、この時期に体で何が起きているのかを整理します。
妊娠初期は、胎盤がまだ育っている途中です。ホルモンの変化も大きく、つわりや強い眠気に悩む方が少なくありません。それが妊娠16週ごろになると、胎盤が完成へと近づきます。母体と赤ちゃんをつなぐ土台が整い、体調が上向く方が増えていきます。
つわりが軽くなり、食欲が戻ってくる。お腹のふくらみもはっきりしてきます。気持ちにゆとりが生まれ、外出や趣味を楽しみやすくなる時期。ただし、いつから安定期に入るかは人それぞれです。安定期に入る正確な週数の考え方は安定期はいつからかを週数で解説した記事で詳しくまとめています。
「安定期=何をしても安全」ではありません
安定期という言葉には、安心感があります。とはいえ、この時期でも切迫早産やお腹の張り、体調の急な変化は起こりえます。安定期は「無理をしても平気な時期」ではなく、「体を整えながらできることを広げる時期」と受け止めてください。
体調の感じ方は本当にさまざまです。つわりがすっかり消える方もいれば、安定期に入ってもしばらく続く方もいます。大切なのは、他の妊婦さんと比べないこと。自分の体のペースを軸に、その日その日を過ごしていきましょう。
安定期の体の変化と気をつけたいこと
安定期に入ると、お腹が目立ち始め、胎動を感じたり、姿勢や骨盤まわりに新しい不調が出たりと、体の変化がぐっと増えます。つわりが落ち着く一方で、大きくなる子宮に体が対応していく時期。ここでは、この時期に起こりやすい体のサインを見ていきます。
子宮が大きくなると、腰やお尻、股関節のあたりに違和感が出ることがあります。妊娠中はホルモンの働きで骨盤まわりの関節がゆるみやすく、それが痛みやこわばりにつながります。多くは妊娠にともなう自然な変化ですが、つらいときは我慢しないでください。
私自身、妊婦さんの相談に立ち会うなかで、安定期に入ってからお尻や腰の痛みに戸惑う声をよく聞きます。Xでも@yuppy__1さんが、安定期に入って右のお尻が痛くなり、歩き方や座り方にも影響が出たけれど、妊娠による骨盤の変化でよくある症状だと分かって少しほっとした、と書いていました。同じ悩みを持つ方は決して少なくありません。気になるときは健診で相談してください。
胎動を感じ始めるのも、この時期の大きな変化です。初めての妊娠では20週前後、経産婦さんではもう少し早く感じる方もいます。最初は腸が動くような、ごく小さな感覚。赤ちゃんの存在を体で受け取れる、うれしい合図です。胎動の感じ方は妊婦さんの胎動と日常の動きの記事でも紹介しています。
安定期の過ごし方|運動・体重管理・栄養
安定期の過ごし方の柱は、適度な運動・体重管理・栄養の3つで、いずれも「無理のない範囲で続ける」ことが基本です。体調が落ち着くこの時期は、出産や産後に向けて体を整える良い機会。ここでは、日々の生活で意識したいポイントを具体的に紹介します。
適度な運動|ウォーキングやマタニティヨガ
体を動かしやすくなる安定期は、軽い運動を習慣にする良い時期です。ウォーキング、マタニティヨガ、ストレッチ、マタニティスイミングなどが、負担が少なく取り入れやすい運動。血行が良くなり、むくみや腰痛、気分の落ち込みをやわらげる助けになります。
まずは1日20〜30分のウォーキングから。息が弾みすぎない、会話ができるくらいのペースが目安です。転倒しやすい運動や、お腹を圧迫する動き、激しいスポーツは避けてください。運動中にお腹が張ったら、すぐに休んでください。新しい運動を始める前には、健診で医師に相談しておくと安心です。
体重管理|増えすぎも増えなさすぎも注意
つわりが落ち着いて食欲が戻ると、体重が一気に増えやすくなります。急な体重増加は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、難産のリスクと関わることが知られています。かといって、増やさなさすぎも赤ちゃんの発育に影響します。大切なのは、ゆるやかに、適切な範囲で増やすこと。
望ましい体重の増え方は、妊娠前の体格によって変わります。自己判断で食事を減らすのではなく、健診のたびに体重を確認し、医師や助産師と目安を共有してください。間食の回数や、飲み物に含まれる糖分にも目を向けると、無理なく整えやすくなります。
栄養|葉酸・鉄・カルシウムを意識する
安定期の食事では、葉酸・鉄・カルシウムを意識したいところです。葉酸は赤ちゃんの発育に関わり、緑黄色野菜や豆類、果物に多く含まれます。鉄は貧血を防ぐ栄養素で、赤身の肉や魚、ほうれん草などから。カルシウムは骨や歯をつくる材料で、乳製品や小魚、大豆製品が身近な供給源になります。
まずは主食・主菜・副菜をそろえた食事を土台にしてください。そのうえで足りない栄養を補います。水分をこまめにとることも、便秘の予防につながります。サプリメントを使うかどうかは、自己判断せず健診で相談してください。妊娠期の栄養の考え方は、厚生労働省の女性の健康推進室 ヘルスケアラボの情報も参考になります。
旅行・マタニティ行事・仕事・歯科ケア
安定期は、旅行やマタニティ行事、仕事、歯科ケアなど、少し先まで見据えた計画を立てやすい時期です。体調が落ち着くうちに整えておくと、後の妊娠期がぐっと楽になります。どれも「無理のない範囲で」が合言葉。ここでは、この時期にやっておきたいことを順に見ていきます。
旅行やマタニティフォトは無理のない範囲で
安定期は、旅行やマタニティフォトを計画しやすい時期です。ただし、長時間の移動は体に負担がかかります。こまめに休憩をとり、水分補給を忘れないでください。行き先や日程は、体調に合わせて余裕をもって組みましょう。出発前に健診で相談し、母子健康手帳と保険証を必ず持ち歩いてください。
移動手段や持ち物の工夫は、事前の準備で差が出ます。妊娠中の旅行で気をつけたい点は妊娠中の旅行の記事でも詳しくまとめています。無理をせず、思い出づくりを楽しんでください。
仕事の続け方と体への配慮
体調が安定していれば、仕事を続ける方も多い時期です。ただし、長時間の立ち仕事や重い荷物の持ち運び、強いストレスは体に負担をかけます。無理なスケジュールは避け、休憩をこまめにとってください。通勤や業務でつらさを感じるときは、母性健康管理指導事項連絡カードを活用し、勤務先へ配慮を相談できます。
妊娠中の働き方や制度については、公的な情報にあたると安心です。こども家庭庁の母子保健の情報も、制度を知る手がかりになります。一人で抱え込まず、周囲と分担していきましょう。
受けておきたい歯科ケア
意外と見落とされがちなのが、歯科ケアです。妊娠中はホルモンの変化やつわりの影響で、歯ぐきの炎症や虫歯が進みやすくなります。歯周病は早産や低出生体重と関わるという報告もあり、油断できません。つわりが落ち着く安定期は、歯科健診や治療を受けやすいタイミング。
受診の際は、妊娠中であることを歯科医に伝えてください。多くの自治体では、妊婦向けの歯科健診が用意されています。産後は赤ちゃんのお世話で通院しにくくなります。だからこそ、この時期に口の中を整えておいてください。
安定期の注意点|こんなサインは受診を
安定期でも、お腹の張りが続く・出血・強い頭痛やむくみ・胎動が急に減るといったサインがあるときは、自己判断せずかかりつけへ相談してください。体調が落ち着く時期だからこそ、いつもと違う変化に気づく力が大切になります。ここでは、受診の目安になるサインを整理します。
まず気にかけたいのが、お腹の張りです。休んでもおさまらない張りが続くときは、切迫早産などのサインのことがあります。出血は、量の多い少ないにかかわらず相談してください。強い頭痛や急なむくみ、目のちらつきは、妊娠高血圧症候群に関わる場合があります。胎動を感じ始めた後で、急に減った・弱くなったと感じたときも、様子を見すぎないでください。
これらのサインは、いずれも「いつもと違う」という感覚が入り口になります。判断に迷うときは、我慢せず医療機関へ連絡してください。夜間や休日でも、かかりつけの連絡先を確認しておくと、いざというときに動けます。健診の受け方や間隔は妊婦健診の頻度と内容の記事もあわせて確認してください。
体調には個人差があります
安定期という言葉から、誰もが快適に過ごせると思われがちです。けれど実際は、この時期になってもつわりが続く方がいます。他の妊婦さんの投稿を見て「自分だけつらいのかも」と落ち込む必要はありません。体調の出方には、大きな個人差があります。
Xでも@kara_kara_sprさんが、安定期に入って第二子を公表したものの、まだつわり真っ只中でイベント参加を後悔した、と率直につづっていました。安定期=つわり終了、ではないのだと、当事者の言葉から改めて感じます。周りと比べず、自分の体のペースを優先してください。しんどいときは無理をせず、健診で正直に伝えてください。
赤ちゃんとの準備|胎動・胎教・出産準備
安定期は、胎動を感じ始め、胎教を楽しみ、出産準備を少しずつ始めるのにちょうど良い時期です。体調が落ち着くうちに動き出すと、後の妊娠期にゆとりが生まれます。焦らず、パートナーと一緒に進めていきましょう。ここでは、赤ちゃんとの準備の始め方を紹介します。
胎動を感じ始めると、赤ちゃんの存在がぐっと身近になります。話しかけたり、お腹をやさしくなでたり。こうした関わりは、胎教の第一歩です。リラックスできる音楽を聴く、絵本を読む、穏やかな時間を過ごす。どれも難しい準備はいりません。お母さんが心地よくいられることが、いちばんの胎教になります。
出産準備品は、この時期から少しずつそろえ始めると安心です。肌着やおむつ、ベビーベッド、退院時の衣類など、必要なものは意外とたくさんあります。一度に買いそろえる必要はありません。優先度の高いものから、体調の良い日に少しずつ。何をそろえるか迷ったら、マタニティ生活に役立つアイテムの記事を参考にしてください。

バースプランを考え始めるのも、この時期がおすすめのタイミングです。どんなお産にしたいか、産後の生活をどう分担するか。パートナーと話し合っておくと、気持ちの準備が整います。妊娠後期に近づいたときの過ごし方は臨月の過ごし方の記事もあわせて読んでみてください。安定期のうちに土台をつくっておきましょう。
出生前検査を考えるなら情報整理を
赤ちゃんの健康について、あらかじめ知っておきたいと考える方もいます。NIPT(新型出生前診断)は、主に13・18・21トリソミーなど対象の染色体を調べる非確定的な検査です。結果が陽性の場合、確定には羊水検査などが必要になります。検査で何が分かり、何が分からないのかを整理しておくと、落ち着いて判断しやすくなります。
検査を受けるかどうかは、ご夫婦の考え方によります。迷うときは、一人で抱え込まず相談してください。妊娠期の病気や検査に関する公的な情報は、日本産科婦人科学会の発信も参考になります。信頼できる情報にあたることが、安心につながります。
よくある質問
Q. 安定期に入ったら何をしても大丈夫ですか?
安定期は体調が落ち着きやすい時期ですが、「何をしても安全」という意味ではありません。この時期でも、お腹の張りや出血、切迫早産などは起こりえます。適度な運動や外出は楽しみつつ、長時間の立ち仕事や激しい運動、無理なスケジュールは避けてください。体調に合わせて過ごし、いつもと違う変化を感じたら健診で相談してください。
Q. 安定期はいつからいつまでですか?
おおむね妊娠5〜7ヶ月(16〜27週)ごろを指します。胎盤がほぼ完成し、つわりが和らぎやすくなる時期です。ただし医学的に厳密な区切りがある言葉ではなく、体調の落ち着き方には個人差があります。安定期に入る正確な週数の考え方は、週数で解説した記事も参考にしてください。
Q. 安定期の旅行は大丈夫ですか?
体調が安定していれば、旅行を楽しむ方は多くいます。ただし週数や体調によります。長時間の移動は負担がかかるため、こまめに休憩と水分補給をとってください。出発前に健診で相談し、母子健康手帳と保険証を必ず持ち歩いてください。行き先や日程は、余裕をもって組んでください。
Q. 安定期でも仕事を続けられますか?
体調が安定していれば続けられます。ただし、長時間の立ち仕事や重い荷物の持ち運び、強いストレスは避けてください。つらさを感じるときは、母性健康管理指導事項連絡カードを使って勤務先へ配慮を相談できます。一人で抱え込まず、周囲と分担してください。無理をしないことを最優先にしてください。
Q. どんな症状が出たら受診したほうがよいですか?
休んでもおさまらないお腹の張り、出血、強い頭痛や急なむくみ、目のちらつき、胎動が急に減ったと感じるときは、次の健診を待たずに相談してください。いずれも「いつもと違う」という感覚が入り口になります。判断に迷うときは、自己判断で様子を見ず、かかりつけの産婦人科へ連絡してください。
Q. 胎教はいつから始めればよいですか?
胎動を感じ始める安定期は、胎教を始めやすい時期です。話しかけたり、リラックスできる音楽を聴いたり、絵本を読んだり。特別な準備はいりません。お母さんが心地よく過ごせることが、いちばんの胎教になります。パートナーと一緒に赤ちゃんへ声をかける時間も、絆を育む機会になります。
著者・監修
岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
